Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

コメディ映画

Entry 2021/12/16
Update

映画『相対性浪漫飛行』感想レビューと評価解説。坂田航監督がモテ期到来の大学生が経験する3つの愛をドタバタ喜劇として描く

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

映画『相対性浪漫飛行』が、池袋シネマ・ロサ劇場にて2022年1月15日(土)~21日(金)の1週間の限定公開!

三浪を経て、大学に合格した青木が、青春を謳歌しようとした末に、不思議なパラレルワールドに迷い込む、ドタバタ喜劇『相対性浪漫飛行』

突然のモテ期に踊られされる、青木の心情や状況を、独特の言い回しと早口ナレーションで展開していく本作は、16ミリフイルムで撮影・編集されたこともあり、コメディと言うより「喜劇」という言葉がピッタリな作風です。

物語も作風も、かなり個性的な本作。

坂田航監督が「最初にタイトルが思いついた」と語っている、『相対性浪漫飛行』という、一風変わったタイトルも気になりますが、いったいどんな映画なのでしょうか?

映画『相対性浪漫飛行』の作品情報


(C)2021 by Soutaisei Roman Hikou

【公開】
2022年公開(日本映画)

【監督】
坂田航

【脚本】
江越亮介

【プロデューサー】
会田俊太郎

【キャスト】
美南宏樹、藤村拓矢、上田うた、神門実里、堀井綾香

【作品概要】
3人の女性に翻弄される、冴えない大学生の青木の奮闘を描いたドタバタコメディ。

本作が興行デビュー作となる、若手CMクリエイターの坂田航が監督を務めています。

坂田航は、学生時代の2017年に『相対性浪漫飛行』の撮影を開始していましたが、今回、劇場公開に向けて、音楽を中心に再編集を行い、再度本作に向き合っています。

2020年1月に開催された「第4回池袋みらい国際映画祭」で、上映される度に反響を呼んだ本作は、プロの映画監督やプロデューサーなどで構成される特別審査員による「特別審査員賞」を受賞しています。

映画『相対性浪漫飛行』のあらすじ


(C)2021 by Soutaisei Roman Hikou

三浪の末に、ようやく大学に合格した青木。

彼は青春を謳歌する為に、大学の「かくれんぼサークル」に所属しますが、いきなり鬼にされてしまいます。

他の「かくれんぼサークル」所属者の顔も名前も知らない青木は、2年間鬼を続けるという、不名誉な記録を打ち立ててしまいます。

不名誉な記録により、有名になってしまった青木は、同じ「かくれんぼサークル」に所属する女性、輿水(こしみず)と知り合います。

輿水は高校時代に、30秒間で39個のサイコロを積み上げるという、ギネス記録を打ち立てましたが、自身の最高記録である40個に届かなかったことから、ギネス記録には満足していませんでした。

自身の目標を追及する、輿水の姿勢に、青木は理想とする「可憐で清楚なスカンジナビアフラワー」と感じ、あの手この手でアプローチを開始、見事に輿水との交際まで発展します。

ですが、あっという間に2人は破局。傷ついた心を癒す為、青木は新たな女性と交際することを決意します。

そんな青木に、まさかのモテ期が到来します。

明るく元気な後輩のさやか、留年3年で周囲から「姉さん」と慕われている、先輩の静香、そして文通相手で留学生のリリー。

3人との揺れる恋心に悩む青木は、学内のゴシップに精通している、竹馬の友である石田から、さやか、静香、リリーに関する「怪しい噂」を聞かされます。

3人を救う為、奔走する青木ですが、やがてそれぞれの「愛の世界」に迷い込んでしまいます。

並行世界ともいえる「愛の世界」に迷い込んだ青木、この風変りな恋愛物語は、どこへ行き着くのでしょうか?

映画『相対性浪漫飛行』感想と評価


(C)2021 by Soutaisei Roman Hikou

失恋後に訪れた、突然のモテ期に翻弄される主人公の青木が、3つの「愛の世界」に迷い込む、風変りなコメディ映画『相対性浪漫飛行』

昭和の喜劇映画のような台詞回しに加え、16mmフィルムで制作された、味のある映像が独特の雰囲気を生み出している本作は、物語もかなり個性的です。

主人公の青木は、三浪の末に大学に合格したという苦労人で、青春を謳歌することに必死の男です。

そんな青木が入ったのは「かくれんぼサークル」。

青木は、そのサークルで2年間鬼を続けることになるという、冒頭の展開でも分かりますが、なんとも不条理で不思議な世界観が繰り広げられます

その後、青木は一目惚れした女性、輿水と交際が始まりますが、突然、一方的にフラれてしまいます。

ですが、突然のモテ期が訪れた青木は、さやか、静香、リリーという3人の女性と知り合います。

ここから『相対性浪漫飛行』の不思議な世界観は加速します

3人の女性とのラブストーリーが展開されるのですが、さやかは女たらしの先輩、榎本との飲み会に出かけ、静香は実家でお見合い、リリーはアメリカに帰国という、それぞれトラブルが起き、青木はそのトラブルに巻き込まれます。

