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Entry 2019/01/31
Update

ベトナム映画最新の2作品で現在と歴史を知る!『漂うがごとく』『ベトナムを懐(おも)う』が3月公開へ

  • Writer :
  • 中村綾子

日越国交樹立45周年記念のイベント「ベトナム映画祭2018」で上映された『漂うがごとく』と『ベトナムを懐(おも)う』が、3月23日(土)より新宿K’s Cinema にて公開することが決定しました!

©Vietnam Feature Film Studio1,Acrobates Film

日本とベトナムが国交を樹立してから2018年で45年になります。

毎年9月には神奈川県にてベトナムフェスタが行われていますが、2018年は共催企画としてベトナム映画の特集上映が行われました。

その時に上映された作品の中でもベトナムの現在地を描き出す、珠玉の2本をセレクトして劇場公開することが決まりました。

今回は『漂うがごとく』と『ベトナムを懐(おも)う』の2本についてご紹介致します。

映画『漂うがごとく』とは

この作品は2018年9月1〜9日に横浜シネマ・ジャック&ベティほかで上映された作品で、ブイ・タク・チュエン監督がベトナムでのタイトル『Choi voi』で、2009年に本国で公開した106分の映画です。

社会主義国家ベトナムにおいて珍しい、女性視点の“性”を美しい映像で描いた異色作です。

映画『漂うがごとく』の作品情報

©Vietnam Feature Film Studio1,Acrobates Film

【公開】
2019年(ベトナム映画)

【原題】
Choi voi(英題:Adrift)

【監督】
ブイ・タク・チュエン

【キャスト】
ドー・ハイ・イエン、リン・ダン・ファム、ジョニー・グエン、グエン・ズイ・コア

【作品概要】
ハノイを舞台にしたこの作品は、満たされない想いを抱えながら、彷徨う現代ベトナム人女性を描いています。

第66回ヴェネツィア国際映画祭において国際批評家連盟賞を受賞した作品でもあります。

監督は第6回NHKアジア・フィルム・フェスティバルで『癒やされた地』が上映されたブイ・タク・チュエン。

ベトナムの鬼才映画監督ファン・ダン・ジーが脚本を担当しました。

主演のドー・ハイ・イエンは17歳の時に『夏至』(2000)に出演し女優デビュー。共演者もベトナム国内のみならず世界で活躍する俳優たちが揃いました。

映画『漂うがごとく』のあらすじ


©Vietnam Feature Film Studio1,Acrobates Film

ハノイで旅行ガイド兼通訳として働くズエンと、タクシー運転手のハイ。

2人は出会って三ヶ月で結婚を決めました。

式のあと酔いつぶれ、夫婦の寝室へ担ぎ込まれる新郎ハイを、ただ見つめることしか出来なかったズエン。

ズエンは後日、式に来られなかった女友達のカムを訪ねました。

その帰り、カムの代わりに手紙を届けに行ったズエンは、受取人のトーに襲われます。

ハイとは正反対の、どこか危険な匂いのするトーに何故か魅了されていくズエン。

ですが女としての彼女の目覚めはやがてある悲劇を招くことに…。

映画『漂うがごとく』の見どころ

本作はベトナム映画の中で数少ないアート色の強い作品だと言えます。

また登場人物がそれぞれ抱える心の乾きが、湿度の高いベトナムの風景や水の流れなど美しい映像と共に描かれる特徴を持っています。

ベトナムの美しい風景とともに、満たされることのない人間の孤独や欲望を表現していますので、アジア映画ファンのみならず、映画ツウのあなたもしっかりと満足させてくれる作品です。

映画『ベトナムを懐(おも)う』

こちらの『ベトナムを懐(おも)う』は、2017年にベトナム本国で公開された作品で、原題を『Da Co Hoai Lang: Hello Vietnam』と言い、88分の作品です。

演出は『レディ・アサシン 美人計』『超人X.』などで、日本でも知られたベトナムのヒットメーカーのグエン・クワン・ユン監督によるものです。

ベトナム戦争の際に、世界中へ散っていったボートピープルたちの今を描いたストーリーです。

映画『ベトナムを懐(おも)う』の作品情報

©HKFilm

【公開】
2019年(ベトナム映画)

【原題】
Dạ cổ hoài lang(英題:Hello Vietnam)

【監督】
グエン・クアン・ズン

【キャスト】
ホアイ・リン、チー・タイ、ゴック・ヒエップ、ディン・ヒウ、ジョニー・バン・トラン、トリッシュ・レ、タイン・ミー、チョン・カン、オアイン・キウ

【作品概要】
この作品は祖国を離れ、ニューヨークで暮らす3世代のベトナム人たちを描いた戯曲が原作です。

長く戦争が続いたベトナムの歴史を背負いながら、異国で故郷をおもう各世代の心情を丁寧に描いています。

監督は韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』をベトナムでリメイクした『輝ける日々に』のグエン・クアン・ズン。

世代や文化のギャップが生むユーモラスな衝突から、祖国を捨てた息子とその父親、そして孫娘の3世代が対峙することで、ベトナム移民の哀しい背景を描き出しています。

映画『ベトナムを懐(おも)う』のあらすじ


©HKFilm

1995年のニューヨーク。雪の中を老人ホームから抜け出してきたトゥーは、息子グエンと孫娘タムのアパートに転がり込みます。

ボーイフレンドの誕生日を祝おうとしていたタムは祖父の乱入に困惑を隠せません。

ベトナムの思い出を語るトゥーとアメリカ育ちのタムの溝は深まるばかり。

ついにタムの怒りが爆発し、トゥーは家を飛び出してしまいました。

そこへ帰って来たグエンは故郷への哀しい思いを語り始めます。

なぜグエンは祖国を捨てたのか。タムはベトナム移民である自分の知られざるルーツと家族の歴史を知ることに…。

映画『ベトナムを懐(おも)う』の見どころ

1990年代前半からベトナム国内の多数の舞台で演じられてきた『ベトナムを懐(おも)う』。

監督のグエン・クアン・ズンは『超人X.』のようなアクション映画から『輝ける日々』の青春映画、今回の作品のようなヒューマン映画と幅広いジャンルを手掛けます。

その時代を生きてきた人々に暗い影を落とすベトナム戦争。そのことで国を追われた移民の心情を描いています。

まとめ

©HKFilm
ベトナム映画といえば『青いパパイヤの香り』や『シクロ』が有名ですが、近年ベトナム映画市場はアジアのなかでも目を見張る急成長を遂げています。

ハリウッド映画、日本のアニメーションのほか、国内産ジャンルムービーやエンターテイメント大作のほかに、日本では2017年に公開された『草原に黄色い花を見つける』のような、海外で研鑽を積んだクリエイターがベトナムに戻り叙情的なドラマをヒットさせる例が増えてきています。

映画『漂うがごとく』と『ベトナムを懐(おも)う』は、3月23日(土)より新宿K’s Cinema にて公開

ぜひ、お見逃しなく!

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