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【金子雅和インタビュー①】映画との出会いと『すみれ人形』を監督した思いは

  • Writer :
  • Cinemarche編集部

池袋シネマ・ロサでは、『アルビノの木』の凱旋上映(4月21日より)に合わせて、4月14日よりレイトショー上映として「金子雅和監督特集」も合わせた企画が組まれています。

金子雅和監督の処女作
『AURA』
や、映像を学んだ映画美学校時代の初長編作品『すみれ人形』を含んだ、なかなか観ることができない貴重な上映となっています。

海外の映画祭で『アルビノの木』が、映画賞を11冠受賞するに至った金子雅和監督とは、いったいどのような人物なのでしょう。

今、最も注目すべき金子雅和監督のインタビューを全3回にわたって掲載します。

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金子雅和監督の出身は?


写真:倉田爽(Cinemarche)

金子監督:「もともと、東京の出身で、両親の祖父母の代まで東京の人で、いわゆる生粋の東京人で田舎というものが全くないんです。

身近な環境に大自然というものがあったわけではないけれども、子どもの頃から水がすごく好きで、いつも心が惹かれるというか、街の中でもちょっとした噴水や人工の滝なんかがすごく好きで、水の流れが原風景としてあります。」

映画に興味を持たれたきっかけは?


写真:倉田爽(Cinemarche)

金子監督:「最初から映画に興味があったというよりは絵画に興味があって、子どもの頃からイラストレーターとか、漫画家とか、絵を描く仕事に憧れを持っていました。

高校時代も絵を描いていましたが、色々と迷っていた時に映像の世界に触れました。ちょうど文化祭で映画の監督をすることになったのです。

小学校の卒業の時には、あとから思うと劇の脚本を書いたりして、何かをすることが好きだったんですね。」

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映画を撮り始めた頃は?

『AURA』(劇場初/1998年/11分)


(C)kinone

金子監督:「映画をやりたいなと思い始めた一方で、絵画にも憧れはあり続けていていました。だけど絵画一本でやるには才能が足りないと、漠然と感じてた。笑

そんな18歳の頃からヨーロッパやロシアの映画を観るようになって、普通、映画は物語を語るのが主軸というものが多い中で、例えばアンドレイ・タルコフスキーの作品みたいに絵画的な映画があるのを知った。1つのショットから人間の気持ちを伝えたり、世界の何かを感じさせたりすることができる。そういう作品に触れて、自分が絵画でやりたかったことが、映像でできるのではないかと考えるようになりました。

今もその頃もスケール感のある映画が好きなんですが、18歳にはそんなスケールの大きいものが作れなくて、まずは可能な範囲で表現していこうと思いました。

今回の特別上映作品の中には処女作『AURA』があります。これは20年位前のまだ荒削りの短編作品ですが、特集上映にあたり「監督の原点につながるものだから上映する意味がある」という言葉をシネマ・ロサさんからいただき、劇場初上映になりました。

この作品のテーマは、「水と人間」、「自然と人間」です。自分自身が本質的に撮りたいものは何だろうと考えた中で生まれた作品でした。

大学2年の夏休みから半年くらいの間で撮ったもので、『アルビノの木』に繋がるまでの自分の創作のスタートがあるはずです。

自分は物語からというよりも、映像を通して人に何かを伝えたいという気持ちが原点になっているように思います。」

映画はどのように学ばれましたか?


写真:倉田爽(Cinemarche)

金子監督:「大学卒業後は神保町の古書店などで働きながら、映像に関わる何かができないかと探っていました。

BOX東中野(現・ポレポレ東中野)という映画館で仲間たちと上映会をしたことがあって、その時の映写技師を担当してくださった方が、「水辺と女性」というテーマなら瀬々敬久監督の映画『黒い下着の女 雷魚』を、と薦められました。瀬々敬久監督が講師をしていらしたのが映画美学校だと知ったのがひとつのきっかけで、入学しました。

この時は昼は働いていたので、夜に通えるというのも映画美学校を選んだ理由です。今でも独学の部分は多いんですけども、シナリオなど基礎の部分はそこで身につけました。」

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映画美学校の在学中に『すみれ人形』を作られた?

『すみれ人形』(2007年/63分)


『すみれ人形』

金子監督:「映画美学校2年目の時に、選ばれた企画が長編作品『すみれ人形』です。瀬々敬久監督を含む3人の講師の方たちがシナリオ読んで、シナリオの1シークエンスを撮影したテスト映像を見る。そこから誰の作品を卒業制作として撮るのか、選ばれるんです。

シナリオのセンスのある同級生には勝てない。自分は気迫でいくしかない。笑

何度も積極的に講師の先生方にシナリオを読んでいただいて…。「何としても絶対にこの作品は撮るぞ」という気迫でした。

言語化できないエネルギーみたいなものをぶち込んだというか。めちゃくちゃな作品ですが、今見てもエネルギーと言うものがあると思います。」

シナリオのテスト映像のシーンはどこ?

金子監督:「映画の後半の凍った滝の前での男2人とすみれの場面を撮影しました。課題で撮影をした時は夏だったので、滝も凍ってなかったのですが、実際に撮影した、その年は20数年ぶりの大寒波で、奥多摩の滝が凍って…と、幸運にも強い画が撮れました。」

テーマは「水」であり、決闘する場面も水辺?


