コーエン兄弟の長編映画デビュー作となったハードボイルド・サスペンススリラー!
ジョエル・コーエンが監督を務めた、1984年製作のアメリカのハードボイルド・サスペンススリラー映画『ブラッドシンプル ザ・スリラー』。
妻の不貞を疑った酒場の経営者から、浮気調査を依頼された探偵。
怒り心頭の彼から次に依頼されたのは、妻とその浮気相手を殺して欲しいというものだったという物語は、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
コーエン兄弟の長編映画デビュー作である、ジョン・ゲッツ主演のハードボイルド・サスペンススリラー映画『ブラッドシンプル ザ・スリラー』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
映画『ブラッドシンプル ザ・スリラー』の作品情報
【公開】
1985年(アメリカ映画)
【原題】
Blood Simple
【脚本】
ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
【監督】
ジョエル・コーエン
【キャスト】
ジョン・ゲッツ、フランシス・マクドーマンド、ダン・ヘダヤ、サム=アート・ウィリアムズ、M・エメット・ウォルシュ
【作品概要】
アメリカの映画監督・脚本家・映画プロデューサーであるジョエル・コーエンとその弟イーサン・コーエンが共同製作した、アメリカのハードボイルド・サスペンススリラー作品。ジョエル・コーエンとイーサン・コーエンのコーエン兄弟が長編映画デビューした作品です。
「ザ・フライ」シリーズのジョン・ゲッツが主演を務めています。
映画『ブラッドシンプル ザ・スリラー』のあらすじとネタバレ
アメリカ・テキサス州。酒場の経営者ジュリアン・マーティは妻アビーの不貞を疑い、私立探偵のローレン・フィッセルに浮気調査を依頼しました。
フィッセルからの報告を受け、疑いが確信に変わったマーティは、アビーの浮気相手であるレイと話をすることにしました。
レイは、マーティの店で働く従業員でした。マーティは最初こそ冷静さを保っていましたが、反省のかけらもなくヘラヘラしてるレイを見て、徐々に内に抱いていた怒りがこみあげ、最後に「次店に来たら殺す」と警告しました。
自宅に戻ったレイでしたが、話し合いの際に言われた「アビーには他に男がいるかもしれない」という言葉が脳裏をよぎり、男からの電話を受けたアビーを疑います。
対してアビーも、電話をかけてきたのはマーティだとは言わず、浮気を疑うレイこそ、自分以外に女ができたのではないかと疑いました。
疑心暗鬼に陥ったアビーとレイ。自分を裏切った2人への怒りに燃えるマーティは、眠れぬ夜を過ごしました。
翌朝。マーティはアビーがレイの家を訪れ、彼女と、彼女と一緒に家を出た愛犬を連れ戻そうとします。
しかしアビーに指を折られ腹を蹴られ、彼女の後ろから上半身裸で出てきたレイが銃を持っていたのもあり、マーティは愛犬だけを連れて退散するしかありませんでした。
2人への怒りが頂点に達したマーティは、フィッセルに会いに行き、2人を殺してほしいと依頼します。
そんなことなど知りもしないアビーはレイに、無愛想なマーティとの結婚生活は退屈で仕方なかったと愚痴をこぼしていました。
マーティがアリバイ作りのために旅行に出かけた頃、依頼を引き受けたフィッセルは尾行して突き止めたレイの家に侵入。
アビーの鞄に入っていた銃の銃弾が3発なくなっていることに不審に思いつつ、奥へ奥へと進んでいきます。
翌日の夜。フィッセルからの連絡を受け、マーティは酒場で彼と密会し、報酬の金を支払いました。
しかし酒場の金庫を見て大金に目が眩んだのか、フィッセルは報酬の金を受け取ると同時にマーティを銃撃。「バカはお前の方だ」と言ってその場を立ち去っていきました。
映画『ブラッドシンプル ザ・スリラー』の感想と評価
妻の不貞を疑い、私立探偵に浮気調査を依頼した酒場の経営者マーティ。
彼は最初、アビーとその浮気相手であるレイと、ちゃんと話し合いをしようとしていました。
しかし、アビーとレイは以前からマーティに対して不満を抱いていたため、まともに応じようとしません。
それどころか、2人に反省の色もない。怒りが頂点に達したマーティが、2人に殺意を抱く気持ちも理解できます。
そんなマーティを銃撃したのは、彼にアビーたちの殺害を依頼された私立探偵フィッセルでした。
フィッセルがマーティを銃撃したのは、金庫にある売上金が欲しいからです。ですが、それ以外にも理由があったのでしょう。
3発しか装填されていないアビーの銃を見た直後、フィッセルは2人を殺すことを止め、彼らの死を偽装しました。
フィッセルは、アビーがマーティに恐怖し殺そうとしていたことを悟り、それを知らないで殺害を依頼してきたマーティから2人を守るために撃ったのではないかと考察できます。
売上金目当ての強盗殺人か、あるいは土壇場で正義感が働いて行った犯行か。どちらにせよ、犯行現場に自分の痕跡を残してしまったフィッセルに、明るい未来は訪れなかったことでしょう。
まとめ
不貞を働いた妻と、その浮気相手に殺意を抱いた酒場の経営者が不遇の死を遂げてしまう、アメリカのハードボイルド・サスペンススリラー作品でした。
本作の見どころは、マーティの死を巡って交錯するアビー・レイ・フィッセルの想い、失態をおかした強盗犯に、勘違いしたままマーティに止めを刺した浮気相手という哀しいほど滑稽な殺人事件です。
物語の序盤では駆け落ちしようとするほど愛し合っていたアビーとレイですが、マーティの言葉とその死をきっかけに、互いに互いを疑いすれ違ってしまいます。
レイは最後までアビーと和解できないまま、フィッセルに殺されてしまいました。レイがフィッセル愛用のライターを犯行現場から持ち去ったと、フィッセルが勘違いしただけなのに………。
最後まで物語の登場人物が勘違いしたままで終わった、マーティ殺害事件。マーティ役のダン・ヘダヤやレイ役のジョン・ゲッツ、フィッセル役のM・エメット・ウォルシュの熱演っぷりがとても素晴らしいです。
独特な映像センスとブラックユーモアに満ちたコーエン兄弟の原点である、ハードボイルドタッチなサスペンススリラー映画が観たい人に、とてもオススメな作品となっています。