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【ネタバレ】映画『信長協奏曲』あらすじ感想と結末評価レビュー。小栗旬演じる2人の信長の「本能寺の変」はどうなる?大人気ドラマの劇場版

  • Writer :
  • 谷川裕美子

小栗旬が2役を演じる大人気歴史エンターテイメントの劇場版

石井あゆみ原作の人気同名コミックを、小栗旬主演で実写化したテレビドラマの劇場版『信長協奏曲』。

銀魂」シリーズの小栗旬が戦国時代にタイムスリップした現代の高校生サブローと、彼にそっくりだった織田信長の2役を好演。信長が命を落とす「本能寺の変」の行方が描かれます。

キャストには小栗旬をはじめ、柴咲コウ、向井理、山田孝之らテレビ版の豪華メンバーが集結。監督もテレビ版を手がけた松山博昭が続投します。

信長になり代わったサブローは、どのようにして最大の危機と向き合うのでしょうか。見事な伏線にうならされる、傑作エンターテイメントの魅力をご紹介します。

映画『信長協奏曲』の作品情報


(C)石井あゆみ/小学館
(C)2016 フジテレビジョン 小学館 東宝 FNS27社

【公開】
2016年(日本映画)

【原作】
石井あゆみ

【監督】
松山博昭

【脚本】
西田征史、岡田道尚、宇山佳祐

【編集】
平川正治

【キャスト】
小栗旬、柴咲コウ、向井理、山田孝之、濱田岳、古田新太、髙嶋政宏、藤ヶ谷太輔、水原希子、でんでん、勝矢、阪田マサノブ、阿部進之介、北村匠海

【作品概要】
戦国時代に突然タイムスリップした高校生サブローが、顔が瓜二つだった信長と入れ替わり、平和な世界構築に向けて奮闘する歴史エンターテイメントドラマの劇場版。

石井あゆみ原作の人気同名コミックを、松山博昭がドラマに引き続き監督を務め映像化しました。信長の運命の日「本能寺の変」を、独自の解釈で魅力的に描きます。

2役を演じる主演の小栗旬に加え、柴咲コウ、向井理、山田孝之、濱田岳ら豪華キャストが出演し人気を博しました。

映画『信長協奏曲』のあらすじとネタバレ


(C)石井あゆみ/小学館
(C)2016 フジテレビジョン 小学館 東宝 FNS27社

歴史が大嫌いな現代の高校生サブローは、ひょんなことから戦国時代にタイムスリップしてしまいました。そこで自分にそっくりな青年に出会います。その人はなんと本物の織田信長でした。

病弱な本物の信長に頼まれ、信長として生きることになったサブローは、裏切りや陰謀が渦巻く戦国時代を生き抜いていくこととなります。

独自のアイデアでさまざまな戦略を成功させ、天下統一も間近と思われた矢先、歴史の教科書を手にしたサブローは信長が本能寺の変で死ぬことを知ります。

一方、本当の信長は、明智光秀に姿を変えてサブローの家臣となり、入れ替わる機会をうかがっていました。

余命を知りショックを受けている信長に、本願寺が挙兵して上杉謙信と組もうとしているという報告が入ります。羽柴秀吉は、明智光秀が本物の信長であることに気づいていました。自分の村を焼き払った信長を深く憎んでいた秀吉は、信長を呼び出してサブローを討つよう唆します。

サブローは帰蝶を三河に避難させようとしますが、彼女は聞き入れようとしません。理由を聞かせて欲しいと言う帰蝶に、サブローは自分が未来から来たこと、そして自分が間もなく死ぬ事実を話しました。

その話を、偶然池田恒興も聞いてしまいます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『信長協奏曲』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『信長協奏曲』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)石井あゆみ/小学館
(C)2016 フジテレビジョン 小学館 東宝 FNS27社

その頃、光秀に扮した信長は、サブローを討つために戦場を離れて安土城に向かっていました。秀吉は、その光秀を討って名を上げ天下を獲ることをもくろみます。

サブローと同じく未来人である松永蝉正久秀は、光秀が戦列を離れたことを本願寺に教えました。好機を捕らえた本願寺に天王寺砦にを攻めまれ、光秀は窮地に陥ります。サブローは迷わず先陣を切って光秀を助けに向かい、勝利をおさめます。

