映画『マーメイド・イン・パリ』は2021年2月11日(木・祝)より公開。
古くから、切ないラブストーリーのテーマとして描かれてきた、人間と人魚の恋。
アンデルセンの童話『人魚姫』をモチーフに、フランスのカリスマアーティスト、マチアス・マルジウ監督が、新たなおとぎ話『マーメイド・イン・パリ』をつむぎ出しました。
2021年2月11日(木・祝)より公開となる『マーメイド・イン・パリ』では、フランスを代表する俳優ニコラ・デュヴォシェルが、恋心を失った男性・ガスパールを、新進女優マリリン・リマが、歌で男性を翻弄するセイレーン(人魚)のルラを演じています。
ストップモーションアニメに、歌や踊り、そしてキュートなキャラクターが魅了してくれる、遊び心に満ちたカラフルなラブストーリー『マーメイド・イン・パリ』をご紹介します。
CONTENTS
映画『マーメイド・イン・パリ』の作品情報
【日本公開】
2021年(フランス映画)
【原題】
Une sirene a Paris
【監督】
マチアス・マルジウ
【キャスト】
ニコラ・デュヴォシェル、マリリン・リマ、ロッシ・デ・パルマ、ロマーヌ・ボーランジェ、チェッキー・カリョ
【作品概要】
フランスのカリスマアーティスト、マチアス・マルジウ監督の実写長編映画デビュー作。監督自身による小説が原作です。
サウンドトラックも、マチアス・マルジウ監督が率いるバンド、ディオニソスが手掛けています。
主演のガスパール役は、リーバイスやヒューゴ・ボスのモデルとしても活躍していて、『パリ警視庁:未成年保護部隊』 (2011)、『ダリダ〜あまい囁き〜』(2017)などに出演しているフランスを代表する人気俳優ニコラ・デュヴォシェル。
愛らしいセイレーン・ルラを演じるのは、『青い欲動』(2015)で鮮烈なデビューを果たした新進女優マリリン・リマ。
ふたりの恋を見守るガスパールの隣人ロッシを、ペドロ・アルモドバル監督作品の常連でもあるロッシ・デ・パルマが演じ、ほかロマーヌ・ボーランジェ、チェッキー・カリョらフランスの名優が脇を固めています。
映画『マーメイド・イン・パリ』のあらすじ
記録的な雨による大増水で、水浸しになったパリの街を、ローラースケートを履いた青年が滑走していきます。
彼の名はガスパール。セーヌ川に浮かぶ船上バー「フラワーバーガー」のオーナーの息子です。
ガスパールの亡き祖母が開いた「フラワーバーガー」には、秘密がありました。合言葉を伝えると、秘密の地下に案内され、さまざまなパフォーマンスを楽しむことができるんです。
ガスパールはそこで、ウクレレを持って歌うパフォーマー「サプライザー」として働いていました。
以前はたくさんいた「サプライザー」も、いまはガスパールただ一人。店は活気を失い、経営も伸び悩み、大手チェーンからの買収話を持ちかけられています。
ある夜、セーヌ川のほとりで、傷を負った人魚を見つけたガスパール。病院に連れて行きますが、保険証がないと診られないと受付係に突っぱねられます。
外で待っていた人魚に、一人の男性医師が近寄りますが、人魚の歌によって命を落としてしまいました。
そんなことは知らないガスパールは、人魚を自分のアパートに連れ帰り、バスタブに横たえ、傷の手当てをします。
初めは警戒していた人魚も、少しずつ自分のことを話し出しました。彼女の名前はルラ。ルラは、歌うことで人間から身を守ってきました。
美しい歌声で、出会う男性を虜にし、心臓を破裂させ命を奪っていたんです。
そんな彼女の歌も、ガスパールには効きません。ガスパールは過去の失恋から、恋する気持ちを封印してしまったからです。
陸に上がって2日目の朝日が昇る前に海に帰らねば、命を落としてしまうというルラ。一晩休んで、傷が癒えたら海に帰すという約束をしますが、ふたりは徐々に惹かれ始めていました。
一方、病院では、亡くなった男性医師の妻であり、女医のミレナが、夫の死の原因は人魚にあると確信。復讐しようとルラの足取りを追っていて…。
映画『マーメイド・イン・パリ』の感想と評価
心躍る温かな世界
物語は、ストップモーションアニメから始まります。水浸しのパリの街中をローラースケートで走り抜けるガスパールは、いつの間にか海の中へ。
