Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

サスペンス映画

『他人は地獄だ』あらすじ感想評価。大どんでん返しの本格ミステリーWEB漫画をキャストの八村倫太郎×栁俊太郎がコンビで演じる

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『他人は地獄だ』は2024年11月15日(金)より全国順次公開!

韓国で人気のWEB漫画を日本で実写化したサスペンススリラー『他人は地獄だ』

田舎の閉塞感から抜け出し上京してきた一人の青年が、奇妙なシェアハウスで遭遇する不穏な空気感にむしばまれていくさまを描いた本作。

本国の韓国でもドラマ化が実現した原作を、オリジナルビデオ、Vシネマなどでホラーをテーマとした数々の作品を発表してきた児玉和土が手がけました。

日本版ならではの大どんでん返しを物語に仕掛け、独自の世界観、テーマを構築し新たな物語として生み出しています

映画『他人は地獄だ』の作品情報


(C)ヨンキ/LINE Digital Frontier・2024 映画「他人は地獄だ」製作委員会

【日本公開】
2024年(日本映画)

【監督・脚本】
児玉和土

【出演】
八村倫太郎、栁俊太郎、岡田結実、三浦健人、青木さやか、大倉空人、鈴木武、松角洋平、星耕介、日比美思、大野泰広、本多遼、濱津隆之、萩原聖人ほか

【作品概要】
韓国でドラマ化もされた韓国人気WEBコミックを、日本で実写映画化したサスペンススリラー。

監督・脚本を担当したのは『口裂け女0 ビギニング』『さよなら、ジョージ・アダムスキー』の児玉和土。

ダンス&ボーカルグループ「WATWING」の八村倫太郎、『ゴールデンカムイ』『猿楽町で会いましょう』の栁俊太郎という二人がメインキャストを務めます。他にも『私はいったい、何と闘っているのか』の岡田結実や青木さやか、萩原聖人らが名を連ねています。

映画『他人は地獄だ』のあらすじ


(C)ヨンキ/LINE Digital Frontier・2024 映画「他人は地獄だ」製作委員会

体に障害を持った兄、母子家庭という地元での生活に息苦しさをおぼえ、上京してきた青年ユウ。

彼は上京してすぐ恋人メグミのもとを訪れますが、突然の訪問に困惑する彼女とケンカをし、住まいを得るあてを無くしてしまいます。

そしてユウは苦肉の策として格安シェアハウス「方舟」にたどりつきます。

そこには言葉遣いは丁寧ながらどこか不穏な空気を漂わせるキリシマを中心に、ヤクザ風の粗暴な男や卑屈な笑顔を浮かべている男、妙に愛想の良い管理人よし子、挑発的な言葉を投げかける男と気味の悪い住民ばかりいました。

そんなひと癖もふた癖もある住人たちの中で、ユウは金もないためしばらく身を寄せる決意をします。

入居した夜にユウはヤクザ風男と他の住人との口論を目撃し、翌朝になるとヤクザ風男の姿はどこにも見当たりませんでした。

やがてユウは住人たちの不穏な言動から、自分が非常に危険な場所に身を置いてしまったのではないかと、疑惑と不安を募らせていくのです……。

映画『他人は地獄だ』の感想と評価


(C)ヨンキ/LINE Digital Frontier・2024 映画「他人は地獄だ」製作委員会

イム・シワンを主役に迎え連続ドラマとして発表された韓国のドラマ作品は、主人公の設定に兵役時の出来事が精神的に影響を与えたエピソードがあるなど、もともとの人物設定にかなり複雑な性質が存在していました。

また主人公が身を寄せた仮の宿も、考試院(コシウォン)と呼ばれる韓国ならではの宿ということもあり、本作に比べかなり雰囲気としては暗い印象があります。

これに比べると日本版の本作におけるシェアハウスは少し明るくもっと住みやすい場所という雰囲気であり、主人公ユウの人物設定も、物語の序盤では「普通の青年」という印象を醸しています

