年末の風物詩といえば、「第9交響曲」もその1つ。
有名なベートーベンの名曲が全国のコンサートホールで響きますね…。
今回ご紹介する映画『グランドフィナーレ』の主人公は引退した音楽家です。
才能豊かな著名な人物たちが、自己の夢を実現した後に、ある場所で出会い起きたこと…。
人生の美しさと残酷さを見つめてみましょう!
映画『グランドフィナーレ』の作品情報
【公開】
2016年(イタリア、フランス、スイス、イギリス)
【脚本・監督】
パオロ・ソレンティーノ
【キャスト】
マイケル・ケイン、ハーヴェイ・カイテル、レイチェル・ワイズ、ポール・ダノ、ジェーン・フォンダ、スミ・ジョー、パロマ・フェイス、ビクトリア・ムローバ
【作品概要】
パオロ・ソレンティーノ監督は、『イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男』(2008)で、カンヌ国際映画祭審査員賞受賞、『グレート・ビューティー 追憶のローマ』(2013)では、アカデミー外国語映画賞受賞などに輝いた実力派で知られたイタリアの映画監督。
俳優のマイケル・ケインを主演に、スイスのアルプスにある高級ホテルを舞台として、引退後のイギリス人作曲家の描いた幻想的な作品です。
映画『グランドフィナーレ』のあらすじとネタバレ
アルプスの高級リゾートホテルで引退後の余生を過ごす作曲家フレッド・バリイジャー。
彼のもとに訪れた特使たちから、女王陛下からの勲章授与と、その式典へ出演して欲しいという依頼が舞い込みます。
フレッドを世界的に有名にした名曲「シンプル・ソング」を、今一度、フィリップ殿下の誕生日に指揮して欲しいという要望付きでした。
しかし、彼は引退した身だと頑なに拒みます。
現役の頃のフレッドは、ロンドンやニューヨーク、ヴェネチアの楽団で指揮を務め、作曲と指揮の両面でその才能を開花させいました。
80歳を過ぎてた現在では、これまでの活動のような活力も湧かないようです。
そんなフレッドとは、古くからの親友である映画監督のミック・ボイルも同じホテルに宿泊しています。
しかし、ミックの場合はフレッドとは違い、まだ現役監督を続け、若いスタッフたちと新作映画『人生最後の日』という、脚本執筆に励んでいる。
他のホテル宿泊客も風変わりで、20世紀のサッカー界に名を残す元名選手(ディエゴ・マラドーナでしょうね?)や、
かつて出演したロボット映画の役名で呼ばれることに嫌気をさすハリウッドスターのジミー・トリーなどが宿泊しています。
彼らは、その世界で頂点を極めたセレブですが、それぞれに悩みを抱えているようです。
精神的に無気力になっていたフレッドは、健康診断やマッサージなどを淡々とこなしています。
医師からは身体には異常がないと診断をされますが、フレッドの身体はこれまでの疲労が溜まっているようです。
そんな、フレッドの唯一の楽しみといえば、親友ミックとの昔話やたわいもない悪戯悪するぐらいでした。
ある日、フレッドが自室に部屋へ戻ると、夫ジュリアンと2週間のバカンス旅行に出かけたはずの娘レナが泣いています…。
映画『グランドフィナーレ』の感想と評価
この作品の主演を務めたマイケル・ケインは、米アカデミー助演男優賞を2回受賞しているイギリスが誇る名優。
脇を固めた俳優陣もハーヴェイ・カイテル、レイチェル・ワイズ、ポール・ダノ、ジェーン・フォンダなど、豪華俳優がそれぞれに異彩を放つ作品です。
アルプスの高級リゾートホテルを舞台に、誰もが羨むような頂点を手に入れた彼らでしたが、セレブというよりも、どことなくサナトリウムでの療養者にも見みえてきます。
成功と名声を手に入れた彼らが、過去の栄光からどのように「下山」するのかが、この作品のテーマです。
それぞれの人生の頂点からの下り方に注目することが見どころになのです。
よく登山者は、“山は登る時よりも下る時の方が難しい”と言います。
それを栄光のある人生の頂上に登頂した者に重ね合わせた感じと言えばよいでしょうか。
その最たる象徴は、映画監督のミックの飛び降り自死です。
他にも往年の大女優ブレンダが、ミックの死を知り飛行機から降りられない様子、
宿泊者の老登山家が、若い女性を抱きかかえパラグライダーで降りる姿、浮遊する仏教僧など、
それぞれが、“過去の栄光からどのように「下山」するのか”という象徴として存在しています。
人生の幕引きは、ミック監督が、「人生最後の言葉」に悩んでいたように、どのような名声のある人にも難しい事なのかもしれませんね。
まとめ
パオロ・ソレンティーノ監督の脚本を活かした、豪華俳優陣の演技も素晴らしいものがありました。
それを更に引き立たせたのは、舞台となった高級ホテルです。
作家トーマス・マンが、『魔の山』を執筆したといわれる、伝説のホテルをロケに使用した点は、映画の幻想的な効果に成功させています。
このホテルは、元々はサナトリウムであった場所らしく、映画全体の雰囲気作りに一層独特なものにしているのです。
元サッカー選手(マラドーナ?)のテニスボールを使ったリフティングや、浮遊する仏教僧は、夢なのでしょうか、幻想なのでしょうか、それとも現実なのか?
この作品は、じっくり、あなたの目で味わっていただきたい作品です。
ぜひ、大きなスクリーンで見ることをオススメしたい作品です!