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Entry 2017/09/26
Update

映画『散歩する侵略者』あらすじネタバレと感想!ラスト考察も【長澤まさみ×松田龍平×黒沢清代表作】

  • Writer :
  • 馬渕一平

日本が世界に誇る奇才・黒沢清による『散歩する侵略者』をご紹介します。

以下、あらすじや結末が含まれる記事となりますので、まずは『散歩する侵略者』の作品情報をどうぞ!

1.映画『散歩する侵略者』の作品情報


(C)2017「散歩する侵略者」製作委員会

【公開】
2017年(日本映画)

【総監督】
黒沢清

【キャスト】
長澤まさみ、松田龍平、高杉真宙、恒松祐里、長谷川博己、前田敦子、満島真之介、児嶋一哉、光石研、東出昌大、小泉今日子、笹野高史

【作品概要】
国内外で常に注目を集める黒沢清監督が劇作家・前川知大氏率いる劇団「イキウメ」の人気舞台を映画化。

数日間の行方不明の後、夫が「侵略者」に乗っ取られて帰ってくるという大胆なアイディアをもとに、誰も見たことがない新たなエンターテインメントを誕生させた。

夫の異変に戸惑いながらも夫婦の再生のために奔走する主人公・加瀬鳴海に長澤まさみ。侵略者に乗っ取られた夫・加瀬真治に松田龍平。

一家惨殺事件の取材中に侵略者と出会うジャーナリスト・桜井に長谷川博己。桜井が密着取材を申し入れる若き侵略者たち–天野に高杉真宙、立花あきらに恒松祐里。5人は黒沢組初参加、それぞれが映画初共演という新鮮な顔合わせ。

さらに前田敦子、満島真之介、児嶋一哉、光石研、東出昌大、小泉今日子、笹野高史ら豪華オールスターキャストの競演が実現。

2.映画『散歩する侵略者』のあらすじとネタバレ


(C)2017「散歩する侵略者」製作委員会

数日間の行方不明の後、不仲だった夫がまるで別人のようになって帰ってきた。

急に穏やかで優しくなった夫に戸惑う加瀬鳴海。

夫・真治は会社を辞め、毎日散歩に出かけていく。一体何をしているのか…?

その頃、町では一家惨殺事件が発生し、奇妙な現象が頻発する。

ジャーナリストの桜井は取材中、天野という謎の若者に出会い、二人は事件の鍵を握る女子高校生・立花あきらの行方を探し始める。

やがて町は静かに不穏な世界へと姿を変え、事態は思わぬ方向へと動く。

「地球を侵略しに来た」

真治から衝撃の告白を受ける鳴海。

当たり前の日常は、ある日突然終わりを告げる。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『散歩する侵略者』結末の記載がございます。『散歩する侵略者』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
3人の宇宙人は、人類から様々な概念を奪い取り、人類がどのような考えを持って生活しているのか調査するのが目的でした。