これに比較してメインキャストのキリシマ、そして管理人よし子は逆にかなりクセが強く、キャラクターづくりに本作ならではのバランスづくりを考えたさまが伺えます。

そこは韓国版と日本版の違いなどに関する調整の取り方とも見られ、韓国版を事前に見た人からすれば、サスペンス性を求めると「物足りない」と感じられるかもしれません。

しかし本作の重要なポイントは、物語の後半からエンディングにかけての展開にあります。


(C)ヨンキ/LINE Digital Frontier・2024 映画「他人は地獄だ」製作委員会

この部分はオリジナルのストーリーからかなり大がかりな改変が行われており、よもすれば『他人は地獄だ』という、作品のタイトルが表す意味すら変えている印象を受けることでしょう。

具体的にはユウ自体が自分の本当の姿を知り愕然とする、という展開。オリジナルストーリーでは主人公が奇妙な事件の後に、元住民たちの奇妙な個性が、なぜか自分にも転移してしまっているという奇妙な終わり方でしたが、これに対して本作のものはかなり異なる印象をおぼえるでしょう。

最後に明かされる秘密は、先にも記したユウの「普通である」という印象を非常に効果的に利用した構成であるとも見られます。

ある意味日本ならではの物語の書き方、テーマやポイントの示し方を練り直した、似た作品ながら全く異なるサスペンス感を味わえる作品であるといえるでしょう。

まとめ


(C)ヨンキ/LINE Digital Frontier・2024 映画「他人は地獄だ」製作委員会

本作の見どころは、やはり栁俊太郎、青木さやか両人のどこか不穏感を隠しながら普通の人を演じる不気味な雰囲気にあるといえるでしょう。

不可解な空気感、出来事に不安だけが残るユウを煽るシェアハウスの住人たち。その中でもこの2人は、序盤でユウに対し優しく接しながら後半では驚くべき変貌を遂げます。

その二面性もさることながら、注目すべきは2人の「不安性を醸す笑顔」にあります。本来であれば対面での不安を消すべく見せる「笑顔」ですが、本作ではこの笑顔を恐怖の引き金のような存在とし、物語の不穏な空気を構成しているともいえます。

近年は海外ホラー『スナッチャーズ・フィーバー』『SMILE スマイル』など「笑顔」を恐怖の元凶とした作品が注目を集める向きも見えており、本作もそんな傾向の一端が感じられるものであります。

映画『他人は地獄だ』は2024年11月15日(金)より全国順次公開!





関連記事

サスペンス映画

映画『THE GUILTY ギルティ』あらすじネタバレと感想。デンマーク産のサスペンス手法のあるあるとは⁈

映画『THE GUILTY ギルティ』公式サイト 2019年2月22日(金)公開。 2018年にスマッシュヒットを記録した『サーチ』と共にサンダンス映画祭で観客賞を受賞し、その後も各国の映画祭を賑わし …

サスペンス映画

映画『銃2020』感想レビューと内容考察。キャストの魅力と続編への時間系列から見えたもの

2018年に武正晴監督が中村文則のデビュー作を映画化した『銃』のアナザーストーリーとなる第2弾『銃2020』 芥川賞作家・中村文則のデビュー作『銃』を村上虹郎を主演に迎え2018年に公開された『銃』。 …

サスペンス映画

映画『68キル』あらすじとキャスト。トレント・ハーガ監督とは

映画『デッドガール』や『ザ・スリル』の脚本家として高い評価を受けているトレント・ハーガ。 彼が脚本と監督を手掛けた映画『68キル』は2018年1月6日より、特集上映「未体験ゾーンの映画たち2018」公 …

サスペンス映画

『危険な情事』ネタバレ結末あらすじと感想評価の考察。“2つのラストシーン”の存在を詳細に解説【マイケル・ダグラスおすすめ代表作】

一夜だけの快楽のつもりが・・・男を悪夢へと突き落としたサイコサスペンス 今回ご紹介する映画『危険な情事』の監督は『フラッシュダンス』(1983)、『ナインハーフ』(1986)のエイドリアン・ラインが務 …

サスペンス映画

『愚行録』ネタバレあらすじ感想と結末ラストの考察評価。本格ミステリ映画の伏線と謎に隠されたもの

第135回直木賞の候補になる貫井徳郎の小説「愚行録」を映画化 “仕掛けられた3度の衝撃。あなたの日常が壊される”と銘打った映画化は、第135回直木賞の候補になった貫井徳郎の同名の小説「愚行録:をベース …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学