あの愛すべき小さなクマの紳士が帰ってきた!
マイケル・ボンドによる人気児童文学「パディントン」シリーズを実写映画化し、好評を博した『パディントン』(2016)。
その続編となる実写映画化・第2弾作品が『パディントン2』です。
パディントンは、今度はどんな事件に巻き込まれるのか?彼とともに暮らすブラウン一家も大活躍します。
さらにパワーアップした『パディントン2』をご紹介します!
映画『パディントン2』の作品情報
【日本公開】
2018年(イギリス・フランス合作映画)
【原題】
Paddington2
【原作】
マイケル・ボンド
【監督】
ポール・キング
【キャスト】
ヒュー・ボネビル、サリー・ホーキンス、ヒュー・グラント、ブレンダン・グリーソン、マデリーン・ハリス、サミュエル・ジョスリン、ジュリー・ウォルターズ、ベン・ウィショー(声)
【作品概要】
マイケル・ボンドの児童文学「パディントン」シリーズの実写映画化第2弾。心暖まるファミリー映画であり、ハラハラ・ドキドキのアクション映画であり、社会派映画でもある名作に仕上がっています。
ブラウン家の一員として生活するパディントンは小さなクマのジェントルマン。そんな彼の前に、変装の名人の悪人が現れた……ヒュー・グラントが、新たな敵役フェリックス・ブキャナンを演じるほか、『シェイプ・オブ・ウォーター』が話題のサリー・ホーキンスの活躍も見逃せません。
パディントンの声を担当するのは、ベン・ウィショー。日本語吹き替え版では松坂桃李が担当している。
映画『パディントン2』のあらすじとネタバレ
ロンドンのウィンザーガーデンでブラウン家の家族の一員として幸せに暮らす子熊のパディントン。今朝も電動歯ブラシ2本を使って、耳も鼻もきれいにしました!
近所の皆さんともすっかり仲良しです。親切なお姉さんの自転車に乗せてもらい、車上からいつもドアの鍵を忘れる男性に声をかけ、お姉さんと別れるとゴミ収集車に乗せてもらい街に出ます。
ペルーで川を流されている時に助けてくれて、パディントンを育ててくれたルーシーおばさんの100歳の誕生日をお祝いするために、パディントンはプレゼントを探していました。
グルーバーさんの骨董品屋で、パディントンはロンドンの町並みを再現したユニークな飛び出す絵本を見つけます。
ロンドンに行く予定を立てていたのに、パディントンを育てるために、ロンドン行きを諦めたルーシーおばさん。この絵本を送れば、ルーシーおばさんにもロンドンの雰囲気が伝わることでしょう!
でも、この絵本、世界に一つしかない貴重品で、とても高価なのです。そこで、パディントンは働いてお金をためることにしました。どうしてもこの本をルーシーおばさんにプレゼントしたいのです!
散髪屋の助手として働き始めたパディントン。ところが、店主がいない間にお客さんが来てしまい、断ろうとしたのですが、お客さんはやってくれと座ったまま。
恐る恐るバリカンに手を伸ばしますが、コードが体に絡んでしまい、パディントンは、天井まで吊り上げられ、あっちへこっちへと振り回されます。
挙句にお客さまの後頭部をばっさり、バリカンで刈ってしまうはめに!マーマレードで髪をくっつけますが、すぐにばれてクビになってしまいます。
初めての仕事は大失敗に終わってしまいましたが、パディントンはブラウン家の人々と一緒に、今日から始まる移動遊園地に出かけました。
フェニックス・ブキャナンという俳優の回りに人が集まっていました。かつては人気俳優だったブキャナンですが、今は落ち目で、目立った仕事といったらドッグフードのCMくらい。ブラウン家とはご近所さんです。
彼は移動遊園地の開会宣言を任されていましたが、聴衆の中から代表を選ぼうと言い出し、やりたい人に挙手を促しました。
パディントンも元気に手を挙げると、ブキャナンはパディントンを指名し、名前などを訊き、「かなえたい夢は?」と質問しました。
パディントンが飛び出す絵本を手に入れることだと答えると、ブキャンの表情が明らかに変わりました。
翌日、パディントンが挑戦したのは窓拭きです。初めは失敗の繰り返しでしたが、次第に上手にこなせるようになってきました。少しずつですがお金もたまり始めました。
グルーバーさんのお店の窓を覗き、絵本を手に入れられる日を夢想していると、ガラスの割れる音が聞こえました。
見ると、何者かが店に侵入し、絵本を盗み出しているではないですか!
パディントンはのら犬の助けを借り必死で追いかけましたが、泥棒は跡形もなく消えてしまいます。途方にくれているパディントンのもとにパトカーが到着します。
警察はグルーバーさんのお店の前にいたパディントンこそが犯人だと最初から決めつけて追いかけてきたのです。手錠をかけられてしまうパディントン。
泥棒は変装したブキャナンでした。彼はこの絵本のことをよく知っていました。全てのページに美人が登場して指差している、そこにヒントが隠されているのです。
全てのヒントを集めれば宝が手にはいるはず! 見つけ出してやる!と彼はほくそ笑みました。
パディントンの裁判が始まりました。法廷に現れた判事は、なんと!あのバリカンで髪を刈ってしまった男性客ではありませんか!これは実に不利な状態です!
