Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2020/12/25
Update

【SF・ホラー】2020年映画ランキングベスト5|洋画・邦画人気作から感動と想像の力を描く作品まで《シネマダイバー:糸魚川悟選》

  • Writer :
  • 糸魚川悟

2020年の映画おすすめランキングベスト5
選者:シネマダイバー糸魚川悟

2020年は新型コロナウイルスの影響により、映画業界にとっても厳しい1年となりました。

『ムーラン』や『ソウルフル・ワールド』のように映画館で公開されなかった映画や、『ブラック・ウィドウ』や『ナイル殺人事件』のように公開が大幅に延期になった作品もあり、特に映画館は大きな打撃を受けました。

しかし、そうした中でも「映画」は止まることなく進み続けました。今回はそんな2020年の公開映画の中から、特に心動かされた作品を5作選出させていただきました。

【連載コラム】『2020年映画ランキングベスト5』一覧はこちら

第5位『映像研には手を出すな!』

【おすすめポイント】
同名漫画を原作とした実写ドラマの続編となる『映像研には手を出すな!』は、アニメ製作や鑑賞の「楽しさ」を全編から感じることの出来る映画でした。

物語製作における設定の重要さや、リアリティと浪漫はどちらを重要視すべきなのかと言う「SF」作品の命題を中心とした論戦や語りは、「SF」が好きな人ほど頷きながらみてしまうような面白さがありました。

第4位『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』

【おすすめポイント】
「ジェットコースタームービー」と呼ばれる映画は多々あれど、なかなか存在しない「お化け屋敷」のような映画。

殺人鬼たちの経営するお化け屋敷に迷い込んだ若者たちの恐怖と脱出劇を描いた『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』は、まさにお化け屋敷を映像化したような作品でした。

人を殺すために作られた悪意満載の「お化け屋敷」による先の読めない「恐怖」と、相手が人間だからこそ立ち向かうことの出来る「熱さ」。「お化け屋敷」に入場後は息もつかせぬ恐怖と不安が包み込む、正統派スラッシャー映画の2020年の傑作と呼べる映画でした。

第3位『TENET』

【おすすめポイント】
「時間逆行」をテーマにコロナ禍真っ只中の映画館で久々に公開された大作SF映画『TENET』。

クリストファー・ノーラン監督作品らしい、全く新しい映像体験を味わうことの出来る本作は、時間の進行方向が逐一変化するため物語が難解ではありましたが、それゆえに自分なりの解釈や結論を見つける喜びも存在していました。

常に映画業界に革命を起こし続けるノーラン監督の革新的な演出に度肝を抜かれる作品です。

第2位『ミッドサマー』

【おすすめポイント】
生まれ育った環境の違いを乗り越えるためには「価値観の違いを許容すること」が大事だと言われています。しかし、いくら「価値観の違い」と言う言葉でまとめても他者からすると狂気にしか見えない物事も多くあります。

アリ・アスター監督の『ミッドサマー』は明るい映像で、価値観の違いによる狂気を嫌になるほど映し出していました。

暖かな色彩とは真逆の不穏で不快な物語を描く斬新な本作は、滅多に感じることの出来ない感情を内に生み出す狂気の作品です。

第1位『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え』

【おすすめポイント】
無名だった俳優キアヌ・リーヴスが名を知られるきっかけとなったコメディドラマ「ビルとテッド」シリーズ。劇場版としておよそ29年ぶりとなる第3作目『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え』は、世界各国で配信での公開となる中で日本では劇場公開されました。

緩い雰囲気の掛け合いは健在ながら、「音楽が世界を救う」を馬鹿正直に描いた本作は絵空事と分かっているのに抗えない感動を与えられます。

世界が協力し1つとならなければいけない現状だからこそ心に響く力強さを持った作品でした。

2020年注目の監督とキャスト


(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

監督賞:外崎春雄
男優賞:ロバート・パティンソン
女優賞:ブリジット・ランディ=ペイン

【コメント】
2020年、人々が映画館に足を運ぶ機会を作ってくれた『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』に感謝を捧げないわけにはいきません。「原作漫画の最人気エピソード」「大人気アニメの続編劇場版」と言う高すぎるハードルを見事にクリアした外崎春雄の手腕は見事の一言につきます。

主演映画こそなかったものの、『TENET』での主人公の良き相棒役としての爽やかさ、『悪魔はいつもそこに』での下衆な牧師役を見事に演じ、俳優としての魅力をさらに引き上げたロバート・パティンソンに男優賞を。2022年公開予定の主演映画『ザ・バットマン』にも期待大です。

女優賞には『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え』でキアヌ・リーヴス演じるテッドの娘を演じたブリジット・ランディ=ペインを選出。ドラマ「ユニークライフ」での演技で注目を集める彼女は、29年前にテッドを演じたキアヌ・リーヴスの演技の癖を自身の演技に組み込み、まるで29年前のテッドを見ているかのような感覚を受ける衝撃の演技を見せてくれました。

まとめ


(C)2020 Bill & Ted FTM, LLC.All rights reserved.

2020年は、様々な業界にとって我慢の年となりました。それは映画業界も例外ではなく、撮影の中断や劇場公開の延期、そして配信への転向など重大な決断が必要となり、その決断の度にさまざまな賛否の声が業界内を駆け抜けました。

しかし、他者との交流が減ったからこそエンタメのありがたみをより深く感じる年であったことも事実です。

そうした「ありがたみ」を通じて、エンタメの在り方、映画の在り方を改めて考えることができた2020年を経て、果たして2021年は映画業界にとってどのような年となるのか。止まることのない映画の変化と発展が訪れることを願うばかりです。

【連載コラム】『2020年映画ランキングベスト5』一覧はこちら





関連記事

連載コラム

Netflix映画『時の面影』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。キャリー・マリガンとレイフ・ファインズ共演で発掘調査を通してルーツを問うヒューマンドラマ|Netflix映画おすすめ15

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第15回 第二次世界大戦の開戦が迫るイギリスのサフォーク州の田舎町サットン・フーで発見された遺跡の発掘調査を描いた、ジョン・プレストンの小説 …

連載コラム

『ハイエナたちの報酬 絶望の一夜』あらすじネタバレと感想。ゲラ・バブルアニ監督がフランス社会を風刺する理由|未体験ゾーンの映画たち2019見破録15

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第15回 1月初旬よりヒューマントラストシネマ渋谷で始まった“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」にて、ジャンル・国籍を問わない貴重な5 …

連載コラム

映画『聲の形』ネタバレ感想と評価考察。京都アニメーション×山田尚子がいじめをテーマにした漫画を映像化|映画という星空を知るひとよ9

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第9回 映画『聲の形』は、耳が不自由な少女とその少女をいじめたことが原因で、コミュニケーションが苦手になった少年の切なく美しい青春ストーリーです。 原作は「マン …

連載コラム

映画『人数の町』感想と考察評価。中村倫也の演技力で魅せる“謎の町で生き抜く”多様な表情に注目|スター深堀研究所1

連載コラム『スター深堀研究所』第1回 読者の皆さま、はじめまして。連載コラム『スター深堀研究所』を担当させていただくことになりました、咲田真菜です。 このコラムでは特定のキャストにスポットをあてて、作 …

連載コラム

映画『れいこいるか』感想評価と考察解説。タイトルが意味深い⁉︎阪神淡路大震災で一人娘を亡くした夫婦の物語|銀幕の月光遊戯 66

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第66回 映画『れいこいるか』は、2020年8月8日(土)より、新宿 K’sシネマ、シネ・ヌーヴォ(大阪)、元町映画館(神戸)ほかにて全国順次公開されます。 映 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学