Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

インタビュー特集

Entry 2022/04/27
Update

【津田晴香インタビュー】映画『まっぱだか』神戸・元町という“特別じゃないけど特別な風景”でありのままを演じる

  • Writer :
  • タキザワレオ

映画『まっぱだか』は2022年5月7日(土)より新宿K’s cinemaにて公開!

「当たり前」という言葉を題材に、もがきながら生きる男女の葛藤を描いた映画『まっぱだか』元町映画館の開館10周年を記念して企画され、神戸・元町を中心に撮影が行われた本作は、劇中にも地元住民の方々が大勢登場しています。

そして2021年の元町映画館での封切りならびに全国順次公開を経て、ついに2022年5月7日(土)からの新宿K’s cinemaでの公開が決定されました。

このたび、神戸発のカルト・インディーズ映画『みぽりん』(2019)にて映画主演デビューを果たし、『まっぱだか』が第2の映画主演作となった津田晴香さんにインタビュー

本作で受賞された「おおさかシネマフェスティバル2022」の新人女優賞への喜びをはじめ、本作が映し出す神戸・元町の風景、本作へのご出演を通じてのご自身の成長などを語ってくださいました。

スポンサーリンク

新人女優賞への“焦り”と“感謝”への変化


(C)2021 元町映画館

──「おおさかシネマフェスティバル2022」での新人女優賞の受賞おめでとうございます。授賞式の様子はいかがでしたか。

津田晴香さん(以下、津田):ありがとうございます。ただ授賞式当日のことは、緊張し過ぎてあまり覚えてないんです。

これまで俳優業を続けてきて、いつか賞を獲ることを目標に邁進していたんですが、そのいつかがまさかこんなに早く訪れて、新人女優賞をいただけると思っていなかったです。ドッキリだったらどうしようとか思いながら、半信半疑で会場に向かいました(笑)。

コロナの影響により2020・2021年度と2年連続の中止を経た、3年ぶりのおおさかシネマフェスティバルの熱気は相当なものでした。会場のホテル・エルセラーン大阪に着いたら、スタッフの方たちが物凄い熱意を持って動いてらっしゃっいました。

そんな熱気ある会場で、第一線で活躍されている俳優さんたちに囲まれながら「凄いところに来ちゃったな」とその豪華さに呆然としていました。一方で壇上に立った瞬間には、賞を受賞したのだと初めて実感できました。

もちろん新人女優賞を受賞したことは事前に告知されていましたし、その時はめっちゃ嬉しいと素直に喜んでいたんですが、授賞式当日が近づくにつれて「自分なんかが場違いじゃないか」とだんだんと焦り出しちゃいました。

前日まで行くかどうか悩んでしまったのですが、「賞をいただく」ということは自分がどうこう以前に、安楽涼監督や片山享監督をはじめとしたスタッフのみなさん、映画を観てくださった神戸の映画ファンの方のためでもあるという心持ちに切り替えられたので、実際に授賞式に参加できて本当に良かったと実感しました。

「ハルカ」から「ナツコ」へ


(C)2021 元町映画館

──制作期間がコロナによる最初のロックダウンが始まった時期と重なっていますが、コロナ以前の準備や撮影において大きく変更があった点はありましたか。

津田:やはり1番は、撮影前の打ち合わせのほとんどがリモートで行われたことです。本作出演のオファーをいただいたのは、ロックダウンになる直前。2020年のはじめの頃でした。

それ以前、私は安楽監督の『1人のダンス』(2019)を拝見しに元町映画館へはじめて足を運び、その時に舞台挨拶へ駆けつけていた安楽監督とお話しさせていただき、映画を観た直後の感動を素直に伝えさせていただきました。その時のことを覚えていてくださっていたそうで、神戸元町を舞台にした『まっぱだか』に出演して欲しいと後ほど声をかけていただきました。

映画撮影のクランクインも、当初は2020年の夏を予定していました。ただ情勢が厳しく、普段は東京で活動されている安楽涼監督と片山享監督が神戸に来て撮影に参加すること自体まだ夏頃では難しいと判断し、結果的にクランクインは冬になってからでした。

脚本の初期段階における役名は「ハルカ」で、私自身を当て書きされたものでした。打ち合わせの際に話したこれまでの自分の人生、自己紹介のような形でお話しさせていただいた私自身の話が脚本に反映されていたんです。

