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Entry 2020/10/14
Update

『鬼滅の刃 那田蜘蛛山編』ネタバレと感想レビュー。強敵・累を前に試される炭治郎の“家族の絆”

  • Writer :
  • 薬師寺源次郎

炭治郎が強敵と対峙する『鬼滅の刃 那田蜘蛛山編』。

映画『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の2020年10月16日公開を記念して、『那田蜘蛛山編』がテレビ放送されます。

2019年に放映された『鬼滅の刃』15~21話を編集した『那田蜘蛛山編』。

本作では、鬼になってしまった妹を人間に戻すため、鬼を狩る鬼殺隊に入隊した主人公・炭治郎が強敵「十二鬼月」の累と対峙します。

新たな任務を受け、那田蜘蛛山に向かう炭治郎たち。そこで未だかつてない強敵「十二鬼月」の下弦の伍・累とその“家族”に遭遇、苦戦を強いられます。この窮地に、ついに鬼殺隊が誇る最強の剣士達「柱」が動き始めました。

風雲急を告げる『鬼滅の刃 那田蜘蛛山編』をご紹介します。

『鬼滅の刃 那田蜘蛛山編』作品情報


(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

【公開】
2019年

【監督】
外崎春雄

【キャスト】
花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞、櫻井孝宏、早見沙織、宮田幸季、上田麗奈、石見舞菜香、千葉繁、森川智之、山崎たくみ、三木眞一郎、桑島法子、関俊彦、内山昴輝、小清水亜美、白石涼子、森久保祥太郎、稲田徹

【作品概要】
2019年に放送されたTVアニメ『鬼滅の刃』の15~21話を編集した『鬼滅の刃 那田蜘蛛山編』は監督に『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』などの外崎春雄、アニメーション制作は「Fate」シリーズや『空の境界』などで知られるufotableが担当しています。

本格的に炭治郎と共闘する人気キャラ、善逸や伊之助の活躍もさることながら、存在が明らかになる鬼殺隊の精鋭「柱」、竈門家に伝わるヒノカミ神楽の謎など、ストーリーが大きく進展を見せ始めます。

『鬼滅の刃 那田蜘蛛山編』のあらすじとネタバレ


(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

傷を癒した竈門炭治郎(声:花江夏樹)、嘴平伊之助(声:松岡禎丞)、我妻善逸(声:下野鉱)の下に鎹鴉(声:山崎たくみ)から新たな指令が伝えられます。

那田蜘蛛山に出没する鬼を討伐すると言う指令に従い、3人は那田蜘蛛山へ向かいます。

山に入った3人は傷つき倒れた鬼殺隊隊士と遭遇します。3人は近づこうとしますが、隊士は何かに引っ張られるようにして、山中に消えていきます。

怖がる善逸を残し、炭治郎と伊之助は山中に足を踏み入れます。そして2人は山を進む中で、村田(声:宮田幸季)と名乗るひどく怯えた様子の隊士と遭遇します。

村田は10人の隊士と共に山に入りましたが、突如1人の隊士がほかの隊士を切りつけたことでたちまち隊士同士での斬り合いとなり、自身はその場から命からがら逃げてきたとのことでした。

その頃、謎の人物(声:森川智之)も鎹鴉により、その報告を受けていました。

その人物は「柱」を那田蜘蛛山に派遣することを決め、冨岡義勇(声:櫻井孝宏)、胡蝶しのぶ(声:早見沙織)を向かわせます。

また1人残された善逸は、炭治郎が妹の禰豆子(声:鬼頭明里)の入った箱ごと山に入っていったことに気が付きます。一方的に禰豆子に惚れ込む善逸は炭治郎たちの後を追い、山へと入ります。

しかし時を同じくして、炭治郎たちは突如現れた隊士たちに襲われます。応戦する炭治郎は隊士たちから伸びる蜘蛛の糸に気が付き、それを断ち切ると、隊士は動きを止めます。

蜘蛛により糸を繋ぎ隊士たちを操る鬼の存在を感じ、倒そうとする炭治郎たちの前に少年のような容姿を持つ鬼の累(声:内山昴輝)が現れます。

累は「“母さん”がお前たちを倒す」と言い残し去っていきます。累ではない別の鬼が隊士を操っていると言う炭治郎の意図を察し、伊之助はその鬼の居場所を見つけます。

炭治郎と伊之助は隊士たちの相手を村田に任せ、鬼のいるほうへ向かいます。しかし、糸によって操られる隊士たちが新たに現れ、炭治郎たちの行く手を阻みます。

隊士たちを操る鬼(通称:母蜘蛛/声:小清水亜美)の前に累が現れます。母蜘蛛を“母さん”と呼ぶ累は早く炭治郎たちを倒すように言い、さもないと“父さん”に言いつけると言い残し去っていきました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアに『鬼滅の刃 那田蜘蛛山編』ネタバレ・結末の記載がございます。『鬼滅の刃 那田蜘蛛山編』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

