Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ラブストーリー映画

Entry 2020/10/29
Update

映画『海の底からモナムール』あらすじと感想考察。幽霊のラブストーリーは海よりも深い純愛である

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

映画『海の底からモナムール』が2021年3月27日(土)より、大阪シネ・ヌーヴォでの1週間限定上映が決定!

フランス出身のロナン・ジル監督が日仏合作で挑んだ映画『海の底からモナムール』。桐山漣、清水くるみらオール日本人俳優をキャストに起用した、セーラー服の幽霊の純愛を描くホラー作品です。

本作は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017のゆうばりチョイス部門にてワールドプレミアを行い、第12回大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門で上映されました。

日本の従来のJホラーの幽霊とは違う、足があり、セーラー服を着ていて、性欲もある⁈ オリジナリティ溢れるヒロインとして描き、ホラーファンのみならず、ロマンティクなフランス映画ファンにも必見の作品です。

映画『海の底からモナムール』の作品情報


(C)Besoin d’Amour Film Partners 

【日本公開】
2020年(日本・フランス合作映画)

【監督・脚本・音楽・エグゼクティブプロデューサー】
ロナン・ジル

【キャスト】
桐山漣、清水くるみ、三津谷葉子、前野朋哉、杉野希妃、飯島珠奈

【作品概要】
エリック・ロメール監督の映画『レネットとミラベル/四つの冒険』などの映画音楽を手がけたことで知られるロナン・ジル監督の長編第2作。

日本を舞台に日本人キャストで撮影を行なった純愛ホラー作品。『曇天に笑う』の桐山漣がタクマ役、『青の帰り道』の清水くるみが幽霊ミユキを演じている。

映画『海の底からモナムール』のあらすじ


(C)Besoin d’Amour Film Partners 

10年前にクラスメイトたちからイジメ遭い、島の崖から飛び降りた女子高生ミユキ(清水くるみ)は、「ただ愛されたい」という想いを抱き、17歳のままずっと海に潜んでいました。

当時、ミユキが想いを寄せていたタクマ(桐山漣)は28歳の青年となり、島出身の同級生マツ(前野朋哉)に連れられ、それぞれの彼女・カオリ(三津谷葉子)とトモヨ(杉野希妃)と一緒に、卒業後初めて島に戻ることにします。

その島では去年、かつて近所に住んでいた同級生リカ(飯島珠奈)が溺れて死んでいた。「あの浜に行くな」という忠告を聞かず、浜でキャンプをするタクマら4人。

すると夜の浜でカオリの姿をしたミユキと遭遇。恐れおののきテントに駆け込むタクマ…。

その翌日、今度は海で泳いでいたタクマとカオリですが、カオリは誰かに足を引っ張られ、危うく溺れそうになってしまいます…。

映画『海の底からモナムール』の感想と評価


(C)Besoin d’Amour Film Partners 

海から人を襲うのはサメならぬ幽霊⁈

海の中から人を襲うといえば、昨今流行りはサメ映画ですが、本作『海の底からモナムール』では、白浜の波打際で人を襲うのは、サメならぬセーラー服を着た幽霊です。

セーラーだけに水兵さんが濡れているのであれば一般的といえますが、永遠に17歳の女子高生が濡れているのですから、エロティックであるのはいうまでもありません

また、その手に握られたストローも、ちょっと色っぽいですね。少女らしいあどけなさとは裏腹に、このストローで人間の生き血も吸うのですから恐ろしい…


(C)Besoin d’Amour Film Partners 

さて、感想の冒頭でサメ映画の話しをいたしましたが、本作でも幽霊のミユキが一番初めに襲うのは、ひとり海水浴に訪れたかつて同級生リカ。

10年前にミユキのことをイジメていたリカですが、今ではすっかり大人になった美人さん。リカが白浜で服を脱ぎ波打際から海に入り泳ぎはじめると、突如、ミユキに襲われ溺れ死んでしまいます。

