Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

サスペンス映画

Entry 2021/06/25
Update

映画『リカ 自称28歳の純愛モンスター』ネタバレ感想と結末あらすじの解説。ドラマのその後として“最恐のリカ”と刑事の駆け引きを描く

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

純愛に生きる危険な女、自称28歳のリカを、ドラマ版に続き高岡早紀が熱演

「第二回ホラーサスペンス大賞」を受賞した小説「リカ」シリーズを原作に、2019年に放送されたドラマ版の、その後の物語を描く映画『リカ 自称28歳の純愛モンスター』。

運命の人を探し求め、純愛に生き、邪魔する者は「死ねばいい!」と命を奪っていくリカ。

そのリカの逮捕に執念を燃やす刑事、奥山。

2人の危険な駆け引きを描いた、本作の見どころをご紹介します。

映画『リカ 自称28歳の純愛モンスター』の作品情報


(C)2021映画「リカ 自称28歳の純愛モンスター」製作委員会

【公開】
2021年公開(日本映画)

【原作】
五十嵐貴久

【監督】
松木創

【脚本】
三浦希紗

【キャスト】
高岡早紀、市原隼人、内田理央、水橋研二、岡田龍太郎、山本直寛、尾美としのり、マギー、佐々木希

【作品概要】
永遠の愛を求める、最恐の「純愛モンスター」リカと、リカを逮捕する事に執念を燃やす刑事、奥山の駆け引きを描いたサイコスリラー。

五十嵐貴久の小説「リカ」シリーズを原作に、SNSでも話題になった、ドラマ版の最終回から始まる物語になっています。

ドラマ版に続きリカを演じる高岡早紀が、その魔性ぶりを遺憾なく発揮しています。

リカを追い詰める刑事の奥山を、数多くの映画やドラマで活躍している市原隼人が演じる他、特撮ドラマ「仮面ライダードライブ」シリーズで注目された内田理央や、女優としても幅広く活躍している佐々木希が、刑事役として出演しています。

映画『リカ 自称28歳の純愛モンスター』のあらすじとネタバレ


(C)2021映画「リカ 自称28歳の純愛モンスター」製作委員会
山中に捨てられたスーツケースから、死体が発見されるという事件が起きます。

被害者は、映画プロデューサーの本間隆雄。

本間は、自称28歳の女性、雨宮リカにストーカーされていた過去があります。

雨宮リカは逮捕されたものの、逮捕時に足を撃たれた事で警察病院に入院しましたが、看護婦を殺害し逃走しました。

本間は戻って来たリカに拉致され、3年間行方不明になっていたのです。

本間が拉致された現場には、切断された本間の手と足、そして目と耳と舌が残されており、本間はその状態のまま、リカによって生かされていた事になります。

刑事の奥山次郎は、凶悪犯であるリカの逮捕に執念を燃やしていました。

リカの逮捕を目的にした捜査班が組まれ、奥山は婚約者でもある同僚の女性刑事、青木孝子と合同で捜査する事になります。

孝子は奥山と同じ捜査班になった事を意識しており、先輩刑事の梅本尚美にも茶化されます。

ですが、リカに関する情報が集まらず、捜査が難航し、他の事件も発生した為、捜査班も縮小されてしまいます。

孝子は別の事件の捜査の為に、奥山と離れる事になります。

捜査資料に目を通していた奥山は、リカと本間が出会い系サイトで知り合った事に着目し、自身も出会い系サイトに登録し、リカをおびき寄せる作戦を考えます。

ですが、危険が伴う為、上司の戸田からは却下されます。

それでも、リカを逮捕する為、奥山は独自に捜査を開始し、100以上の出会い系サイトに登録していきます。

そして、最後の1つになった出会い系サイトで「リカ 28歳 看護師」というプロフィールを発見します。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『リカ 自称28歳の純愛モンスター』ネタバレ・結末の記載がございます。『リカ 自称28歳の純愛モンスター』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2021映画「リカ 自称28歳の純愛モンスター」製作委員会
奥山は「奥山ケイジ」という偽名で、リカに連絡をするようになります。

リカが好きになった男性は、必ず花束を贈っている事を、これまでの捜査から掴んでいた奥山は、リカへのプレゼントとして「新しい恋」という花言葉を持つ、ハイビスカスを贈ります。

