映画『とってもゴースト』は2020年2月15日(土)より順次劇場公開。
映画『とってもゴースト』は、ゴーストになってしまった売れっ子デザイナーと、靴のデザイナーを志すピュアな青年が奏でる奇跡のようなラブストーリーです。
安蘭けいと古舘佑太郎がW主演を務め、ロマンチックな王道ミュージカルとなりました。
この記事では、2020年2月15日(土)より公開の映画『とってもゴースト』の感想や見どころについてお伝えしていきます。
CONTENTS
映画『とってもゴースト』の作品情報
【日本公開】
2020年(日本映画)
【原題】
音楽座ミュージカル『とってもゴースト』
【監督】
角川裕明
【脚本】
中井由梨⼦
【配給】
シンカ
【製作・配給協力】
埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ
【キャスト】
安蘭けい、古舘佑太郎、永山たかし、tekkan、伽藍琳
【作品概要】
本作は、1987年に旗揚げした「音楽座ミュージカル」の人気演目『とってもゴースト』の映画化。
主人公のユキを演じるのは、宝塚歌劇団星組男役トップスターとして活躍し、2009年に退団した後も女優として舞台を中心に精力的に活躍している安蘭けい。
そして、もうひとりの主人公服部光司役には、バンド「2」ではヴォーカルを務め、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』に出演するなど俳優としても活躍しており、本作でミュージカル初挑戦となる古舘佑太郎が抜擢されました。
さらに物語のキーパーソンとなるガイド役をTVドラマや映画、舞台でマルチに活躍する永山たかしが演じています。
映画『とってもゴースト』のあらすじ
ファッションデザイナーの入江ユキ(安蘭けい)は、自分のファッションショーを明日に控え、最終リハーサルを行っていました。
しかし、その出来栄えは自身が思い描いていたコレクションとはかけ離れていたものでした。
ユキはモデルとスタッフたちが無能だからと罵声を浴びせ会場を後にします。
ファッションショー当日、ユキと連絡が取れないとスタッフたちが騒然としている中、ユキが会場に駆け込んできます。
「ここにいるじゃない」とスタッフに近寄りますが、スタッフには聞こえず、ユキなしでショーを始めるしかないと慌ただしく準備に取り掛かります。
ユキは自分の姿も見えていないかのような状況に困惑します。その時、突然後ろから声をかけられ、驚いて振り向くと見知らぬ男・“天界のガイド"(永山たかし)が立っていました。
ガイドは、「あなたはガードレールを突っ切って転落、お亡くなりになりました」と告げます。
事実を受け入れることができないユキを余所に、ショーは始まってしまいました。
ガイドは、肉体が亡くなっても魂が消えることはなく新しい世界が始まると誘います。
しかし、ショーには納得がいかず、誰かを愛したこともないまま「死にきれない」とガイドの話を最後まで聞かず、その場を逃げ出すユキ。
外は暗く雨が降っていました。街を彷徨い歩いていると、ユキは幼少の頃の苦しい記憶が蘇ってきます。
その時、巨木の前から女の声が聞こえてました。それは、この世に未練を残し固まって動けなくなってしまった地縛霊でした。
女の地縛霊が一緒に世の中に復讐しょうと誘惑します。ユキが吸い寄せられるように近づこうとした矢先、誰かの声がしてはっと我に返りました。
そして、深夜を迎える頃、偶然にも靴のデザイナーを志す学生の服部光司(古舘佑太郎)とすれ違います。
すれ違いざまにユキが発した言葉を聞き返す光司。
自分の姿が誰にも見えないと思っていたユキは驚いて、光司を引き止めました。
どうしてか光司にだけは自分が見えて会話ができることを知ります。
しかし、それは霊界タイムと呼ばれる午前0時から3時の間だけのことでした。
ユキと光司はファッションを通して意気投合。気が合った二人は徐々にお互いの人柄に触れるうち、心に温かな感情が芽生え始めます。
しかし、避けられない運命の時は、ユキの身に迫っていき…。
映画『とってもゴースト』の感想と評価
音楽座ミュージカル『とってもゴースト』とは?
