特殊部隊の男たちにいったい何が起きたのか、秘密裏に進められたミッションとは!
ストーム・アッシュウッドが脚本・監督を務め、2019年にオーストラリアで製作されたサスペンス・アクション映画『レッドゾーン 脱出』。
紛争下のミャンマーの密林地帯を舞台に、国連に雇われ、極秘任務を行っていくオーストラリア人の特殊部隊の姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
1人のジャーナリストが知った極秘任務に秘められた衝撃の事実と、深刻化する帰還兵のPTSDの問題を物語として描いた、オーストラリアのサスペンス・アクション映画『レッドゾーン 脱出』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。
CONTENTS
映画『レッドゾーン 脱出』の作品情報
【公開】
2019年(オーストラリア映画)
【脚本・監督】
ストーム・アッシュウッド
【キャスト】
ジョシュ・マクコンヴィル、ボニー・スヴィーン、ヒュー・シェリダン、フィラス・ディラニ、スティーヴ・ル・マルカンド、ジュワン・サイクス、レナ・オーウェン
【作品概要】
『Paper Planes』(2011)や『Moth』(2015)、『The School』(2018)などを手掛けた映画監督、ストーム・アッシュウッドが脚本・監督を務めた、オーストラリアのサスペンス・アクション作品です。
『モーターギャング』(2017)のジョシュ・マクコンヴィルが、主演を務めています。
映画『レッドゾーン 脱出』のあらすじとネタバレ
武力衝突により、軍の残忍な行為が過激さを増しているミャンマー。
地雷除去の監視を目的に、国連に雇われたセス・コーバン大尉率いる特殊部隊の男たちが、紛争下の密林地帯へヘリで降り立ち、現地入りしました。
国連から認定されたセスたちでしたが、彼らの真の目的は、地雷除去以外に別の目的がありました。
それから3ヵ月後のオーストラリア・ゴールドコースト。紛争地域での惨状を目にし、PTSDを患い心を病んだセスは、軍を退役後も妻子と一緒に住めなくなってしまい、妻に離婚を言い渡されてしまうのです。
そんなセスのことを独自で調査しているジャーナリスト、レベッカ・スタンズベリーは、あらゆる伝手を使ってようやく、セスの居場所を突き止めました。
レベッカがそうまでしてセスに会いたがったのは、彼の部隊にいた亡き双子の弟、ジョシュ・スタンズベリーの死の真相を知りたいからでした。
実はセス以外、ジョシュを含めた3人の特殊部隊の男たちは、ミャンマーでの任務で命を落としてしまったのです。
レベッカはジョシュを弔おうとも、埋葬する遺体がなく、また報告書には地雷除去とありましたが、現地で本当は何が起きたのかも知らされていません。
そこでレベッカは、ジョシュが特殊部隊の皆の兄貴だと、自身の親友だと手紙で語っていたセスに、現地で何が起きたのか聞かせて貰おうと思いました。
森の中で静かに暮らすセスは、そんなレベッカの問いに何も答えられませんでした。
セスにとっては、仲間を失った3ヵ月前の出来事を誰かに話せるほど、まだ精神状態が安定しないのです。
当時の幻覚に今もまだ苛まれるセス。そんな彼に一度門前払いされても、レベッカは諦めず、バーに向かった彼を尾行してまで真相を追求していきます。
しかしセスの口は堅く、レベッカはなかなか彼の口から、現地で何が起きたのか聞かせて貰えませんでした。
場面は変わって、3ヵ月前のミャンマー南部のカイン州。
仲間と共に、銃を構えながら密林地帯を歩くセスとジョシュには、それぞれ娘と双子の姉から貰ったお守りを身に着けていました。
そんなセスたちが密林地帯で遭遇したのは、難民を襲い殺害するミャンマー軍の兵士たちでした。
セスとジョシュ、特殊部隊の兵士ストレッチとウェルシーは、そんなミャンマー軍の兵士12人を殺害。
その場に取り残されていた1人の少女を救い、応急処置を施した後に生き残った難民たちに引き渡しました。
セスたちはその後、難民たちと別れ、地雷除去とは別の目的である、ボディという男の捜索に取り掛かります。
そこまで回想していたセスは、オーストラリア国防諜報本部へ行き、当時のことを知る彼の上司ペニーショウと話をしました。
2人が話したのは、地雷除去が目的ではないと嗅ぎつけたレベッカに、本当の任務を知らせるべきかどうかです。
ペニーショウはセスに、「唯一の目的に向け訓練し、人生を懸けたのに、家に帰れば目的も存在意義もない。護ってきた者が敵になる」と言います。
そしてペニーショウは、当時のことを誰にも話さず、偽りの任務を告げるよう強要したセスに、「自制心を保ちなさい」と新たな任務を言い渡しました。
後日、セスはレベッカに飲みに行こうと誘われ、彼女と最初に飲んだバーへ行きました。
