ピエル・パオロ・パゾリーニ生誕100年記念
『テオレマ 4Kスキャン版』『王女メディア』を上映!
「イタリアの異端児」がかつて描いた、“現代の寓話”と“女の復讐劇”。世界の映画作家たちに多大な影響を与えた2作品がスクリーンに蘇ります。
詩人、作家、そして映画監督としてその名を世界に轟かせた「イタリアの異端児」ピエル・パオロ・パゾリーニ。
彼の生誕100年を記念し、「パゾリーニ・フィルム・スペシャーレ1&2」と題して『テオレマ 4Kスキャン版』と『王女メディア』が、2022年3月4日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開することが決定しました。
併せてポスタービジュアルが解禁となります。
CONTENTS
「パゾリーニ・フィルム・スペシャーレ1&2」について
1975年にローマ郊外で非業の死を遂げて45年以上の時を経た今もなお、世界中のシネフィルに支持される異才ピエル・パオロ・パゾリーニ。
“スペシャーレ1” は、映画『ラストナイト・イン・ソーホー』にも出演しているイギリスの名優テレンス・スタンプ主演の『テオレマ 4Kスキャン版』。
謎の《訪問者》によって次第に狂わされるブルジョワ一家を描いたパゾリーニの代表作の1本で、公開時は《訪問者》の解釈を巡って大論争を巻き起こしました。
共演には、当時ジャン=リュック・ゴダールの妻でもあったアンヌ・ヴィアゼムスキー、『家族の肖像』のシルヴァーナ・マンガーノなど。またイタリアが生んだ名作曲家、エンニオ・モリコーネが音楽を手掛けています。
第29回ヴェネチア国際映画祭で最優秀女優賞(ラウラ・ベッティ)と同時に国際カトリック映画事務局賞を受賞したことで、イタリア・カトリック界で物議を醸し、猥褻罪に問われて裁判に発展。その後パゾリーニは無罪となり、裁判沙汰も手伝って映画は大ヒットとなりました。
今回は2020年に米クライテリオン社によってなされた、オリジナルネガからの4Kスキャンによる修復版での公開となります。
“スペシャーレ2”は、20世紀が誇るディーヴァ、マリア・カラスとの奇跡のコラボレーションによって生まれた1969年の『王女メディア』。
『アポロンの地獄』(1967)で初めて古代ギリシャを題材にとったパゾリーニが、エウリピデスのギリシャ悲劇「メディア」を元に再び神話世界を映像化したもの。
一切の映画出演オファーを断り続けていたマリア・カラスが「この映画だけは断れない」と出演を承諾した唯一の映画主演作となっています。
トルコ・カッパドキアの岩窟群やピエロ・トージによる美しい衣装も見どころです。
ピエル・パオロ・パゾリーニのプロフィール
ピエル・パオロ・パゾリーニは、1922年3月5日イタリアのボローニャに生まれます。父の転任に伴い幼少期は北イタリアを転々とし、母の影響で幼いころから詩を書き始めます。
1939年、飛び級でボローニャ大学文学部に進学。ファシスト青年団GUFの映画上映会でルネ・クレールやルノワール、チャップリンに感銘を受けます。1942年7月、20歳の時にフリウリ地方の方言(フリウリ語)で書かかれた処女詩集『カザルサ詩集』を自費出版。
1950年、母とローマの貧困地区に移り、詩や小説を書き続けながら、教職や新聞・雑誌への寄稿で生活費を捻出。1955年5月に初の長編小説『生命ある若者』を出版し大いに話題を呼びますが、7月に発禁処分となります(翌年の裁判で発禁は解かれる)。
マリオ・ソルダーティ監督作『河の女』(1954)の脚本執筆を機に映画界へ進出、以降、フェデリコ・フェリーニ監督『カリビアの夜』(1957)『甘い生活』(1960)や、マウロ・ボロニーニ監督『狂った夜』(1959)『汚れなき抱擁』(1960)『狂った情事』(1960)、ベルナルド・ベルトルッチ監督のデビュー作『殺し』(1962)など数多くの脚本(共同脚本も含む)を執筆。