現場に残された肉球の跡、マーマレードの跡などパディントンを犯人とする証拠が着々と示される一方、パディントンの主張を裏付けるものは何も出てきません。
最後に証人として呼ばれたのはブキャナンでした。彼は、部屋から道を見下ろしていると、犬の背中に乗ったパディントンをみかけたと証言します。
パディントンは男を追いかけていたと主張しているが、あなたはその男を見ましたか?と問われます。法廷は静まり返りました。これが判決を決める重要な証言になるからです。
ブキャナンは答えました。「それが見てないのです……」
法廷からは無念のため息がもれました。この証言が決定的となって、パディントンは窃盗罪で10年の刑を言い渡されてしまいます。
ルーシーおばさんに手紙を書くパディントン。「引っ越しました。ロンドンでも有名なヴィクトリア建築の建物で、セキュリティーは抜群……」
「この顔に見覚えはありませんか?」パディントンの証言をもとに描かれた似顔絵が印刷されたポスターをブラウン家の人々はせっせと街中に貼っていました。パディントンの無実をなんとか晴らそうと懸命です。
パディントンは洗濯係として、働かされますが、赤い靴下が紛れ込んで色落ちし、囚人服が全てピンク色になってしまいました。
ピンク色の囚人服を着た囚人たちとともに、食事をとるパディントン。ところがこれが泥のようなひどい食事で、聞くところによると、毎日三食、これを食べさせられているらしいのです。
パディントンが「シェフに言わないと」と言うと、「ナックルズに!?」と囚人たちは震えあがりました。
「おばさんは、誰にでもいい面があると言っていました」と、パディントンは調理場のナックルズのところへ向かいました。
「メニューの見直しが必要です」とパディントンが言うと、「メニューを変える。今日のメニューはクマのパイだ」とナックルズは凄みました。
つかまれ、逃げ出そうとしたパディントンのポケットの中から、マーマレードのサンドイッチが飛び出しました。
それを食べたナックルズ、「お前、これを作れるのか?」とパディントンに尋ね、パディントンが頷くと、彼はパディントンをつれて、食堂にやってきました。
「よく聞け。このクマは俺が守る」と彼は宣言しました。
調理場に戻ると、彼は言いました。「守ってやる代わりにマーマレードを作れ」。
その頃、ブラウン家のお母さん、メリーはグルーバーさんのところに来ていました。
真犯人は他の値打ちのあるものには一切目も触れず、絵本を盗っている、絵本に秘密が隠されていて、犯人はそのことを知っていたのではないかと二人は考えます。
ブキャナンはセント・ポール寺院にヒントを探しにやってきました。変装してシスターの列に紛れ、ささやきの回廊へ。ヒントの文字を見つけると、司教にばけてその場を立ち去りました。
刑務所では、パディントンとナックルズが作ったマーマレードのサンドイッチが大好評を得ていました。「他にはないのか?」と声が上がりますが、レシピがありません。
祖母直伝のレシピを覚えていると一人の囚人が言うと、次々とレシピを知っているというものが立ち上がります。
「みんな、覚えているレシピを一緒に作りましょう」とパディントンが言い、全員で調理場へ。たくさんのおいしそうなスイーツが出来上がりました。
囚人たちとすっかり仲良くなったパディントン。自分は無実だと訴えると、一緒に刑務所を抜け出したらみんな助かるとナックルズたちは言います。
でもそれって脱獄ですよね。さすがにそれはダメです、ブラウン家のみなさんが一生懸命、罪を晴らそうとしてくれていますと答えるパディントン。
ナックルズは「そんなのあてにならない」「そのうち面会に来なくなり、お前のことなど忘れてしまうさ」と答えます。「ブラウンさんに限ってそんなことはありません!」とパディントンは憤りますが……。
その頃メリーは、ブキャナンを疑っていました。犯人を「青い目の男」と口をすべらしたからです。彼は犯人を見ていないはず、と追求すると、ポスターのことを思い出したのだと弁解したのですが、ポスターは白黒です。
なぜ青い目の男などと言ったのでしょう?ルーシーがブキャナンの目をじっと見ると、彼の目が青いことに気付きました。でも彼が犯人だというちゃんとした証拠はありません。
ブラウン家の長女ジュディは個人で地域新聞を作っており、長男のジョナサンと一緒に、取材だと言ってブキャナンのマネージャーを訪ねました。
2分しかないから大急ぎでと言われ、ブキャナンのマネージメントについて質問した後、彼女のこのあとの予定を尋ねると、「ブロードウエーのスターとリッツホテルで会食よ」とマネージャーは答え、慌ただしく出ていきました。
ルーシーは郵便局の配達車の中に大きな箱を置き、配達人がドアを閉めにやってくる前に箱の中に忍び込みました。その荷物はブキャナンの家に配達されました。