その後に通信機で仲間と連絡を取り、地球を侵略しにやってきます。

侵略の話を聞き、真治と共にこの街を出ていくことを決意した鳴海。

そこに桜井が現れ、この3人を絶対に会わせてはならないと鳴海に警告します。

しかし、家を出て車に乗ったところ、天野と立花あきらがやって来ました。

一瞬の間で3人での会話が成立し、地球は侵略されることが決まりました。

鳴海は真治の手を取り、車に乗って逃げ出します。

鳴海と真治が立ち寄ったショッピングモールに、天野たちもやって来ました。

再び鳴海と真治は車に乗り逃げ出しますが、それに気付いた立花あきらが車の目の前に飛び出しました。

はね飛ばされた立花あきらはそのまま息絶えました。

桜井は最後の可能性を信じ、その場にいあわせた人々に向かって大きな声で宇宙人侵略の事実を訴えました。

しかしその話を信じる者は誰もおらず、桜井は観念した様子で天野と共に再びバンに乗り走り出しました。

鳴海と真治は走り続け、ホテルに宿泊します。

侵略まであまり時間が残されていないことを悟った鳴海は真治に自分を殺してほしいとお願いしました。

しかし、ガイドを殺すことは出来ないと真治は拒否します。

そこで鳴海は愛の概念を奪ってほしいと真治に懇願しました。

嫌々ながら鳴海から愛の概念を奪った真治はその複雑さに驚き、一方の鳴海はまるでもぬけの殻のようになってしまいました。

桜井と天野は通信機を発動させるための電源がある工場に着きます。

そこを嗅ぎ付けた政府との銃撃戦になりますが、天野が負傷しながら全員を抹殺。

しかし、銃弾をくらいすぎた天野は瀕死の状態に。

桜井が天野に俺の身体を借りろと提案を持ちかけました…。

スイッチを持った桜井はそれを通信機にはめ込み、通信は成功。

地球への侵略が始まります。

桜井は爆撃してくる戦闘機との銃撃戦になり、最後は息絶えました。

車で海が見える崖まで辿り着いた鳴海と真治。

海を眺めていると、雲の中から宇宙人による攻撃弾が飛んできました。

宇宙人からの攻撃を車を盾にしてなんとか防いだ真治と鳴海。

2ヶ月後…。

突然、宇宙人たちが地球への侵略をストップしたため生き残った人類。

しかし、概念を失ったことによって後遺症に悩まされる人たちは多数残されています。

真治は愛の概念を失ったことで、あらゆる感情も喪失してしまった鳴海を側で一生支えることを誓いました。

3.映画『散歩する侵略者』の感想と評価


(C)2017「散歩する侵略者」製作委員会

原作・劇団イキウメの一ファンである黒沢清が監督した映画版「散歩する侵略者」。

まず、誰もが惹き付けられてしまうこの作品の圧倒的な魅力が、概念を奪うという斬新な設定。

宇宙人から概念を奪われた者はそのことを全く理解できなくなってしまいます。

家族の概念を奪われた者は家族に対して激しい拒絶を見せ、所有の概念を奪われた者は逆に人生がイキイキとしだすという皮肉。

この設定が抜群に面白く、我々観客はその事について考えさせられる仕掛けになっています。

この作品には人間を乗っ取った3人の宇宙人が出てきますが、性格はバラバラ。

女子高生の立花あきらは暴力的で短絡的。アバンタイトルの出し方含め最高にワクワクさせてくれるオープニングから物語は始まります。

本作のアクションパートも担っている大事な役割です。

対する青年の天野は飄々としていてつかみどころがない。粗野なジャーナリスト桜井とのバディものとして楽しませてくれます。

ラストは一体どっちだったのか?

そこの捉え方でより物語の深みは増してくるかもしれません。

そして、中年の真治は天然でかわいらしい。関係が上手くいってない妻の鳴海との物語は本作で最も重要なパートです。

夫婦の再生のお話をトリッキーな方法で構成し、壮大な愛の物語へと昇華させていきます。

黒沢監督らしい不穏な演出も随所で冴え渡っています。

怪しく風が吹き始め、照明は目まぐるしく変化していき、車中はお決まりのスクリーン・プロセス(昔の映画で使われた特撮技法)、噛み合わない会話、謎のジャンプカットなどなど。

とにかく気味の悪さと居心地の悪さを感じ、どこか抽象性が増していきます。

それと同時に変な笑いが生じるのも黒沢清映画の不思議な魅力(東出昌大はやっぱスタイル良すぎ!)。

そして、出演している俳優のいずれもがどの作品でも毎回素晴らしい演技を披露しています(もちろん本作も)。

ぜひ劇場で観て、映画ならではの面白さを味わっていただきたい一作です。

まとめ


(C)2017「散歩する侵略者」製作委員会

黒沢清映画の魅力を言葉で表すのは至難の技であり、それこそ映画的としか表現出来ない体験です。

そのため好みははっきり別れてしまうので万人にはおすすめは出来ませんが、本作はわりと娯楽性の高い作品ですので、入門としてはピッタリだと思います。

しかし、その独特の映画スタイルは唯一無二であり、一度ハマるとなかなか抜け出せなくなりますよ…。

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