16歳の恋や友情をあなたは理解出来ますか
映画『ブレスレット鏡の中の私』は、親友殺害容疑をかけられた少女の裁判を通じて事件の真相や親の様子を浮き彫りにしたサスペンス・ドラマ。2020年7⽉31⽇より全国順次ロードショーされました。
親友を殺した疑いで裁判にかけられる少女、リーズ。その無実を信じて疑わない両親。信じていた娘の知らなかった一面が友人らの主張から浮き彫りにされていきます。
監督はキャストのアナイス・ドゥムースティエの実兄にあたるステファン・ドゥムースティエ、娘の姿に苦悩する両親役にロシュディ・ゼムとキアラ・マストロヤンニが務めます。
映画『ブレスレット 鏡の中の私』の作品情報
【日本公開】
2020年(フランス・ベルギー合作)
【原作】
La fille au bracelet
【監督】
ステファン・ドゥムースティエ
【キャスト】
ロディ・ゼム、メリッサ・ゲール、アナイス・ドゥムースティエ、キアラ・マストロヤンニシュ
【作品概要】
親友殺害容疑をかけられた少女の裁判を通じて事件の真相が曖昧になっていき、知らなかった娘の交友関係に戸惑う親の様子を浮き彫りにしたサスペンス法廷ドラマ。
監督はアナイス・ドゥムースティエの兄であるステファン・ドゥムースティエ。短編や長編を数本撮っていますが、今作が初の日本公開作となりました。娘の姿に苦悩する両親役に、『チャップリンからの贈り物』(2015)のロシュディ・ゼムと『今宵、212号室で』のキアラ・マストロヤンニが務めます。
映画『ブレスレット 鏡の中の私』のあらすじとネタバレ
海辺で遊ぶ家族に、警官が近づいて行きます。警官に話しかけられ、一人の水着の少女が服を着ながら警察に連れていかれました。一体何が起こったのか……。そして、2年の月日が流れました。
また、ある家族の様子が映ります。父親と娘、その弟の会話から、少女は拘留期間を経て、自宅で電子足輪をつけられ、裁判官の監視下の元にあること、これから裁判が始まることが分かりました。
そして始まった裁判。18歳の少女リーズは、親友フローラを殺した罪に問われていたのです。事件当時は16歳でした。
淡々と検事の質問に答え、自身の無実を主張するリーズ。その両親も娘の無罪を信じて疑っていません。
順調に見えた裁判ですが、徐々に友人らの証言から16歳のリーズと親友フローラを巡る交友関係、奔放な性事情が明らかになっていきます。
初めて知る、知らなかった娘の姿に両親は戸惑います。動揺せず淡々と答え続ける娘に対して、何事も話し合えていると思っていた娘が、本当に自分の娘だったのかと、驚きを隠せません。
映画『ブレスレット 鏡の中の私』の感想と評価
本作の主人公が終始裁判にかけられる場面と、裁判から帰宅し自宅で過ごす様子などでは、事件の全貌を知ることが出来ず、裁判で出される証言でしか事件を掴むことが出来ない設定になっています。
ストーリーの核となる部分は事件の真相ではなく、事件や裁判を通して垣間見える親と子の解離、16歳という多感な時期の危うさにあると思えます。
最初父親は、娘のことを信頼し、娘は親に何でも話していてくれると思っていました。
しかし、娘の知らなかった一面を知り、動揺を隠せずあまりにも淡々としている娘の姿を妻に話します。仕事を理由に裁判を休んでいた妻も動揺する夫をみて裁判に出向く決意をします。
母親は裁判で娘の青春が奪われたこと、娘を信じていることを訴えますが、そんな母親に対し、裁判官は裁判を休んだことに対し、育児放棄ではないのかと詰め寄ります。
知らなかった娘の姿に動揺する父親と、信じているとはいうものの肝心な所には目を向けないでいる母親。
そんな様子から、この映画は思春期の子供たちのことを理解していない、知らない両親に、世間の人々に、彼らを裁く権利が果たしてあるのかと問いかけているのです。
そして、最後の自らネックレスを足に巻く場面での仕草は、どのような意味を示しているのでしょうか。
ここでリーズが実は犯人であったと示唆しているとも考えられますし、犯人ではなくても親友の死に対し自分への戒め、弔いの意味などを込めて巻いたとも考えられなくはないです。
様々な解釈ができる作品ですが、そういう意味でこの映画の最終判決は観客に委ねられているのです。
まとめ
全編を通して見せる部分と見せない部分の演出が上手く、観客に判断を委ねている映画であると言えます。
裁判が主軸で進んでいくことにより、読めない展開、少しずつ掴めて来たはずの事件の全貌が曖昧になっていく様子、裁判を通して登場人物らの心に起きる微細な変化など見応えがありました。
それだけでなく、SNS社会における思春期の少年少女らの問題、両親と子供らの解離など、現代社会の問題を浮き彫りにしている点も非常に興味深く、様々な世代に問題意識を与える切り込み方は非常に上手です。
ステファン・ドゥムースティエ監督の日本初公開の映画ということもあり、キャスト的にも知名度は高くないかもしれません。
しかし、淡々と描く中に気づく様々な問題点は、見終わった後も心に刺さり、ふと考えるきっかけになる映画といえるでしょう。