映画『横須賀綺譚』は2020年7月11日(土)より新宿K’sシネマほかにて全国順次公開!
東京にて仕事に追われる日々を送っていた青年・春樹が、東日本大震災で被災し行方不明にとった恋人の消息を知る旅から始まる、奇妙な物語を描いた映画『横須賀綺譚』。
本作が劇場長編デビュー作となる大塚信一監督は、日夜ラーメン屋の店員で働きながら、5年の歳月をかけてこの映画を完成。キャストには本作で映画初出演を果たした小林竜樹をはじめ、『終わってる』『Motherhood』で知られるしじみ、瀬々敬久監督作品をはじめメジャー・インディペンデント問わず数多くの作品で活躍する川瀬陽太らが出演しています。
このたび2020年7月11日(土)、新宿K’sシネマにて映画上映後での初日舞台挨拶が開催されました。大塚信一監督をはじめ、キャストのしじみ、川瀬陽太、湯舟すぴか、長屋和彰らが登壇。記念撮影以外ではマスクを着用しての対応となりましたが、イベントはまさに盛況を迎えました。
本記事では、その『横須賀綺譚』初日舞台挨拶の模様をお送り致します。
CONTENTS
映画『横須賀綺譚』初日舞台挨拶リポート
映画『横須賀綺譚』へのそれぞれの思い
このたび劇場公開を迎えた映画『横須賀綺譚』について、本作が自身初の劇場長編デビュー作となる大塚信一監督はフィリップ・K・ディックの短編小説『地図にない町』(1953)から着想を得たと明かしました。また物語の舞台はタイトルにも含まれている横須賀ではなく、当初は大塚監督の故郷でありかつて原爆が落とされた長崎にしていたものの、現在の社会にとっての「地図にない町」とは福島ではないかと感じ、現在の物語へと近づいていったと語りました。また大塚監督は、『横須賀綺譚』を「リアリズムとSFが入り混じる作品」と形容。その上で一筋縄では捉え切ることのできない本作を楽しんでほしいと話しました。
春樹は横須賀へと向かい出会った男・川島を演じた川瀬陽太は、かつて大塚監督が制作した前作が十分な劇場公開を行うことができなかったという経緯に触れた上で、大塚監督が『横須賀綺譚』の制作にあたりその事情を知る自身へとキャスティングの相談をしたことへの意味を言及。またその際に読んだ脚本について、「不思議ではあるけれど地に足のついた物語」だと感じたと語りました。
小林竜樹演じる主人公・春樹の元恋人・知華子役を務めたしじみは、本編ではカットされた知華子の「幽霊みたい」というセリフ通り、自身がこれまでにたびたび幽霊役を演じてきたことを告白。また撮影現場では、川瀬も語っていたように時には作品についてキャスト・スタッフ間で衝突が起きることもあったと明かし、その様子を自身の視点から語った現場リポート(映画『横須賀綺譚』公式HPにて掲載)も読んでほしいと話しました。
知華子の友人・絵里役の湯舟すぴかは、自身が演じた絵里という役は春樹とはある意味では真逆の役柄であり、絵里を演じる際にも小林・しじみの二人と芝居について相談をしたことを明かしました。一方で、春樹の会社での後輩・梅田役を務めた長屋和彰は、完成した『横須賀綺譚』を試写で鑑賞した当初は「自分が演じた梅田という役は、もしや映画における現実には存在しない役だったのでは」と少し不安になったと告白。それに対し川瀬は「この映画は『綺譚』だから」と優しくツッコミました。
そして本作にて映画初主演を務め、残念ながら今回の初日舞台挨拶には登壇できなかった小林からも、大塚監督を通じてコメントが届きました。
大塚監督よりこの映画の企画書を頂いた時に、企画テーマに、人は過去の辛い出来事を忘れたい、でも忘れられない。でも、忘れられないと生きていけない。だから、記憶を改ざんする。昨今のフェイクニュースなどは、人間の本質に根ざしたものではないか、と書いてありました。僕は当時、日常における物事や事件の風化の早さについて、何故人は、痛みや辛さを次々と忘れていけるのか、そんなことで良いのか、と強烈な違和感を感じながら、生きていた時期で、そのテーマを読んだ時に、是非挑戦してみたい!と思い、大塚監督にお会いした事をはっきりと覚えています。
