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Entry 2020/12/03
Update

石岡瑛子の映画作品おすすめ6選!ドラキュラや白雪姫の創造性が回顧展でも蘇る

  • Writer :
  • 松平光冬

今あらためてふり返る、世界的アーティスト・石岡瑛子の軌跡

アーティストとして活躍するかたわら、『ドラキュラ』(1992)、『落下の王国』(2006)、『白雪姫と鏡の女王』(2012)などの映画作品で、衣装デザインや美術を担当した石岡瑛子(1938~2012)。

アカデミー賞受賞者にして、北京五輪開会式の衣装デザインも手掛けるなど、世界で活動の幅を広げた彼女の初となる大規模回顧展「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」が、11月14日から来年2月14日まで東京都現代美術館で開催中です。

回顧展に伴い、石岡が映画界に残した創造性を振りかえりたいと思います。

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石岡瑛子のプロフィール

アカデミー賞授賞式で衣装デザイン賞を受賞した石岡瑛子

1938年に東京で生まれた石岡は、東京藝術大学美術学部を卒業後、資生堂に入社。

アートディレクター、デザイナーとして社会現象となったサマー・キャンペーン(1966)を手がけて頭角を現し、フリーランスとなって以降も、パルコ、角川書店などの広告キャンペーンを次々と成功に導きます。

1980年代初頭に拠点をニューヨークに移し、映画、オペラ、サーカス、演劇、ミュージック・ビデオなど、多岐にわたるジャンルで活躍。アカデミー賞、グラミー賞受賞、カンヌ国際映画祭芸術貢献賞など、国際的な賞のほか、2002年には紫綬褒章を受章しました。

2012年、『白雪姫と鏡の女王』での衣装デザインを担当したのを最後に、73歳で亡くなりました。

映画『地獄の黙示録』(1979)

1960年代末のベトナム戦争が激化する最中、アメリカ陸軍のウィラード大尉は、上層部から特殊任務を命じられます。それはカンボジア奥地のジャングルで、軍規を無視して自らの王国を築いたカーツ大佐の暗殺でした。

『ゴッドファーザー』(1972)のフランシス・フォード・コッポラ監督が、ベトナム戦争の闇を壮大に描き、カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞。

79年の日本初公開時に、配給会社の依頼で日本版ポスターのデザインを担当した石岡は、ニューヨークの劇場で本編を観た際に得た「興奮のエネルギー」を活かしてすぐさま図案を描き、それを元にイラストレーターの滝野晴夫がイラストを作画。

この2種類のポスターは瞬く間に評判を呼び、監督のコッポラも大いに気に入ったことが、後年、石岡が本格的に映画制作の道に進むきっかけとなります。

映画制作自体に石岡は関わっていませんが、回顧展で展示されている『地獄の黙示録』の日本版ポスターからは、彼女の「興奮のエネルギー」を感じ取ることができます。

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映画『ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』(1985)

1970年11月25日、作家の三島由紀夫が、自ら創設した私兵組織「楯の会」会員とともに陸上自衛隊市ケ谷駐屯地に立てこもった後、自決に至るまでの生涯を、彼の小説『金閣寺』『鏡子の家』『奔馬』を同調させて描きます。

監督を三島文学の愛読者だったポール・シュレイダー、製作総指揮をフランシス・フォード・コッポラとジョージ・ルーカスが務め、キャストも三島役の緒形拳を筆頭に、坂東八十助(後の十代目三津五郎)、佐藤浩市、沢田研二、永島敏行、李麗仙、横尾忠則といった多彩な面々を揃えました。

「視覚的な面で新しい実験を試みたい」というシュレイダーの意図を汲んだ石岡は、プロダクションデザイナー(美術監督)として大胆かつ格調あるセットを考案。

海外でも名が知られる三島の映画ということで、カンヌ国際映画祭で最優秀芸術貢献賞を受賞したほか、ボディビルダーだった三島に倣って肉体改造をした緒形の演技も話題を呼びました。

ただ、残念ながら日本では諸事情により1985年の劇場公開が見送られた上にソフト化もされておらず、現状では米クライテリオン社から発売のDVDでしか、正規での鑑賞方法はありません。

悲運に見舞われた作品ではありますが、三島が自作で追い求めた「美」への意識を、石岡が映像美術に昇華しています。

回顧展では映画の一部シーンと併せて、『金閣寺』で主人公の青年(八十助)が金閣寺に魅せられていくシーンを描いた、二つに割れた金閣寺のセットが再現されています。

映画『ドラキュラ』(1992)

最愛の夫人を喪ったことで、神への復讐を誓い吸血鬼となったドラキュラ伯爵が、夫人と生き写しの女性ミナと出会います。禁断の愛に燃える伯爵とミナでしたが、そこに伯爵の命を狙うヘルシング教授が現れ…。

モンスター映画でおなじみのキャラクターのドラキュラを、ブラム・ストーカーの原作通りに描きたいと考えたフランシス・フォード・コッポラは、かつて『地獄の黙示録』のポスターを手がけた石岡に衣装デザインを依頼。