役名も「“ハル”カ」から「“ナツ”コ」へと、撮影時期とともに季節が移り変わりました。ただ役名まで「ハルカ」のままだとあまりにも自分と役とが一体化してしまう気がしていたので、名前が違うだけでも自分と役との間に距離ができ、演じるということにより一層集中できました。

──津田さんにとって、別人格である役に入り込むためには自分と役との間に距離があった方が良いのですね。

津田:そうは言っているものの、撮影が終わりに近づくにつれて私とナツコは一体化してしまいました。私自身が役に影響を受けて、だんだんとナツコになっていったんだと思います。

ナツコとして過ごす時間が長かった撮影期間中、ラジオ出演など別の仕事があったことはこの作品にとってもプラスになったといえます。現場から離れて一回冷静になったことで、自分と役との関係や作品のことをゆっくり考えられたんです。そのおかげで作品を客観的に見つめられ、だからこそ最後の場面が生まれたんだと今身に沁みています。

それまで溜め込んできた思いを吐き出す最後の場面では、脚本に書かれてない台詞を言いました。安楽監督と片山監督が「思ったことをやっていいよ。脚本の言葉が自分の中で違うと思ったら、それはやらなくていい」と言ってくれたんです。

撮影期間中に自分を見つめ直しながら演じてきたことで、最後に自分に対する気持ちをようやく見つけられた気がして、それをそのまま言ってみました。「ダメだったらダメで良い」と腹を括ったらそのまま使っていただけたので、安楽監督と片山監督には本当に感謝しています。

スポンサーリンク

元町の地面を転がってゆくボール


(C)2021 元町映画館

──共演を果たした柳谷一成さん演じる俊がボールを転がす場面が象徴的に感じました。ハルカにとってボールにはどんな意味があるのでしょうか。

津田:坂道の上に向かって投げたボールが転がって戻ってきて、というのを繰り返す場面はポスターにもなっています。

「ボールを投げる繰り返しは、当たり前のことを象徴している」と監督のお二人からお聞きしましたが、重要な場面でのボールの役割、脚本の意図については実は何も聞かされなかったんです。だからこそ、安楽監督と片山監督からいただいたものを自分の中で「こういうことか」と考えながら演じていきました。

解釈の正解はいまだに分かりませんが、ナツコとしてはその場に止まっている俊のきを引きたかったんだと思います。どうにかしてそこから動いてほしかった。前に進もうとしない俊を動かしたくて、元町の地面を転がるボールを追いかけたんです。

特別ではないのに特別に見える風景


(C)2021 元町映画館

──津田さんは神戸を中心に活動されていますが、元町映画館の開館10周年記念作である本作にご出演されたことで、どのような反響がありましたか?

津田:元町に住む地元の皆さんがめっちゃ喜んでくれはったんです。「映画の中に家が少し映っていたから」と観にきてくださったり、「元町で映画を撮った」と耳にした方たちが口コミで観にきてくださったりしました。

商店街の服屋さんなども映画を盛り上げるためにチラシ配ってくださるなど、街ぐるみで『まっぱだか』を盛り上げてくださったのが本当に嬉しかったです。元町は私も昔からよく遊んでいた場所で、この映画でも慣れ親しんだ元町特有の、地元の暖かさが画面に出ているなと感じられました。

『まっぱだか』は明確にご当地映画として作られているわけでもなく、そこが神戸だと分かる名所が映っているわけでもありません。ただ『まっぱだか』に出てくる元町の日常の風景は、特別ではないのに特別なものに映って見えたんです。ぱっと見ではどこの町かは分からないけれど、町の色は伝わっていると思います。

また本作では、標準語で台詞が書かれた脚本を私が方言に直し、声を録音する際も関西弁のイントネーションに合わせてやりました。ですから、東京でこの映画を観てくださった方が「関西弁だからこそ良かった」と仰ってくださったことが非常に嬉しかったです。

また「元町で撮った映画だけど、自分の地元みたいだった」という感想も、地元・元町で私自身の言葉で演じたからこそ感じてもらえたことなんじゃないかと捉えています。そして「神戸らしさ」だけが詰まったご当地映画と異なるため、自分の地元を投影しやすい、普遍的な郷愁を誘うのかもしれません。観た人の地元と重なる部分があったら良いなと思います。

スポンサーリンク

「嫌だ」と感じる自分を肯定できるように


(C)2021 元町映画館

──本作へのご出演を通じて、津田さんはご自身のどのような点が成長できたと感じられましたか。

津田:「自分自身のことが、そこまで嫌いじゃない」と気づけたことです。自分に対してプラスの感情を持てたのが、本作撮影期間中での1番の発見でした。

人に嫌なことを言うのはやっぱり難しいし勇気も出ないけれど、「嫌だ」と思っている自分すら嫌だった昔と比べると、「嫌だ」と思う自分自身を肯定できるようになった。それは凄く良い変化だったと実感しています。