記憶を改ざんしてでも、忘れなくては生きていけない事、決して忘れてはいけないこと。『横須賀綺譚』が我々誰もが持っているそれらを、改めて考えるきっかけとなれていたら、幸いです。
(小林竜樹さんコメントより抜粋)
幻のファースト/ラストシーン『もうひとつの横須賀綺譚』
また舞台挨拶の話題は、映画『横須賀綺譚』のパンフレットに。
2020年7月11日(土)より新宿K’sシネマにて予約受付が開始され、7月14日(火)以降からはK’sシネマでの店頭販売も開始される本作のパンフレット。その中には、撮影は行われたものの止む無くカットされた幻のファーストシーン&ラストシーンを編集した特別映像『もうひとつの横須賀綺譚』を観られるQRコードリンクが掲載されています。
大塚監督は特別映像『もうひとつの横須賀綺譚』について、様々な理由からこの『もうひとつの横須賀綺譚』を撮影したものの、クランクアップ直後にそのことを激しく後悔したと告白。やがてスタッフとキャストを一年かけて説得し、現在の『横須賀綺譚』におけるファースト&ラストシーンの追加撮影を行い映画を完成させたという制作経緯を説明。そして今回のパンフレットを介しての限定公開については、「制作過程のウロウロした試行錯誤を観ていただき、観客の皆さんに映画つくりの現場を想起してもらいたい」という判断に至ったことを語りました。
さらにその後、映画の劇場公開を記念し、映画『横須賀綺譚』公式TwitterにてTwitterキャンペーン「上田慎一郎くんを探せ!」を開催することも発表されました。
実は本作には、映画制作時に監督補を務め大ヒット作『カメラを止めるな!』(2017)の監督としても知られている上田慎一郎が、作中のある2ヶ所のシーンにエキストラ出演しています。このたびのキャンペーンは、その2ヶ所の登場シーンをTwitterハッシュタグ「#上田慎一郎を探せ」にて回答・投稿された方を対象に、抽選10名でサイン入りパンフレットをプレゼントするという企画です。
大塚監督は監督補を務めた上田について、脚本の相談だけでなく撮影の中で多くのプレッシャーを受けていた自身を励ましてくれたと告白。様々な面で『横須賀綺譚』の制作と撮影を支えてくれていたことを明かしました。
映画『横須賀綺譚』告知・キャンペーン詳細情報
【映画『横須賀綺譚』公式Twitter】
キャンペーン・舞台挨拶イベント情報をはじめ、映画『横須賀綺譚』に関する新規情報を日々更新中。
【映画『横須賀綺譚』公式HP】
映画『横須賀綺譚』の今後の劇場公開情報などの詳細情報を掲載。
新型コロナウィルスの影響下で
新宿K’sシネマ・控え室にて
終盤、締めくくりの挨拶を迎えた初日舞台挨拶。
しじみは『横須賀綺譚』に込められた意味について、自身の中でもまだ噛み砕き切れていない部分も少なからず存在することに触れた上で「その参考としても映画を鑑賞した人々の感想をお聞きしたい」と話しました。また長屋も、SNSというツールで投稿される感想という形で、本作が今後も多くの方に観られるために力をお借りしたいと劇場に訪れた人々に呼びかけました。
湯舟は新型コロナウィルスによる混乱と影響が続く現在に触れつつ、「もし現在よりも前に劇場公開を迎えていたら、『横須賀綺譚』から伝わってくるものの意味合いは変わっていた」「映画は一度劇場公開を延期されたものの、現在の時期に公開されたという点では寧ろよかったのかもしれない」と語りました。
