映画『ヴォイジャー』は2022年3月25日(金)より全国ロードショー!
人類が存続の可能性を求めるべく目を向け始めた宇宙。その新たなステージに向けて出発した若者たちが未知の真実に直面することで巻き起こるさまざまな事件、衝突を描いた映画『ヴォイジャー』。
人類存続の命運を背負い宇宙に赴いた若者たちが、その使命に翻弄されさまざまな感情や思いにさいなまれていく姿より人間の本質を描きます。
自身が手掛けた『ダイバージェント』(2014)に続きニール・バーガー監督が、「人類の未来を託された若者」たちが重責によりさまざまな葛藤や複雑な感情に悩む姿を描いています。
キャストにはタイ・シェリダン、フィオン・ホワイトヘッドら注目作出演で話題沸騰の若手俳優、ジョニー・デップの愛娘であるリリー=ローズ・デップらフレッシュな俳優陣が名を連ね、白熱の演技で物語の真意に迫る絶妙な空気感を演出しています。
映画『ヴォイジャー』の作品情報
【日本公開】
2022年(アメリカ・チェコ・ルーマニア・イギリス合作映画)
【原題】
VOYAGERS
【監督、脚本】
ニール・バーガー
【出演】
タイ・シェリダン、リリー=ローズ・デップ、フィオン・ホワイトヘッド、コリン・ファレル
【作品概要】
未来の地球にて惑星移住計画を託され旅立った若者たちの姿を描くSFサスペンス。彼らがその任務に隠された真実を知ることで葛藤やエゴにさいなまれ、結果的に巻き起こるさまざまな事件より、複雑な人間の思いや感情などを描きます。
『ダイバージェント』(2014)を手掛けたニール・バーガーが、監督と脚本を務めました。主演には『レディ・プレイヤー1』(2018)で一躍注目を浴びたタイ・シェリダン。
ほかにも『パリの恋人たち』(2018)などのリリー=ローズ・デップ、『ダンケルク』(2017)などのフィオン・ホワイトヘッドらフレッシュなメインキャストを、『ロブスター』(2015)などに出演したコリン・ファレルが支えます。
映画『ヴォイジャー』のあらすじ
地球温暖化に伴う食糧難により、滅亡の危機を迎えた未来の地球。
科学者たちは移住可能な惑星を探し出し、2063年に宇宙に向けて探査隊を送ることを決定。多くの候補から選ばれ訓練を受けた30人の子供たちが、その任務を課せられることになりました。
しかし人類の命運を賭けた任務という重責を背負う子供たちの身を案じ、彼らの教官であるリチャード(コリン・ファレル)が宇宙船に同乗。
かくして宇宙船は86年という途方もなく長い計画の旅へと赴きます。
そして宇宙船が出発して10年が経過したある日、成長した子供たちの中でクリストファーとザックは、とあるきっかけにより毎日飲むことを義務化されている一つの薬の正体を突き止めます。
彼らはそれによって自分たちの欲望が制御されていると気づくのでした……。
映画『ヴォイジャー』の感想と評価
近年急速に進展しつつある宇宙開発。世界的に大きな問題が頻発している現在だからこそ、人類が将来的に新たな開拓地を宇宙に求めるという選択は、現実世界においてもはや避けられない目標といってもいいでしょう。
そして人類の居住可能な惑星を見つけるために、人間の三世代にわたる長い旅を経て行われる宇宙探索。その旅のスタートがこの物語の背景にあります。
今現在地球という場所で生活している我々から見れば、物語の登場人物たちは非常に過酷な運命に翻弄されたものだと、同情の気持ちすら沸いてきます。
彼らは優秀な人材として選ばれ、人類の運命を背負うことになるわけですが、結果的にその人生の大半を宇宙船という閉塞空間の中で全うすることになります。
生まれながらに自分の生きる道を選択する権利もないという点において、この使命には残酷さすら感じることでしょう。
ところが物語が進展していくにつれ、その閉塞空間で起こる出来事はなぜか自分の身近な出来事や思いとオーバーラップし、どこか他人事と思えていたこの物語が、自分の意識へと重なっていきます。
目的地に向かう彼らが旅をスタートするのは、まだ彼ら自身の自我が目覚めてそんなに年月も過ぎていないころのこと。物語で描かれるのは、まさに人が人々の間で何かを始める、そんな時と全く同じ状況であります。
これは広く考えれば人間の成長という部分にも重なり、あらゆる人間関係において同様のケースが考えられるわけです。
物語では成長した彼らが、ある出来事をきっかけに、「第二の自我の目覚め」を経験することで大きく進展していきます。
新たに目にした光景に戸惑い、あるいは感動を覚える者。一方で自身の運命に疑問を感じエゴをさらけ出す者。そしてそれでも自身の使命を忘れない者と、彼らはそれぞれに形成された意識に翻弄され大きな嵐に巻き込まれていきます。
彼らの人生は宇宙船という狭い空間で展開していきますが、それは地球という限られた空間の中でさまざまに利権をめぐって争い続ける人類の運命と、それほど遠い距離にあるものではないという認識に近づいていきます。
つまり物語の主題は「新しいこと」を描いているはずなのに、本質的な部分には「基本的なこと」「原始的なこと」を描いているといえます。
その意味で本作は、人間はどんなに進化を遂げても、今まで見たことのない新しい場面に直面したとしても、その本質には輪廻のようなものがついて回るのであろうということを、改めて思い知らされる作品といっていいでしょう。
まとめ
複数の人間をとある環境に置いて、人間の持つ本質をあらわにするといった物語としては、2001年のドイツ映画『es[エス]』を彷彿するような作品であるともいえるでしょう。
『es[エス]』は1971年にアメリカのスタンフォード大学で行われた実験『スタンフォード監獄実験』のいきさつをもとに描いた作品で、結果への賛否はあるものの、ある閉塞空間における役割の分担や権力の有無によって人の性質にさまざまな変化が生じることを示しており、本作の設定に似た環境が垣間見られることでしょう。
このような物語からは人間という存在が続くことが、世界に対して果たしてポジティブなものなのか、あるいはネガティブに作用していくものなのか、などといった本質的な問題点に自己を帰着させられます。
もちろん一人の人間としては、その存在をポジティブなものと捉えていきたいと考える傾向が強いに違いありません。
しかしこの物語のメインキャラクターであるクリストファー、ザック、セラという若者たちの人間性からはそれぞれが三者三様に見えながらも、人間の性質としてはどれも一人の人間の中に持ち合わせているものであることを気づかされ、この世界が持つ性質の複雑さを考えさせられます。
それでもさまざまな困難に心から思い悩みながら存続し続けることが、明るいゴールに向かっているということを信じたい。この物語のエンディングはそんな感情、思いを最大限に示したものとなっています。
映画『ヴォイジャー』は2022年3月25日(金)より全国ロードショー!