『初恋』の日本公開日は2020年2月28日。
今回ピックアップするのは日本国外でも人気を博す映画監督、三池崇史による初のラブストーリー『初恋』です。
日本での公開は2020年2月28日ですが、先駆けて2019年9月27日から全米で公開された本作の魅力をご紹介します!
映画『初恋』の作品情報
【日本公開】
2020年2月28日(日本映画)
【原題】
初恋 (英題:FIRST LOVE)
【監督】
三池崇史
【キャスト】
窪田正孝、大森南朋、染谷将太、小西桜子、ベッキー、三浦貴大、藤岡麻美、顏正國、段鈞豪、矢島舞美、出合正幸、村上淳、滝藤賢一、ベンガル、塩見三省、内野聖陽
【作品概要】
本作の主人公である孤高のボクサー、レオを演じるのはドラマ『デスノート』(2015)『僕たちがやりました』(2017)や映画『ふがいない僕は空を見た』(2012)「HiGH&LOW」シリーズで知られる人気俳優、窪田正孝。
裏社会とつながりのある刑事を演じるのは『ヘルタースケルター』(2012)『まほろ駅前狂騒曲』(2014)『アウトレイジ 最終章』(2017)など幅広いジャンルの作品にて存在感を発揮する大森南朋。
マフィアの若いメンバー、加瀬に扮するのは園子温監督作品『ヒミズ』(2012)でヴェネツィア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞、『ヒミズ』と『悪の教典』(2012)で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞している染谷将太。
他にもドラマ「きのう何食べた?」(2019)でおなじみ、大河ドラマから舞台まで活躍する内野聖陽、『犬神家の一族』(2004)『嫌われ松子の一生』(2006)『この世界の片隅に』(2018)の塩見三省と豪華俳優たちがマフィアメンバーを演じています。
プロデューサーを務めるのは巨匠ベルナルド・ベルトルッチの『ラストエンペラー』(1987)、デヴィッド・クローネンバーグの『裸のランチ』(1991)『危険なメソッド』(2011)を製作したジェレミー・トーマス。
本作は第72回カンヌ国際映画祭「監督週間」に選出されました。
映画『初恋』あらすじとネタバレ
葛城レオは両親の顔も知らない孤独な青年。
彼は現在ボクサーとして活躍し、期待の若手として大きく注目されています。
しかしそんなある日、負けるはずのない相手のパンチをくらいそのまま失神。病院で検査を受けた彼は脳腫瘍と診断され、余命も長くないと宣告されてしまいます。
ボクシングももうできないと絶望して夜の街を徘徊するレオはその場にいた占い師に占ってもらうことに。
「まだ若いし、あなたは健康そのものだよ」と大ハズレな結果を言われ、むしゃくしゃしながら再び歩き始めるのでした…。
そのころ、ある少女が薄暗い部屋で幻覚に怯え苦しんでいました。
モニカと呼ばれるその少女は借金を残して逃げた父親の代わりとしてマフィアに売春をさせられ、自身も薬物中毒で苦しんでいるのです。
モニカを見張っているのはヤスと彼の恋人、ジュリという女。
一方アンダーグラウンドの世界に足を突っ込んでいる刑事、大伴とマフィアの若い策士である加瀬はこっそり取引物の薬物を盗み出し、何年か加瀬が刑務所に入っている間にマフィア内部で殺しあってもらおうという策略を企てていました。
加瀬のいるマフィアでは権藤という男が勢力を伸ばしており、荒っぽい性格からチャイニーズマフィアに目をつけられていました。
加瀬と大森はヤスとジュリの部屋から薬物を取り出すためにモニカを一晩どこかに幽閉することに。
大伴はモニカを買うフリをして彼女を連れ出し、加瀬は中国人マフィアにジュリを誘拐するように頼み、自分はヤスを殺すべく部屋に向かいました。
ところが大森と繁華街を歩いていたモニカは幻覚によりほぼ裸の父親を見、走り出してしまいました。慌てて彼女を追いかける大伴ですが、そこでモニカは放浪していたレオとすれ違います。
「助けて」という声を聞き取ったレオは走ってきた大伴にパンチを食らわせます。彼が警察手帳を持っていることに気がつき焦るレオ。
モニカはレオを「リュウジくん」と呼び、訳のわからないまま二人は逃げることにしました。
一方加瀬は顔がばれてしまったためにヤスを殺害し、コカイン入りのバッグをコインロッカーに預けました。
加瀬に雇われている中国人マフィアはジュリを誘拐していましたが逆に反撃されて死に、ジュリは急いでヤスとの取引き部屋に戻ります。
