「黄金の耳」を持つ特別分析官が挑む緊迫の潜水艦サスペンス・アクション
アントナン・ボードリーが脚本・監督を務めた、2019年製作のフランスの潜水艦サスペンス・アクション映画『ウルフズ・コール』。
シリアでの潜航任務中、「黄金の耳」とまで言われる並外れた聴力を持つ特別分析官が、オオカミの歌(呼び声)のような正体不明のソナー音に惑わされてしまいます。
正体不明のソナー音に翻弄された、フランス海軍の原子力潜水艦に訪れる危機というのは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
新たな極限を突きつける、フランスの緊迫の潜水艦サスペンス・アクション映画『ウルフズ・コール』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。
CONTENTS
映画『ウルフズ・コール』の作品情報
【公開】
2020年(フランス映画)
【脚本・監督】
アントナン・ボードリー
【キャスト】
フランソワ・シビル、オマール・シー、マチュー・カソビッツ、レダ・カティブ、パウラ・ベーア、アレクシス・ミシャリク、ジャン=イブ・ベルトルート、ダミアン・ボナール
【作品概要】
アントナン・ボードリーの初映画監督作品である、フランスの潜水艦サスペンス・アクション映画です。
『メイド・イン・フランス パリ爆破テロ計画』(2015)や『私の知らないわたしの素顔』(2020)、『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋の終わりから』(2021)などに出演するフランソワ・シビルが主演を務めています。
共演は、『最強のふたり』(2012)『ジュラシック・ワールド』(2015)のオマール・シーや、『裏切りの戦場 葬られた誓い』(2012)『負け犬の美学』(2018)のマチュー・カソビッツら実力派キャストです。
映画『ウルフズ・コール』のあらすじとネタバレ
物語の冒頭では、古代ギリシアの哲学者アリストテレスの言葉が紹介されました。
「人間は3種類存在する。生きている人々、死んでいる人々、そして海に住んでいる人々」だと…。
シャンテレッド(通称ソックス)には、「黄金の耳」と呼ばれる、並外れた聴力を持っており、敵の動向を探る特別分析官をしていました。
ソックスはシリア沿岸タルトゥースへ潜航任務中の、フランス海軍の攻撃型原子力潜水艦「チタン」で働き、ソナーの分析を行っていました。
陸では特殊部隊の工作員たちがおり、それぞれ身を隠しながら敵の動向を窺っています。
工作員たちを回収する地点へ向かう道中、ソックスは正体不明のソナー音「オオカミの歌(呼び声)」を聞き、クジラなのか艦艇なのか迷っていました。
ソックスが分析した音の正体について発言するたび、翻弄される「チタン」の乗組員たち。
もう一度「オオカミの歌」を分析したソックスは、クジラではなく、ロシア海軍の新型艦クーガー級だと断定します。
ソックスの分析結果が、「チタン」艦長のグランシャンや副艦長のドルシに伝えられ、「チタン」は戦闘体制へ移行。
その間陸にいた工作員たちは、手を負傷した工作員の包帯から滲み出た血が草に付着したことで、敵が放った猟犬に見つかり、予期せぬ危機に陥ってしまいます。
さらにソックスの誤った分析により、ロシア海軍に「チタン」の居場所がバレてしまい、ロシア海軍対潜ヘリコプターから攻撃されてしまうのです。
グランシャンはドルシに指揮を任せ、浮上させた「チタン」の艦上から携行地対空ミサイルを、対潜ヘリコプター目掛けて発射。
その結果、対潜ヘリコプターは撃墜されました。グランシャンたちは工作員たちを回収し、任務を成功させてブレスト港へ帰還します。
しかし後日、ソックスはCIRA(音響分析センター)の司令官に呼び出され、ソナーの分析ミスについて叱られた挙句、「オオカミの歌」の調査することを許してもらえませんでした。
一方グランシャンとドルシは、ジャック・ポルト提督に呼び出され、ソナーの分析ミスによって招いた予期せぬ危機について糾弾されました。
フランスは、ロシアから圧力を受けるフィンランドを支援するため、大統領の命令によって陸軍の派遣を決定。
これにより、フランスとロシア間の関係は悪化し、ロシアからはフランスの大使に核ミサイルをチラつかされ、脅されてしまい、危うく軍事関係が経たれてしまうかもしれない事態に…。
そう話すジャック提督は、国際紛争の抑止力として出港させる、新型戦略ミサイル原潜「レフローヤブル」への転属をグランシャンに命じました。
グランシャンの後任として、ドルシが「チタン」の艦長に着任します。
その頃、ソックスはグランシャンと約束した、「オオカミの歌」の正体を探るべく、CIRA司令官の部屋へ侵入。
ソックスは、記憶したCIRA司令官との会話をヒントに、パソコンのパスワードを解き、勝手に機密情報を閲覧します。
そこで得た「ドローンF15」について調べるべく、ソックスは図書館にある専門書を探しに行きますが、そこで出会った女性ディアナと恋に落ちました。
ソックスはディアナと一夜を共にした後、彼女から「専門書はデータにはあったけど、在庫はない」と聞き、廃棄された専門書の情報は、まだCIRAに保存されているのではないかと思いつきます。
ソックスはCIRAへ行き、資料庫で自分で聞いた「オオカミの歌」の音声パターンをもとに、該当する資料を探しました。
