アカデミー賞脚本賞受賞作品『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』
『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』は、マッド・デイモン&ベン・アフレックがアカデミー賞脚本賞を受賞した作品。
数学の天才的頭脳を持ちながらも過去のトラウマから素行は悪く、他人と付き合うことが苦手な青年と、妻の死から前に進めないでいた心理学者のヒューマンドラマが描かれています。傷を背負った者同士が未来への扉を開く、愛と感動が詰まった作品になっています。
ガス・ヴァン・サント監督がとりまとめ、豪華俳優陣にも大注目。天才少年を若かりしマッド・デイモン、心理学者は今は亡き名優ロビン・ウィリアムズが演じています。
アカデミー賞脚本賞を始め、数々の映画タイトルを受賞した、1990年代の代表作『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』をネタバレありで、ご紹介します。
映画『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』の作品情報
(C)1997 Miramax, LLC . All Rights Reserved.
【公開】
1998年(アメリカ映画)
【原作】
Good Will Hunting
【脚本】
ベン・アフレック、マット・デイモン
【監督】
ガス・ヴァン・サント
【キャスト】
マット・デイモン、ベン・アフレック、ロビン・ウィリアムズ、ミニー・ドライバー、コール・ハウザー、ステラン・スカルスガルド、ケイシー・アフレック
【作品概要】
本作『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』は、ガス・ヴァン・サント監督が手掛け、ベン・アフレックとマット・デイモンが脚本を担当しました。
第70回アカデミー賞『脚本賞・助演男優賞ダブル受賞』、第55回ゴールデングロー賞『最優秀脚本賞』、第22回日本アカデミー賞では『外国作品賞受賞作品。数々の映画祭典で賞を総嘗めした名作です。
映画『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』のあらすじとネタバレ
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舞台はボストン。古びた家から出てきた少年ウィルは、毎日友達のチャックの車でアルバイトに向かっていました。今は大学で清掃員の仕事をしています。
ウィルは清掃の仕事をし、黒板の問題を見つめました。その日は仕事終わりの仲間達との飲み会も終えて直ぐに帰り、黒板で見かけた問題を解いていました。
翌日、清掃の仕事で大学へ行き、黒板に答えを書き込みました。
この黒板の問題を出したのは、数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞を受賞しているランボー教授のものでした。
この黒板の回答を生徒が見かけランボー教授に報告をし、教授が確認に向かうと、それは正しい回答でした。次の授業では、黒板の難問を解いた天才の正体を知りたい学生で教室は超満員でした。
ランボー教授が生徒たちへ「回答した者は前に出るように」と指示をしましたが、誰も名乗り出ませんでした。そしてランボー教授は、回答者からの無言の挑戦として、受けて立つと宣言しました。
ウィルは仲間達と野球を見に行くと、幼稚園の頃に殴ってきた男がいました。帰り道でもその男を見かけ、ウィルは車から降り殴りかかりに行きました。しかし、すぐに警察に取り押さえられました。
仮釈放されウィルは再び大学へ清掃の仕事へ向かいました。すると新しい問題が黒板に書かれていたので、ウィルは回答を書き込んでいました。
するとランボー教授が現れ、名前を聞かれましたが、答えずにその場を去りました。今回もウィルの書いた回答は正解でした。
ウィルは仲間達とハーバード御用達のバーへ遊びに来ました。チャックがハーバード大の女の子をナンパしに行くと、知識をひけらかす嫌な男に絡まれました。
その様子を見たウィルは本を引用して自分の意見のように話すなと、チャックをかばいました。チャックがナンパした女の子が帰りがけにウィルの所へやってきて、電話番号を渡しスカイラーと名乗りました。
一方、ランボー教授は黒板に回答を書き込んでいた清掃員を探しにバイト先の事務所へやってきました。すると保護観察員に電話するといいと言われ、連絡先をもらいました。
そして、ランボー教授はウィルの喧嘩の裁判を傍聴しに来ました。ウイルは自己弁護をしていました。
裁判官がこれまでの数々の犯罪歴や里親で3件もの肉体的虐待を受けていたことなども述べました。保釈金は5万ドルと言い渡され裁判は終了しました。
ウィルは拘置所からスカイラーに電話をしました。今週どこかで会わないかと誘いデートの約束をしました。
その後ランボー教授が面会へやって来ました。監督付きの保釈同意書を判事から得たという内容でした。
それには条件があり、毎週ランボー教授と数学の勉強をすることと、セラピーを受けるというものでした。セラピーに対し嫌悪感を示しましたが、了承し保釈されました。
それからウィルは毎週ランボーと数学を解き、セラピーに通う生活が始まりました。
