Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

サスペンス映画

短編映画『その少女、怒り。』あらすじ感想と評価解説。俳優 石川瑠華が虐待のトラウマを持つ少女を演じ“怒りの鉄槌”を下す!

  • Writer :
  • 谷川裕美子

虐待され心に傷を持つ少女を石川瑠華が熱くクールに演じる

よしもと新喜劇 映画『商店街戦争~SUCHICO~』(2017)の谷口仁則が監督を務める復讐バイオレンスドラマ。

イソップの思うツボ』(2019)の石川瑠華が、虐待を受けて育った少女という複雑な役どころを熱演します。

虐待されたトラウマを持つ少女が、同じ苦しみを受けている少年・亮太を救うために、悪の塊のような彼の両親に立ち向かうさまを衝撃的に描きます。

怒りに満ちた少女を鮮烈に描く本作の魅力についてご紹介します。

映画『その少女、怒り。』の作品情報

【公開】
2021年(日本映画)

【監督】
谷口仁則

【キャスト】
石川瑠華、武田幸三、中村純猛、橘凛々子、西川諄、谷口日香、土平ドンペイ

【作品概要】
よしもと新喜劇 映画『商店街戦争~SUCHICO~』(2017)の谷口仁則監督作品。

イソップの思うツボ』(2019)の石川瑠華主演の復讐バイオレンスドラマです。

虐待経験を持つ少女が、同じく虐待を受けている少年と出会い、彼の両親を許せず立ち上がります。

共演は武田幸三、中村純猛、橘凛々子。

映画『その少女、怒り。』のあらすじとネタバレ

理不尽が蔓延る社会の中で、少女ニコはいつもヘッドフォンで耳を塞ぎ、文庫本を手に雑音から心を閉ざしていました。シンゴの営む行きつけの喫茶店だけが唯一の心の拠り所です。

ある日、ニコは両親から虐待をうけている少年・亮太と出会いました。自らも虐待を受けていたニコは、亮太の両親を許すことが出来ませんでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『その少女、怒り。』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『その少女、怒り。』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

夜になってからニコは亮太の家に乗り込み、彼の両親を容赦なく痛めつけました。男が亮太に与えたのと同じ残虐な痛みを、ニコは男に与え続けました。

喫茶店のシンゴが亮太を保護し、仕事を終えたニコを迎えました。ニコは亮太のことを頼むとシンゴに頼み、彼はうなずきました。

町では包丁を手にした通り魔が暴れ回り、幼い少女を人質にしていました。ニコは今日も、暴漢にひるまず近づいていきます。

映画『その少女、怒り。』の感想と評価

たった22分の短編ながら、鮮烈な印象を残す一編です。

石川瑠華演じる主人公のニコは、いつもヘッドフォンを耳に当て、ドストエフスキーの「罪と罰」の文庫を読みふけっています。町の喧噪や雑音を、自分からシャットアウトするためでした。

理不尽なことすべてから逃れ、疲れた羽を休めるかのように、ニコはシンゴの営む喫茶店で憩います。シンゴは虐待されていたニコを救った恩人で、二人の間には温かで確かな信頼がありました。

ある日、少年・亮太の首筋に青あざがあるのに気づいたニコは、瞬時に彼が虐待されていることに気づきます。同じく虐待されて育ち、苦しみをよく知るニコには、亮太の両親を許すことはできませんでした。

何度も繰り返されるフラッシュバックが、ニコの心の傷の深さを物語っています

亮太が虐待されるシーンにも心が痛みます。か弱い者をいたぶることに快楽を見いだす者たちがこの世には大勢いるのだという事実への絶望感とともに、それらの行為をする者たちへの嫌悪をかき立てられます。

ニコはひるまず亮太宅に乗り込み、容赦なく彼の両親をたたきのめします。その残虐さに言葉を失いますが、それらの行為は両親が幼い亮太にしたこととまったく同じものでした。

許しを乞う男の言葉を、「人間そんな簡単に変わらんわ」と言ってとどめを刺すニコ。それは、自分自身を傷つけた者に復讐することと同じ意味がありました。ニコがどれだけ深い絶望感を抱いているかがうかがい知れます。

疲れ果てたニコを温かく迎えるシンゴ。彼がいてくれるからこそ、ニコは安心して敵に立ち向かうことができるのに違いありません

ニコの怒りの炎は、決してこの先も消えることはないでしょう。虐待の罪の深さを思い知らされる一作です。

まとめ

虐待に苦しんだ経験を持つ少女が、決して消せない怒りの炎を燃やすさまを衝撃的に描く『その少女、怒り。』

児童虐待問題の根深さとともに、少女と彼女を救った人間との絆の深さを感じさせる作品です。

どんなに復讐を重ねようとも、ニコも亮太も決して虐待のトラウマから解き放たれることはないでしょう。

人を愛し愛され、復讐を忘れて穏やかに日々を過ごせるようになったとき初めて、彼らの再生は始まるのに違いありません。



関連記事

サスペンス映画

『他人は地獄だ』あらすじ感想評価。大どんでん返しの本格ミステリーWEB漫画をキャストの八村倫太郎×栁俊太郎がコンビで演じる

映画『他人は地獄だ』は2024年11月15日(金)より全国順次公開! 韓国で人気のWEB漫画を日本で実写化したサスペンススリラー『他人は地獄だ』。 田舎の閉塞感から抜け出し上京してきた一人の青年が、奇 …

サスペンス映画

映画『十二人の死にたい子どもたち』3番ミツエ役は古川琴音。演技力とプロフィール紹介

『天地明察』で知られるベストセラー作家の冲方丁(うぶかた・とう)の小説を原作とした映画『十二人の死にたい子どもたち』が2019年1月25日に公開されます。 メガホンをとるのは、『イニシエーション・ラブ …

サスペンス映画

『ザ・メニュー』ネタバレ結末考察と感想ラスト評価。サイコサスペンスはどんでん返しな“地獄のコースメニュー”

「イエス!シェフ!」作る方も食べる方も命懸け。 究極のディナーのお味は!? カリスマシェフが極上の料理を振る舞う孤島のレストラン。そこに集まった11人のゲスト。コース料理とともに明かされていく、それぞ …

サスペンス映画

梟ーフクロウ|あらすじ感想と評価解説。リュ・ジュンヨルが韓国映画“史実に記された怪死の謎”に迫る緊張感MAXサスペンス

闇夜に起きた怪奇な事件。唯一の“目撃者”は盲目の男―― 韓国年間最長No.1記録を樹立した、映画『梟ーフクロウー』が、2024年2月9日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全 …

サスペンス映画

【ダイナー映画ネタバレ】スキンのスフレと傷跡の意味と過去解説。母親と歌がカナコとの共通点

2019年7月5日より公開の映画『Diner ダイナー』。 平山夢明の小説『ダイナー』を原作としながら、蜷川実花監督がその色彩感覚で新たな世界を描いた映画『Diner ダイナー』。 本作に登場するキャ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学