その際に、リカのメールアドレスを聞き出す事に成功した奥山は、メールでリカをおびき出そうとします。

しかしリカは、3Dプリンターで、勝手に作り出した奥山の人形に夢中で、奥山へのメールに返信をしません。

リカが食いついて来ない事に焦りを感じた奥山は、次第にリカの事ばかりを考えるようになり、孝子からの連絡に反応しなくなります。

さらに、リカの過去を調べた奥山は、リカが幼い頃に母親からの虐待を受け、両親からの愛情を欲しがっていた事を知ります。

奥山もシングルマザーの家庭で育ち、母親からの愛情を感じずに育った為、次第にリカへ親近感を覚えるようになります。

奥山の粘り強い交渉の末、遂にリカを自宅におびき寄せる事に成功します。

リカは「28歳までに結婚したかった」と語り、奥山と今日にでも結婚しようとする勢いでした。

ですが、奥山はこれまでリカの犠牲になった多くの人の無念を晴らす為、リカに手錠をかけます。

奥山が応援を呼ぼうとした瞬間、リカは隠していた注射器で奥山に麻酔を打ち、鍵を取り出して手錠を外します。

意識を失った奥山にリカは「可哀そうなケイジさん、でも許してあげる」と語り、笑顔で鞄から何かを取り出します。

一方、連絡しても返信がない奥山を心配し、孝子は尚美と奥山の部屋を訪ねます。

そこに奥山の姿はありませんでしたが、携帯電話が残されていた事から、孝子は異常を察知し、風呂場で死体となっている奥山を発見します。

孝子は、残された奥山の携帯電話から、奥山がリカを逮捕する為に、独自の捜査を進めていた事を知ります。

しかし「永遠の愛」を求めるリカは、愛した男性の自由を奪う為に、手や足などは切断しますが、相手を殺す事は絶対に無いはずでした。

孝子は「リカが不慮の事故で奥山の命を奪ってしまった」と推測します。

孝子は、リカに奥山のふりをして連絡し「奥山が生きていた」とリカに思い込ませようとします。

孝子の作戦は成功し、孝子はリカを、指定した倉庫街におびき寄せます。

そして、待機していた捜査班が、リカを包囲しますが、リカは笑顔で走り出し、包囲網を突破します。

人間を越えたスピードで走り去るリカを追いかけ、捜査班は分散しますが、1人になった孝子の前にリカが現れます。

リカは、孝子が奥山のふりをして連絡してきた事に気付いていましたが「聞きたい事があった為、ワザとここに来た」と語り、孝子に「ケイジさんを何処に隠したの?」と質問します。

恐怖を抱いた孝子は、リカに発砲しますが、リカは凄まじい跳躍力で空を飛んで銃弾を避けて、そのまま工場の壁にくっつき、よじ登って逃走します。

リカを追いかけていた孝子は、いつの間にか背後に回っていたリカに麻酔を注射され、意識を失います。

孝子は、リカに連れ去られる際に、持っていた奥山の携帯電話を落とします。

孝子が目を覚ますと、リカの部屋で椅子に縛られていました。

棚の上に、3Dプリンターで作られた奥山の人形と、リカの人形が並べられている様子を見て、孝子は「あなたは純愛に依存しているだけ」と叫びます。

それを聞いたリカは「人は何かに依存しないと生きていない」と語り「そんな事も分からないなら、死ねばいい」と、孝子の側頭部に拳銃を突き付けます。

ですが、孝子を追いかけて来た尚美が突入してきて、携帯電話に残された奥山の声を再生します。

「リカさん会いたい」と、奥山の声が部屋に響き、リカがその声に反応した瞬間に、尚美がリカの腹部を狙撃します。

リカは、そのまま警察病院に収容され、植物状態となります。

結局、これまでの罪をリカに償わせる事ができなかった尚美は、自身の行動を後悔します。

孝子は、3Dプリンターで作られた奥山の人形と暮らし始め「私が、ずっと一緒にいてあげるね」と話しかけます。

一方、病室で眠っていた、植物状態のはずのリカでしたが、突然目を覚ますのでした。

映画『リカ 自称28歳の純愛モンスター』感想と評価


(C)2021映画「リカ 自称28歳の純愛モンスター」製作委員会
自分の運命の人を捜し求め、純愛に生き、邪魔する人間は容赦しない「自称28歳」のリカの恐怖を描いた、映画『リカ 自称28歳の純愛モンスター』。

本作は、2019年に放送されたドラマの続きとなっていますが、映画版は独自の物語となっています。

ドラマ版で描かれた、リカのこれまでの凶行は、映画版の序盤、捜査会議の場面で全て説明される為、ドラマ版を未見でも楽しめます。

本作はサイコスリラーなのですが、前半と後半で大きく変わる作風が特徴的です。

まず前半では、市原隼人が演じる刑事の奥山が、出会い系サイトを利用して、リカをおびき寄せるまでがスリリングに描かれています。

リカは「運命の人」以外にはガードが高く、自分から電話をする際は必ず「非通知」で連絡してくる程の用心深さです。

その為、焦って連絡先を聞こうとすると、警戒されて失敗する可能性があります。

奥山は、まずはリカのメールアドレスを聞き出そうします。

その為に、リカの好みを探り、リカが好きな花束で気を引こうとする辺り、いつの間にか完全に、恋愛の駆け引きになっています。

次第に、奥山はリカの事しか考えないようになり、恋心にも似た感情を抱くようになります。

ですが、実際にリカに会った奥山は、刑事としての使命を思い出し、リカを逮捕しようとしますが反撃され、命を落とします。

そして、奥山の死後に突入する後半では、奥山の婚約者である孝子と、リカの直接対決が描かれています。

孝子はリカをおびき出し、仲間の刑事と共に、リカを包囲する事に成功します。

ですが、ここからはリカの「純愛モンスター」としての本領が発揮され、凄まじいスピードで包囲網をくぐりぬけ、人間離れした跳躍力で空を飛び、スパイダーマンのように工場の壁を登り始めます。

この辺りは悪ふざけに見えますが、そうではなく「運命の人」を想う、リカの純愛の力が表現されている訳です。

どっちにしても怖いですね。

しかし、リカは何故、ここまで愛を求めるのでしょうか?

