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Entry 2019/10/31
Update

『静かな雨』小説あらすじネタバレ。映画化で結末のキャスト仲野太賀と衛藤美彩が選ぶものは

  • Writer :
  • もりのちこ

人間ってなんでできてると思う?
人が記憶でできてるだなんて断固として否定する。

宮下奈都の小説『静かな雨』が、仲野太賀と、元乃木坂46で初の映画出演となる衛藤美彩の共演で映画化です。2020年新春に公開となります。


(C)2019「静かな雨」製作委員会/宮下奈都・文藝春秋

宮下奈都と言えば2018年にも『羊と鋼の森』が映画化となった人気小説家です。

彼女の2004年に発表された小説デビュー作となる『静かな雨』は、文學界新人賞佳作に選ばれています。

監督は『四月の永い夢』で、モスクワ国際映画祭批評家連盟賞とロシア映画批評家連盟特別表彰のダブル受賞を果たした、中川龍太郎。

2019年10月に行われた釜山国際映画祭では、正式招待作品として上映されました。

ある事故をきっかけに、新しい記憶を溜めておけなくなった女の子と、それを支える男の子の物語。原作小説『静かな雨』を紹介します。

原作小説『静かな雨』のあらすじとネタバレ

クリスマスに雪が降るロマンチックな日。行助(ゆきすけ)は仕事を失います。

その日、最寄駅を降りて歩き出すと、かすかにやさしい匂いが流れてきました。パチンコ屋の駐輪場にある、たいやき屋台からでした。匂いに引き寄せられるように屋台に向かいます。

行助は生まれつき足に麻痺があり、松葉杖を使った生活をしています。

焼きたてのたいやきを一口食べ、あ、と立ち止まった行助。あまりの美味しさに、店まで戻り「これ、おいしい」と店主に告げていました。

それから行助は、転職した後も、たいやき屋に通うようになります。たいやきの味はもちろん、店主の女性のまっすぐさな感じに惹かれたのです。

たいやき屋の店主こよみは、幅広い常連客に人気で店は繁盛していました。噛んだときの外皮の硬さと内側のやわらかさのあんばい、小豆の粒の残り具合、餡の甘すぎない甘さ、何もかもがちょうどいい。こよみのたいやきは、おいしさに力があるのです。

いつしか行助とこよみは、一緒に食事をする仲になっていましたが、行助にとってこよみは高嶺の花でした。自分にはもったいない。

ある朝、少女がひき逃げされました。倒れた少女をよけようと後続の車がハンドルを切り、そこへバイクが突っ込みます。乗っていた少年は吹き飛び、歩道にいた人の上に落ちました。

歩道にいた人はこよみでした。病院に運ばれたこよみは、三ヶ月と三日眠り続け、突然目を覚まします。

ずっと側にいた行助を見て「おはよう」と、こよみは言いました。

以下、小説『静かな雨』ネタバレ・結末の記載がございます。小説『静かな雨』をまだお読みになっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

こよみは事故のことを覚ていませんでした。医師の診断は高次脳機能障害。こよみの1日の記憶は眠ると消え、事故の前までの記憶に戻ってしまいます。

身寄りのないこよみを、朝から晩までひとりにしておくわけには行きませんでした。日常生活に支障はなく、たいやき屋台も続けられます。ただ、記憶が残すことが出来ない。

この現実を、目覚めた時伝える役目を自分がしていいものかどうか行助は悩みます。

日付を確認するためカレンダーに斜線を引くこよみ。まったく覚えのない昨日を静かに受け入れ、こよみの一日は始まります。取り乱したり、泣いたりしないことが行助には不思議でした。

