神の存在を信じない男が、悪魔に闘いを挑むアクション映画
幼少期の辛い経験から、神の存在を信じなくなった男が、神父と悪魔の争いに巻き込まれる、映画『ディヴァイン・フューリー/使者』。
キム・ジュファン監督が手掛け、韓国ドラマ『梨泰院クラス』で、日本でも人気急上昇中のパク・ソジュン主演で描かれる、新たな悪魔祓い映画とも言える、本作の魅力をご紹介します。
映画『ディヴァイン・フューリー/使者』の作品情報
【日本公開】
2020年公開(韓国映画)
【原題】
The Divine Fury
【監督・脚本】
キム・ジュファン
【キャスト】
パク・ソジュン、アン・ソンギ、ウ・ドファン、チェ・ウシク
【作品概要】
幼少期に、熱心なキリスト教徒だった父親を亡くした事から、神への憎しみを持つ男ヨンフが、バチカンから派遣された凄腕のエクソシスト、アン神父との出会いにより、悪魔との戦いに身を投じるアクション映画。
主演は、日本でも大人気となったドラマ『梨泰院クラス』(2020)や、映画『ミッドナイト・ランナー』(2017)などで人気急上昇中のパク・ソジュン。
アン神父を、本作が3年ぶりの映画作品への復帰となる、韓国を代表する国民的俳優のアン・ソンギが演じ、アン神父の助手チェ神父を、『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)、『パラサイト 半地下の家族』(2019)など、話題作に数多く出演しているチェ・ウシクが演じています。
映画『ディヴァイン・フューリー/使者』のあらすじとネタバレ
総合格闘技の世界で、負け無しの格闘家として活躍するヨンフ。
ヨンフには、警官で熱心なキリスト教信者だった父親がいましたが、ヨンフが幼い時、検問の取り締まり中に、暴走者に巻き込まれ、この世を去りました。
幼いヨンフは、父親の回復を心から祈りましたが、願いが届かず父親が亡くなった事に怒り、それ以降は神への憎しみを抱いています。
アメリカで開催された格闘大会。
ヨンフは対戦相手の背中に、十字架のタトゥーがある事に気付きます。
その瞬間、幼いヨンフの声で「あいつを潰せ、神へ復讐しろ」と囁き声が聞こえ、ヨンフは対戦相手の意識が飛んでも、容赦なく相手を殴り続けました。
アメリカから帰る、プライベートジェットの中で、ヨンフは不思議な夢を見ます。それは、幼い頃に亡くなった父親が現れる夢で、夢の中でヨンフは右手に怪我をします。
ヨンフが目覚めると、現実世界でも、ヨンフの右手に夢の中と同様の傷が残っていました。
帰宅したヨンフが自宅で眠っていると、不気味な黒い影がヨンフの部屋に現れ、ヨンフは苦しみ始めます。
ヨンフが目覚めると、不気味な黒い影は消えていきました。
その晩以降、ヨンフは毎晩うなされるようになり、病院にも通いますが原因は不明のままでした。
ヨンフは、知人に紹介された霊能者に会い「家の近くの、十字架のある場所で救われる」とアドバイスを受け、家の近くの教会へ向かいます。
ですが、そこには凶暴なカラスがおり、カラスはヨンフを威嚇してきます。
ヨンフが空を見上げると、教会の上空にはカラスの不気味な群れが渦を巻いていました。
映画『ディヴァイン・フューリー/使者』感想と評価
神を信じる人間と悪魔の戦いを描いた、新感覚のアクション映画『ディヴァイン・フューリー/使者』。
本作は悪魔祓いをテーマにした作品ですが、主人公のヨンフは、神を全く信じていないどころか、神に憎しみを抱いているという点が、これまでの悪魔祓い映画とは違う点です。
神を信じていない主人公が悪魔と戦う映画は『ドクター・エクソシスト』(2017)のように過去にありますが、たいてい主人公は、自身の大事な人を悪魔に殺されたなど、悪魔に恨みを持つ人物という設定が多いです。
『ディヴァイン・フューリー/使者』の主人公ヨンフも、最愛の父親を悪魔に殺された事を知り、戦いに身を投じますが、それが分かるのは作品中盤の事で、最初のキッカケは、アン神父との出会いになります。
このアン神父が、時には父親のように、時には友人のようにヨンフに接する、非常に魅力のあるキャラクターで、神を憎んですらいたヨンフが、アン神父を守る為に、悪魔と戦う事になるという展開は、非常に説得力があります。
また、これまでの悪魔祓い映画だと、十字架を悪魔に向けて、祈りを捧げ続けるという場面が多かったですが、本作は、その悪魔との戦いを、カッコいいアクションで表現しており、この映像表現が、本作の最大の特徴とも言えます。
ヨンフには聖痕と言う、キリストと同じ傷が右手に現れ、その聖痕の力で悪魔を殴り倒し燃やすという、これまで無かった戦い方を見せます。
因みにですが、聖痕は実際に、キリスト教の信者に浮かんだ前例があり、その理由は科学的に解明されていません。
この聖痕を扱った映画として『スティグマータ/聖痕』(1999年)という映画もあるので、気になった方はチェックしてみて下さい。
『ディヴァイン・フューリー/使者』は、これまでの悪魔祓い映画とは、一線を画す作品ですが、悪魔に関しては王道とも呼べる描き方をしています。
悪魔を崇拝する、闇の司教ジシンは、相手の心を読み、心理的な弱点を利用します。
人の心の弱い部分を惑わしてくるのは、これまで数多くの悪魔祓い映画で見られた表現ですね。
また、悪魔に憑依された人が、よく分からない液体を吐き出して顔にかけてくるという、古典的な場面もあります。
このように、過去にやり尽くされたと思われた悪魔祓い映画の、古典はしっかりと抑えつつ、新たな表現に挑戦したと言える『ディヴァイン・フューリー/使者』。
悪魔との戦いの場面は、どれも迫力満点のアクションで見せており、見応え十分となっています。
これまで悪魔祓い映画は、ホラーが多かったので、苦手に感じていた方に、お勧めしたい作品です。
まとめ
悪魔との戦い方を、新たな表現で見せた本作ですが、もう1つの重要な点として、人間ドラマに重点を置いているという部分があります。
ヨンフが悪魔と戦うキッカケになるのが、アン神父である事は前述しました。
ヨンフは、アン神父に父親の姿を重ねるのですが、この場面を一切のセリフを使わず、アン神父の後姿だけで語るという、非常に上手い演出で見せています。
また、序盤で逃げ出しただけで終わると思われた、チェ神父の精神的な成長を描いており、ラストシーンでは「本作の本当の主人公は、チェ神父だったのでは?」と感じる程です。
ヨンフは亡き父親への強い想いを抱いていますが、対照的なのが闇の司祭であるジシンです。
ジシンは、人では無く悪魔を信じ成功を収めてきた男ですが、人に救われてきたヨンフとは逆に、悪魔に救済を求めた事で、最後は怪物になってしまいます。
この、ヨンフとジシンの対照的とも言える表現に、本作のメッセージが込められているのではないでしょうか?
本作では、悪魔やジシンの目的が曖昧な部分がありますが、その目的不明な部分も不気味さを際立てています。
『ディヴァイン・フューリー/使者』は、悪魔祓いをテーマにしながら、人間としてどう生きるべきか?という、人生の根本的な部分を問いかけて来る作品でもありました。