母蜘蛛はひどく怯え、炭治郎たちを倒そうと躍起になっています。炭治郎は伊之助と共に、襲ってくる隊士たちの糸を絡め、木につるすことで無力化します。

しかし、今度は糸を繋がれ操られた鬼が2人の前に現れます。首がなく、弱点がない鬼ですが、炭治郎と伊之助の連携により撃破します。

鬼を倒し喜ぶ炭治郎ですが、伊之助は突如、天高く炭治郎を投げます。初めは混乱する炭治郎でしたが、伊之助は母蜘蛛の下へ、炭治郎を送ろうとしていたことに気が付きます。

炭治郎が迫る中、死を覚悟する母蜘蛛は、脳裏に累や“家族”の恐怖から解放される喜びを感じます。

その恐怖を感じ取った炭治郎は母蜘蛛を苦しませずに倒し、穏やかな死を迎えられた母蜘蛛は「十二鬼月」がいると言い残し、消えていきます。

その頃、炭治郎たちを追い、山に入った善逸は道に迷っていました。様々なこと(主に禰豆子がいないこと)にいら立つ善逸は人の顔をした蜘蛛を目撃。驚いて逃げ出すように山中を走ります。

そして行き着いた先で、蜘蛛の糸でつるされた人々を発見。その人々は体の至るところが歪に変化し、まるで蜘蛛のような姿に変わりつつありました。

その善逸の目前に、巨大な蜘蛛の姿をした鬼(通称:兄蜘蛛/声:森久保祥太郎)が出現。恐怖によりパニックを起こしそうになる善逸に蜘蛛に変化する毒が体に廻り始めていることを伝えます。

善逸は少し前、虫のようなものに体を刺されたことを思い出します。それは兄蜘蛛が操る蜘蛛によるものでした。

逃げまどい、木の上で恐怖に震える善逸は髪が抜け始めていることに気がつき、度を越した恐怖により失神します。意識を失った善逸は木から落下、兄蜘蛛はそのまま善逸が頭を強打し死ぬだろうと察しました。

しかし、身をひるがえし着地する善逸は兄蜘蛛に向かっていきます。慌てて攻撃を加える兄蜘蛛は善逸が同じ構えを崩さないことから、一つの技しか使えない事に気が付きます。

意識を失ったまま戦う善逸は夢を見ていました。善逸が“じっちゃん”(声:千葉繁)と呼ぶ育手は、「一つの技しか使えない」と嘆く善逸に「一つのことを極めろ」と語ります。

兄蜘蛛は自身の操る蜘蛛に善逸を襲わせます。無数の蜘蛛に群がられる善逸ですが、体から発した電流により蜘蛛たちは弾き飛ばされます。

そして善逸は「雷の呼吸 壱の型 霹靂一閃・六連」を繰り出し、瞬く間に兄蜘蛛の首を切り落としました。驚きを隠せないまま消えていく兄蜘蛛でしたが、善逸も体中に毒が回り、死を待つばかりでした。

死を受け入れようとする善逸ですが、じっちゃんの「諦めるな」と言う言葉を思い出し、呼吸を使って血の巡りを遅くし、少しでも生き延びようとします。

山中に潜む鬼を探す炭治郎と伊之助は、少女の鬼(通称:姉蜘蛛/声:白石涼子)と遭遇します。姉蜘蛛を追う伊之助でしたが、そこに巨体を持つ鬼(通称:父蜘蛛/声:稲田徹)が現れます。

その隙に姉蜘蛛は逃亡。炭治郎と伊之助は父蜘蛛と対峙しますが、父蜘蛛の体は固く、有効な攻撃が与えられません。

炭治郎は木を切り倒し、父蜘蛛の動きを封じた上で首を狙おうとしますが、父蜘蛛に吹き飛ばされしまいます。その頃、毒が廻り意識が薄れゆく善逸の前にしのぶが現れます。

吹き飛ばされた炭治郎はなんとか着地しますが、少女の悲鳴が聞こえます。悲鳴がした方向へ向かう炭治郎。そして、姉蜘蛛を痛めつける累を目撃します。

累に姉蜘蛛は仲間ではないのかと問う炭治郎に、累は「“絆”で結ばれた”家族”だ」と答えます。しかし炭治郎は、姉蜘蛛からは恐怖と憎しみしか感じ取れず、信頼もない関係は“絆”ではないと断言します。

