伝説的人気漫画を幻想的に映像化した新感覚オカルトファンタジー映画
「魔法騎士レイアース」や「カードキャプターさくら」など、時代を代表する作品を手掛けてきた作家チーム「CLAMP」が2003年から連載を開始した人気漫画「XXXHOLiC」。
オカルトを題材としながらも現実社会にも通ずる残酷さと対峙し成長していく主人公を描いた物語が人気となり、アニメや舞台、そして実写ドラマなど多くのメディアミックス作品が誕生した「XXXHOLiC」が遂に初めての実写映画化。
今回は唯一無二のタッチで映画を彩る蜷川実花監督によって制作された映画『ホリック xxxHOLiC』(2022)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
CONTENTS
映画『ホリック xxxHOLiC』の作品情報
【公開】
2022年(日本映画)
【監督】
蜷川実花
【脚本】
吉田恵里香
【キャスト】
神木隆之介、柴咲コウ、松村北斗、玉城ティナ、趣里、DAOKO、モトーラ世理奈、西野七瀬、大原櫻子、てんちむ、橋本愛、磯村勇斗、吉岡里帆
【作品概要】
CLAMPによる人気漫画を『ヘルタースケルター』(2012)や『Diner ダイナー』(2019)を手掛けた蜷川実花が映像化した作品。
『桐島、部活やめるってよ』(2012)の神木隆之介と『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)や『容疑者Xの献身』(2008)などで知られる柴咲コウが主演を務めました。
映画『ホリック xxxHOLiC』のあらすじとネタバレ
幼いころから「アヤカシ」が見えてしまう高校生の四月一日君尋は、その特性がゆえに誰とも関係を深めず人生を歩んできました、
四月一日がビルの屋上から自殺を考えていると一匹の蝶が目の前に現れ、その蝶に着いていくと路地裏にある不思議な「ミセ」へと辿り着きます。
「ミセ」の主人である壱原侑子は、対価を差し出す代わりにどんな願いでも叶えると言い、自己紹介すらしていない四月一日の名前や悩みを見抜きました。
侑子は四月一日の悩みである「アヤカシ」を見てしまう特性は根深く、取り除くためには「一番大切なもの」が対価として必要であると言います。
しかし、四月一日は自分自身の「一番大切なもの」が分からず、「一番大切なもの」を理解するまでの間、私生活が壊滅的である侑子の「ミセ」で家政婦として働くこととなりました。
誰とも関わることのない学校生活を過ごしてきた四月一日は学校内で同級生の百目鬼静と九軒ひまわりと出会い、2人は四月一日にとって初めての友人となります。
ある日、侑子の要望で酒の買い出しに出掛けた四月一日は帰路の途中で銀髪の青年に道を尋ねられ近隣の寺へと案内すると、その寺が退魔師の一族である百目鬼の実家であることを知ります。
百目鬼がその場に居たひまわりや四月一日を伴い本堂に案内すると、その場には百目鬼の一族が「アヤカシ」を封印した箱があり、青年はその箱を見ることが目的だったと話します。
青年は「退魔師」の人間が居ると厄介であると言い「アヤカシ」の力を使い百目鬼を襲いますが、「アヤカシ」に気が付いた四月一日が百目鬼を庇うことで難を逃れました。
その場に侑子が現れ青年が「女郎蜘蛛」の仲間であることを明かし、強い力で青年(アカグモ)を追い払い、負傷した四月一日を連れて帰宅します。
四月一日は負傷しながらも「アヤカシ」が見える能力が初めて役に立ったと喜びを隠せませんでした。
その日以降、「ミセ」での仕事と学校での百目鬼やひまわりとの生活に楽しみを見出し始める四月一日。
四月一日の誕生でもある4月1日が迫ると、百目鬼が自身の寺で行われる祭事の準備のため学校を早退する日が増え始め、その話を聞いた侑子は「ひまわりちゃんは大変でしょうね」と言います。