本作のタイトルにもなっている「相対性理論」は「観測者の立場によって、互いの時空間が相対して変わるもの」という、アインシュタインが発表した物理学の理論です。

本作の青木は、まさに「相対性理論」のように、並行した3つの「愛の世界」を体験していきます

毎回起点となるのは、竹馬の友でゴシップ好きの、石田とのやりとりから始まり、毎回あることをキッカケに青木の恋は終わります。

では『相対性浪漫飛行』は、異なる3つのラブストーリーが展開されるだけの作品かと言うとそんなことは無く、青木は失敗を繰り返し、確実に成長していきますし、1歩ずつ本当の愛に近付いていきます

その様子は、まるでサイコロを振って1つずつ進んでいく、双六のようでもあります。

3つの愛を経験した青木が、最後に辿り着く「本当の愛」とは? そして、青木が最後に巡り合う人は誰なのでしょうか?

是非、劇場で見届けて下さい。

まとめ


(C)2021 by Soutaisei Roman Hikou

『相対性浪漫飛行』は、映像や物語の他にも、特徴的な台詞回しが魅力的な作品です。

青木が輿水を「理想の女性である」ことを形容する際に、やたら用いる台詞「可憐で清楚なスカンジナビアフラワー」など、独特の言葉選びが随所に光っています

特に、青木がある場面で何度も使う「私は今、異様に○○が食べたいのだ!!」の台詞は、「第4回池袋みらい国際映画祭」でも心を鷲掴みにされた観客が多いという名台詞ですが、同時に青木の精神的な成長を感じる、ある場面への伏線にもなっています

『相対性浪漫飛行』は、昭和喜劇のような作風が印象深い作品ですが、実はド直球の青春ドラマでもあるという、とにかく不思議な魅力に溢れた作品です。

関連記事

コメディ映画

映画『スイスアーミーマン』あらすじネタバレ感想とラスト結末の評価解説。死体役を演じた怪演ダニエル・ラドクリフに注目!

死体にまたがり!無人島脱出を試みる映画『スイス・アーミー・マン』 「ハリー・ポッター」シリーズのダニエル・ラドクリフが、なんと!死体役を演じた、映画『スイス・アーミー・マン』。 『リトル・ミス・サンシ …

コメディ映画

映画『博士の異常な愛情』ネタバレ感想とラスト結末までのあらすじ。キューブリック監督が描く人間の愚かさ

スタンリー・キューブリック監督の非公認SF三部作『博士の異常な愛情』 映画『博士の異常な愛情または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(以下『博士の異常な愛情』)は、『2001 …

コメディ映画

映画『ダンスウィズミー』あらすじネタバレと感想。三吉彩花と大物俳優・宝田明が輝く日本製ミュージカル

映画『ダンスウィズミー』は2019年8月16日(金)より全国ロードショー公開! 「突然歌って踊り出すなんてヤバくない!?」と、ミュージカル映画における暗黙の了解にツッコミを入れた日本発ミュージカル・コ …

コメディ映画

Netflix映画『ザ・ランドロマット』ネタバレ感想と評価考察。実話事件パナマ文書流出に隠された意味をソダーバーグ監督が問う

結婚40周年の代償が、世界規模で起こった「正直者が馬鹿を見る」巨大違法取引の巻き添えに…それは詐欺事件だった!? 今回ご紹介する『ザ・ランドロマット -パナマ文書流出-』は、お金に関する実際に起きた事 …

コメディ映画

映画『スターリンの葬送狂想曲』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も

ロシアで上映禁止!史実に基づいた超黒いコメディ!史上最悪の独裁者スターリンの後釜を小悪党たちが奪い合う映画『スターリンの葬送狂想曲』。 最高権力者に媚びへつらい、その死の後はグダグダの権力闘争を繰り広 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学