アメリカでは2017年に『ラ・ラ・ランド』がアカデミー賞を6部門で受賞、その後も『キャッツ』など人気ミュージカルの映画化が相次ぎ、ミュージカル映画への注目度がさらに高くなってきています。
日本ではオリジナルのストーリーで制作されるミュージカル映画は稀であり、ミュージカルという文化そのものがあまり馴染みのあるものではありません。
本作は“日本にミュージカル文化を深く浸透させたい”という熱い想いを抱いていた角川裕明が監督を務め、良質な物語をミュージカルという形で多くの人々に届けている「音楽座ミュージカル」のオリジナル作品『とってもゴースト』の映画化です。
音楽座ミュージカル『とってもゴースト』は、1989年の初演以来、多くのファンに愛されて再演を重ねてきました。
“シンデレラ”や“赤い靴”といった童話のファクターを下敷きにした普遍性のあるファンタジーでもあり、幅広い年齢層から支持されて、「音楽座ミュージカル」の作品の中でもロングヒットとなっています。
新たな楽曲とポップな歌声
映画化した本作は、オリジナルのストーリーをベースに、“ガイド”の知られざるサイドストーリー、新たな楽曲など、映画のためのオリジナル脚色も加えられ、新たな物語が誕生しました。
ゴーストに恋をする光司役には、バンド「2」で ヴォーカルを務める古舘佑太郎が好演。
本作の公開に伴い、古舘佑太郎は「宝塚のトップとしてステージに立たれていた安蘭けいさんにミュージカルの美しさをとことん教えて頂きながら普段バンドをやっている僕は僕なりの、“歌と映画”の可能性を探したい」とコメントを寄せています。
ミュージカルというと、台詞を情感込めて美しく歌い上げるイメージですが、古舘佑太郎というニューエイジがポップなリズムを吹き込みました。
古舘佑太郎は、力の抜け感と自然なヴィブラートがかかっているハスキーボイスが特徴的。
そして、安蘭けいの伸びやかで美しい音色に溶け込むかのように響き渡ります。
二人が織りなす音色の世界は、また舞台とは違った魅力を醸し出しているのも見どころの一つです。
ゴーストになってもなお生命力あふれる主人公
主人公のユキは、ファッションデザイナーとして自身のブランド・ユキイリエというコレクションの前夜に亡くなります。
天界へのガイドに死んだことを告げられるも、まったく信じられないという様子のユキ。
自分が死んだことに落胆したり、嘆き悲しむのではなく、自分不在で終わってしまったコレクションの出来栄えに落胆し、気を病んでいる様子が描かれます。
今まで、ファッションデザイナーとしてのキァリアを積むことに没頭してきたユキにとって、ユキイリエというブランドそのものが、自分のすべてでした。
ユキは死んではじめて、誰かを愛したこともないことに気がつきます。そして、「死にきれない」とガイドから逃げるのです。
こんなにもパワフルなゴーストが今までにいたでしょうか?
『居酒屋ゆうれい』(1994)では、幽霊になった前妻が居酒屋の主人と後妻の前に恨めしく現れます。主人に未練があり、若い後妻も気に食わなくて、死んでも恨めしさが残って成仏できませんでした。
本作のユキは、幽霊独特の恨めしさが感じられないのです。むしろ、死んでいるのに生命力に溢れ、その生命力そのものに未練があり成仏できないという面白さ。
このパワフルなユキは、ゴーストになって今度は愛する人の為に歌って踊る姿がとても勇ましく、チャーミングなのですね。
また、靴のデザイナーを志す光司はユキとは対照的に夢や恋に消極的な青年です。
生きているのに生命力に欠けていて、俺なんか何をやってもダメなんだと思っているようなタイプ。そんな二人が偶然にも出会います。
ユキと出会ったことで生きる生命力を取り戻すかのような光司と、避けられない死の中で愛することを知るユキ。
相反する二人が出会った時から、ダイナミックでかつロマンチックな時を紡ぎだします。
ぜひ、二人の行方を見届けてください。
まとめ
新たに生まれ変わった映画『とってもゴースト』では、“ガイド”の知られざるサイドストーリーが明らかになります。
天国にも地獄にも行けない業を残した者がお勤めを果たさないといけないガイド。
一体、ガイドが犯した悪行とは何でしょうか?
また、魂が浄化せずに、ビルとか街路樹とかになってしまう“かたまりさま(地縛霊)”も登場します。
王道のミュージカルでありながら、輪廻転生の思想が垣間見れたりと、わたしたちに眠っている和の心を刺激するかのよう。
まさしく和製ミュージカル映画『とってもゴースト』は、舞台とはひと味もふた味も違う魅力を放っています。
ぜひ、劇場でお楽しみください。
映画『とってもゴースト』は、2020年2月15日(土)よりキネマ旬報シアターほかにて順次劇場公開です。