「今まで見たことのない表現」を求めるべく、黒マントと牙を持った従来のドラキュラのイメージを捨て、摩訶不思議な捕まえどころのない、カレイドスコープ(万華鏡)のような異なった姿を纏うデザインを次々と考案していきます。

「今回の映画は、コスチュームはセットで セットはライティング(照明)である」というコッポラの意向に応え、日本人として二人目となるアカデミー賞衣装デザイン賞を受賞します。

回顧展の『ドラキュラ』セクションでは、クリムトの絵画や、狼やエリマキトカゲなどの動物をベースにデザインされた衣裳のほか、あらゆるイメージの源泉が詰まったスケッチが展示されています。

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映画『ザ・セル』(2001)

最先端の技術を用いて患者の潜在意識に入り込み治療を行う心理学者キャサリンが、昏睡状態となった連続殺人犯スターガーの意識に入り犯行の真相に迫っていくSFサスペンス。

ナイキやペプシのテレビCMやR.E.M.のPVの監督で注目されたターセム・シンによる初の劇場映画で、歌手として人気絶頂だったジェニファー・ロペスが、キャサリンを演じます。

学生時代、作品集『Eiko by Eiko』をバイブルとしていたというターセムの熱烈オファーを受け、石岡はバーチャルリアリティーによる潜在意識内のキャラクターの衣装デザインを担当。

潜在意識の中で“王”として登場するスターガーのシーンでは、部屋の壁が王のマントになっていくというデザインを提案し、かつてコッポラが語った「コスチュームはセット」を見事に具現化しました。

本作で石岡が手がけた数々の衣装スケッチが、回顧展で展示されています。

映画『落下の王国』(2006)

撮影中の事故で脚を負傷し、恋人も奪われたスタントマンのロイは、入院中の病院で腕を骨折した少女アレクサンドリアと出会います。生きることに絶望するロイは、薬剤室から自殺用の薬をアレクサンドリアに盗んできてもらおうと、6人の勇者が登場する自作のおとぎ話を語り始めます…。

『ザ・セル』に続いて石岡とターセム・シン監督がコンビを組んだファンタジー叙事詩で、ターセムが映画界に入る前から構想していた物語を、世界24ヶ国、13ヶ所もの世界遺産で撮影を敢行。

「風景と衣装が美術を果たす映画」というターセムのリクエストから、石岡はおとぎ話に登場するキャラクターたちにそれぞれ“色”を持たせ、自然風景に映える鮮やかな衣装を手がけました。

CGを使わず、4年の歳月をかけてターセムの完全インディペンデント体制で製作された意欲作でしたが、興行的には失敗に終わります。

しかし、その圧巻の風景と衣装は一見の価値ありで、回顧展では、大スクリーンで映る映画の一部シーンとともに、勇者たちが纏った衣装が展示されています。

本作のDVDはすでに廃盤となっていますが、日本テレビ「映画天国」(関東ローカル、月曜深夜)で12月8日に放映予定です。

映画『白雪姫と鏡の女王』(2012)

幼い頃に父親である国王が亡くなって以来、継母の女王に城に幽閉されていた白雪姫。贅沢三昧の女王は、隣国の裕福でハンサムな王子と結婚しようと企むも、その王子は白雪姫と恋におちてしまい…。

グリム兄弟の童話「白雪姫」をターセム・シンが大胆に解釈し、コメディ色高めのロマンチックファンタジーに仕上げました。

『インモータルズ-神々の戦い-』(2011)に続いて4度目のターセム作品参加となった石岡は、「ハイブリッドなクラシック」をコンセプトに、アール・ヌーヴォーならぬ「エイコ・ヌーヴォー」に加えて、インド人であるターセムのボリウッドのイメージが融合した、ゴージャスかつカラフルな衣装をデザイン。

ターセムとのコラボレーションが「完璧の域まで達した」と語るほどの出来栄えとなった衣装で、再びアカデミー衣装デザイン賞にノミネートされるも、結果的に本作が遺作となりました。

女王役のジュリア・ロバーツと白雪姫役のリリー・コリンズが纏った豪華なドレスは、回顧展での最後のセクションを彩っています

まとめ

レディー・ガガ『911』PV

コッポラは、石岡を「境界のないアーティスト」と評しています。

このコメント通り、石岡は広告、映画、音楽、演劇などジャンルを問わずに、誰も見たことのないアートを常に発表してきました。

そんな彼女が亡くなって9年が経ちますが、現世に残した仕事は、色あせることなく受け継がれています。

今年9月11日に全世界に公開された、ターセム・シン監督によるレディー・ガガの『911』のPVは、明らかに「エイコ・イシオカ」イズムを感じさせる映像に仕上がっています。

『落下の王国』の衣装を担当した後、石岡は以下のようにコメントしています。

私はクリシェ(紋切り型)は大嫌いなので、それはやりたくない。(中略)コスチュームデザインという一部分を完璧に担うことで、私の創造性を爆発させる。それでも影響力は作り出せるのではないかと思っています。
――『装苑』2008年11月号より

回顧展と併せて、石岡瑛子が創造性を爆発させた映画に触れてみてはいかがでしょうか。



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