パイロキネシス(自然発火)能力を持つチャーリーの、孤独な戦いが始まる
感情が高まると、相手を燃やす力を発動させる少女チャーリーと、秘密組織の戦いを描いたホラー映画『炎の少女チャーリー』。
1984年に公開され、大ヒットとなった同名映画のリメイクとなる本作。
ホラー作品で数々の話題作を世に放つ「ブラムハウス・プロダクションズ」により、現代に蘇った『炎の少女チャーリー』の魅力をご紹介します。
映画『炎の少女チャーリー』の作品情報
【公開】
2022年公開(アメリカ映画)
【原作】
Firestarter
【原題】
2022年公開(アメリカ映画)
【製作】
ジェイソン・ブラム、アキバ・ゴールズマン
【音楽】
ジョン・カーペンター、コディ・カーペンター、ダニエル・デイビス
【監督】
キース・トーマス
【キャスト】
ザック・エフロン、ライアン・キーラ・アームストロング、シドニー・レモン、カートウッド・スミス、ジョン・ビーズリー、マイケル・グレイアイズ、グロリア・ルーベン
【作品概要】『
スティーブン・キングの小説『ファイアスターター』を原作に、1984年にドリュー・バリモア主演で映画化され、大ヒットした『炎の少女チャーリー』。
ホラー映画不朽の名作を『透明人間』(2020)『アス』(2019)などの製作会社「ブラムハウス・プロダクションズ」がリメイク。
「パイロキネシス」の能力を持つチャーリーを、『ブラック・ウィドウ』(2021)のライアン・キーラ・アームストロングが演じる他、チャーリーを支える父親アンディを『グレイテスト・ショーマン』(2017)の、ザック・エフロンが演じています。
映画『炎の少女チャーリー』のあらすじとネタバレ
製薬会社の治験で「ロト・シックス」という不思議な薬を飲まされ、テレパシーで他人の心を意のままに操る能力を得たアンディ。
アンディは、同じく「ロト・シックス」で、物体を操る能力「サイコキネシス」に目覚めたヴィッキーと結婚し、2人の間にチャーリーという娘が誕生します。
チャーリーは成長するにつれて、人や物体を発火させる「パイロキネシス(自然発火)」能力に目覚め、10代を迎える頃に能力が暴走するようになります。
アンディは、チャーリーが心を乱さないように、リラックスする方法を教えていました。ある時、学校で同級生に馬鹿にされたチャーリーは、怒りの感情が芽生えた為、学校のトイレに逃げ込みます。
心配した教師の前で、トイレのドアを爆破したチャーリー。このことが問題視され、アンディとヴィッキーは、学校に呼び出されます。
アンディは、学校に呼び出されたことより「あいつらに気付かれた」と、何かを気にしている様子でした。
アメリカの科学技術研究所。この建物内で、秘密裏に組織された通称「店(ショップ)」。
この組織の責任者、ジェームス・ホリスターは、チャーリーの存在に気付いたようでした。
映画『炎の少女チャーリー』感想と評価
怒りの感情と共に、相手を燃やし尽くす「パイロキネシス」の能力を持った少女チャーリーと、秘密組織との戦いを描いた『炎の少女チャーリー』。
1984年にも公開され、当時は大ヒットした作品なので、タイトルに聞き覚えのある人も多いのではないでしょうか?
ちなみに1984年版で、チャーリーを演じたのはドリュー・バリモアなんですね。
新たにリメイクされた本作の、1984年版との大きな違いは、チャーリーの年齢が少し上がっている点です。
1984年版では9歳だったチャーリーですが、2022年版では10代前半、中学生ぐらいの年齢になっています。中学生ぐらいの年齢と言えば、自我が目覚め、家族と世間の狭間で苦悩することも増える時期です。
チャーリーは、特殊能力を持つ両親の意向で、他の人とは違う、隔離されたような生活を送っています。
家庭にネット環境すら整っておらず、同級生から馬鹿にされているチャーリーは、完全にいじめの対象になってしまっています。
ですが、怒りを爆発させると「パイロキネシス」が発動する為、自分の感情のコントロールに失敗すると、命を奪ってしまうという、人には分からない悩みを抱えます。
社会との接し方が分からず、悩みを1人で抱え込んでしまう思春期の不安定さ。
チャーリーの年齢が変更されたことで、この不安定さが際立ったと感じます。
このチャーリーを守り通そうとする、父親のアンディの存在が大きく、チャーリーに「力を使って人を傷つけるな」と教えます。
チャーリーは戸惑いながらも、父親との約束を頑なに守る為、能力を操る練習をするのですが、最後はアンディの能力により操られ、ホリスターと共にアンディを燃やすことになるという、皮肉的な展開となります。
かなりショッキングなこの展開では、状況において本音と建前を使い分ける「大人の理不尽な部分」を感じます。
「大人の理不尽な部分」を目の当たりにしたチャーリーは、精神的に動揺し、さらなる暴走を見せるようになり、もはや誰も制御できない程となってしまいます。
『炎の少女チャーリー』は、自身の感情をコントロールさせないと、人を殺してしまうという、危うい能力に目覚めてしまったチャーリーの悲劇を描いたホラー映画です。
ですが、視点を変えると、接し方を間違えると力が暴発する少女が、これまで抑止力になっていた両親を失い、精神的に非常に危険な状態で、世の中に出たことになります。
両親を奪ったレインバードが、今後チャーリーの抑止力になれるのか?もし、なれなかったら……など考えると、いろいろ怖い作品ですね。
まとめ
『炎の少女チャーリー』は、チャーリーが怒りを感じ始めると、熱気が画面に漂い始め、チャーリーの爆発しそうな内面が観客に伝わるなど、視覚的な演出が素晴らしい作品でもあります。
特に「パイロキネシス」による炎の演出ですが、約95.9パーセントが本物の炎を使用し撮影されたことを、監督のキース・トーマスは語っています。
母親であるヴィッキーの、両手が燃える場面も、何度もリハーサルを重ね、本当に腕が燃えた状態で撮影をしています。
ヴィッキー役のシドニー・レモンの、本物だからこその迫真の表情は必見です。
チャーリーが炎で建物を破壊し始める、クライマックスの場面では、約1000度まで上昇した炎の中で撮影されたという、めちゃくちゃ迫力のある場面になっています。
さらに、音楽を手掛けてるのはジョン・カーペンター。
『ハロウィン』でお馴染みの、あの単調だけど頭から離れない、何となく不安になる音楽が、チャーリーの不安定な内面を効果的に表現しています。
『炎の少女チャーリー』は映像や音楽にも、半端ではないこだわりを見せた作品で、あえて本物を使用するアナログな製作方法が、1984年版へのリスペクトを感じました。