日本公開は2019年11月1日!
今回ご紹介するのは稀代の鬼才ギャスパー・ノエ監督の待望の映画『クライマックス(原題:Climax)』。
予告編ですでにただ事ではない香りがプンプン漂う『クライマックス(原題:Climax)』について、ノエ監督の過去作品にも焦点を当てつつ魅力をお伝えします。
映画『クライマックス(原題:Climax)』の作品情報
【製作】
2018年 (フランス・ベルギー合作映画 )
【日本公開】
2019年11月1日
【原題】
Climax
【監督】
ギャスパー・ノエ
【キャスト】
ソフィア・ブテラ、ギレルミック、ソウヘイラ・ヤケブ、キディ・スマイル、クロード・ガジャン・マウル、ジゼル・パーマー、テイラー・カッスル、テア・カーラ・ショット、シャーリーン・テンプル、レア・ヴラモス、アライア・アルサファー、ケンドール・マグラー、ラクダール・ダーディ、エイドリアン・シソコ、ママデゥ・バスリー、アルー・シディベ、アシュリー・ビスケット、ヴィンス・ガリオット・クマント、サラ・ベラーラ
【作品概要】
監督は『カルネ』(1991)で、カンヌ国際映画祭の批評家週間賞を受賞、その後も『カノン』(1998)や『エンター・ザ・ボイド』(2009)、そして『LOVE 3D』(2015)では3D映像で生々しい性を描くなどセンセーションを巻き起こし続けるギャスパー・ノエ。
主演は『キングスマン』(2015)のスタイリッシュな殺し屋ガゼルでおなじみ、『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女 』(2017)や『アトミック・ブロンド』(2017)にも出演するダンサーで女優のソフィア・ブテラ。
本作は、第71回カンヌ国際映画祭の監督週間で初上映され、芸術映画賞を受賞しました。
映画『クライマックス(原題:Climax)』のあらすじとネタバレ
物語は一面の雪景色の中、血まみれの女性が泣き叫びながら這って行くシーンから始まります。
彼女はどうやら、ある洋館から逃げてきた模様。
画面は変わり、振付師のセルヴァとDJダディがダンサーたちのオーディションをしているシーンに。
フランス国外からも集まったダンサーたちは、自身のダンスに関する思いれや人間関係のこと、恐れていること、セックスや麻薬の体験についてまで赤裸々に語ります。
古い館で催されたパーティーにて、彼らはリハーサルをした後サングリアを飲み、互いに抱えている問題やゴシップを共有して盛り上がります。
しかしパーティーが進むにつれてダンサーたちは異常に興奮し、錯乱状態になりました。
サングリアにLSDが入っているという結論に至った彼らは、最初にサングリアを作ったマネージャーのエマニュエルを疑いますが、彼女も飲んで苦しんでいるため違うと訴えます。
エマニュエルはリハーサルに連れてきていた息子を、興奮状態のダンサーたちから守るため、仕方なく電気室に閉じ込めました。
セルヴァの友人ルーは妊娠しているためお酒を飲まなかったと告白。しかしそこにドムという女性ダンサーがやってきてルーを強く非難し暴力を振るいます。
お腹を蹴られたことにひどいショックを受けたルーは、ダンサーたちがいるホールの方へ走り出しますが、しかしそこでも彼女がサングリアを飲まなかったことからLSDを混ぜた犯人だと責められ、ルーは自傷行為に走ってしまいます。
映画『クライマックス(原題:Climax)』の感想と評価
A hyper-sensory dancehall thriller you need to see to believe. Sofia Boutella stars in #CLIMAX — Opening Nationwide Tomorrow!
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— Climax (@ClimaxMovie) 2019年3月14日
本作品『クライマックス(原題:Climax)』はパリの廃学校にて15日間で撮影されました。
集められたのは映画にはほとんどが初出演というプロのダンサーたち。
ノエ監督は最低限のプロットとキャラクターについてキャストに述べただけで、最初のオーディションのシーン等は即興なのだそうです。
今までもその能力を生かしてアクション、ミュージカル映画に出演していたソフィア・ブテラはじめ個性豊かなダンサーたちの妖艶で華麗なダンスは最大の見所の一つ。
冒頭、約10分間にわたるロングテイクのダンスシーンは圧巻です。
プロットは勿論ですが映像表現が独特なことで知られるギャスパー・ノエ監督。
『アレックス』(2002)ではエンドクレジットから映画を始め、絶望的な結末から時間を遡っていく手法で世界を驚かせました。
『エンター・ザ・ボイド』ではネオン輝く東京の街でドラッグに手を染め、街を徘徊する兄妹の姿を毒々しい色彩と魂が抜けて漂っているかのような映像を。
『LOVE 3D』ではセックスの一部始終をなんと3D映像で。
鮮烈な原色が映像を占めますが、どの作品でも印象深いのは血塗れ、激怒、情熱、官能の赤。
参考映像:映画『LOVE 3D』予告編
本作『クライマックス(原題)』でもボウルにたっぷりと入ったLSD入りのサングリアはつやつやと光って艶かしく、しかしそれは血だまりのように恐ろしくも見えます。
『エンター・ザ・ボイド』では街を時に浮遊して彷徨う視点で映像は主に進んでゆきましたが、同じくドラッグを扱った本作では興奮状態のダンサーたちを客観的視点が多めで映し出します。
人間の血管のように細く入り組んだ館の中を狂ったように踊りながら進むダンサー達の姿、ぐるぐると回転し続けるカメラが恐怖をいっそう煽ります。
延々と鳴り響く音楽に叫び声と笑い声が共鳴し、暴力が蔓延してゆく館は地獄そのもの。
『カノン』の台詞にあるように、「あらゆるモラルに戦いを挑む」のがギャスパー・ノエ監督。
深く結ばれた兄妹同士の魂の行方、輪廻転生を思わせる主題の『エンター・ザ・ボイド』や薬を飲んでどこかへ消えてしまった元恋人と一つになりたいと願う『LOVE 3D』とノエ監督の作家性として、肉体を超えた先にあるもの、人間の中に広がる“空洞”(ボイド)、愛する相手と同じ体になってしまいたいという欲求を描く点が挙げられます。
『クライマックス(原題:Climax)』で舞台に設置された人里離れた洋館に広がるの紛れもない悪夢。
秩序も倫理も全て消え去った“ボイド”から抜け出せなくなった人間たちが、そこで生まれるさらなるカオスに巻き込まれ続ける…。
ノエ監督の過激で挑戦的な作風がどの人間の中にも生じるかもしれない恐ろしい混沌を描くにあたり、狂気をさらに孕んで見事に仕上げていると言えます。
まとめ
目を塞ぎたくもなる凄惨で過激なシーン、流麗なカメラワークとこれまで以上にギャスパー・ノエの世界がこんこんと湧いて完成されている映画『クライマックス(原題:Climax)』。
劇場を出てからもしばらくはその悪夢から醒めないかもしれません。
五感を刺激する狂騒的な恐怖にぜひ溺れきってみてください。
映画『クライマックス(原題:Climax)』は、日本では2019年11月1日に公開予定。