レオはモニカが陥っている境遇を聞き、かつてモニカの父を殴り反抗してくれたリュウジを二人で訪ねることにします。加瀬は何食わぬ顔で本部に戻りますがそこにヤスの死体を発見したジュリから連絡が。
チャイニーズマフィアの反抗を疑うマフィア一行は死体を片付けるために部屋に向かい、加瀬は泣き怒り狂っているジュリを彼女の家に送り返すことになりました。
ジュリが恋人のヤスの携帯にGPSをしかけていることを知った加瀬は、仕事用の携帯をヤスから渡されているモニカの居場所をそこから割り出せるのではと思い奪おうとしますがジュリは激しく反抗、加瀬は彼女を気絶させます。
まさかの実家暮らしだったジュリとおばあちゃんと思しき女性二人を始末しようと部屋に放火装置をつける加瀬ですが、ジュリは間一髪で逃げ出して復讐を誓うのでした。
加瀬はロッカーからコカイン入りバッグを取り出しますがそこに同じマフィアのメンバーがやってきて彼がチャイニーズマフィアと裏で繋がっていることを知ります。
コカインを奪われそうになった加瀬は彼を殺して意識を取り戻した大伴と合流し、モニカとレオを追いかけました。
映画『初恋』の感想と評価
『オーディション』(2000)といったホラー映画、『極道戦国志 不動』(1996)など任侠映画、『愛と誠』(2012)『無限の住人』(2017)『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(2017)など人気漫画を原作とした映画とジャンルを問わずどんな映画も作り上げる三池崇史監督。
大胆不敵なスタイルは日本国外でも大きく評価されており、本作『初恋』は日本に先駆けてアメリカで先行公開されました。
鑑賞したサンタモニカのアート系シアターでは終始笑い声が絶えず、日本刀を用いたアクションやエンドロールでは拍手が起こるほど。
“ジャパニーズ・ヤクザ”とロマンスの融合はアメリカの観客の心を掴んだようです。
『初恋』は余命わずかと誤診されてしまった天才ボクサーの青年と劣悪な家庭環境で育ち、自身もアンダーグラウンドの世界に身を沈めざるを得なくなっている女の子が主人公。
夜の街で出会ったボーイ・ミーツ・ガールのストーリーにはマフィアの目論見や抗争が絡み合い、濃密な一夜が展開されていきます。
本作の魅力の一つはバイオレンス要素とロマンス要素がバランスよく全編を占めていることです。
恋の始まりはいつも“勘違い”。本作の“初恋”の始まりは迷惑なことに病院での誤診。
ラブシーンもキスシーンも無い本作ですが、それでも死を間近だと思い込んだ青年がまさに“死ぬ気で”行動を起こし、他人の人生に関わって運命かもしれない女性と出会う“恋の始まり”を甘酸っぱく演出します。
オマージュを捧げているであろう類似した作品は、エルヴィス・プレスリーに憧れる青年とコールガールの女性の逃避行を描いたトニー・スコット監督、クエンティン・タランティーノ脚本作品『トゥルー・ロマンス』(1993)。
『トゥルー・ロマンス』が主人公クラレンスが出会ってすぐに恋人となったコールガール、アラバマのポン引きに彼女を解放するよう頼みに行き謝って相手を殺し、彼女のケースと勘違いしてコカイン入りケースを持ち出したことから警察とマフィア両方に追われるようになるように、『初恋』でもレオが大伴を思わず殴ったことからアンダーグラウンドの社会に巻き込まれ、警察とマフィアにモニカと共に追われることになります。
またコカインや雪が舞ったりと、バイオレンスに反して純粋性を象徴する白が全編に登場し、それに導かれるように二人が駆け抜ける点も魅力的です。
もっともロマンチックな類似点はアラバマもクラレンスもモニカもレオも、若い二人だけが生き残るということ。
勝手にバタバタ死んでいくマフィアたちや警察を置いて生き抜ける姿は爽快なカタルシスをもたらします。
まとめ
肉体美とアクションを魅せる主演の窪田正孝、裏切り者で暴力的なヤクザをコミカルに演じきる染谷将太、恋人を殺されブチ切れて痛快なアクションを披露するベッキーと三池ワールドに染まった役者陣も魅力的な『初恋』。
滑稽でロマンチックな本作はまだまだアメリカで人気を伸ばしそうです。
本作の日本公開予定日は2020年2月28日。ぜひ劇場に足を運んでみてください!
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