その結果、ソックスは「オオカミの歌」の正体がドローンではなく、ロシア製潜水艦「ティムールIII型」だったと突き止めます。
しかしその直後、CIRA司令官に見つかったソックスは、勝手に上官のパソコンから機密情報を閲覧したなどの規則違反により、拘束されかけました。
一度資料庫に閉じ込められたソックスは、扉越しにCIRA司令官にこう叫びます。
「オオカミの歌の正体はドローンF15ではなく、フィンランドにも現れたティムールIII型だ。シャフトが摩耗していたから、音が非対称だった。何年前も廃棄されたと思われたティムールIII型は、実はロシア軍が隠しており、フランスから情報が抹消されるのを待ってから、再び海に戻った。だからデータがないため、ティムールIII型だと判別することができなかったのだ」と。
CIRA司令官はソックスの分析結果をもとに、イギリス軍へ確認を取ってみたところ、「チタン」が感知したものと同じ、「ティムールIII型」から発せられたソナーだという事が判明。
さらに、グランシャンがソックスを「レフローヤブル」の乗組員へと推薦したこともあり、CIRA司令官は渋々、彼を拘束せず見逃すことにしました。
CIRA司令官とジャック提督の監視のもと、「レフローヤブル」に乗るためのソナー分析テストを受けたソックスは、見事合格し、明日「レフローヤブル」の乗組員として任務に赴くことが決まりました。
そんなソックスを激励したドルシは、「チタン」の乗組員と合流。乗艦前、近くに停泊する「レフローヤブル」に乗るグランシャンと敬礼を交わします。
ソックスはグランシャンと合流し、「レフローヤブル」に乗り込もうとしましたが、彼から「メディカルチェックの結果、君の尿から大麻が検出された。乗艦は許可できない」と言われてしまいました。
「レフローヤブル」の乗組員から降ろされてしまったソックス。彼は自暴自棄になりつつ、「レフローヤブル」「チタン」を見送った直後、慌ただしく人々が動く中、司令部が封鎖されていくのを目撃しました。
封鎖される直前に司令部に潜り込んだソックスは、そこでロシアの戦略ミサイル原潜が、フランスに弾道ミサイルを発射したことを知るのです。
司令部が総出で調べた結果、そのロシアの戦略ミサイル原潜が、シリアでの任務中に遭遇した「ティムールIII型」であると判明しました。
ジャック提督は、司令部に居合わせたソックスにソナーの分析を頼み、「ティムールIII型」であるという確証を得ます。
その後、潜航する「レフローヤブル」にいるグランシャンと副艦長に向けて、司令部から暗号化されたメッセージが届きました。
その内容は、「フランスがロシアから攻撃を受けようとしている。任務を変更し、ロシアへ核ミサイルを発射し、国を守るために反撃せよ」という大統領からの命令でした。
映画『ウルフズ・コール』の感想と評価
“黄金の耳”によるソナーの分析力
物語の前半では、正体不明の「オオカミの歌」に惑わされ、ソナーの分析ミスをしてしまうソックス。
そんな彼が、たった二度聞いただけの「オオカミの歌」を帰港してもなお記憶し、執念で調査してロシア製潜水艦「ティムールIII型」のソナー音だと突き止めたことが凄いです。
それだけでも充分凄いことをやっているのに、ソックスは物語の中盤から、よりその能力を遺憾なく発揮していきます。
それは、潜航中の「レフローヤブル」の位置を二度も特定し、駆動音やソナー音だけでグランシャンたちがどんな行動に出るのか分析したのです。
核ミサイルの発射を阻止し、中東のアルジャジーラにいるテロ組織が企んだ核戦争が起こらないようにしたソックスの「黄金の耳」による功績は、思わず拍手喝采を送りたくなります。
「レフローヤブル」vs「チタン」の戦い
物語の前半は、共に命がけでロシア海軍の対潜ヘリコプターと戦い、生還したグランシャンたちの強い絆を感じてきた視聴者にとっては、とても心苦しい場面が描かれています。
何が何でも海軍の掟に従って核ミサイルを発射しようとするグランシャンと、それを阻止するためには攻撃することもやむを得ないと思うジャック提督の、最後の最後まで仲間を想う熱い気持ち。
画面越しに伝わってくる魚雷攻撃による衝撃の大きさ、魚雷やデコイによる攻撃の攻防戦。
それらがもたらすドキドキハラハラするスリルと、味方の潜水艦同士がぶつかり合う壮絶なバトルが見られる興奮が味わえるアクション場面は、最高に熱いです。
まとめ
特別分析官が並外れた聴力「黄金の耳」を活かし、敵の罠に嵌ってしまった味方の潜水艦を阻止しようとする潜水艦サスペンス・アクション作品でした。
オマール・シーやフランソワ・シビルら実力派キャストが演じたからこそ、味方同士が相手の動向を探りながら戦う緊迫感あるスリルと、魚雷やデコイの攻撃による迫力と興奮がたっぷり堪能できます。
戦いの鍵を握るのは、「オオカミの歌」のようなソナー音の正体が、ロシア製潜水艦「ティムールIII型」のソナー音だと突き止めたソックスという衝撃的な展開に、誰もが驚かされ感嘆することでしょう。
中東のアルジャジーラにいるテロ組織がフランス海軍と戦う場面は、物語の前半のみで少し物足りなく感じますが、国家間の関係を揺るがすサスペンス映画として観れば面白いです。
フランス海軍の仲間同士の熱く強い絆を感じつつ、味方同士で戦う羽目になった潜水艦同士の壮絶なバトルが繰り広げられる、潜水艦サスペンス・アクション映画が観たい人に、とてもオススメな映画です。