第97回アカデミー賞美術賞と衣装デザイン賞受賞作『ウィキッド ふたりの魔女』
映画『ウィキッド ふたりの魔女』は、2003年の初演から20年以上にわたり愛され続ける大ヒットブロードウェイミュージカル『ウィキッド』を映画化した2部作の前編です。
後に『オズの魔法使い』で「西の悪い魔女」となるエルファバと「善い魔女」となるグリンダの2人の出会いが、オズの国の運命を大きく変えることになります。
2人の魔女の始まりの物語を描いたファンタジーミュージカル『ウィキッド ふたりの魔女』をネタバレ有りでご紹介します。
CONTENTS
映画『ウィキッド ふたりの魔女』の作品情報
(C)Universal Studios. All Rights Reserved.
【日本公開】
2025年(アメリカ映画)
【原題】
Wicked
【監督】
ジョン・M・チュウ
【製作】
マーク・プラット、デビッド・ストーン
【製作総指揮】
デビッド・ニックセイ、スティーブン・シュワルツ、ジャレッド・ルボフ、ウィニー・ホルツマン、デイナ・フォックス
【キャスト】
シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ、ジョナサン・ベイリー、イーサン・スレイター、ボーウェン・ヤン、ピーター・ディンクレイジ、ミシェル・ヨー、ジェフ・ゴールドブラム ほか
【日本語吹き替え】
高畑充希、清水美依紗、海宝直人、田村芽実、入野自由、kemio、ゆりやんレトリィバァ、塩田朋子、大塚芳忠、山寺宏一、武内駿輔 ほか
【作品概要】
本作は、2003年の初演から20年以上にわたって大ヒットしているブロードウェイミュージカル『ウィキッド』を映画化した作品。
後に『オズの魔法使い』に登場する「西の悪い魔女」となるエルファバと「善い魔女」となるグリンダの、始まりの物語を描いています。
『イン・ザ・ハイツ』(2021)『クレイジー・リッチ!』(2018)のジョン・M・チュウ監督のもと、エルファバ役にエミー賞、グラミー賞、トニー賞でそれぞれ受賞歴を持つ実力派のシンシア・エリボ、グリンダ役はグラミー賞常連アーティストのアリアナ・グランデが担当します。
第97回アカデミー賞では、作品賞、シンシア・エリボの主演女優賞、アリアナ・グランデの助演女優賞など合計10部門にノミネートされ、美術賞と衣装デザイン賞の2部門を受賞。
映画『ウィキッド ふたりの魔女』のあらすじとネタバレ
(C)Universal Studios. All Rights Reserved.
魔法と幻想の国オズ。ある日、この国に「悪い魔女が死んだ」というニュースが流れ、人々は喜んでいます。そこへやって来た「善い魔女」グリンダが、改めて「悪い魔女の死」を皆に告げました。
お祝いムードで人々が盛り上がるなか、一人の女性がグリンダに「悪い魔女と友だちだったのでは?」と問いかけました。
少し考え込んだグリンダは、死んだ魔女の身の上話を始めます。かつて友だちだった、その魔女……エルファバのことを。
エルファバとグリンダの出会い
オズの国で動物たちも言葉を話し、人間と同じように生活をしていた大昔のことです。
マンチキン国総督の長女に生まれたエルファバは、緑色の肌の女性です。実は母親が浮気相手の見知らぬ男と情事の果てに誕生した娘でした。
カエルのような緑色の肌をして生まれて来たエルファバを見て、両親は言葉も出ないほど驚きます。ショックを受けた母親の代わりに、エルファバは熊の乳母に育てられました。
その後、妹・ネッサローザを出産した母親は死に、父親は緑色の肌を持つエルファバを忌み嫌います。
独りぼっちのエルファバは、足に障害があって歩けないネッサローザの面倒をみていましたが、その特異な肌の色で近所の子どもたちからもいじめられていました。
エルファバが怒ると、物が飛び交って攻撃するという不思議な現象が起こります。お騒がせな出来事をおこすエルファバを父親はますます嫌うことになりました。
やがて成長したネッサローザがシズ大学に入学することになり、エルファバは彼女の付き添いとして同行します。
同じ頃、魔法使いに憧れるグリンダは、魔法学を学べるシズ大学に入学。大学の構内でエルファバと出会います。
エルファバは父からネッサローザの世話役を言いつけられていましたが、大学側はエルファバの外見をみて彼女を早く立ち去らせようと、車いすのネッサローザを寮へ連れて行こうとします。
「私がやらなければならないから、ネッサローザを離して!」とエルファバは怒りを爆発させました。
すると、校内に大風が吹き、その場にある椅子や本などが飛び交い、皆を攻撃しました。
偶然その場にいてエルファバの魔法の力をみてしまった、シズ大学魔法学の権威者、マダム・モリブルは、エルファバの未完成の魔法の力を高く評価し、彼女を入学させます。
魔法に惹かれるグリンダは、マダム・モリブルがエルファバのルームメイトを捜しているのを知り名乗り出ます。
こうして、誰よりも優しく聡明でありながら家族や周囲から疎まれ孤独なエルファバと、誰よりも愛され特別であることを望むみんなの人気者グリンダは、大学の寮でルームメイトになったのです。
友情を深める2人