城に戻ったサブローは、生きることを諦めないと帰蝶に話し、祝言をあげようと言いました。二人は共に生きることを約束します。

一方、松永が織田を裏切ったことに気づいた秀吉は、松永の命を奪いました。

祝言を本能寺であげることにしたサブローは、朝廷に寄るために先に出発します。一方、大阪で会ったカッパがサブローと同じスマホを持っていたと情報を得た帰蝶は、大阪へ向かいました。

そんな帰蝶に、秀吉は自分の家来をつけます。そして、信長にサブローを本能寺で殺すよう命じ、言うことを聞かなければ帰蝶を殺すと脅しました。自分が以前信長によって焼き払われた村の被害者だったことを明かします。

帰蝶は牢にいた外人・アダムが未来からタイムスリップしてきた異人と知ります。そして、日本史好きな彼から、信長が本能寺で光秀に殺される史実を知らされました。

その頃、光秀は素顔を家来に見せ、自分こそが本当の信長であること、そしてこれから偽物を討つと宣言し本能寺へ向かいます。秀吉はその光秀を討つために、軍を率いて後を追いました。

本能寺に軍が攻め入り、サブローは敵が光秀だと知らされます。肩に矢を受けたサブローは寺の奥に逃げ込みますが、炎はすでに燃え広がっていました。

そんなサブローの目の前に光秀が姿を現し、帰蝶を人質にとった秀吉から、サブローを殺すよう命じられたことを話します。

信長はサブローを妬み憧れていたという本心を明かし、逃げて信長としての天命を果たすまで死ぬなとサブローに言いました。

辛いことはたくさんあったけれど、信長になれてよかったと、サブローは信長に感謝を告げ、寺を後にします。

その後、信長は秀吉に頭を下げて許しを乞いますが、深い恨みを持つ秀吉は願いをはねつけます。サブローも帰蝶もすべてを奪うからお前の死は無意味だと冷酷に言い渡してから、秀吉は信長を斬りました。

秀吉軍は帰蝶のいる屋敷に攻め入りますが、帰蝶は走って逃げ出し山奥に隠れ、サブローは再会します。神社に逃げ込んだ二人の前に明智軍が現れて言いました。「織田信長様ですね」

織田の家臣らがサブローを光秀だと信じ込んでおり、秀吉がサブローを謀反人として討つことで天下を獲るつもりであることを家来達から聞かされたサブローは、運命を変えられないことにショックを受けます。

翌朝一人で出て行こうとしたサブローを帰蝶が追いました。サブローは彼女を絶対忘れないと言い、歴史は変わらずとも思いは未来に必ずつながるから行かねばならないと話します。

夫が決めたことなら送り出すのが妻の務めだと言う帰蝶を抱きしめ、サブローはこの時代で帰蝶と会えてよかったと言いました。

明智軍の先陣を切り、サブローは秀吉軍に立ち向かいます。一方、恒興は帰蝶のもとに行き着きました。

恒興はサブローから頼まれていた指輪を帰蝶に渡し、これがあれば殿はいつまでも帰蝶の傍にいるのだと伝えました。帰蝶の目からとめどなく涙が流れます。

取り押さえられたサブローは、秀吉の前に連れて行かれました。光秀を殺した理由は復讐だったと語る秀吉に、サブローは大切な人を亡くして傷つくことのない世の中を作ることを秀吉達に託すと言いました。たとえ自分が死んでも、思いを未来につなげてほしい、と。

平和な時代はいつか必ず来ると言うサブローに刃が振り下ろされた瞬間、サブローは現代にタイムスリップしていました。

やがて、サブローの元に、帰蝶に助けられたタイムスリッパーのアダムから手紙が届きます。サブローの遺体が突然消えたことを知った帰蝶は、サブローが未来に戻ったと考え、家康に仕えることとなったアダムにビデオメッセージを預けていました。

「色々変わった中で、サブローの残した思いは変わらなかった」と帰蝶が画面から語りかけます。そして、サブローの思いは歴史を作ったのだ、と。

この指輪があれば私達はつながっていると話す帰蝶を見つめながら、サブローは笑顔で涙を流しながら言いました。

「ありがとう、帰蝶」。サブローはタイムスリップした場所にそびえる大きな木を見つめ、心新たに歩き出しました。

映画『信長協奏曲』の感想と評価


(C)石井あゆみ/小学館
(C)2016 フジテレビジョン 小学館 東宝 FNS27社

サブローと帰蝶、信長の悲しい三角関係

ごく普通の高校生だったサブローがタイムスリップして信長と入れ替わり、平和な世を作るために奮闘するSFドラマです。

ちゃらんぽらんだったサブローは、目の前でバッサバッサと殺されていく人々を見て、この地獄のような世を変えねばならないと立ち上がります。彼がぐんぐん成長していく様から目が離せなくなる一作です。

