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Entry 2019/04/08
Update

映画『バイス』ネタバレ感想と評価。実話ゆえに国のリーダーを選ぶ真価を問う秀作

  • Writer :
  • もりのちこ

バイス=悪徳という意味!?
まさかの実話。史上最強で凶悪の副大統領。

主演クリスチャン・ベール、監督アダム・マッケイ、製作ブラッド・ピット、『マネー・ショート華麗なる大逆転』チームが再集結です。

大統領よりも権限を持ち「影の大統領」と呼ばれた男、ディック・チェイニー。

9.11同時多発テロ後、世界をメチャクチャにした悪名高き副大統領ディック・チェイニーとはどんな人物なのか?

史上最悪の副大統領ディック・チェイニーの悪行を見よ。映画『バイス』を紹介します。あなたも時代の証人となる。

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映画『バイス』の作品情報


(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.
【日本公開】
2019年(アメリカ)

【監督】
アダム・マッケイ

【製作】
ブラッド・ピット、デデ・ガードナー、ジェレミー・クレイマー、ウィル・フェレル

【キャスト】
クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、スティーブ・カレル、サム・ロックウェル、タイラー・ペリー、アリソン・ピル、リリー・レーブ、リサ・ゲイ・ハミルトン、ジェシー・プレモンス、ジャスティン・カーク、エディ・マーサン、シェー・ウィガム、ビル・キャンプ、ドン・マクマナス

【作品概要】
アメリカ史上最も権力を持った副大統領と言われたディック・チェイニーの悪行を追った社会派エンタテイメント。

ディック・チェイニーを演じたクリスチャン・ベールは、役作りのため20キロ太り、髪を剃り、眉毛を脱色するなど、肉体改造をして挑みました。

第91回アカデミー賞では、8部門ノミネートされ、登場人物が全員そっくりと、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞しました。

映画『バイス』のあらすじとネタバレ


(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.
「ウォーッ」という強烈な雄叫びから、この真実の物語は始まります。

1963年、アメリカ・ワイオミング州。酒場では、酔っ払いのディック・チェイニーが喧嘩を始め、その後飲酒運転で警察に捕まります。

2001年9月11日、ニューヨーク。ワールドトレードセンターにハイジャックされた旅客機が突っ込みます。アメリカ同時多発テロ事件です。

ホワイトハウスの地下には、当時の大統領ジョージ・W・ブッシュ大統領の姿はなく、副大統領ディック・チェイニーが指示を出しています。

ディック・チェイニーの38年間に何があったのでしょうか。

酒癖が悪く、喧嘩っ早い、大学は酒浸りで退学、何をやってもクズ野郎のチェイニー。彼の唯一の光は、高校時代からの恋人で、妻となったリンの存在でした。

酒浸りで問題を起こしたチェイニーに、リンは激怒し三行半を突き付けます。妻の悲しみに、胸を痛めたチェイニーは「二度と君をがっかりさせない」と誓い、奮起。

ワイオミング大学政治学専攻に編入後、学士号を取得。さらにはウィスコンシン大学大学院博士課程政治学を専攻しながら、知事のスタッフとして従事し、政界への道を歩みます。

ワシントンD.Cでの連邦会議に参加したチェイニーは、共和党のドナルド・ラムズフェルド下院議員のブラックユーモア交じりのスピーチに惹かれ、彼の助手のポジションを獲得します。

ラムズフェルドはドンと呼ばれ、野心家で行動派。チェイニーは彼の元で、政界のノウハウを学んでいきます。

ドンは言います。「部下に求める3つの事は、口は堅く、指示は守れ、忠実であれ」。無口で率直なチェイニーは、とうとう天職に出会いました。

1969年、リチャード・ニクソン大統領政権へ。師匠のドンは権力争いに敗れ左遷されるも、チェイニーは、大統領次席法律顧問へ就任。ぶっ飛んだ案と慎重案を巧みに使い分け政治家としての手腕を磨いていきます。

1972年、ニクソンがウォーターゲート事件にて辞任、ジェラルド・フォード政権へと移ります。ドンが返り咲き国防長官へ、チェイニーは史上最年少の大統領首席補佐官へと就任します。

小さいながらもホワイトハウス内に自分の部屋を持つことになったチェイニー。妻のリンに電話をかけ喜びを分かち合います。

1978年、チェイニーは、地元のワイオミング州から下院選の出馬を決意します。しかし、演説が得意ではないチェイニ-は、地元でのウケはいまいち。そうこうしているうちに、持病の心臓発作で倒れてしまいます。