柔らかな金髪の美人でピンクがよく似合うグリンダと、緑色の肌に黒い癖っ毛、黒系の固い感じの服装のエルファバ。見た目も性格も、そして魔法の才能もまるで正反対の2人は、ルームメイトになっても反発し合います。
ある日、隣国の王子フィエロがシズ大学へ転校してきました。自由気ままなフィエロは転校初日にクラスメイトたちを夜のディスコパーティーの店へ誘います。
グリンダはフィエロと踊りたかったので、自分に声をかけてきたボックに、ネッサローザに声をかけて一緒に行くように頼みます。
ネッサローザが行くならエルファバも行かないわけにいかず、騒がしいことが嫌いなエルファバは、あることを相談しに魔法学のマダム・モリブルの元を訪れました。
店では皆が楽しく踊っていました。そこへ、マダム・モリブルが現れ、グリンダに練習用の魔法の杖を渡します。
「私に?」魔法を教えてもらえると喜んだグリンダに、マダム・モリブルは「あなたは魔法はまだだめだけど、エルファバに頼まれたのよ。彼女はここに来ているわ」と告げました。
その時、階段の上から、エルファバが下りてきました。グリンダがプレゼントしてくれた不格好で真っ黒な変な格好の帽子をかぶり、いつもの黒服です。
場違いな服装に周囲の人々は失笑しますが、エルファバはつらい思いを隠して不器用なダンスを始めます。
エルファバの気持ちがよくわかったグリンダは、エルファバとともに踊り出し、いつのまにか2人の間のわだかまりもとけていったのです。
この日を境に、グリンダとエルファバは、互いの本当の姿を知ることになり、かけがえのない友情を築いていきました。
映画『ウィキッド ふたりの魔女』の感想と評価
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本作は、児童文学『オズの魔法使い』に登場する「西の悪い魔女」のエルファバと「善い魔女」のグリンダの出会いから『オズの魔法使い』へ繋がる物語で、20年以上愛され続けているミュージカルを映画化したものです。
2部作の前編にあたり、この作品では2人の出会いと友情、それぞれの道を歩むことになる出来事が描かれていました。
母親の浮気の罪を被ったかのように、緑色の肌で生まれてきたエルファバ。異様な見た目のため、子どもの頃からいじめられてきました。
理不尽な仕打ちに対する怒りは彼女の持って生まれた魔力に一層の凄みを加えていきます。
一方、魔力にあこがれるグリンダは、いつも皆の中心となる陽気な人気者でした。唯一、自分にはない強力な魔力をエルファバが持っていることを知り、羨ましく思います。
エルファバとグリンダの友情を知りながら、シズ大学の魔法の権威者マダム・モリブルは、最高の魔法使いとされるオズの魔法使いにエルファバのことを報告しました。ここから物語は急展開しました。
数多の名曲に酔いしれる
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本作では、ブロードウェイ・ミュージカル『ウィキッド』の第一幕を彩った全11曲が登場し、ミュージカルの感動も新たに呼び起こしました。
終盤でオズの魔法使いの正体を知ったエルファバは、空飛ぶ箒に乗って逃げ出します。エルファバを演じるシンシア・エリボが歌い上げる『Defying Gravity』は、魂を揺さぶられるような力強さで観客を魅了します。
他人のルールに縛られない自由を求めるエルファバの心の叫びが、猿のスパイ軍団をかわすパワフルな空中戦をいっそう見応えのあるものにしています。
エルファバはその後どうして「西の悪い魔女」と呼ばれるような魔女になってしまったのでしょう。また、エルファバとグリンダの恋心をくすぐるフィエロ王子にも秘密がありそうです。
前編での謎が後編では、どんな繋がりをもってどのように紐解かれていくのかと、とても気になります。
また、ストーリーも興味深いものですが、善と悪を識別するような明暗のはっきりした色使いの映像美は、スクリーンならではの醍醐味で楽しませてくれます。
圧巻の映像美、後編でも期待します。
まとめ
(C)Universal Studios. All Rights Reserved.
大人気の傑作ブロードウェイミュージカル『ウィキッド』を映画化した『ウィキッド ふたりの魔女』を、ネタバレ有りでご紹介しました。
本作は、第97回アカデミー賞の、美術賞と衣装デザイン賞の2部門を受賞しています。その映像美は、流石に目を引きました。
そして、物語は善と悪と明暗を分けた元友だち同士の2人の魔女の出会いから始まります。
果たして、グリンダとエルファバの2人の友情を引き裂いたものは何だったのでしょう。見た目とは大違いの心優しいエルファバがどうして「悪い魔女」になってしまうのでしょう。その原因が迫力満点の歌と映像で描かれます。
鑑賞後は、本作で力いっぱい魔女たちを体現したシンシア・エリヴォとアリアナ・グランデの熱演に魅了されるのに違いありません。
日本語吹き替え版では、エルファバを高畑充希、グリンダを清水美依紗が担当します。こちらもまた楽しみなキャスティングです。
また、サプライズとして、ブロードウェイ・ミュージカルの初演で2人の魔女を演じたスーパースターたちも登場しますので、お見逃しなく。