第19回東京フィルメックスが、2018年11月17日(土)~11月25日(日)の9日間、有楽町朝日ホールほかで開催されます。
2018年のラインナップが発表され、東京フィルメックスならではの作品たちが勢揃いしました。
その中でも注目は、広瀬奈々子監督デビュー作、柳楽優弥主演の映画『夜明け』。
本名を明かすことができない青年と、忘れることができない過去を抱えた男の交流を描いた本作。
第19回東京フィルメックスの概要と、映画祭の目玉である東京フィルメックス・コンペティション選出の映画『夜明け』の見どころをご紹介します。
CONTENTS
第19回東京フィルメックスの概要
第19回東京フィルメックスの開催期間は、2018年11月17日(土)~11月25日(日)の9日間です。
有楽町朝日ホール(有楽町マリオン)をメイン会場に、TOHOシネマズ日比谷、有楽町スバル座でも上映が行われます。
東京フィルメックスは、独創的な作品をアジアを中心とした世界から集めた、国際映画祭です。
映画文化の未来を大切にし、より進化した豊かな映画文化を迎えるための“あるべき映画祭”をめざしています。
東京フィルメックス・コンペティションとは
世界的に大きな注目を集めるアジアからは、才能ある新鋭たちが次々と登場しています。
そんなアジアの新進作家が2017年から2018年にかけて製作した作品の中から、10作品が上映されます。
また5名の国際審査員が、最優秀作品賞と審査員特別賞を選び、11/24(土)に行われる授賞式で発表します。
全10作品のラインナップ
『シベル』(トルコ映画)
監督:チャーラ・ゼンジルジ、ギヨーム・ジョヴァネッティ
『アイカ(原題)』(ロシア・カザフスタン合作映画)
監督:セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ
『マンタレイ』(タイ映画)
監督:プッティポン・アルンペン
『幻の土地』(シンガポール映画)
監督:ヨー・シュウホァ
『幸福城市』(台湾映画)
監督:ホー・ウィディン
『自由行』(台湾映画)
監督:イン・リャン
『轢き殺された羊』(中国映画)
監督:ペマツェテン
『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト(仮題)』(中国映画)
監督:ビー・ガン
『象は静かに座っている』(中国映画)
監督:フー・ボー
『夜明け』(日本映画)
監督:広瀬奈々子
コンペティションに選ばれた唯一の日本映画『夜明け』
中国、台湾、トルコなど諸アジアの映画に並び、コンペティションに選出された唯一の日本映画『夜明け』。
是枝裕和、西川美和の監督助手をつとめた広瀬奈々子が、柳楽優弥を主演に迎えた監督デビュー作です。
第23回釜山国際映画祭のニュー・カレント賞にノミネートされた事でも話題になりました。
映画『夜明け』の作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【監督・脚本】
広瀬奈々子
【キャスト】
柳楽優弥、YOUNG DAIS、鈴木常吉、堀内敬子、芹川藍、高木美嘉、清水葉月、竹井亮介、飯田芳、岩崎う大(かもめんたる)、小林薫
【作品概要】
是枝裕和、西川美和が立ち上げた制作者集団「分福」に所属し、是枝、西川作品で監督助手を務めた広瀬奈々子の長編監督デビュー作。
広瀬監督自ら書き下ろしたオリジナル脚本で挑んだ意欲作。
活躍を続ける柳楽優弥が主人公シンイチ役を務め、シンイチと心を通わせて行く哲郎役は小林薫が演じます。
映画『夜明け』のあらすじ
ある日、川辺を歩いていた初老の哲郎は、水際に倒れていた1人の青年を見つけます。
哲郎の自宅で介抱された青年は自ら「シンイチ」と名乗りました。
哲郎とシンイチは徐々に心を通わせ、哲郎は自身が経営する木工所でシンイチに技術を教え、周囲もシンイチを受け入れていきます。
しかし、シンイチは本名を明かすことができないある秘密を抱えていて、哲郎もまた決して忘れることができない過去がありました。
やがて青年の過去が明らかになった時、2人の人生が思わぬ方向に動きだして…。
映画『夜明け』の広瀬監督とキャストとの信頼感
広瀬監督は、同世代の柳楽とは撮影現場で互いが納得するまで対話を重ね、小林からはセリフの間から美術にいたるまで具体的なアイデアをもらったといいます。
そんな真摯な広瀬監督の第一印象を、柳楽はこう語っています。
「初めてお会いした時から嘘のない目をしていて、この人について行こうと思える、とても心強い監督でした」
大ベテランの小林薫も、撮影時を次のように述壊しています。
「女性で初監督ということでしたが、シミュレーションを何度としたのか、頭のなかにしっかり出来上がったモノがあったんでしょうね。ブレずに指示していたことが印象的でした」
広瀬監督のデビュー作への熱意と真っすぐなお人柄を感じるコメントですね。
また、柳楽と小林はNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の撮影から続いて1年以上を共に過ごした仲。
お互い信頼を寄せ、スムーズに撮影に入って行けたと言います。
広瀬監督は本作について「誰もが妥協せず、一つひとつのことに悩むことができた」と語っています。
本作がコンペティションにノミネートされたのは、こうした信頼感の賜物なのでしょう。
映画『夜明け』の主演・柳楽優弥の目力
参考映像:『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)
是枝裕和監督の『誰も知らない』(2004)でデビュー、同作で第57回カンヌ国際映画祭にて史上最年少の14歳で、さらに日本人で初めて男優賞を受賞した柳楽優弥。
当時演技の経験がなかったにもかかわらず、是枝監督に「目に力がある」と主役に抜擢されました。
14年経った今もその目力は健在。いえ、ますます成長を遂げています。
その目力をじっくりと味わえるのが、『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)です。
若者たちの欲望と狂気を描いた青春群像劇『ディストラクション・ベイビーズ』で柳楽が演じたのは、暴走しっぱなしの狂気を有する怪物のような主人公。
ほぼセリフはなく、淡々と、でも嬉々として暴力を振るって行きます。
その暴力に動機はありません。彼にとっての純粋な“本能”のみ。
しゃべらずとも、大きな感情表現が無くても、その色気溢れる“目力”に捕らえられてしまったら、吸い寄せられるようにこちらも彼を追うしか無いんです。
本作『夜明け』では、人に言えない過去を背負った青年を演じる柳楽優弥の、口で多くは語らなくても“目”が語る、そんな演技が見られるのではないかと期待しています。
まとめ
是枝裕和監督の愛弟子・広瀬奈々子監督のデビュー作に、是枝監督作『誰も知らない』で流星の如く現れ活躍を続ける柳楽優弥が主演する本作。
運命の巡り合わせを感じる映画『夜明け』は、監督と出演者の信頼で作られた作品です。
第23回釜山国際映画祭のニュー・カレント賞や、第19回東京フィルメックスのコンペティションに選出された実力に、胸が高鳴ります。
広瀬監督は、自ら書き下ろした脚本について、次のように語っています。
「震災以降の社会や権力のあり方について、自分の中で悶々としていたものを全てぶつけるつもりで書き始めた」
広瀬監督が全てをぶつけた脚本に、当代きっての“目力”怪優・柳楽優弥がぶつかる。
どんな相乗効果をもたらすのか、興味が尽きません。
2019年1月18日(金)の全国公開に先駆けて、2018年11月17日(土)~11月25日(日)に開催される第19回東京フィルメックスにて上映される映画『夜明け』。
東京フィルメックスのスケジュールが発表され次第、当サイトでも追ってお知らせいたします。