以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』ネタバレ・結末の記載がございます。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
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ウィルが最初に嫌悪感を示したように、彼に合うセラピストがなかなかいませんでした。
いつも横柄な態度を取ってしまい、カウンセラーは辞退していくのです。そして、ウィルはランボー教授にセラピーは必要ないと伝えました。
この時すでにランボー教授は、5人ものカウンセラーをセッティングしていました。
そして、ランボーは大学時代のルームメイトに頼み込むことにしました。彼の名前はショーン・マグワイア。
数年ぶりに再会し、ウィルのセラピーを依頼しましたが、忙しいという理由で断られてしまいました。
しかし、ランボーは熱烈に‟ウィルは100万人に1人の存在だが、心を閉ざしている。ウィルとショーンは育ちが似ている。”と訴えかけました。そして、ショーンは週に1度のセラピーを承諾しました。
6人目のカウンセラーであるショーンのセラピーの日がやって来ました。ショーンは最初にランボー教授と助手を部屋から外してもらいました。
ウィルはいつものように横柄な態度を取りますが、ショーンは上手く受け入れていきます。
しかし、ウィルがショーンの妻について暴言を吐き始めるとショーンは豹変、ウィルの首を締め激怒したのです。こうして1回目のセラピーは終えました。
ウィルは先日バーで知り合ったスカイラーと再会し、楽しい完璧な時間を過ごしました。美人で賢くそして面白い彼女に惹かれ始めていました。
2回目のセラピーの日がやってきました。前回ウィルから言われたことを考えていたとショーンは言いました。
その結論は、‟自分への愛より強い愛で愛した誰かを失う、その悲しみと愛を君は知らない”。だから今のウィルは生意気で怯えた若者なんだというものでした。
最後に自分で選ぶように伝え、ショーンはウィルの元を去って行きました。
3回目のセラピー、ウィルは自分で選んでショーンの元へやって来ました。今回はひたすら黙り込み、1時間何も話さずに終わりました。話したくないという意思表示として、ショーンは受け取りました。
4回目のセラピー、前回と同様に黙り込むウィル。しかし、突然スカイラーのことを話し始めました。先週デートをしたが、完璧な彼女を壊したくなく電話をしていないと言いました。
それに対しショーンは彼女だけでなく、完璧な君も壊したくないのではないかと言いました。
そして、癖は欠点ではく、君らがお互いにとって完璧であることが大事であると伝えました。
それを確かめるためには、まず飛び込んでみるしかないとアドバイスをしました。
ウィルはショーンのアドバイスを受け、すぐにスカイラーの寮へ会いに行きました。
彼女は難問の宿題があるため、今日ではなく明日ならデートできると言いました。ウィルは帰ると見せかけ、彼女の宿題を急いで解いて、再び彼女の部屋に戻りました。
そして、明日まで待てないと言ったのです。こうして、彼女をデートに連れ出すことが成功しました。
その日のデートでや家族の話などをしました。しかし、ウィルは複雑な家庭環境を隠し、兄弟は12人もいると嘘を付きました。
5回目のセラピー、ウィルは著書を読んだと言いました。そして、亡くなった奥さんについて質問を始めました。奥さんと出会っていなければどんな人生を送っていたのか。
それに対してショーンは妻との日々はは1日も後悔していないと答えました。次にいつ彼女がと思ったのかについて聞くと、ショーンはなんと日付までも覚えていたのです。
そして、もしその日に彼女に話しかけていなければ、今日まで後悔していたと言いました。
スカイラーはウィルの家や家族、友人について興味を持ち始めていました。そして、チャック達に彼女を会わせることになりました。飲み会での彼女を見て、チャックはハーバード人種を見直したと言いました。
するとスカイラーは、私だけ特別かもしれないと答えました。
徐々にショーンとランボー教授はすれ違いが始まっていました。ランボーは、ウィルの将来を本人に代わって考えているとショーンは思っていました。
スカイラーはカフェのテラス席で勉強をしていました。ウィルは前に座って待っていました。
途中でウィルは待っていられない様子で、手伝おうか?と話し掛けましたが、スカイラーは自分で解きたいと答えました。
そして、‟
その日、スカイラーはカリフォルニア行きを誘いました。するとウィルは突然怒りだしました。
ウィルは彼女から愛されなくなってしまうことを恐れていると思い、それは彼女も同じだと言いました。
ウィルは過去にあったことや、家族がいないことを話せというのか?と、彼女に怒りながら打ち明けました。そして、彼女は愛しているとウィルに伝えましたが、ウィルは愛していないと言って部屋を出て行きました。
ウィルはランボー教授との面談でも悪態をつきました。こんな簡単な問題を解けずにモタモタしているのは苦痛だとも言いました。
ウィルは教授の問題用紙を燃やすと、教授は急いで駆け寄り火を必死に消しました。
ウィルはそのまま部屋を出て行きました。教授はウィルに出会っていなければ、才能を捨てるのも見ないで済んだと、出会ったことを後悔していました。
ショーンとのセラピーでは‟親友”をテーマに話していました。ウィルはチャックを候補に上げましたが、彼は気のおけない家族とショーンは言いました。
すると、シェイクスピアやニーチェなど今は存在しない人物を上げました。それに対し、現実世界で傷つくことを恐れて前に進もうとしていないと指摘されました。