写真:倉田爽(Cinemarche)

金子監督:「そうですね。笑。
境界を越えて神聖な場所に入っていく役割として、水辺が出てきます。川はある種の境界線でもありますし、処女作から「自然と人間」というモチーフを撮っていましたし、もちろん自然への憧れと言うものがあります。

一方で、どうしても自然と一緒になれないという、人間としての自分が自然の中に入ったときにどこか浮いてしまうという、同じ生き物でも動物とは違うことへの不思議を感じていました。

水の中に入っていくことが、自然物と人間の境界線が曖昧になるというか…。自然そのものに人間の身体が近づくことになるんじゃないか。それこそ、羊水というか、原初の、生命の根源というものに惹かれているのかな…。」

『すみれ人形』の手へのこだわりの意味は?

金子監督:「シナリオの書き始めは、川端康成の『片腕』という短編、片腕と人間の交流というシュールでフェティッシュな小説の影響があります。

『すみれ人形』はストーリーだけを追うと破綻してるのですが、一方で象徴であったり、ショットの意味というのを見ていくと、また違った楽しみが象徴であったり、ショットの意味を見ていくと、また違った楽しみがあると思います。

当時も今も、自分としては絵から何かを感じて欲しいというの想いがあって、絵画を見るように映画を感じてもらいたい。それがまだまだ粗削りだけど、とにかく一本の映画にするぞ、という気持ちで作ったのが『すみれ人形』だと思いますね。

『アルビノの木』に向かう構想はどう始めた?


(C)kinone

金子監督:「『すみれ人形』は、2008年に上映がされた後、その夏には、すでに映画の構想と、『アルビノの木』というタイトルは決まっていました。

自分が1番最初に撮りたいと思った、「自然とその中の人間」というモチーフを物語のテーマにしたいのと、あとは日本の寓話ですね。

現代の話なのだけれども、日本の昔話。日本の寓話を「白鹿と猟師」というテーマで描くことを当初から考えていました。

シナリオは最初のうち、上手くは乗ってきませんでした。ただ、自分が向かいたい方向は見えていたので、『アルビノの木』を撮影するための準備ステップとして、自主制作や企画物などの6つの短編の中で、そこに繋がるものを探って制作してきました。」

『鏡の娘』(2008年/18分)


(C)kinone

金子監督:「民話や寓話性、伝承といったものを題材にしていこうと考えていたので、短編『鏡の娘』ではグリム童話のラプンツェルを原案にして、短編『復元師』では日本の鬼伝説を、短編『逢瀬』では神隠しの伝説を踏まえています。

同時に動物というモチーフでもあって、短編『逢瀬』では猪が、短編『水の足跡』ではカモシカ、といった「山の動物と人間」という題材を含みながら長編第2作目となる『アルビノの木』へと積み上げていきました。

この短編を撮影している間に知り合った人や人脈などによって、『アルビノの木』を撮れる状況になってきました。」

「金子雅和監督特集」の池袋シネマ・ロサの内容は?

池袋シネマ・ロサでは4月14日(土)から5月4日(金)まで、3週連夜20:00よりレイトショーが行われます。

作品を組み合わせる編成の構成や順番を意識した上映は、インタビューでも紹介した金子監督の作家性の魅力を知る絶好の上映プログラムです。

金子雅和監督特集上映:Aプログラム
「自然と美の探求・初期衝動作品」
・『AURA』(劇場初/1998年/11分)
・『すみれ人形』(2007年/63分)
・『こなごな』(2009年/10分)

『こなごな』


(C)kinone

金子雅和監督特集上映:Bプログラム
「美と恐怖・黒い寓話集」
・『逢瀬』(都内劇場初/2013年/36分)
・『復元師』(2010年/29分)
・『鏡の娘』(2008年/18分)

『逢瀬』


(C)kinone

金子雅和監督特集上映:Cプログラム
「自然と人間・水と光と風たち」
・『ショウタロウの涙』(劇場初/2000年/30分)
・『失はれる物語』(2009年/34分)
・『水の足跡』(2013年/30分/きりゅう映画祭助成作品)

『水の足跡』


(C)kinone

また、上映期間中はトークショーも予定されています。金子雅和監督がゲストを迎えて映画に関するお話を伺います。

・4/14(土) 乙一(作家)、小深山菜美(『失はれる物語』出演)
・4/15(日) 松蔭浩之(現代美術家『復元師』ほか出演)
※4/16&4/17は調整中
・4/18(水) 瀬々敬久(監督)
・4/19(木) 内田伸輝(監督)、上田慎一郎(監督)、高木公佑(俳優『復元師』出演)
・4/20(金) 山口晃(画家『水の足跡』出演)、松蔭浩之(現代美術家)
・4/21(土) 松岡龍平、長谷川初範ほかキャスト
※4/22(日)以降調整中

【池袋シネマ・ロサ情報】
住所:東京都豊島区西池袋1丁目37−12
TEL:03-3986-3713

まとめ

金子雅和監督の生い立ちから、映画と出会い、映画美学校時代の『すみれ人形』を中心に映画制作に秘めた監督の思いも語っていただきました。

金子監督の作家性の源泉の一端に触れることはできたでしょうか。

影響を受けた映像作家に同じく「水」をモチーフに描く巨匠アンドレイ・タルコフスキーを挙げ、文学では川端康成のシュールレアリスムな『片腕』ほか、インタビューにはありませんが、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』なども語っていらっしゃいました。

絵画好きということで挙げられた画家は、『悦楽の園』などで知られる初期フランドル派の画家ヒエロニムス・ボス。

十代のとき初めて一人で行った海外旅行で訪れたマドリードのプラド美術館で実際に鑑賞したことを、楽しそうに語っていました。

次回の【金子雅和インタビュー】では、海外の映画祭で十一冠を成し遂げた、『アルビノの木』の制作の裏話などについてご紹介していきます。

*インタビュー:久保田奈保子、写真:倉田爽、構成:シネマルコヴィッチ

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