そこに、村田たちと山に入った隊士の生き残りが現れ、外見のみは子供に見える累を簡単に倒せると思い襲い掛かります。

次の瞬間、累が放った糸により、その隊士は切り刻まれ絶命します。累は自身の“絆”を侮辱した炭治郎を倒そうとします。

累と戦う炭治郎は累が放つ糸を刀で受けます。しかし、炭治郎の刀は折れてしまいます。

一方、伊之助は父蜘蛛から逃げながら、状況を打開する方法を考えていました。しかしすぐに考えを止め、父蜘蛛に挑みかかります。

がむしゃらに刀を打ち付け、ついに腕を斬ることに成功した伊之助ですが、父蜘蛛はなんと脱皮。さらに体は大きく、皮膚は固くなってしまいます。

刀を折られ、成す術もなく頭を握りつぶされそうになる伊之助の前に冨岡が現れます。冨岡は瞬く間に父蜘蛛を倒します。

父蜘蛛を倒し立ち去ろうとする冨岡に伊之助は勝負を挑みます。しかし冨岡は伊之助にかまうことなく、重傷の伊之助を縛り上げて山中へ消えていきました。

また善逸はしのぶの手によって解毒剤を注射され、何とか一命をとりとめました。兄蜘蛛によって蜘蛛にされそうになっていた人々も、しのぶ率いる「隠(かくし)」と呼ばれる事後処理班により救助されます。

その頃、炭治郎は柄とわずかな刃のみなった刀で何とか累と戦おうとしました。しかし、累の操る糸で近づくことさえできない炭治郎に累は網状にした糸を放ちます。

糸を避けられないと悟り、死を覚悟する炭治郎ですが、禰豆子が割って入り、助かります。

重傷を負った禰豆子を抱え、木陰に逃げる炭治郎に累は2人は“兄妹”かと尋ねます。

累は鬼となりながらも炭治郎を身を挺し守った禰豆子、禰豆子を案じる炭治郎に本物の“家族の絆”を感じ、禰豆子を欲します。

その様子を目の当たりにした姉蜘蛛は自分こそが“家族”だと訴えますが、累は糸を放って姉蜘蛛を切断。“家族”でありたいなら、山中の鬼殺隊を殺してくるよう命じます。

姉蜘蛛が去った後、累は炭治郎に禰豆子を渡すように言います。

恐怖で“絆”を繋ぐという累に激怒する炭治郎は禰豆子を渡さないと宣言。それならば炭治郎を殺し、禰豆子を奪うという累は笑いを浮かべ、炭治郎に語り掛けます。

「勝てるかな?『十二鬼月』である僕に」。累が髪をまくって見せたその瞳には、「下伍」と記されていました。累こそが、「十二鬼月」下弦の伍の位を預かる鬼だったのです。

驚く炭治郎の隙を突き、累は禰豆子を奪うと糸で宙づりにします。

襲い掛かる累に一方的に痛めつけられる炭治郎の様子を見いていた禰豆子は、糸から脱出しようと暴れます。累はその様子を快く思わず、拘束する糸を強く締め、これにより大量出血した禰豆子は気を失います。