本当は何をしていんだ?という質問には、ふざけて回答しました。簡単な質問にすら答えられない、答えを知らない。そして、セラピーは終わりだと言って、ウィルを部屋から追い出しました。
ウィルはスカイラーに電話をしました。今の仕事以外の仕事も始めようと思っていると伝えました。彼女は再び愛していると伝えましたが、ウィルは答えることなく電話を切りました。
チャックと工場現場の仕事の後話していました。チャックはウィルに、もし20年経ってもここで暮らしていたら怒ると言いました。
ウィルは俺たちとは違うんだ、宝くじの当たり券を持っているんだと。皆がその券を欲しいと思っているのに、それを無駄にするなんて許さないと言いました。
なんの挨拶もなくウィルが消えていればいいと思ってるとまで言いました。
ウィルはショーンとのセラピーに遅刻しました。するとランボー教授と言い争いをしていました。教授はすぐ部屋から出て行き、君は気にしなくていいとショーンは言いました。
ウィルはショーンに自分と同じような経験があるか質問しました。するとショーンは、昔酒浸りの父親から暴行を受けたことがあると答えました。
そして何度もショーンはウィルに”君は何も悪くない”と言い続けました。知っているとウィルが何度答えても言い続けました。すると、ウィルは許してと言いながら突然泣き出しました。ウィルはショーンを強く抱きしめました。
ウィルはランボー教授が紹介してくれた会社に就職しようと思っているとウィルに伝えました。すると、それが君の望みかい?とショーンは聞きました。
ウィルはそう思うと答えると、セラピーは終わりを告げられました。ウィルはショーンにこれからも連絡すると言いました。
ショーンは旅に出ると言い、ウィルに自分を信じて生きろと言い、2人抱き合いお互い前に進み始めました。
チャック達といつものように飲んでいると、明日から違う会社に通うなら毎日送ってやれないとチャックは言い、21歳の誕生日プレゼントとして車を渡しました。
ショーンは旅の準備をしていると、ランボー教授が現れました。そこでようやく2人は和解することができました。
ショーンの家にウィルがもらった車で現れました。そしてポストに何か紙を入れて去って行きました。手紙を見ると、仕事を断ることへのお詫びと、”悪いけど僕には彼女がいます”という内容が書かれていました。
ショーンが前にウィルに話したことを引用して書かれていたので、ショーンは笑みを浮かべました。
チャックはいつもと同じように、その日もウィルの家へ迎えに行きノックをすると、返事がありませんでした。
そして窓から部屋を覗くと空っぽになっていたのです。チャックが望んでいたことが現実となり、嬉しそうに車へと戻って行きました。
ウィルはチャック達の車でひたすら道を進んで行きます。
映画『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』の感想と評価
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過去に囚われて‟今”を生きれないでいる。本作のウィルのような過酷なトラウマでなくても、殻に閉じこもってしまっている人は沢山いるのではないでしょうか。
ウィルは愛されなくなってしまうことを恐れ、深く関わらず人を愛さないようにしていました。‟傷つくことを恐れて行動しない”。このように現実社会に変換して考えると、多くの人が当てはまる内容になっていました。
心理学者ショーンはもちろんですが、友達であるチャックは、ウィルの殻を破った大きな存在でした。それは、チャックがウィルの幸せを心から願っていたからです。
チャックがウィルに対し、才能を捨てたら本気で怒る、黙って消え他の道へ進むことを望んでいると伝えるシーンで、ウィルの背中を強く押していたからです。
チャックもウィルと同様、恵まれた環境で暮らしているわけではありませんでした。それでも他人の幸せを望んでくれる友人を持ったウィルは、友人の想いを裏切るようなことはできなかったのではないでしょうか。
本作は、このように何かに失敗したり、前に進めないでいる人々に勇気を与える原動力なる作品でした。
まとめ
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トラウマを抱え、愛を知らない孤独な青年ウィルは数学の天才的頭脳を持っているものの、才能を活かしきれないでいました。
ある日、彼の才能を発見したランボー教授は学時代のルームメイトで心理学者のショーンを紹介しました。彼も同じく過去のトラウマを抱えています。2人は一体どうなるのか?
これは、カウンセリングを通し、心に傷を持つ2人が‟愛”を知り‟愛”を経験していくストーリーで、魅力的な心に突き刺さる名言も多く登場します。
今回のウィルのように特別な教育を受けていないにも関わらず、数学の難問を解く天才が登場する作品に『奇蹟がくれた数式』(2015)があります。
この作品はインド出身の天才数学者ラマヌジャンの実話です。ランボー教授が、ウィルがどれだけ特別な存在かをショーンに語るシーンで、例えとして挙げられた人物でもあります。
また、ガス・ヴァン・サント監督作品の『小説家を見つけたら』(2000年)は、今回の『グッド・ウィル・ハンティング』と通ずる部分が多く、本作のようなヒューマンストーリーが好きな方には特にオススメの1本です。
2つのガス・ヴァン・サント監督作品を見比べてみるのも良いのではないでしょうか。