宮崎駿監督が脚本も手がけたスタジオジブリの劇場用アニメーション『天空の城ラピュタ』。
宮崎駿監督のアニメ映画のなかでも宮崎アニメファンから人気の高い1986年に公開された『天空の城ラピュタ』。
バブル高長期の日本において『風の谷のナウシカ』の成功で、スタジオジブリを設立させて挑んだ作品です。
困難に立ち向かうおまじない“リーテ・ラトバリタ・ウルス アリアロス・バル・ネトリール”でおなじみの 『天空の城ラピュタ』をご紹介します。
1.映画『天空の城ラピュタ』の作品情報
【公開】
1986年(日本映画)
【原作・脚本・監督】
宮崎駿
【キャスト】
田中真弓、横沢啓子、初井言榮、寺田農、常田富士男、永井一郎、糸博、鷲尾真知子、神山卓三、安原義人、亀山助清、槐柳二、TARAKO
【作品概要】
1726年にジョナサン・スウィフトの発行した『ガリヴァー旅行記』に登場させた、ラピュタという天空の島をモチーフに宮崎駿監督、原作脚本によるスタジオジブリの劇場アニメ作品。
鉱山町の見習い機械工として働く少年パズーは、残業をしていたある日、空から舞い降りてきた不思議な少女シータと出会い、少女の胸元に下げていた「飛行石」を狙う者たちの陰謀に巻き込まれる。
2.映画『天空の城ラピュタ』のあらすじとネタバレ
飛行船に乗せられていた少女シータは、政府の特務機関のひとりムスカ大佐の捕らわれの身でした。
彼らの狙いはシータが亡き母親から受け継いだ不思議な“青い石”でした。
そこに飛行船を襲撃する海賊ドーラ一家。彼らの狙いも同じく“青い石”で、シータは逃げようとした際に誤って飛行船から落ちていまします。
鉱山町で見習い機械工として働くパズーは、空から降ってきたシータを見つけ助けます。
しかもその際にシータは、“青い石”の放つ不思議な青い光に守られて、気を失いながらゆっくりとパズーの腕の中へ落ちてきたのです。
パズーはシータが海賊ドーラ一家に追われていることを知り、シータを守ってともに家から逃げ出します。
蒸気機関に乗って海賊たちと自動車での追跡劇をかわしたものの、今度は軍隊の装甲列車からの攻撃を受けてしまい、危機一髪のパズーとシータは谷に落ちしまいます。
だが、2人は“青い石”の不思議な力によって再び空中に浮き救われます。
鉱山の洞窟に逃げ込んだパズーとシータは、石に詳しい老人のポム爺と出会います。
ポム爺によればシータの持つ“青い石”は、昔にラピュタ人によって作られた飛行石の結晶だと聞かされます。
その石と同じよう飛行石の力によって、ラピュタ人は空に伝説の島を浮かべたと言い、それはパズーの亡き父親の見たというラピュタであり、パズーはラピュタへ行くことを夢見ます。
そしてシータは隠していた秘密をパズーに話します。それはシータには「リュシータ・トエル・ウル・ラピュタという秘密の名前も受け継がれていたというのです。
ポム爺と別れパズーとシータは地上に戻りますが、特務機関のムスカ大佐や軍に捕まってしまい要塞へと連行されてしまいます。
そこでシータは特務機関を指揮するムスカ大佐から、ラピュタから落ちてきた壊れた古い謎のロボット兵を見せられます。
ラピュタは遠い昔に滅びたが、かつて高度な科学力を身につけて天空から世界を支配した強大な帝国だったのです。
しかもムスカ大佐が言うには、それは今も空のどこかに浮いているとシータは聞かされます。
飛行石はラピュタ王族がいつかラピュタに還るために受け継ぐためのものだったのです。
ムスカはその末裔こそがシータであると明かします。
ラピュタこそが平和にとって危険であると、ムスカ大佐はラピュタ探索への協力を求め、パズーの身を解放する代わりにシータは脅され止む無く受け入れます。
一方のムスカ大佐に解放されたパズーは、シータに必要とされなかったこと、そして父親の見たというラピュタの存在を見れなかったことに無力感を感じます。
家に戻ったパズーでしたが、そこで飛行石を狙っている海賊ドーラ一家に捕まります。
その際にドーラからシータはパズーの身の安全を第一にして健気に逃がしたことを諭されます。
それを聞いたパズーはドーラたちが飛行石を奪いに要塞に攻め込むことを聞き、自分も連れて行くように求める。
ドーラはその方がシータが言うことを聞くと考えパズーの同行を許可しました。
その夜、一方のシータは、遠い記憶にあった困った時のおまじないを思い出し口ずさみます。
「リーテ・ラトバリタ・ウルス アリアロス・バル・ネトリール(ラピュタ語:我を助けよ、光よよみがえれ)」