海の生き物たちの助けを借りながら、彼は海の中を進み、地上へ戻ってきたところで、実写に切り替わります。この一連で、本作に流れる温かな世界観が伝わり、心を掴まれました。
本作『マーメイド・イン・パリ』に出てくるルラは、フランス語の原題『Une sirene a Paris』にもあるように、セイレーンという生き物です。
セイレーンとは、その美しい歌声で船乗りたちを惹きつけ、船を難破させるという、人間にとっては恐ろしいモンスター。
本作は、そんなセイレーンであるルラを、優しく受け入れます。
というのも、ガスパールが勤める「フラワーバーガー」は、彼の祖母が1940年代に、レジスタンスをかくまうために始めた場所だからです。
レジスタンスという、いわばマイノリティとともに過ごしてきた「フラワーバーガー」で育ったガスパールは、ルラを恐れず、人格を持った対等な存在として見つめます。
マチアス・マルジウ監督の遊び心
マチアス・マルジウ監督が本作の元となった小説を書いたのは、2016年のパリの大洪水がきかっけだったと言いますが、本作にはスマホやパソコンなどの現代電子機器を登場させず、古き良きおとぎ話として描くことに成功しています。
本作で、音楽、脚本、監督、そして「フラワーバーガー」の歌手としても出演しているマチアス・マルジウ監督は、実にユニークな経歴の持ち主。
1993年にフレンチロックグループ・ディオニソスを結成し、1996年にファーストアルバムをリリース。
2013年には、自身が執筆した同名小説をアニメーション映画化した『ジャック&クロックハート 鳩時計の心臓をもつ少年』で映画監督としてデビューを果たすとともに、主人公ジャックの声優を務め、ディオニソスとして音楽も手掛けました。
『ジャック&クロックハート 鳩時計の心臓をもつ少年』は、欧州を中心に世界各国の映画祭で絶賛され、ベルリン映画祭やセザール賞にノミネートされています。
その後、短編作品の監督を経て、本作が初の長編実写映画作品となりました。
装飾にこだわったというガスパールの部屋は、監督の遊び心が満載で、まるでおもちゃ箱のようなワクワクが詰め込まれています。
クライマックスに現れる、とある「サプライズ」もお楽しみに。
愛らしい登場人物たち
レトロでカラフルな本作を彩るのは、個性豊かな登場人物たち。
多くの恋愛を経験してきたものの、本気の恋に破れたことから、心を閉ざしてしまったガスパールを、ニコラ・デュヴォシェルが少年のような眼差しで演じます。
ガスパールにとって、恋することこそが「サプライザー」としての想像力・創造力に繋がっており、ルラと関わることで「サプライザー」としての誇りも取り戻していきます。
誰がどう見たってルラに恋しているのに、言葉では否定し続ける子どもっぽさにもときめく人は多いはず。
身を守るために、歌でたくさんの男性を殺めてきた人魚のルラを、マリリン・リマがピュアな存在感で好演。殺気だった表情がふわっとほどけて満面の笑みを浮かべた瞬間、誰もが彼女の虜になることでしょう。
陸に上がって「初めて」に出会うたびに見せる、彼女の素直な反応のひとつひとつが愛らしく、ガスパールが恋に落ちるのも無理はありません。
そして、監督が当て書きしたという、ふたりの恋を見守るガスパールの隣人ロッシ役のロッシ・デ・パルマが、本作に強烈な印象を残します。
原作小説を書いている時から、ロッシ・デ・パルマが演じているイメージをしていた監督。そのため役名もロッシなんです。
彼女にぜひ演じてほしいと熱望した監督は、プロデューサーが決まっていない段階にも関わらず、ロッシ・デ・パルマに電話して直談判したそう。
ロッシ・デ・パルマも監督の想いに応え、愛情あふれるユニークな人物としてロッシを生き生きと演じました。
まとめ
『スプラッシュ』『シェイプ・オブ・ウォーター』に続く、出会うはずのなかったふたりの男女の恋物語をドラマチックに描いた本作『マーメイド・イン・パリ』。
孤独や哀しみすらも愛おしいものとしてコミカルに描き出した本作。懐かしさを感じさせるゆったりとした空気と、フレッシュな輝きに満ちた、至高のラブストーリーとなっています。
映画『マーメイド・イン・パリ』は、2021年2月11日(木・祝)より、新宿ピカデリーほかにて全国ロードショーです。