作中でも触れていますが、リカは過去に親からの愛を受けずに育ちました。

そこは奥山も同じ境遇で、リカに親近感を覚えてしまう部分です。

リカの辛い過去を考えると、クライマックスで孝子に語る「人は何かに依存しないと生きていけない」という台詞は、妙に説得力がありますが、1人で生きてはいけないなら、大事にするべきは人との距離感ではないでしょうか?

映画『リカ 自称28歳の純愛モンスター』は、エンターテインメントに振り切った部分がある作品ですが「人との距離感が分からないまま育った人間」と言う視点で見ると、かなり身近な恐怖を感じます。

ラストで、孝子は奥山の人形と結婚生活を始め、壊れた一面を見せます。

ですが、孝子の壊れた部分が他人に向けられなければ問題はないと感じ、プライベートで言えない事の1つや2つ、誰もが持っているのではないでしょうか?

ただ、その壊れた部分が外に向けられ、境界線が曖昧になった時に、リカのようなモンスターが誕生するのです。

「リカのような人間に関わりたくない」と思いながらも「自分は、無意識にリカのようになっていないか?」と、他人との距離感を考えてしまう作品でした。

まとめ


(C)2021映画「リカ 自称28歳の純愛モンスター」製作委員会
映画『リカ 自称28歳の純愛モンスター』は、ドラマ版からリカを演じている、高岡早紀の存在感が凄い作品でもあります。

リカは、一見すると育ちの良い、上品な印象を受けますが、気に入らない事があると舌打ちをする、品の悪い部分も持ち合わせています。

さらに感情のないような、フワフワした話し方をするのですが、それだけでも「この人は、話が通じない」という恐怖を生み出しています。

ただ奥山への愛は本物で、奥山と出会い系サイトで交流を重ねるリカは、まるで少女のような純粋さを見せます。

それだけに、クライマックスで孝子に言い放つ、リカというキャラクターを象徴する台詞「死ねばいい!」が、凄まじいギャップとインパクトを生んでいます。

高岡早紀はインタビューで、本作を「ジェットコースターのように怖さ・面白さ・切なさがどんどん押し寄せるスピード感がこの作品の魅力」と語っていますが、間違いなく作品を引っ張っているのはリカの存在感と、それを成立させている高岡早紀の演技力です。

序盤は衝撃の強い、残酷な場面もありますが、物語が進むうちに笑いの要素も強めになるので、ドラマ版を知らないという方も、独特の作風を持つ映画版から、リカの世界に触れてみてはいかがでしょうか?

関連記事

サスペンス映画

映画『下宿人』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

アルフレッド・ヒッチコックの全サイレント作品9本を一挙公開という世界初の画期的な上映がMOVIX京都にて開催されています(~3月3日)。 英国映画協会が、現存するヒッチコックの全サイレント映画を一コマ …

サスペンス映画

映画『鳩の撃退法』事件の犯人と真相はどこに?土屋太鳳扮する編集者の鳥飼なほみが真実の追求にのりだす

映画『鳩の撃退法』は、2021年8月27日(金)全国公開予定 映画『鳩の撃退法』は、藤原竜也、土屋太鳳、風間俊介、西野七瀬、豊川悦司らの豪華キャスト陣を、『原宿デニール』(2015)のタカハタ秀太監督 …

サスペンス映画

映画『プッシャー』動画無料視聴はU-NEXT!ネタバレ感想も

カンヌでも評価を得た『ドライヴ』や、賛否両論を巻き起こした『オンリー・ゴッド』『ネオン・デーモン』のニコラス・ウィンディング・レフン監督。 最近の作品は、好き嫌いの分かれそうなラインナップとなっていて …

サスペンス映画

梟ーフクロウ|あらすじ感想と評価解説。リュ・ジュンヨルが韓国映画“史実に記された怪死の謎”に迫る緊張感MAXサスペンス

闇夜に起きた怪奇な事件。唯一の“目撃者”は盲目の男―― 韓国年間最長No.1記録を樹立した、映画『梟ーフクロウー』が、2024年2月9日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全 …

サスペンス映画

映画『白い恐怖』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も【ヒッチコック作品おすすめの代表作】

『めまい』(1958)や『鳥』(1963)などで知られるサスペンス映画の神様アルフレッド・ヒッチコック監督。 往年の大女優イングリッド・バーグマンと名優グレゴリー・ペック共演の映画『白い恐怖』(194 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学