『聖女 Mad Sister』は「のむコレ3」にて上映!
2019年11月15日(金)よりシネマート新宿・シネマート心斎橋にて開催されている「のむコレ3」。
「のむコレ3」にて、妹を守るため立ち上がった姉の壮絶な戦いを描いたバイオレンスアクションが公開されました。
“優しいお姉さんが、暴走する…”今回ご紹介するのはこんなキャッチコピーのついた韓国映画『聖女 Mad Sister』です。
タランティーノ作品のようであり、姉妹の絆版『96時間』のようでもあるクライム映画『聖女 Mad Sister』が、いかに凄まじい作品なのか、ご紹介いたします。
映画『聖女 Mad Sister』の作品情報
【日本公開】
2019年(韓国映画)
【原題】
No Mercy
【監督】
イム・ギョンテク
【キャスト】
イ・シヨン、イ・ジュニョク、パク・セワン、チェ・ジンホ、イ・ヒョンチョル、キム・ウォネ、クァク・ミンソク、キム・ギム、ユン・ソンア、キム・ジョンパル、アン・セハ、ソル・ジョンファン、イ・ジャウン、ミン・イェジ、イ・サンフン、ク・ヘリョン、イ・グムジュ
【作品概要】
監督は『人形霊』(2005)の製作を務めたイム・ギョンテク。主人公の“聖女”イネを演じるのは『殺人漫画』(2013)『神の一手』(2015)のイ・シヨン。
共演はドラマ『トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜』(2016)のパク・セワン、『戦場のメロディ』(2016)『神と共に』(2017)のイ・ジュニョクです。
本作は2019年11月15日から開催された「のむコレ3」上映作品。
映画『聖女 Mad Siter』のあらすじとネタバレ
刑務所から一人の女性が出所しました。彼女の名前はイネ。元警備員のイネは過剰防衛で、ある男を傷つけてしまったため1年半も収監されていたのでした。
イネは家で待つただ一人の家族、妹のウネのところへ帰ります。
障碍を抱えるウネは17歳ですが精神年齢は10歳ほどで、イネはウネを両親に代わって守ると決めていました。
ウネは翌日両親の墓参りに出かけたいとねだりますが、イネは学生は学校へ行くものだと諭します。ウネは学校でいじめられていました。
次の日の学校、いつものようにいじめっ子三人組がウネを取り囲み、放課後無理やりカラオケに連れて行きました。
彼女たちの目論見はウネに売春させ、そこに仲間の男たちを送り込んでウネを買った男性から金を巻き取ろうというものでした。
抵抗できないウネはホテルにあちこち連れて行かれ、恐喝に巻き込まれてしまいます。しかし、ある客が闇社会の男だったため、若者たちは怯えて逃げ出し、ウネは誘拐されてしまいました。
帰ってこないウネを心配して、イネは学校へ出向き相談を持ちかけますが「家出でしょう」と取り合ってくれません。
そこにいじめていた女子三人の中で唯一良心が残っていたクラスメイトが、イネに昨日の動画を見せます。そこには無理やり服を脱がされているウネの姿が。
イネは放課後遊びに出かけようとする残りの女子二人を捕まえ、ウネがどうなったか問い詰めました。彼女は“ハッピーローン”という場所に売り飛ばされたと答えます。
警察に誘拐を訴えても彼らは無関心で、イネはひとりでウネを探し出すことを決めました。
イネはまずウネを売り飛ばしたヤクザの男を捕まえ、格闘の末、売った場所を聞き出します。しかし、そこへ電話すると、ウネはもう別の場所へ売ったと言割れてしまいました。
事務所へ押しかけたイネはヤクザの男を再び打ちのめし、ある若い男がウネを連れて行ったことを聞き出します。
映画『聖女 Mad Sister』の感想と評価
近年『悪女/AKUJO』(2018)や『The Witch/魔女』(2018)など、女性が主人公のアクション映画がヒットを飛ばしている韓国映画。
本作品『聖女 Mad Sister』は、愛する妹を誘拐された姉が戦う“姉妹版”『96時間』のような作品です。
リーアム・ニーソンが美女の皮を被っているのかというくらいの強い主人公イネを演じたのはイ・シヨン。彼女はボクシング選手で国家代表にまでなった実力の持ち主で、本作はスタント一切なしでアクションシーンを演じきっています。
赤いドレスとヒール姿で魅せる激しく凄まじい乱闘シーンは圧巻です。
周囲によって利用され闇組織に売り飛ばされた17歳の妹ウネを必死に探す姉のイネ。
学校や警察に相談するも取り合ってもらえずたった一人で裏社会の組織と戦うことになったイネは、ウネが今まで周囲の男たちに辱められ、自分にもそのことを打ち明けていなかったと知ります。
醜悪さ、狡猾さを煮詰めたような最低最悪な男ばかりが次々と登場し、元警護員であるイネは彼らを途中までは銃も使わずに倒していきます。
女性を凌辱する残忍な男を倒すプロットは、クエンティン・タランティーノ監督の『デス・プルーフ in グラインドハウス』(2007)をはじめ、「キル・ビル」シリーズの2作品、ザ・ブライドや『イングロリアス・バスターズ』(2009)のショシャナなど彼の作品の女性キャラクターたちを彷彿とさせます。
しかし、一方で『聖女 Mad Sister』には、タランティーノ監督のような痛快さはありません。
何も抵抗することができないウネの強姦シーン、妹がそんなことをされ続けていたと知らず怒りと悲しみでイネが涙するシーン…。
親もなく二人ぼっちの姉妹が追いやられている境遇は不幸としか言いようがなく、セリフにもコメディ要素が全くないため陰鬱な気分にさせられます。
最後イネは、ラスボス的存在の議員を倒しウネと家に帰ろうとしますが大怪我を負っており、暗いトンネルを抜けてまばゆい光が画面いっぱいになる結末は姉妹の死を思わせます。
生き残ってもイネは裏社会の男だけでなく近所の人間にも重傷を負わせていますし、ウネも1人で行きていけるか分からない。
どちらにしても、二人にまた苦労がのしかかるなら父と母が待つ天国へ二人で旅立った方が良いのではないか、そんな考えが浮かぶ救いようのない結末なのです。
プロットは「強い女が残忍な男たちをぶっ飛ばす」というものです。
ですが、姉妹のあまりにも酷い追い込まれ方と強姦や凌辱の描写を見ると、このイネのキャラクターも強き者、男性によるあるマゾヒスティックな願望、搾取により生まれたのではないかという考えがよぎります。
まとめ
そんな本作ですが、主演のイ・シヨンの体当たりのアクションとウネ役のパク・セワン、またおぞましい男性キャラクターを演じる俳優たちの演技は圧巻です。
人間の非情で悪どい部分を容赦なしに描き凄まじく、強烈な印象を描く韓国映画に加わった『聖女 Mad Sister』。
戦う女の美しさとやるせなさ、悲しさを描いた作品です。