ブキャナンが荷物を開けようとすると、突然電話が鳴り出しました。電話主はジュディとジョナサンで、彼女たちはマネージャーの発言を録音したものを巧みに編集し、「ブロードウエーのスターとリッツホテルで会食よ」とあたかも彼女が、ブキャナンを呼び出したように仕向けます。
喜び勇んで家を出て行くブキャナン。ルーシーは箱を飛び出し、何か証拠はないか、部屋を探索し始めました。
家で歯を磨いていたブラウン家のお父さんのヘンリーは、窓から、ブキャナンの家の中にルーシーがいるのを見てびっくり仰天。あわてて、隣の家へ向かいました。
ルーシーを咎めるヘンリーですが、ルーシーは天井の隠し部屋を見つけます。「どこにでもある普通の屋根裏部屋だ」とヘンリーはたしなめますが、上がってみてびっくり。
そこには演劇の衣装をつけたマネキンがいくつも並べられており、それを観ていると、成る程、彼ならどんなものにも化けられると思えてきました。
その時、ブキャナンがネクタイを忘れたことに気が付き、家に戻ってきてしまいました。見つかってしまうヘンリー。「何をしているんです?」
「君こそ何をしているんです?」「ここは私の家でね」
あわててヘンリーの会社のプラチナ会員のために家を無料で審査をしているのだと出まかせを言いますが、「パジャマ姿で?」と突っ込まれます。
どうにかこうにかごまかして、二人はブキャナン家を退散。ブキャナンはあわてて、天井部屋へ走り、引き出しの鍵をあけ、絵本が無事であることに安堵するのでした。
ブラウン家は警察に行き、ブキャナンが怪しいと訴えますが、ちゃんとした証拠がなければ動けませんと追い返されます。気がつけば、パディントンとの面会時間を過ぎていました。
映画『パディントン2』の感想と評価
前作『パディントン』は、ペルーからロンドンにやってきたパディントンが、家族を見つけ、町の人々に受け入れられるまでを描いていました。
今作はすっかり、町に馴染み、住民たちとも楽しく付き合っている微笑ましい光景からスタートし、ほっこりさせられます。
飛び出す絵本を見せられたパディントンがその中に入り込んでルーシーおばさんにロンドン案内するのを夢想するシーンは感動的です。
夢のある眩しいくらいきらきらした想像力溢れるシーンで、これを観ただけでもう、この作品が傑作であることを確信しました。
勿論、そのシーン以外も、見どころたっぷり。動く列車を使ったアクションシーンがある映画はたいてい傑作というのが私の持論なのですが、まさかパディントンでそれが観られるとは!
二つの列車が並走したり、列車の上に昇って移動したり(その方法がユニーク!)、車両を切り離したり、胸躍る展開が待っています。
前作ではニコール・キッドマンが実に楽しそうに悪役を演じていたのが印象的でしたが、本作のヒュー・グラントも溌剌と悪役を演じています。
この男、かなりのクズであり、真の悪人なのですが、なんだか憎めない。
そのあたりのキャラクターの面白さは、制作スタッフの設定によるところが大なのでしょうが、ヒュー・グラントが本当にいい味に仕上げていて、気の利いたラストに、にやりとせずにはいられませんでした。
それにしても俳優に対してバード夫人が言う「俳優は邪悪な人間、いつも嘘をついているから」という台詞にはドッキリさせられましたが、ブキャナンに判決を下す際に判事が言う「俳優という崇高な職業を冒涜している!」という台詞ともあわせて、ユニークな「俳優論」が展開されていて興味深いです。
俳優とはいかなるものか?映画人たちの俳優への愛情とリスペクトを感じさせます。
まとめ
上記で述べたように、楽しく、温かい映画なのですが、ただ、おとぎ話のような、善意だけがある映画ではありません。
町の住人の中には、パディントンがクマであるというだけで、忌み嫌うカリーさんという男性がいます。
ペルーからの移民であり、人ではなくクマのパディンドンは、イギリス人の誰よりも紳士であるといっていいくらい、誠実で礼儀正しいのですが、彼は決してそれを認めようとしません。
ヘンリーが彼にずばっとそのことを指摘するシーンは胸のすく思いですが、これはカリーさん一人の問題ではないでしょう。
イギリスのEU離脱の大きな原因は、EU法によって移民が増え、仕事を奪われたことへの反発であるとも言われていますし、世界中に広がる移民排斥、ヘイトなど、今の時代の問題そのものでもあるのです。
アキ・カウリスマキの『希望のかなた』(これも傑作!)に通じるものも感じました。優れた映画はその時代の空気を的確に反映しているものです。
一方で、他の住民たちが、パディントン不在の際、不機嫌になったり、調子がくるうシーンも描かれています。彼のお陰で、如何に穏やかな日常を過ごせていたのか、気付くのです。
世界を変えるのは、小さな善意、と他者への思いやり。
そんなメッセージを含ませながら、映画は最高にわくわくするエンターテインメントとして、私たちをすっかり幸福な気持ちにしてくれるのです。