1961年『アッカトーネ』で映画監督デビュー。翌年にはアンナ・マニャーニを主演に迎えた『マンマ・ローマ』を監督。「マタイによる福音書」を映画化した『奇跡の丘』(1964)はヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞し、米アカデミー賞でも3部門ノミネートを果たします。
その後『アポロンの地獄』(1967)や『テオレマ』 (1968) 『豚小屋』 (1969)といった衝撃作を放ち、不世出のディーヴァ、マリア・カラスを主演に迎えた『王女メディア』 (1969)を完成。
続いて「生の三部作」と呼ばれる、『デカメロン』(1971年ベルリン映画祭銀熊賞受賞)、『カンタベリー物語』(1972年同映画祭金熊賞受賞)、『アラビアンナイト』(1974年カンヌ映画祭審査員大賞受賞)で高い評価を得ます。
1975年春にマルキ・ド・サドの『ソドムの百二十日』を映画化した『ソドムの市』を撮影。同年11月2日未明、ローマ郊外のオスティア海岸で轢死体となって発見されます。享年53歳。その死については諸説あり現在も謎に包まれています。
『ソドムの市』は翌1976年1月に劇場公開を迎えます。死後、未発表の原稿が続々と発見され、イタリアでは98年から2003年にかけてパゾリーニ全集全11巻が刊行されました。
映画『テオレマ 4Kスキャン版』『王女メディア』のポスタービジュアル
本記事の作品情報に記載しました2作品のポスタービジュアルがこの度解禁されました。
『テオレマ』はテレンス・スタンプ演じる謎の《訪問者》の妖しい魅力溢れるカットを、『王女メディア』はマリア・カラス演じるメディアの鬼気迫る表情が印象的なカットが使用されています。
「この、聖なるもの。」「あるいは、愛の過剰さについて。」というそれぞれのコピーによってパゾリーニ独特の世界観がさらに際立つポスターが完成となりました。
映画『テオレマ 4Kスキャン版』の作品情報
【製作】
1968年(イタリア映画)
【原案・監督・脚本】
ピエル・パオロ・パゾリーニ
【キャスト】
テレンス・スタンプ、シルヴァーナ・マンガーノ、アンヌ・ヴィアゼムスキー
映画『テオレマ 4Kスキャン版』のあらすじ
北イタリアの大都市、ミラノ郊外の大邸宅に暮らす裕福な一家の前に、ある日突然見知らぬ美しい青年が現れます。
父親は多くの労働者を抱える大工場の持ち主。その夫に寄りそう美しい妻と無邪気な息子と娘、そして女中。
何の前触れもなく同居を始めたその青年は、それぞれを魅了し、関係を持つことで、ブルジョワの穏やかな日々をかき乱していきます。
青年の性的魅力と、神聖な不可解さに挑発され、狂わされた家族たちは、青年が去ると同時に崩壊の道を辿っていく…。
映画『王女メディア』の作品情報
【製作】
1969年(イタリア映画)
【監督・脚本】
ピエル・パオロ・パゾリーニ
【キャスト】
マリア・カラス、ジュゼッペ・ジェンティーレ、マッシモ・ジロッティ
映画『王女メディア』のあらすじ
イオルコス国王の遺児イアソンは、父の王位を奪った叔父ペリアスに王位返還を求めます。
叔父から未開の国コルキスにある〈金の羊皮〉を手に入れることを条件に出され旅に出たイアソンは、コルキス国王の娘メディアの心を射止めて〈金の羊皮〉の奪還に成功。
しかし祖国に戻ったイアソンは王位返還の約束を反故にされ、メディアと共に隣国コリントスへ。
そこで国王に見込まれたイアソンは、メディアを裏切って国王の娘と婚約してしまいます。
メディアは復讐を誓い…。
まとめ
詩人、作家、そして映画監督としてその名を世界に轟かせたイタリアの異端児ピエル・パオロ・パゾリーニ。
2022年3月5日に生誕100年を迎えるのを記念し、日本国内においては1970年の劇場初公開以来、映画祭以外では上映される機会のほとんどなかった2作品がスクリーンに蘇ります。
世界の映画作家たちに多大な影響を与えた『テオレマ 4Kスキャン版』と『王女メディア』は、2022年3月4日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開です。