ひまわりは百目鬼の居ない日は四月一日を避けており、四月一日はそのことを彼女を問い詰めますが「分かっているくせに」とだけ言うと彼女はその場を去ってしまいます。
実はひまわりは両親が「幸運を呼び寄せる」特性を持った代償として「不幸を招く」特性を生まれながら背負ってしまっており、「退魔師」の一族である百目鬼の力によって特性が弱まる時だけ四月一日と関わるようにしていたのです。
四月一日は自身の特性で彼女の特性を初めて会った日から見抜いていましたが、「他人と深く関わらない」と言う一心から見て見ぬふりをしていました。
しかし、四月一日はひまわりを放っておくことが出来なくなり、侑子に彼女の特性を取り除くように懇願しますが、侑子は想像も出来ないほどの対価が必要になると首を縦に振らず、痺れを切らした四月一日は1人で学校へと向かいます。
階段でひまわりを見つけた四月一日は腕を掴み、彼女に憑いた「アヤカシ」を自分に移した四月一日でしたが、夥しい量の「アヤカシ」に憑かれた四月一日は階段の吹き抜けから落下してしまいます。
映画『ホリック xxxHOLiC』の感想と評価
艶やかな映像で描かれる「等価交換」の物語
この世のものではない存在である「アヤカシ」が見えてしまう性質に悩まされる主人公の四月一日は、蝶に導かれたことで願いを叶える「ミセ」に辿り着きます。
「ミセ」の主人である侑子は「等価交換」を何よりも重んじており、どんな願望も成就させる代わりとして願いに匹敵する相応の対価を求めます。
そこまでして手にした願いが必ずしもその人間を幸福にするとは限らず、時に対価として手放したものの重要さを知り、時に分不相応な「願い」に押し潰される残酷さが特徴でもある「XXXHOLiC」の世界。
実写映画版となる本作では現実社会とも繋がる原作の残酷さと、人との正しい繋がりの意味を教えてくれるような暖かさはそのままに、蜷川実花監督が得意とする演出によって原作の持つ独特な雰囲気がさらに引き出されています。
「アヤカシ」や「ミセ」がメインとなるシーンでは赤や青などの原色を多用することで、美しく魅力的だが残酷な世界を映像からも作り上げており、原作の世界観を目だけで感じ取れる「XXXHOLiC」らしいとさえ言える映像化作品となっていました。
原作とは異なる展開を見せる女郎蜘蛛編
原作では自分のせいで蜘蛛の恨みを買ってしまった百目鬼の肩代わりしたことで、四月一日の片目が女郎蜘蛛の手に渡ってしまいます。
四月一日を想う座敷童は目を取り戻すために単身で女郎蜘蛛に挑み命の危機に陥り、百目鬼は自身の視力を差し出すことで四月一日の視力を回復させます。
この一件で四月一日が「自己犠牲」が何を生むのかを学ぶ、原作の中でも特に人気の高いエピソードである「女郎蜘蛛編」ですが、本作では大きな脚色が加わっていました。
原作の女郎蜘蛛は「蜘蛛の巣」を壊された「対価」として四月一日の目を求め、「自己犠牲」を嫌う性格から彼を追い詰めはするものの、悪人としては描かれてはいませんでした。
しかし、本作では女郎蜘蛛を悪役として位置付け物語を展開させることで、ひとつのエピソードを大きく越えて「19巻」までで描かれた第1部の物語を描き切ることに成功。
大胆過ぎる脚色で「四月一日と侑子の物語」を完成させていた、「実写化」としても異質の作品でした。
まとめ
登場人物の関係性や哲学的なセリフの数々が魅力的な人気漫画「XXXHOLiC」。
その魅力をそのままに、蜷川ワールド全開の原色塗れの色彩で彩られた全く新しい実写化作品となった映画『ホリック xxxHOLiC』。
洋服好きである主演の柴咲コウが絶賛した、登場シーンごとに変化する侑子の衣装にも大注目の本作は、原作を全く知らない人にもその魅力が伝わるような作品です。