そこで選挙活動を頑張ったのは、妻のリンでした。夫の代わりに演説をし、皆の心を掴んでいきます。場所により演説内容を変え、最高のパフォーマンスを見せるリン。彼女のおかげで、チェイニーはみごと当選。

その後の勢いは凄まじく、ジョージ・H・W・ブッシュ政権では、国防長官に就任。華々しい政界のパーティーでは注目の的です。

しかし、ある事件をきっかけに、チェイニーは政界から離れることになります。それは、娘のメアリーの交通事故でした。

病院に運ばれたメアリーは、事故を起こした理由について、女友達に振られたからとレズビアンであることを告白。

共和党は道徳価値として反同性愛を掲げていました。チェイニーの娘がレズビアンであるということは格好の餌食になること間違いなしです。

家族でのチェイニーは良き夫であり、良き父親でした。2人の娘を愛し、娘を守るために政界を去ります。

その後のチェイニーは、趣味の釣りを楽しみ、持病の心臓病も回復、盲導犬のブリーダーにもなり、家族ともども仲良く暮らしました。

物語は一見、エンドロールを向かえたかのような雰囲気です。しかし、あのバイス・チェイニーです。ここからが、物語の本番と言えます。

そして、この物語には謎のストーリーテラーが存在します。これまでの、チェイニーの人生をまるで近くで見て来たような語り口調です。彼はいったい誰なのでしょうか?

以下、『バイス』ネタバレ・結末の記載がございます。『バイス』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.
チェイニーは政界を離れるも、世界最大の石油掘削機の販売会社ハリバートン社のCEOであり個人株主として巨額の利益をもたらしていました。

その暮らしを一変させる電話は、日曜日の朝早くに鳴りました。

その電話の内容は、ジョージ・H・W・ブッシュのドラ息子、ジョージ・W・ブッシュが大統領選挙に立つにあたり、次期副大統領として迎え入れたいという内容でした。

妻のリンは「副大統領は大統領が死ぬのを待つだけの仕事よ」と反対します。

しかし、釣りの名手でもあるチェイニーの駆け引き合戦が始まります。

まずは、ブッシュの取り巻きを徹底的に洗い、自分の息のかかった人材を配下に置きます。師であるドンことドナルド・ラムズフェルドを国防長官に任命。

法の下での大統領の権限の隙を付き、ブッシュを意のままコントロールすることに成功。娘の同性愛問題も容認させます。

青二才の経験不足だけど、とても美味しい魚が釣れました。

2001年、ブッシュ政権が成立しまもなく9.11がやって来ます。アメリカ同時多発テロ事件です。

当日、ブッシュ大統領はフロリダ州におり、ホワイトハウスにいた副大統領チェイニーが実質上の実権を握ったと言っても過言ではありません。

怪しい機は撃ち落とせ。大統領さながら指示を出すチェイニー。自国を狙われた怒りを隠すことなく感情のまま走り出します。

チェイニーはブッシュ大統領に、「今後はアメリカ政府存続のため別々の場所にいましょう」と遠ざけます。影の大統領の君臨です。

その後、CIAからの報告でウサマ・ビンラディン率いるアルカイダの関与が濃厚になります。アルカイダへの弾圧が決行される中、チェイニーやドン、裏政府の面々は、執拗にテロリストへの制裁を急ぎます。

アメリカ市民のすべての電話やメールを監視、怪しい人物への激しい拷問。そして、対テロ対策の名目として敵対国を作り上げることになってしまいます。

チェイニー達は、アルカイダを支援しているとしてサダム・フセイン政権のイラクに強硬姿勢を取るようになります。これは、湾岸戦争時の国防長官だったチェイニーと、国防長官だったドンの個人的なイラク嫌いが招いた悲劇でした。