禰豆子が傷つく様を見て炭治郎は怒りに飲まれそうになりながらも、呼吸を整え、大技「水の呼吸 拾の型 清々流転」を繰り出します。

放った糸を断ち切りながら近づく炭治郎に累は血鬼術を発動。さらに強度が増した糸で炭治郎を包囲します。

糸が切れないことで死を覚悟する炭治郎は、幼い日に亡き父、炭十郎(声:三木眞一郎)が舞うヒノカミ神楽と彼が語っていた長く神楽を舞うための「呼吸」を思い出します。

とっさに炭治郎は「ヒノカミ神楽 円舞」を舞います。すると、刀からほとばしる炎によって糸を断ち切り、累との距離を縮めます。

累から延びる“隙の糸”を見つけた炭治郎は相討ち覚悟で累に肉迫します。

その時、禰豆子は夢の中で亡き母、葵枝(声:桑島法子)と再会し、炭治郎の命の危機を知らされます。

目を覚ました禰豆子は血鬼術「爆血」を発動。禰豆子の血は燃え上がり、その炎は糸を伝って炭治郎を狙っていた糸を燃やします。

炭治郎の刀は累の首を捕え、斬ることに成功します。しかし、炭治郎は累の匂いが消えていないことに気が付きます。

累は炭治郎に首を斬られる寸前に自ら首を斬り、倒されることを免れていました。呼吸を乱発したため満足に動けない炭治郎の命を奪おうと累が迫ります。

そこに現れ、炭治郎を助けたのは冨岡でした。冨岡は「水の呼吸 拾壱の型 凪」を放ち、累を倒します。

同じ「水の呼吸」を使う炭治郎でも知らない「拾壱の型」、何よりも自分が倒せなかった累を瞬く間に倒してしまった冨岡に驚きます。

その頃、累に言われた通り、鬼殺隊隊士を殺すべく山を走る姉蜘蛛は村田と遭遇します。姉蜘蛛が放つ糸束に包まれた村田は糸から出る溶解液で体を溶かされそうになります。

そこにしのぶが現れました。いつの間にか現れたしのぶに問答無用で攻撃を加える姉蜘蛛ですが、しのぶにはことごとく避けられます。

しのぶに勝てないと悟った姉蜘蛛は、累に無理やり従わされていたと弁明し、自身を見逃してもらおうと目論みます。

姉蜘蛛の話を信じ、助けると約束するしのぶですが、一つ聞きたいことがあると言います。

「あなたは何人殺しましたか?」

その問いに対して「命令されて5人」と嘘をつく姉蜘蛛ですが、しのぶは「80人は人を食べているのでは」とさらに問いかけます。

あくまで人数の確認と言うしのぶは、これまでに殺した人の数に応じて姉蜘蛛を拷問し、それが済んだ暁には、姉蜘蛛を解放すると約束します。

そんな取引を聞き入れられない姉蜘蛛は怒りに任せしのぶに糸束を放ちます。しかし、糸を断ち切ったしのぶは「蟲の呼吸 蝶の舞 戯(たわむれ)」を放ち目にも止まらぬ速さで姉蜘蛛を切りつけます。

死を意識した姉蜘蛛ですが、首を斬られていないことに気づき訝しみます。ところが次の瞬間、姉蜘蛛は苦しみ絶命します。「蟲柱」であるしのぶは唯一鬼の首を斬れない「柱」ですが、毒を用いることで鬼を討伐してきた剣士でした。