また川瀬も、2011年3月11日以降のの社会を「震災によって変わってしまった世界」と表現した上で、新型コロナウィルスによる変化の過渡期に至った世界である現在の社会にも本作は有効な映画だと感じているとその心境を明かしました。そして大塚監督は、『横須賀綺譚』を「一人で観て一人で反芻するような映画」ではなく「皆で議論することによってより意味が生まれる映画」であり、そのためにもSNSを通じて多くの感想を知りたいと話しました。
映画『横須賀綺譚』の作品情報
【公開】
2020年(日本映画)
【監督・脚本】
大塚信一
【キャスト】
小林竜樹、しじみ、川瀬陽太、長内美那子、湯舟すぴか、長屋和彰、烏丸せつこ
【作品概要】
名匠・長谷川和彦を師とする大塚信一監督の長編映画デビュー作。「東日本大震災で亡くなったはずのかつての恋人が、横須賀で生きている」という謎めいた情報を頼りに旅に出る男の物語であり、大塚監督は脚本も自らが手掛け、5年の歳月をかけて本作を完成。カナザワ映画祭2019「期待の新人監督」部門にも正式出品されました。
主人公・春樹を演じるのは『恋の罪』(2011)で映画初出演を果たし、映画『菊とギロチン』『真っ赤な星』(2018)、そのほか舞台作品・CMなどでも活躍中の小林竜樹。また春樹の元・恋人の知華子役には、映画『終わってる』(2011)『Motherhood』(2009)出演のほか、Vシネ、舞台など幅広く活動する女優しじみ。さらに春樹のライバルとなる川島役は、小林竜樹とともに『菊とギロチン』にも出演、瀬々敬久監督作品ではお馴染みの川瀬陽太が務めています。
映画『横須賀綺譚』のあらすじ
2009年3月、東京。知華子は友達の絵里と引越し作業をしています。小説家を目指していた知華子の荷物は、たくさんの本であふれていました。彼女が家を去ろうとした時、酔っ払った春樹が帰ってきます。
「今日、引越しって知ってたよね」と責め立てる絵里。「いいの。この人いいひとよ。でもそれって、欲がなくて、執着もしない。愛がない、薄情な人ってこと」……知華子は、すでに諦めたような穏やかな顔をしていました。
父親の介護のため実家の福島に帰ることにした知華子と、それならばと別れを決めた春樹。これからの知華子との生活よりも、東京での自身の仕事を優先した上での選択でした。
それから9年後の東京。証券会社で働く春樹は、後輩もでき、仕事のノルマ達成に追われていました。その仕事ぶりは、契約を取り付けるためなら違法ギリギリの行為もいとわないものでした。
そんなある日、春樹はばったり絵里に再会します。そこで、知華子が震災後行方不明となったままだと知らされます。「いままで知らなかったの?本当に薄情だね」。
やがて春樹は仕事の休暇を取り、ある場所へと向かいます。それは知華子が震災時に亡くなった場所と思われる、彼女の故郷でした。
震災を経て、多くのものが変わってしまったのであろう知華子の故郷を見つめる春樹。すると彼の携帯電話に、一本の着信が入ります。
「1回ぐらい遊びに来なよ」……それは、知華子が出て行く時の言葉でした。沈黙を経て続いた「来ないね」……それは、確かに知華子の声でした……。
まとめ
2020年7月11日(土)、新宿K’sシネマにて劇場公開を迎えた映画『横須賀綺譚』。その初日舞台挨拶は、監督・キャスト陣の作品に対する思い、『もうひとつの横須賀綺譚』やTwitterキャンペーン「上田慎一郎を探せ!」などの発表など盛りだくさんの内容でした。
また今回の初日舞台挨拶のみならず、新宿K’sシネマでの上映期間中には連日舞台挨拶イベントを開催、大塚信一監督や今回は不参加であった小林龍樹をはじめ、様々なゲストが登壇する予定。それら舞台挨拶イベントやTwitterキャンペーンの詳細は、今後も映画公式Twitterにて更新中です。
映画『横須賀綺譚』は2020年7月11日(土)より新宿K’sシネマほかにて全国順次公開!