「非正規」で働く人々の現在を通して日本の未来を問う問題作。
「派遣切り」に立ち向かう父と家族と仲間たちの希望の物語。
『ハチ公物語』(1987)や『遠き落日』(1992)などで、人間の姿を真摯に描いてきた神山征二郎監督。
神山征二郎監督の記念すべき第30作目の映画『時の行路』が2020年3月14日より池袋シネマロサにて公開することが決定しました。
石黒賢が主人公の派遣工を熱演し、妻役の中山忍が美しい佇まいで夫を支えます。
本記事では映画『時の行路』の見どころや作品情報についてお伝えいたします。
映画『時の行路』について
本作『時の行路』はリーマン・ショックの嵐の吹き荒れる2008年末、大手自動車メーカーで派遣工として誠実に仕事に励む五味洋介に吹き寄せる理不尽な「派遣切り」の嵐に立ち向かう姿を、愛する家族や仲間たちの姿と共に描く、実話に基づいた社会派映画です。
原作は田島一による小説『時の行路』『続・時の行路』『争議生活者』。
日本映画界の巨匠らが作品づくりに参加
画像:時の行路』ロケ現場の神山監督
監督を務めるのは新藤兼人、今井正に師事し、『鯉のいる村』(1971)で監督デビュー、『ハチ公物語』(1987)『遠き落日』(1992)『ひめゆりの塔』(1995)から『月光の夏』(1993)『郡上一揆』(2000)『草の乱』(2004)『宮澤賢治 その愛』(1996)など、
社会派作品を生み出してきた神山征二郎。
本作が監督作30本目になりました。
そして、黒澤明のもとで現場を続け、数々の名作や大作を支える加藤雄大が撮影監督を、日本音楽界の重鎮で、同じく黒沢明作品や多くの名作映画のスコアを手がけた池辺晋一郎が音楽監督を担いこの作品をより気高く仕上げています。
魅力的なキャスト
主演の五味洋介を石黒賢、洋介を支える妻夏美を中山忍が演じます。
裁判を共に闘う弁護士に川上麻衣子、労働組合委員長役に安藤一夫、妻の父親役には綿引勝彦、ナレーターは日色ともゑ。
若手の宇田川かをりと塩顕治、新人の松尾潤、村田さくら、そして渡辺大、魅力のあるキャストが揃いました。
原作者である田島一は、キャストの演技について以下のように語っています。
石黒賢さんの洋介、そして中山忍さんの妻は適役で、熱演が光っています。息子の涼一役の松尾潤さん、娘の綾香役の村田さくらさんも清々しく、妻の父親の綿引勝彦さん、弁護士の川上麻衣子さんの渋い演技も精彩を放ちます。
原作者を納得させたキャストの演技力に注目です。
自動車業界の「派遣切り」とは
日本の自動車産業は1989年をピークにバブル経済が崩壊した後も、つねに日本経済をけん引してきました。
アメリカ、ヨーロッパ、近隣のアジア諸国など市場を全世界に市場を拡大し、もの作り日本の顔として長く君臨。
しかし、2008年にリーマンショックと言われる経済不況が吹き荒れ、その中で、自動車業界は防衛手段としてまず、人員の整理を敢行。
派遣工をはじめ非正規労働者を契約期間内であるにもかかわらず、大量に解雇します。
労働者は組合を結成して、全国の支援者と家族に支えられてこの不当解雇を法廷闘争に持ち込んでいきましたが、司法界は次々と企業に有利な判決を下してきていたんです。
映画『時の行路』の作品情報
【日本公開】
2020年(日本映画)
【原作】
田島一『時の行路』『続・時の行路』『争議生活者』(新日本出版社刊)
【監督】
神山征二郎
【キャスト】
石黒賢、中山忍、松尾潤、村田さくら、渡辺大、安藤一夫、綿引勝彦、川上麻衣子、日色ともゑ(ナレーション)
映画『時の行路』のあらすじ
青森の八戸でリストラにあった五味洋介(石黒賢)は妻の夏美(中山忍)と子どもたちを実家に残して静岡の大手自動車メーカーの工場の旋盤工として働きながら、仕送りを続けていました。
洋介は派遣社員でしたがベテラン技能者として職場でも信頼され、充実した日々を送っています。家族を三島に呼び、ともに暮らすことが彼の将来の夢です。
しかし、ある日突然、リーマンショックに端を発した非正規労働者の「大量首切り」により職場を追い出されてしまいました。
洋介は理不尽な仕打ちに抗し、仲間と一緒に労働組合に入って立ち上がります。
ですが洋介や妻たち、支援の人々の願いは届かず、会社と裁判所は冷酷。
そんな折、闘病中の夏美が倒れたという知らせを受け、洋介は郷里へ向かい…。
まとめ
「映画は心の糧。心の栄養分」と語る神山征二郎監督。
「派遣切り」という辛く苦しい現実を、希望の物語として昇華させます。
日本社会の現在と未来を、壮大なドラマとして描いた映画『時の行路』は2020年3月14日〜4月3日に池袋のシネマ・ロサにて、4月11日~4月24日に大阪の第七芸術劇場にて、全国順次公開です。