このシーンの撮影は、サメ映画と見間違うような演出でちょっとユーモラスでもあります。

また、リカ役を演じたのは飯島珠奈で、『東京不穏詩』の主人公ジュン役を演じた演技派の女優さんです。すぐに物語から退場してしまいますが、飯島ファンのあなたは見逃さないように

フランスの純愛映画としての楽しみ


(C)Besoin d’Amour Film Partners 

本作は幽霊となったミユキがいつまでもタクマのことを愛してやまないというラブストーリーでもあります。

高校生だったミユキは、かなり積極的に同級生のタクマを誘惑するエピソードがあるのですが、一方でカメラを趣味にするタクマは、どこか他人を直視できない子供っぽさを持っており、ミユキの欲望にも素直になれないでいました。

そんなミユキが幽霊となり、10年越しの純愛で元同級生のタクマやマツ、そしてそれぞれの彼女たちを襲います。

しかし、ストーリーの本筋は一貫してタクマへの愛情を求めての行為であり、その幽霊ミユキの愛の深さは本作が海の底よりも深いラブストーリーの証といえます。

まとめ

10年前にイジメに遭い、崖から飛び降りたミユキは幽霊となって、今も思い続けるタクマに「ただ愛されたい」という一心で、17歳のセーラー服のまま、海底に潜んでいます。

高校卒業後初めて島を訪れたタクマたち4人を待っていたのは…。

主人公・タクマ役に『貞子』『呪怨-ザ・ファイナル-』という、ホラー作品に出演している桐山漣。またそのタクマを一途に想い続けるミユキ役に『青の帰り道』の清水くるみが妖艶に演じています。

エリック・ロメール監督作品の音楽を担当するなど、多岐に渡って活躍するフランス人監督のロナン・ジルが描いた、ホラー・ラブストーリーに注目です!

関連記事

ラブストーリー映画

映画『恋する寄生虫』ネタバレ結末あらすじと感想解説。ラスト原作との違いから和泉の正体まで詳細に考察!

今のこの感情がすべて。 君に出会えたことがすべて。 三秋縋の小説『恋する寄生虫』を、柿本ケンサク監督が林遣都と小松菜奈をW主演に迎え実写映画化しました。 潔癖症の青年と視線恐怖症の女子高生。孤独な2人 …

ラブストーリー映画

寝ても覚めて映画あらすじとキャスト!エキストラ募集ロケ地は東京大阪も

2015年に公開された映画『ハッピーアワー』は、ロカルノ国際映画祭コンペ部門で最優秀女優賞で旋風を巻き起こしたのを記憶する映画ファンも多いはず。 その際に監督を務めたのは濱口竜介監督。監督の2018年 …

ラブストーリー映画

映画『パーム・スプリングス』あらすじ感想と評価レビュー解説。タイムループで“同じ時間を繰り返す”恋人たちを描いたラブコメディ

映画『パーム・スプリングス』は2021年4月9日(金)より新宿ピカデリー他全国公開。 カリフォルニア州にある砂漠のリゾート地パーム・スプリングスを舞台に、同じ日を繰り返すことになってしまった男女をコミ …

ラブストーリー映画

【ネタバレ】スウィートビターキャンディー|結末感想と解説評価。孤独を感じていた少女が出会った孤独な男との“初めての恋”

孤独を感じ、子供と大人の狭間で揺れる少女の初めての恋を描く甘くて苦い恋 『若さと馬鹿さ』(2019)、『新しい風』(2021)などの監督を務め、『岬の兄弟』(2018)ほか役者としても活躍する中村祐太 …

ラブストーリー映画

映画『ICE ふたりのプログラム』あらすじ感想と評価解説。フィギュアスケートの活躍は再起不能とナージャが手にした“感動”とは⁈

何度も立ち上がるヒロインの美しさ フィギュアスケートにすべてを捧げてきたヒロインの夢と恋を描くロシア発のハートフルラブストーリー『ICE ふたりのプログラム』は2023年2月17日(金)TOHOシネマ …

U-NEXT
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学