おかげでちょっとだけ生きるのが楽になったし、これからはより嫌なことは嫌だとはっきり言えるようになれたらいいなと思います。

インタビュー/タキザワレオ

津田晴香プロフィール

1995年生まれ、兵庫県出身。

松本大樹監督作『みぽりん』(2019)にて神田優花役を好演。その後も出演作を重ねる。2021年には柳谷一成とW主演を務めた映画『まっぱだか』にて、おおさかシネマフェスティバル2022新人女優賞を受賞した。

また毎週木曜16時から放送中のFMゲンキラジオ「夕方交差点GENKIもってこい!」にてメインパーソナリティを務めている。

映画『まっぱだか』の作品情報

【公開】
2021年(日本映画)

【監督・脚本・撮影】
安楽涼、片山享

【キャスト】
柳谷一成、津田晴香、安楽涼、片山享、タケザキダイスケ、大須みづほ

【作品概要】
人が何かにこだわり独りになる、曇天の空になる、そこから抜け出したい衝動が溢れ出す、大人になりきれない青春ムービー。2020年に10周年を迎えた神戸・元町映画館配給の長編映画。

これまで監督作を元町映画館で公開し続けてきた安楽涼と片山享がメガホンをとった本作は、2021年の関西地方での劇場公開を経て、このたび新たに2022年5月7日(土)より新宿K’s cinemaでの公開が決定された。

映画『まっぱだか』のあらすじ


(C)2021 元町映画館

現実を受け入れられない俊(柳谷一成)と現実の自分ではなく他人から求められる自分に翻弄されているナツコ(津田晴香)。

ある日そんな2人が出会い、そして同じ時を刻んでいく……。

葛藤と葛藤のぶつかり合いは、いつか笑いへと昇華されていくのだろうか。

タキザワレオのプロフィール

2000年生まれ、東京都出身。大学にてスペイン文学を専攻。中学時代に新文芸坐・岩波ホールへ足を運んだのを機に、古今東西の映画に興味を抱き始め、鑑賞記録を日記へ綴るように。

好きなジャンルはホラー・サスペンス・犯罪映画など。過去から現在に至るまで、映画とそこで描かれる様々な価値観への再考をライフワークとして活動している。




関連記事

インタビュー特集

【里見瑶子インタビュー】映画『カニバ』パリ人肉事件の佐川一政との出会いが女優業のはじまり

映画『カニバ/パリ人肉事件38年目の真実』は2019年7月12日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて絶賛公開中! 1981年。青年・佐川一政は日本人留学生としてフランス・パリに訪れ、そこで …

インタビュー特集

【内藤瑛亮監督インタビュー】映画『許された子どもたち』少年事件に抱いた疑問と“グレー”な現実を徹底的に描く

映画『許された子どもたち』は2020年6月1日(月)より渋谷・ユーロスペース、テアトル梅田他にて全国順次ロードショー! 『先生を流産させる会』(2011)『ミスミソウ』(2017)などで知られる内藤瑛 …

インタビュー特集

【オクイシュージ監督インタビュー】映画『王様になれ』the pillows山中さわおの期待に応えるべく初監督作に挑戦

映画『王様になれ』は2019年9月13日(金)より、シネマート新宿ほか全国ロードショー! ロックバンドthe pillowsのデビュー30周年プロジェクトの一環として製作された、オクイシュージ監督の『 …

インタビュー特集

【二ノ宮隆太郎監督インタビュー】映画『お嬢ちゃん』女優・萩原みのりに当て書きした脚本と“主人公みのり”への思い

映画『お嬢ちゃん』は新宿K’s cinemaにて2019年9月28日(土)より全国順次公開! むき出しな気持ちを心に秘めて生きる、あるひとりの女性の生きざまを描いた映画『お嬢ちゃん』。 本作の演出を務 …

インタビュー特集

【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決

映画『ミッドナイトスワン』は2020年9月25日(金)より全国ロードショー公開! 俳優・草彅剛を主演に迎え、『下衆の愛』(2016)の内田英治監督が自身の手がけたオリジナル脚本をもとに制作した映画『ミ …

U-NEXT
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
タキザワレオの映画ぶった切り評伝『2000年の狂人』
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学