行助はとっくに覚悟を決めていました。こよみと一緒に暮らすことにします。

2人の共通点は、食べたいものを思いつくのがうまいことでした。一緒にその日の食事を楽しむことは、何物にも変えられない喜びを行助に与えてくれました。

行助は、自分の視界が急にクリアになった感覚を味わっていました。ちょっとしたことで笑え、そして泣きたくもなる愛しい存在。こよみが教えてくれました。

こよみは記憶が残らないにも関わらず、様々なトラブルを物ともせず解決し、行助を驚かせます。改めて行助は、こよみの歩んできた道の険しさを知るのでした。

行助の中には、こよみとの思い出が日に日に積もっていきます。しかし、こよみの心には一切残らない。そのことに行助は、歯がゆい思いにかられます。

寂しさに似たその感情を行助はこよみにぶつけてしまいます。「ブロッコリ、嫌いって何回も言ってるよね」。自分が守っていくと誓った人を、自分が傷つけてしまいました。こよみは、屈託なく「ごめんね」と謝ります。

次の日、行助は台所の至る場所に「行さんはブロッコリが嫌い」と書かれたメモを見つけました。

その健気さに胸を痛めた行助は、メモを捨て決意します。「ブロッコリが嫌いなことなんか忘れてしまえばいい。俺は何度でも食べる」。改めて、こよみの素敵さに恋をする行助。

「人間は日々の記憶でできてるだなんて、断固として否定する。毎日の生活の中での思いで、人はできているんだ」。人を思いやり、日々を大切に、幸せに暮らすこと。

何が、どこに残るのかはわからないけれど、行助とこよみは、事故の前よりも確かに親しくなっていました。そして、たいやきはより一層美味しくなっていました。

映画『静かな雨』の作品情報


(C)2019「静かな雨」製作委員会/宮下奈都・文藝春秋

【日本公開】
2020年(日本映画)

【原作】
宮下奈都

【監督】
中川龍太郎

【キャスト】
仲野太賀、衛藤美彩、三浦透子、坂東龍汰、古舘寛治、川瀬陽太、河瀬直美、萩原聖人、村上淳、でんでん

原作小説『静かな雨』の感想と評価

今では人気小説家として新作が注目される宮下奈都の、デビュー作品にあたる『静かな雨』。

パチンコ店の駐輪場にあるたいやき屋台。そこから始まる物語は、今にも美味しいたいやきの匂いがしてきそうな、優しさに包まれています。

事故がきっかけで記憶が残らなくなった、たいやき屋台の店主こよみと、たいやきとこよみに惚れ込んだ、松葉杖の行助。

他人からは不自由に見える生活も、2人にとっては静かな雨が降るように、穏やかに幸せが積もっていきます。

記憶が残らないことを取り乱すことなく毎日受け入れ、一日を気持ちよく過ごそうとする、こよみの心根の綺麗さに憧れます。

こよみは事故に遭う前から、一日一日を大切に生きていた女性なのでしょう。その佇まいは彼女の焼く、やさしい味のたいやきにも現れているようです。

物語の中で、こよみが何冊も同じ本を買ってしまうシーンがあります。それは自分と同じ境遇が書かれた小説『博士の愛した数式』でした。

そして、雨の降る夜、こよみは静かに涙を流します。「月が明るいのに雨が降ってる」。記憶が残像のように脳をかすめます。

気丈に振る舞っているこよみが、たまに見せる戸惑いと不安が、切なく心に響いてきます。

「お互いの世界にお互いが住んでいて、ふたつの世界は少し重なっている。それで、じゅうぶんだ」。行助が、行きついた気持ちです。

人は、思い出や記憶を頼りに生きています。しかし、本当に大切なことは今であり、今この瞬間を幸せに思えるかどうかという「思い」であると、小説『静かな雨』は教えてくれました。

まとめ


(C)2019「静かな雨」製作委員会/宮下奈都・文藝春秋

宮下奈都の小説デビュー作『静かな雨』を紹介しました。

映画化に伴い、こよみ役の元乃木坂46で映画初出演となる衛藤美彩と、行助役の映画やドラマの出演が相次ぐ仲野太賀のフレッシュな共演にも注目です。

日々の記憶が残らなくても、確実に2人の間に育っていくもの。人の「思い」の強さに心打たれる感動作『静かな雨』。映画は、2020年新春に公開です。





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