映画『秋が来るとき』は2025年5月30日(金)より新宿ピカデリー他にて全国公開
横浜フランス映画祭2025でも上映されたフランソワ・オゾン監督作『秋が来るとき』が2025年5月30日(金)より新宿ピカデリー他にて全国公開されます。
自然豊かな秋のブルゴーニュを舞台に描く人生ドラマです。穏やかに老後を過ごす主人公が、娘のキノコ中毒をきっかけに、過去と向き合っていく様を描きます。
エレーヌ・ヴァンサン演じる老婦人ミシェルと、ジョジアーヌ・バラスコ演じる親友マリー=クロードとの深い絆に胸打たれる本作の魅力をご紹介します。
映画『秋が来るとき』の作品情報
(C)2024 – FOZ – FRANCE 2 CINEMA – PLAYTIME
【日本公開】
2025年(フランス映画)
【監督】
フランソワ・オゾン
【脚本】
フランソワ・オゾン、フィリップ・ピアッツォ
【編集】
アニタ・ロト
【キャスト】
エレーヌ・ヴァンサン、ジョジアーヌ・バラスコ、リュディヴィーヌ・サニエ、ピエール・ロダン
【作品概要】
ベルリン映画祭銀熊賞受賞作『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』(2020)で知られるフランスの巨匠フランソワ・オゾン監督作。
監督の幼少期の思い出に着想を得た作品で、美しいブルゴーニュの景観をバックに、主人公の老婦人ミシェルが人生の終盤を生き抜く様が描かれます。サスペンス的要素も垣間見える、初期のオゾンの作風を彷彿とさせる一作です。
ベテラン女優エレーヌ・ヴァンサン、ジョジアーヌ・バラスコ、リュディヴィーヌ・サニエら新旧オゾンファミリーが顔を揃えます。
映画『秋が来るとき』のあらすじ
(C)2024 – FOZ – FRANCE 2 CINEMA – PLAYTIME
80歳のミシェルはパリでの生活を終え、人生の秋から冬に変わる時期を自然豊かなブルゴーニュの田舎で一人で暮らしていました。
そこに、秋の休暇を利用して娘と孫が訪れます。しかし、ミシェルが振る舞ったキノコ料理が原因で、娘が中毒を起こして病院に運ばれてしまいました。その事件を引き金に、それぞれの過去が浮き彫りになっていきます。
人生の最後を豊かに過ごすために、ミシェルはある秘密を守り抜く決意をし……。
映画『秋が来るとき』の感想と評価
(C)2024 – FOZ – FRANCE 2 CINEMA – PLAYTIME
ブルゴーニュの片田舎の美しい風景の中、人々の思いが錯綜するヒューマンドラマです。
登場人物の誰もが秘密を抱えており、お互いに実はその秘密を知っていながらも、大切なものを守りたいがために誰もが口をつぐんでいます。危ういバランスの上に砂上の楼閣を守り続ける様はスリリングで、どんなミステリよりもハラハラさせられることでしょう。
主人公の老婦人ミシェルは一人で田舎暮らしをしています。パリに住む一人娘のヴァレリーとは折り合いが悪いものの、かわいい孫のルカに会いたい一心で、娘とルカが訪れる日には自らキノコを獲ってきて料理を振る舞いました。しかし悲しいことに、ヴァレリーが毒キノコにあたってしまい、母子の関係は破綻します。
料理に腕を振るい、身ぎれいにして娘達の来訪を待ちわびるミシェル。ヴァレリーが母に投げつけるひどい言葉の数々に驚かされながらも、そこに何か深い理由があることは容易に想像できます。ヴァレリーの胸の内には、抑制できない複雑な感情が渦巻いていました。
ミシェルと、古くからの親友マリー=クロードの深い信頼関係には胸打たれます。そして、マリー=クロードの不肖の息子ヴァンサンの存在。彼らの間にある愛情が、思いがけない悲劇を生みます。そして、三人共に平穏な人生を守るために、公然の秘密に目をつぶったまま生きる道を選ぶのです。
ベテランの実力派女優エレーヌ・ヴァンサンが、老境に入ったミシェルの揺れ動く思いを細やかに表現します。華やかでチャーミングな表情から年輪を重ねた疲れた表情まで見事に演じ、観る者の目を奪って離しません。マリー=クロード役のジョジアーヌ・バラスコも、自分の愚かさを悔やみながらも、息子を愛し守らずにはいられない悲しみの母を静かに演じます。
まとめ
(C)2024 – FOZ – FRANCE 2 CINEMA – PLAYTIME
美しい静かな田舎町に暮らす老嬢の秘密が綴られるヒューマンミステリー『秋が来るとき』。キノコ中毒という小さな事件を発端に、様々なことがガラガラと音を立てて壊れていく様を、淡々と映し出します。
果たして自分だったら、主人公のミシェルと違う選択をできただろうかと、自問せずにはいられません。人はいつも正しい道を歩けるとは限らないこと、そして自分の大切なものを守るために口をつぐむしかない時があることを思い知らされる作品です。
映画『秋が来るとき』は2025年5月30日(金)より新宿ピカデリー他にて全国公開です。