フセインとアルカイダを結びつける証拠は明確ではなく、イラク戦争への国民の支持は低いものでした。

しかし、チェイニー達は巧みにマスコミを使い情報を操作し、市民の思考までもコントロールします。

イラクは大量破壊兵器を保持している。アメリカは正義の元にテロ国を潰す。

戦争という命の決断は、ホワイトハウスの平和な部屋でフレンチのコース料理を決めるがごとく、あっさりと決められて行きます。

事件は現場で起こっているんだ。謎のストーリーテラーの姿も戦場にありました。

イラン戦争に勝利したものの、チェイニーのハリバートン社の多額の利益が露見、証拠のねつ造疑惑、そしてイランからは大量破壊兵器や核開発の脅威は見つかりませんでした。

国民の非難に四面楚歌に追い込まれるチェイニー達「裏政府」。チェイニーの国民支持率は最悪の所まで落ちました。

そして時代は2009年、バラク・オバマ政権へと移ります。チェイニーは再び心臓発作で倒れます。とうとう心臓もこれまでか。

この物語のストーリーテラーでありながら名前もない人物が、ジョギングに出ました。そこへ突然車が突っ込みます。

彼は頭を強く打ち死亡。しかし、彼の心臓は取り出され、運ばれています。向かった先には、チェイニーがいました。チェイニーの心臓と交換された心臓は元気に動き出します。

「そう僕の心臓はチェイニーの中で生きている。でも、心臓提供者の名前も知らないんだぜ。ひどい話だろ」。

どこまで図太いというか、幸運なのか。チェイニーは蘇ります。

その後は、長女のリズがワイオミング州の上院議員に出馬するも、妹のメアリーの同性愛問題で家族はバラバラになっていきます。

チェイニーの命が救われた時、世界では多くの命が犠牲になっていました。

2001年から勃発したこの戦争は、2011年イラクからの米軍完全撤退を持って終了しました。この戦争でアメリカ兵は4500人以上が死亡、イラクの治安部隊およそ1万人、イラク市民の犠牲者は60万人にものぼります。

アメリカ国民の3分の2が、イラク戦争はムダだったと回答。

ABCのテレビ番組に出演しインタビューを受けるチェイニーの姿がありました。イラク戦争について問われると、チェイニーはカメラ目線、すなわち私たちに向けて話し出します。

「世界には怪物が多い。私は国民の家族を守った。私は謝らない。国民に仕えて幸せだ。私を選んだのは貴方たち。私はやるべきことをやったまでだ」と。

この物語の2度目のエンドロール。政府が行うリベラル偏向の作戦のひとつ、市民を集めたミーティング室で、おじさん達は「オレンジ顔の大統領」で喧嘩し出します。

政治のことになると熱くなるおじさん達を横目に、「次のワイルド・スピード、超気になる」とギャルの関心はここにはないようです。

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映画『バイス』の感想と評価


(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.
アメリカ史上最強で最凶の副大統領、「影の大統領」と呼ばれた男、ディック・チェイニー。

日本で、世界中で、彼の存在を知っていたという人はどのくらいいるのでしょう。

アメリカ大統領の言動や行動、権限は世界中が注目していますが、副大統領となると正直誰なのかすらわからないのが現状です。

ジョージ・W・ブッシュ政権の裏で、ディック・チェイニーという副大統領がこんなにも権限を持ち、大統領をも操り、国民を戦争に導いていたとは。驚かずにはいられません。

また驚くべきことは、ディック・チェイニーを演じたクリスチャン・ベールです。彼は、役作りのため肉体改造をすることで有名ですが、この役のために20キロ増、髪を剃り、眉毛を脱色するなど、チェイニーそっくりとなりました。

見た目だけではなく、しわがれた声と囁くようなしゃべり方までそっくりです。

また、ジョージ・W・ブッシュ大統領を演じたサム・ロックウェル、チェイニーの妻リンを演じたエイミー・アダムスも実物そっくりです。

第91回アカデミー賞では、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したのも納得です。

映画『バイス』は、実際の政治家たちをそっくりに演じ、裏の顔を面白おかしく暴いています。皮肉ったブラックユーモア満載で、「ここまでバラシて良いの」と心配になるほどです。

この失敗を2度と繰り返してはならない、そして悪者を国の代表に選んだ市民の責任を問うています。

エンドロールの途中で流れる、おまけの様なシーンが、実はこの映画の真の部分なのではないでしょうか。

偏った意見で政治に熱くなるおじさん達、全く政治に関心のないギャル。

大事なことは、真のリーダーを選ぶ私たち一人一人に責任があるということ。戦争の責任は私たちにもあるという事を忘れてはいけません。

まとめ


(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.
アメリカ史上最も権力を持った副大統領と言われたディック・チェイニーの悪行を追った社会派エンタテイメント『バイス』を紹介しました。

あまりにも過激で日本では作れないと言われほど、政界の悪行を暴いた内容となっています。当の本人ディック・チェイニーからの苦情はまだ来ていないとか。

世界の動向を握っていると言っても過言ではないアメリカ政府の裏側が見えます。

政治に関心がない人も、関心を持たずにはいられない。だって、その国のトップを選ぶのは私たち市民なのですから。

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