自分と愛する人が生き残るためには、敵人を殺し続けねばならない地獄。それは、サブローにとって耐えがたい世界でした。

この物語の最大のポイントは、本物の信長が、一度は譲り渡した信長の立場を再び取り返すべく、明智光秀になりすまして、虎視眈々と機会をうかがっているという設定です。

劇中でも語られるように、サブローが太陽なら光秀は月のような存在。そんな光と影そのものの二人を、小栗旬が見事に演じ分けています

本作公開から数年後、小栗は大河ドラマで北条義時役を務めますが、天真爛漫な若者の時代から、権力者となり暗い瞳を持つようになる壮年期までを見事に演じて話題となりました。本作で一人二役を演じた経験が熟成した末に生まれた名演だったのかもしれません。

新たな世を作ろうとするサブローを支えたのは、美しく強い妻・帰蝶でした。変わり者のサブローを「うつけ」と平気で呼ぶ気の強い女性ですが、実は情に厚く、天真爛漫なサブローに心惹かれていきます。

やがて、彼が本当の信長ではないと知りながら、帰蝶はサブローを愛するようになりました。その様子を見ていた光秀に扮した信長は、嫉妬に苦しみます。

信長が間もなく死ぬという史実を知った後も、サブローは生きることを諦めないと帰蝶に誓い、二人の心は固く結ばれます。

しかし、秀吉に帰蝶を人質にとられた光秀=信長は、彼女への愛ゆえにサブローを本能寺で討つ道をとるのです。このクライマックスは本作最大の見どころとなっています。

光秀として捕らえられ秀吉に斬られたサブローは、その瞬間現代に戻ります。そんな彼のもとに遠い時を経て届いたのは、帰蝶からのビデオレターでした。

二度と会えなかろうと、自分たちはいつもつながっている」という二人の深い絆に、心揺さぶられずにはいられません。本物の信長も、その死をもって二人の愛を守ったと言えるのかもしれません。

ダークヒーロー・秀吉の存在感


(C)石井あゆみ/小学館
(C)2016 フジテレビジョン 小学館 東宝 FNS27社

本作で重要かつ魅力的に描かれているのは、山田孝之演じるダークヒーローの羽柴秀吉です。

秀吉は幼少期、信長の気まぐれによって自身の村を焼かれてすべてを失ったことから、深い憎しみを抱いています。

光秀は本当の信長だと知った日から、秀吉の復讐計画は冷徹に進められました。山田孝之の見せる鬼のような表情に、思わず震えることでしょう。

本物の信長が光秀に扮している設定と共に、信長に復讐心を燃やす秀吉がすべての歴史を動かしていくという設定が、ストーリーに大きなうねりを生み出しています

最初は、本物の信長が織田に戻るべきだと唆していた秀吉。その後、自身の恨みを明かした上で、堂々と帰蝶を人質にとり、サブローを本能寺で討つよう命じます。

信長を本能寺で斬る最後の時にも、彼の死後にはサブローも帰蝶も殺すと言い渡し、「お前の死は無駄死にだ」と徹底的に信長を叩きのめします。

冷酷さの裏にある、消しようのない悲憤までを表現する山田孝之の熱演に注目です。

まとめ


(C)石井あゆみ/小学館
(C)2016 フジテレビジョン 小学館 東宝 FNS27社

小栗旬が偽信長と本物の信長の2役を演じ分けて話題となった人気ドラマ『信長協奏曲』「本能寺の変」をクライマックスに据えた劇場版は、さらにスリリングで見応えある作品となっています。

主人公サブローの人間的成長と共に、彼に心を開いて関係を結んでいく周囲の魅力的な人達からも目が離せません

忠臣・池田恒興を演じる向井理、腹黒い秀吉役の山田孝之、濱田岳演じるまっすぐな心根の家康、そして柴咲コウ演じる夫を心から愛する妻・帰蝶。豪華キャストがそれぞれの人物の心の機微を丁寧に演じます。

予測不能な展開を見せるストーリーと共に、濃密な人間ドラマをたっぷりお楽しみください。



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