映画『サマー・オブ・84』は2019年8月3日公開。
フランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセルら、カナダの映像制作ユニット「RKSS(ROADKILL SUPERSTARS)」が、1980年代のホラー映画、サスペンス、スラッシャー、そして青春映画にオマージュをささげた映画『サマー・オブ・84』。
1984年、アメリカの片田舎を舞台に、連続殺人事件の謎に挑む少年たちのひと夏の体験を描いたジュブナイル・ホラー作品です。
BMX版の『マッドマックス』とも呼ばれる『ターボキッド』製作陣が放つ、『サマー・オブ・84』をご紹介します。
映画『サマー・オブ・84』の作品情報
【公開】
2019年(カナダ、アメリカ合作映画)
【監督】
フランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセル
【キャスト】
グラハム・ヴァーチャー、ジュダ・ルイス、ケイレブ・エメリー、コリー・グルーター=アンドリュー、ティエラ・スコビー、リッチ・ソマー
【作品概要】
思春期のオタク少年たちが隣家の警察官を殺人鬼と疑い、調査をはじめたことから、思わぬ恐怖に直面する青春ホラー。
カナダの映像制作ユニット「ROADKILL SUPERSTARS」のフランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセルが、共同監督を務める。
80年代のスラッシャー映画や青春映画にリスペクトした作品です。
映画『サマー・オブ・84』のあらすじとネタバレ
1984年、アメリカのオレゴン州に住む15歳の少年デイヴィー(グラハム・ヴァーチャー)は、新聞配達中に隣人のマッキー(リッチ・ソマー)に頼まれ、家具の移動の手伝いで彼の家の地下室に入ります。
怪しげな部屋と壁一面に飾られたマッキーの親戚たちの写真を見たデイヴィーは、ある日の夜にマッキーの家で少年らしき人影を目撃しました。
同じ頃、近隣では子供たちが行方不明になる事件が発生していましたが、“ケープメイの殺人鬼”を名乗る人物からの手紙により、一連の事件が同一犯による犯行であると判明します。
マッキーの家で目撃したのは行方不明になっている少年ではないかと考えたデイヴィーは、親友の不良イーツ(ジュダ・ルイス)、肥満児のウッディ(ケイレブ・エメリー)、眼鏡のファラデイ(コリー・グルーター=アンドリュー)に、マッキーこそが“ケープメイの殺人鬼”であり、その証拠を自分たちの手で探し出そうと提案します。
半信半疑ながらも一同はデイヴィーに協力することになり、4人はマッキーの行動を観察、ゴミを漁るなど、証拠探しを開始します。
大量の土やシャベルを購入するなど、怪しい行動を見せるマッキーへの疑いを強める4人でしたが、なかなか決定的な証拠をつかむことが出来ません。
証拠探しの最中、美少女ニッキー(ティエラ・スコビー)との仲を深めていくデイヴィーは、両親の不仲により町を出ていくという彼女の気を引くため、自分たちが秘密の捜査をしていることを明かします。
ある夜、マッキーを尾行していたウッディとファラデイは、マッキーが貸倉庫に車と死体処理用と思われる薬品を隠していることを突き止めます。
さらに、その留守中に家の庭へと侵入したデイヴィーとイーツは血痕のついたTシャツを発見、それは行方不明になっている少年が着ていたのと同じものでした。
マッキーが犯人であると確信したデイヴィーは、手に入れた証拠を両親に見せ、これまでの証拠集めについても話します。
しかし、両親には信じてもらえず、逆にマッキーの家に忍び込んだことを一緒に謝罪しにいくことになってしまいました。
謝罪を受けたマッキーは苦笑しながらも4人の行動を許し、Tシャツは遊びに来ていた甥っ子のものだと説明します。
デイヴィーは両親から外出禁止を言い渡され、他のメンバーもこれ以上協力できないことを告げられますが、デイヴィーの疑いは晴れることはありませんでした。
それからすぐに、警察は“ケープメイの殺人鬼”を逮捕したことを発表、犯人を捕まえたのは誰あろうマッキーだったのです。
あまりにも良すぎるタイミングに、さらに疑念を強めたデイヴィーは、メンバーに最後の頼みとして、再びマッキーの家に侵入する作戦への協力を願い出ました。
映画『サマー・オブ・84』の感想と評価
古くは『スタンド・バイ・ミー』(1986)、『グーニーズ』(1985)、「13日の金曜日」シリーズ。
2010年代でも『SUPER8/スーパーエイト』(2011)、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017)、NetflixのTVドラマ「ストレンジャー・シングス」シリーズ(2016~)など…。
80年代を舞台(もしくは80年代に製作された)にした青春もの=ジュブナイル映画、スラッシャーもの=ホラー映画は数限りなく存在します。
本作『サマー・オブ・84』は、そういった古今東西の80年代ジュブナイル映画を下敷きにして、数々のオマージュを捧げつつ、連続殺人の謎を追う少年たち4人の視点で展開していきます。
UFOや超常現象といった、現代で言うところの都市伝説に傾倒する主人公デイヴィーが、ある日隣人の警察官マッキーを連続殺人鬼ではないかと疑い始めることで、“ひと夏の殺人鬼捜査ゲーム”が始まります。
主人公たちの15歳という年齢は、“大人ではないが子どもとも言いきれない”思春期真っ盛りの時期であり、このゲームは少年たちにとって大人への通過儀礼として描かれています。
マッキーが殺人鬼である証拠集めに奔走する最中に、少年たちが抱えるそれぞれの問題(デイヴィーはニッキーへの秘めた恋心、イーツは両親の不和、ファラディは母親の不安定さ)が背景として描かれるのも、通過儀礼の一部と言えるでしょう。
果たして真相は、デイヴィーたちの思春期ならではの妄想に過ぎないのか、それとも? この緊張感を保ちながら、物語は進行していきます。
本作の優れた点は、そういった80年代ジュブナイル映画としての展開をしていきながら、クライマックス10分から、これまた80年代のスラッシャー映画へと突如転換してみせる演出力、脚本力です。
通常のジュブナイルものであれば、地下室の謎を解いたシーンから犯人が逮捕されるか、その場で犯人との対決(子供には死人が出ずに勝利する)という結末が描かれるところで、犯人は捕まらず、友人は殺害され、主人公自身もトラウマを抱えたまま生きていく、という考え得る限り最悪のエンディングを迎えます。
これも前述した通過儀礼としての結果であり、大人になるための試練は、主人公、そして観客にもトラウマ級の衝撃を残すことになったのです。
まとめ
80年代ジュブナイル映画をベースとしながら、そこにスラッシャー映画の要素も加えた本作は、過去作への敬意を払いつつ、その先にあった新たな表現を見出すことに成功しています。
最後に、強烈なトラウマを残す本作を気に入った方にオススメしたい映画は、兄の部屋で人間の生首を発見する少年の葛藤を描いたサスペンスホラー『ファウンド』(2012)と、ソシオパスの少年が隣人の殺人鬼と対決する『アイム・ノット・シリアルキラー』(2017)の2作品です。
どちらも本作のテーマと大きく共通するものがある作品ですので、是非ともチェックしてください。