シータは何も知らなかったが、飛行石はこれまでにはない不可思議な青い発光させます。
彼女が口にした“おまじない”とは、ラピュタの封印を解く呪文だったのです。
すると、その呪文により壊れていたはずの謎のロボット兵は目覚めて凶暴に暴れ出し、飛行石は空に一筋の閃光を放ちラピュタの位置を示します。
そして狂ったよう破壊を続けるロボット兵によって次々に混乱する要塞から、なんとか海賊ドーラとパズーは協力してシータを救い出します。
ドーラの息子たち海賊も煙幕で巨大飛行船ゴリアテを煙に巻き、特殊機関からドーラ一家とパズーはシータ脱出に成功します。
しかし飛行石はムスカの手に渡り、彼は特殊機関の巨大飛行船ゴリアテに乗り、ラピュタを目指して出発します。
一方のパズーとシータは海賊として働かせてもらうことを条件に、ドーラの飛行船に同乗させてもらい、ラピュタへと向かいます…。
3.映画『天空の城ラピュタ』の感想と評価
この作品をきっかけに宮崎駿監督はスタジオジブリ設立、ジブリ制作として第1作品目となります。
小学生の当時の宮崎駿少年が空想した物語が映画の基となり作られたオリジナルアニメ作品でしたが、公開当時は興行成績的には振るわなかったようです。
それでもこの作品は『風の谷のナウシカ』の成功により、宮崎駿監督の好きなように作らせてもらえた幸せな作品です。
当時のアニメ界は、現代のようにアニメが市民権を得る段階への黎明期。
それまでにテレビアニメを見ていた子ども対象から。やや年齢層を高めにターゲットにしたアニメに舵を取っていた時代です。
それらに対抗する形で宮崎駿監督はいわゆるマンガ映画の復活を目指しました。
『天空の城ラピュタ』は、小学生を対象に古典的な冒険活劇として企画され、しかも大人の鑑賞に耐える作品というアプローチもされたものです。
ただ時代背景としては、第二次怪獣ブームの世代の子どもたちが思春期をむかえ、アニメによるオタク化の兆しが起きていました。
作り手も見手も長年蓄積してきたアニメの沸点にあったので、宮崎駿監督が『風の谷のナウシカ』でアニメ作家(アニメーター)として一矢報いてはいましたが、まだ人気が安定していたとは言い難い状態でした。
それでも今作『天空の城ラピュタ』では、テレビアニメ『ルパン三世』の最終回155話の「さらば愛しきルパン」のロボット兵を再起用。
また、宮崎アニメの持ち味でもある飛行体のオンパレードを見せます。
タイトルにあるラピュタをはじめ、オーニソプター、飛行軍艦ゴリアテやドーラ一家のタイガーモス号など、ファンの満足を魅了させてくれます。
また、この作品が子どもたち対象にした古典的な冒険活劇の成功であることは、今作の完成試写を観た漫画はの神様と呼ばれた手塚治虫の発言に興味深いものがあります。
上映作品を見終えた途端に、“城が空飛ぶなんておかしい”という天才を嫉妬させた発言があったことからも揺るがないことでしょう。
公開当時はヒットこそしなかったものの、この作品はじわじわと評価を高めていった作品として知られ、一貫して空や飛行体の憧れと爽快さを追求した点は、宮崎駿アニメとしては『紅の豚』と並び甲乙つけがたいといえるでしょう。
パズーが語る「女の子が空から降ってきた」というセリフや、亡き父親の憧れの高揚感と汚名を晴らしたい意志は、ラピュタ写真や模型飛行機、トランペットなど各所にそれを感じさせてくれます。
何より空への憧れは、谷底で鉱山採掘の機械工見習いとして働くパズーと、飛行石によって空から舞い降りてきたシータの出会いです。
洞窟で親のいない同士の2人がリンゴをかじる場面は、まるでアダムとイブのようでしたね。
まとめ
宮崎駿監督は『天空の城ラピュタ』から2年後の1988年に日本を描いたアニメを作りたいと『となりのトトロ』を公開します。
その後は、飛行する主人公たちに、1989年公開の『魔女の宅急便』や1992年公開の『紅の豚』とふたたび空への思いを抱くアニメを作りました。
今回は『天空の城ラピュタ』をご紹介しましたが、最後にちょっとネタばらしではないですが…、
実はラピュタがどこか宮崎アニメ作品の総集編や集大成に見える秘密には、もともと今作が『未来少年コナン2』として企画されたという背景もあるからでしょう。
それでも魅力満載の『天空の城ラピュタ』。あなたの好きなところはどこでしょう。
ぜひ、宮崎駿アニメ作品として外せない1本です、お楽しみください。