生誕80年、没後40年を迎えるジョン・レノン関連作品
伝説的ミュージシャンのジョン・レノンと、そのパートナーにして彼の人生に多大な影響を与え続けたオノ・ヨーコ。
2人の軌跡を彼ら自身の言葉や作品で辿る展覧会 「DOUBLE FANTASY – John & Yoko」東京展が、ジョン・レノン80回目の誕生日となる2020年10月9日から2021年1月11日まで、ソニーミュージック六本木ミュージアムで開かれています。
生誕80周年を記念した新ベスト・アルバム『ギミ・サム・トゥルース.』もリリースされ、また1980年12月8日に亡くなってから40年という節目の年として、あらためてジョンに関する映画作品を振りかえってみましょう。
CONTENTS
映画『ジョン・レノンの僕の戦争』(1967)
『ビートルズがやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!(後に『ハード・デイズ・ナイト』に改題)』(1964)、『ヘルプ!4人はアイドル』(1965)のザ・ビートルズ映画を手がけたリチャード・レスター監督による戦争コメディ。
第二次世界大戦中のアフリカ戦線で、砂漠にクリケットのコートを作るという任務を与えられた兵士たちの顛末が描かれますが、死んだ兵士が全身緑やピンク姿の幽霊(ゾンビ?)として出てきたり、ダンケルクやノルマンディー上陸の映像を挿入したり、さらにはこの作品を劇場で観ている観客まで登場するなど、ナンセンスかつシュールな展開が繰り広げられます。
タイトルこそ『ジョン・レノンの~』となっていますが、兵士役のジョンの出番はわずか。
しかしながら、奇声を上げて銃を乱射したり、大はしゃぎで車を操るといったノリノリな演技を見せています。
映画『バック・ビート』(1994)
ザ・ビートルズの初期メンバーで、1962年に21歳で夭折した“スチュ”ことスチュアート・サトクリフと、写真家アストリッド・キルヒャー(2020年5月に81歳で死去)の恋愛を綴った青春伝記映画。
親友スチュと、後にビートルズのトレードマークとなるモップトップ・ヘアー(マッシュルームカット)や襟なしジャケットを考案したアストリッドの間に入ったジョンとの関係も、並行して描かれます。
ジョン役のイアン・ハートは1991年の『僕たちの時間』でも同役を演じており、容姿や言動を似せるというよりも、若々しく荒ぶったジョンを想定して演じた感があります。
映画『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』(2010)
1950年代のリバプールで厳格な伯母に育てられたジョンは、近所に実母ジュリアが住んでいることを知ります。ジュリアからギター演奏を習ったジョンは、次第に音楽活動に没頭していきますが…
若き日のジョンと彼の2人の母親の関係を描いた青春ドラマで、フォトグラファーとして活躍していたサム・テイラー=ウッドの長編映画デビュー作となりました。
テイラー=ウッドは、ヨーコから生前のジョンの仕草などに関するアドバイスを貰い、それを元にジョン役のアーロン・ジョンソンが、本人そっくりの見事なリバプール訛りを会得。
ヨーコが年下のジョンと再婚したように、かねてから彼女に心酔していたテイラー=ウッドも撮影後に23歳年下のアーロンと再婚するなど、私生活でも共通点が多いあたりが実に興味深いです。
映画『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring Years』(2016)
ザ・ビートルズが世界でツアー活動を行っていた時期の映像を中心に、アカデミー賞監督ロン・ハワードが構成したドキュメンタリー映画。
世界中に散らばっていた未発表映像や写真が盛り込まれているのが特徴で、アメリカ公演会場での人種隔離に抗議した騒動などの貴重映像が見られます。
日本公開版は1966年の来日公演の映像がインターナショナル版よりも長く、日本の警視庁が撮影した映像も初披露されています。
騒ぐだけで自分たちの音楽をまともに聞いてくれないファンたちとの距離感を吐露したり、似たような質問ばかりされることに辟易するジョンの生の発言にも注目です。
映画『イエスタデイ』(2019)
売れないシンガーソングライターのジャックは、ある日、世界規模の停電により交通事故で昏睡状態に。目を覚ますと、この世にはザ・ビートルズが存在せず、彼らの曲を覚えているのはジャックだけという世界となっていました…。
「トレインスポッティング」シリーズ(1996~2017)、『スラムドッグ$ミリオネア』(2009)のダニー・ボイル監督と、『ラブ・アクチュアリー』(2003)の監督兼脚本家のリチャード・カーティスがタッグを組んだ、ビートルズ愛あふれるコメディ。
if(もしも)な世界を舞台に、ビートルズの名曲を使った登場人物の心情説明や状況説明の描写が実に巧みで、ルーフトップ・コンサートの再現といった小ネタも抑えています。
ジョンとは直接関係ない作品では?と思われがちですが、ifな世界ならではと言える終盤の展開には、多くのビートルズ・ファンが感涙しました。
映画『IMAGINE イマジン』(1972)
1971年発表のレノンのアルバム『イマジン』のナンバーを映画的にコラージュした映像集で、ジョンとヨーコが翌72年に共同で監督、制作。
レノン生誕80年を記念して、2020年12月04日(金)から日本初の全国拡大上映が実現。
この劇場上映版では、オリジナル本編に加え、ジョージ・ハリスンやアルバムの共同プロデューサーであるフィル・スペクターらとのスタジオパフォーマンスや、69年にバハマのホテルでのベッド・インの際に撮影された「オー・ヨーコ!」の初期バージョンといった、約15分の特別映像が追加されています。
一部ではあるものの、ジョン&ヨーコの当時の生活の一旦を垣間見ることができるこの作品、現状では今回が日本最終上映となるため、お見逃しなきよう。
まとめ
参考:2021年8月31日刊行予定『ザ・ビートルズ ゲット・バック アンソロジー』告知PV
ジョン・レノンをスクリーンで観る機会はまだあります。
「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのピーター・ジャクソン監督によるザ・ビートルズのドキュメンタリー『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』(原題)が、2021年9月10日に公開予定です。
これは、ザ・ビートルズ最後のオリジナルアルバム『レット・イット・ビー』(当初のタイトルは『ゲット・バック』)の制作の裏側に密着したドキュメンタリー映画『レット・イット・ビー』(1970)を再解釈したもの。
レコーディング過程におけるメンバー間の衝突から、ラストライブとなるルーフトップ・コンサートまでを追った『レット・イット・ビー』は、いまだDVD化されていない幻の作品となっていますが、ジャクソンが、『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』としてどのように昇華させるのか?
第一次世界大戦の記録フィルムから『彼らは生きていた』という優れた戦記ドキュメンタリーを生み出したジャクソンだけに、今から期待せずにはいられません。
おそらく、ジョン・レノンほど生没日が全世界で知られているミュージシャンはいないと思われます。
命日となる12月8日のニューヨークのセントラル・パークには、彼を追悼して多くのファンが集い、彼の曲を歌う光景が見られます。
40歳で早世してしまったジョンですが、映像作品に映る彼の姿や彼の魂は、永遠に歳を取りません。
ジョンの魂を伝え続けるオノ・ヨーコの思いが詰まった展覧会「DOUBLE FANTASY – John & Yoko”」と併せて、レノン・ワールドに触れてみてはいかがでしょうか。