レベッカは、セスから何も真実を聞き出せないのであれば、単身ミャンマーへ赴き真実を追求することを彼に告げます。
当然、セスはミャンマー行きを反対しましたが、レベッカの意思は固く、彼女からはPTSDなどのトラウマ専門の医師フロイト・ラカン博士を紹介されました。
そこでセスは、勇気を振り絞って現地で起きたことを、レベッカに打ち明けようとしますが、彼女は酔っ払いの男に絡まれてしまうのです。
レベッカに邪な思いを抱く酔っ払いの男は、彼女が断っても執拗に誘ってきたため、セスは彼女を守るために、酔っ払いの男とその仲間を返り討ちにします。
しかし元軍人故か、セスは過剰な正当防衛をしてしまい、危うく絞め殺そうとしてしまったのです。レベッカはそんなセスを止め、彼と一緒に店を出ます。
その際、レベッカは未だ真実を話せないと言うセスに、「今週の金曜にミャンマーへ出立する。もし話すなら今週中に話すことね」と告げ、彼と店の前で別れました。
セスは再びペニーショウへ会いに行き、レベッカに真実を話すべきか相談しましたが、彼女は当時の任務を美談に仕立てあげ、真実をこのまま闇に葬るつもりでした。
セスは葛藤の末、レベッカに真実を話し前に進むことを決断し、彼女の家へタイ料理を振舞いに行きました。
小さい頃から、お互いを助け合って生きてきた大事な弟の死を、未だに受け入れられないレベッカ。
セスはそんな彼女と、大事な人を失った傷口を舐め合うように、キスをして体を重ねようとしました。
しかしその際、レベッカの首飾りを見たセスの脳裏によぎったのは、同じ首飾りをつけたジョシュが鉄条網に磔にされている姿でした。
映画『レッドゾーン 脱出』の感想と評価
セスたち特殊部隊vsミャンマー軍とボディの戦い
主人公のセスの回想場面で繰り広げられる、セスたち国連に雇われた特殊部隊と、ボディ率いるミャンマー軍の激しい銃撃戦は、迫力満点のアクション場面ばかりです。
装甲車やM60の機関銃があり、セスたち4人の倍以上いる敵兵といった、圧倒的な戦力差に、セスたちは苦戦を強いられます。
しかも他の戦争映画とは違い、セスたちを助けてくれる援軍はいません。セスたちだけで対処しなければならないのです。
それでもセスたちは、最後まで諦めず、自分たちに課せられた任務のために命懸けで戦います。
その結果、敵の戦力を半数ほど減らしてもなお、追っ手を完全に撒くことは出来ず、セスの大事な仲間が1人、また1人と死んでいく悲劇。
その残酷なまでの現実を、生き残ったセス1人だけが背負うことになる悲しさと辛さに、同じ軍人でなくても悲しくなります。
PTSDに悩まされるセスの苦しみ
3ヵ月前に、ミャンマーの密林地帯に潜伏し悪事を働くボディを殺すため、現地に派遣されたセスたち特殊部隊。
双子の弟を失ったレベッカが知りたかった真実には、誰の救いにもならないほどの惨劇があったのです。
物語の終盤あたりで語られているように、セス自身本当は、仲間も現地の難民も両方救い、皆で生き残るために戦いました。
しかしそんなセスの願いも虚しく、子供を殺そうとした仲間ウェルシーを止めるつもりが致命傷を負わせ、殺してしまったこと。
ボディの手下だと疑い、子供を殺してしまったこと。助けようとした仲間のストレッチが、あと一歩のところで間に合わず死なせてしまったこと。
瀕死状態に陥った親友のジョシュを救うため、自分が先に彼の肩を土台にして上がってしまったせいで、溺死させてしまったこと。
セスの想いとは裏腹に、彼の大事な仲間が彼の目の前で死んでいく様は、セス本人でなくてもとても悲しいです。
戦場での惨劇を目の当たりにしたから、オーストラリアに帰還してもなお消えない幻覚、悪夢。
心を病みPTSDを患ったセスの苦しみ、涙ながら辛いと訴える彼の姿に、観ているこちらも胸にグッと込み上げてくるものを感じます。
まとめ
セスたち、国連に雇われた特殊部隊が、紛争下のミャンマーを舞台に、悪事を働く軍人ボディを暗殺しようとするサスペンス・アクション作品でした。
本作の見どころは、そんなセスたちの戦いを描いたアクション場面と、帰還しPTSDを患ったセスの苦悩です。
エンドロール前には、「戦闘を経験する兵士の2割がPTSDに苦しむ。そのうち5割は必要な治療を受けられていない」というテロップが流れます。
戦闘を経験した多くの兵士たちが、セスのようにPTSDに苦しみ、セスのようにPTSDの治療を受けられていないという現実は、決して他人事だと思ってはいけません。
今もこの世界のどこかで、PTSDに苦しむ帰還兵がいたならば、彼らを遠巻きに見るのではなく、レベッカのように手を差し伸べてあげましょう。
そうすることで、セスのようにまだ苦しい気持ちはあれど、どこか救われることだってあるはずです。
PTSDを患い心を病んだ帰還兵の苦しみと、紛争下の国で繰り広げられる軍人同士の激しい銃撃戦を描いた、サスペンス・アクション映画が観たい人には、とてもオススメな作品となっています。