村田を助けたしのぶは、冨岡が累を倒した事を察します。累は薄れゆく意識の中で、人間の頃の記憶を思い出します。

病弱な少年だった累は鬼舞辻無惨(声:関俊彦)によ、血を与えられ、鬼として生き永らえる事ができるようになりました。

その代償として人を食べるようになった彼を両親は殺そうとしましたが、累は2人とも返り討ちにし殺害。

しかし両親は、自らが生きるために人を殺してしまった累の罪を共に背負い、累を殺した後で自分たちも自害するつもりでした。

こうして“絆”を自ら壊してしまった累は、自らの血を与えた鬼たちを相手に家族の真似ごとをすることで、“絆”を育もうとしていたのです。

消えゆくから累から悲しみの匂いを感じ取った炭治郎は累の手に触れます。

炭治郎の優しさに触れた累は本当は両親に謝りたかった事を思い出し、意識が消える直前に両親と再会。謝罪する累は両親に抱きしめられ、消えていきます。

安らかに逝った累に安堵する炭治郎に冨岡は「鬼に情けをかけるな」と忠告します。

しかし、炭治郎は“鬼”である事に苦しみ、自らの行いを悔い逝った哀れな鬼はもともとは自分たちと同じ人であったと語り、その尊厳は守るべきだと主張します。

禰豆子に覆いかぶさり守る炭治郎の姿に、冨岡はかつて自分が遭遇した鬼を連れた少年が目の前にいる炭治郎であることに気が付きます。

その時、冨岡は急速で近づくしのぶに気付きます。禰豆子に向け、剣を振るうしのぶに対し冨岡はとっさに刀を抜きます。

なぜ鬼を守るのかと問うしのぶに、炭治郎は「禰豆子は自分の妹だ」と言いますが、しのぶは聞く耳を持ちません。

冨岡は炭治郎に禰豆子を連れて逃げるよう指示、炭治郎は駆け出します。逃げる炭治郎を追うしのぶに対し、冨岡もまた彼女を追います。

禰豆子を抱え逃げる炭治郎を一人の少女、栗花落カナヲ(声:上田麗奈)が追います。鬼殺隊隊士であるカナヲはしのぶの指示を受け、禰豆子を追っていました。

カナヲの攻撃で禰豆子を取り落としてしまった炭治郎は、禰豆子に何としても逃げるように言うとカナヲによって気絶させられてしまいます。

禰豆子を追うカナヲは何度も禰豆子を切りつけますが、鬼のはずなのに逃げるだけで反撃しない禰豆子を訝しみます。

しのぶと刃を交える冨岡、禰豆子を追うカナヲのもとに鎹鴉が現れます。

鎹鴉は炭治郎と禰豆子を拘束して本部へ連れ帰るよう伝達。冨岡としのぶは刀を収めて本部へ、カナヲもまた禰豆子を連れ同じく本部へと向かいます。

一方、気絶した炭治郎と伊之助は隠により回収されます。夜が明け、隠の構成員が呼ぶ声に起こされた炭治郎の目の前に無数の人影がありました。

その人影は「柱」と呼ばれる鬼殺隊の中でも指折りの精鋭たちでした。

『鬼滅の刃 那田蜘蛛山編』の感想と評価

(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

2019年に放映されたTVアニメ『鬼滅の刃』の15~21話を編集した『那田蜘蛛山編』。本作では主人公・炭治郎は未だかつてない苦戦を強いられます。

それと同時に、「柱」と呼ばれる鬼殺隊の精鋭たち、とりわけ鬼殺隊を目指すきっかけとなった冨岡との再会もあり、炭治郎にさらなる成長を促すターニングポイントとなる物語です。

本作では、以降、炭治郎と共に困難に立ち向かう仲間、我妻善逸と嘴平伊之助との本格的な共闘と2人の隠された物語も明らかになります。

とりわけ、善逸と“じっちゃん”のエピソードは印象深いものでした。

後ろ向きな言動が目立ち、戦いよりも視聴者の笑いを取ることが主な仕事な善逸ではありますが、兄蜘蛛との戦いで一つの技しか使えないことが明らかになります。

言ってしまえば不完全な剣士である善逸ですが、じっちゃんが語った「一つのことしかできないならそれを極めれば良い」という言葉は善逸だけでなく多くの視聴者をも勇気づけました。

その言葉通り「霹靂一閃」を極め「六連」にまで昇華させた善逸が兄蜘蛛を瞬く間に倒す場面は鳥肌が立つ思いでした。

奇しくも、「型」と名の付く技が多く登場する『鬼滅の刃』で「型」にはまらない善逸の存在は彼を人気キャラたらしめているのではないでしょうか。

また、炭治郎と累が対決する場面、とりわけ、炭治郎がヒノカミ神楽を舞い、累に迫るシーンはファンの間で話題を呼び、この場面を収めた19話は“神回”と名高き話数になっています。

この場面が神回と呼ばれる所以の一つは圧倒的作画にあります。

およそ、TVアニメの範疇を超え、劇場アニメもかくやと言う臨場感あふれるこの場面は、立体感あふれるバトルシーンで定評のあるufotableの面目躍如と言うべき場面です。

刀を振るい、累に駆け寄る、あるいは累を追う炭治郎の周りを目まぐるしく視点を変えながらも、遠近感を描き、躍動感を感じさせる演出もさることながら、エフェクトの描き方が秀逸でした。

炭治郎の刀が纏う水流から飛ぶ飛沫や水流から炎に変わる様子や、炭治郎と禰豆子が放つ炎や断ち切った糸の燃えるものと燃えないものの描き分けは、熱いバトルシーンにもかかわらずどこか幻想的にも感じられました。

神回たる所以のもう一つが、目まぐるしいストーリー展開とその中で強まる“家族の絆”にあります。

この場面はピンチとチャンスが次々と入れ変わり、見るものを飽きさせないエキサイティングな展開でした。

そして、炭治郎と禰豆子は“家族の絆”によりピンチを脱します。

累により強化された糸を父の言葉、父の舞により断ち切る炭治郎。母の言葉で目を覚まし、血鬼術を発動させる禰豆子。家族の力を借り、新たな力に目覚め、互いを助け合う2人の姿に胸が熱くなりました。

独りよがりな“家族の絆”を強いる累に対し、炭治郎と禰豆子が見せた真の“家族の絆”は『鬼滅の刃 那田蜘蛛山編』のクライマックスであり、この作品の魅力を強く印象付ける名場面になりました。

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まとめ

初めて「十二鬼月」と相対した炭治郎ですが、惨敗を喫してしまいます。

禰豆子を人間に戻すためのきっかけを掴みかけた炭次郎ですが、まだまだ目的を果たすまでは遠いことを実感します。

しかし、「柱」である冨岡としのぶとの邂逅により次のステップへ踏み出す事になる炭治郎。

そして、炭治郎にとって、大きな影響を与える存在、煉獄杏寿郎との出会いを果たすこととなります。

炭治郎と煉獄との出会い、共闘を描く映画『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』は2020年10月16日公開です。



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