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Entry 2020/02/15
Update

映画『大脱走』あらすじネタバレ感想とラスト結末の解説。名曲マーチとマックイーンらの集団逃走が見どころ!

  • Writer :
  • もりのちこ

史実を基に描かれた、前代未聞の大脱走。
男たちの脱走は成功するのか?

第二次世界大戦下、オーストラリア空軍の戦闘機パイロットだったポール・ブリックヒルが、捕虜として収容されたドイツの「スタラグ・ルフトⅢ」で自ら体験した脱走計画を基に書いた小説『大脱走』。

この驚きの史実に、『OK牧場の決斗』『荒野の七人』など西部劇の巨匠ジョン・スタージェス監督が惚れ込み映画化。

脱走不可能と言われた捕虜収容所「スタラグ・ルフトⅢ」で、連合軍兵士250人の大脱走計画が持ち上がります。

果たして連合軍兵士たちは、ナチス軍の目をかいくぐり脱走することが出来るのか?

戦闘だけが戦争ではない。男たちのもうひとつの戦いがそこにはありました。不屈の闘志を貫いた熱き男たちの戦争映画『大脱走』を紹介します。

映画『大脱走』の作品情報

【日本公開】
1963年(アメリカ)

【原作】
ポール・ブリックヒル

【監督】
ジョン・スタージェス

【キャスト】
スティーブ・マックィーン、ジェームズ・ガーナー、リチャード・アッテンボロー、ジェームズ・ドナルド、チャールズ・ブロンソン、ドナルド・プレザンス、ジェームズ・コバーン、ハンネス・メッセマー、デビッド・マッカラム、ゴードン・ジャクソン、ジョン・レイトン、アンガス・レニー、ナイジェル・ストック、ロバート・グラフ、ジャド・テイラー、ハンス・ライザー、ハリー・リーバウアー、ウィリアム・ラッセル、ロベルト・フライターク

【作品概要】
小説化ポール・ブリックヒルの実体験をもとに書かれた同名小説を、『荒野の七人』のジョン・スタージェス監督が映画化。

主演には、『荒野の七人』でもお馴染み、スティーブ・マックイーン、そしてチャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーンらトップスターが集結。

また、『マーベリック』で活躍していたテレビスターだったジェームズ・ガーナー、『戦場にかける橋』のジェームズ・ドナルド、英国俳優で映画監督としても名を馳せたリチャード・アッテンボローも出演。

名立たる俳優たちが共演する不朽の名作『大脱走』。第36回アカデミー賞では、編集賞にノミネートされています。

映画『大脱走』のあらすじとネタバレ

第二次世界大戦下、ドイツの田舎道を、多くの捕虜を乗せた軍用車両が連なり走っていきます。

たどり着いた場所は、ナチス軍の捕虜収容施設スタラグ・ルフト。ナチス軍は、たびたび脱走を計る連合軍捕虜たちに手を焼いていました。

見晴らしの良い敷地に鉄線を張り巡らせ、見張りを強化したこの収容所は、脱走不可能とされていました。

そこに連れて来られたのは、脱走を何度も繰り返す英軍を中心とした連合軍の強者たちです。元々収容されていたロシア人たちは別の施設に移動させられます。

到着するや否や、喧嘩を始める面々。その騒ぎの裏で、移動するロシア人に紛れ込もうとする者。トラックの荷台に飛び乗る者と、隙あらば脱走を試みる兵士たちでしたが、看守長に見つかってしまいます。

その中でも、アメリカ兵のバージル・ヒルツは、大胆に見張りの死角を突き、鉄線へと近づきます。

「何してる!」見張りに見つかり銃で威嚇されるヒルツでしたが、「針金を切って逃げる所さ」と懐からハサミを取り出します。速攻、独房行きです。油断も隙もありません。

騒動から遅れること数時間、あの男が収容されます。「ビッグX」と呼ばれる男、英軍のロジャー・バートレットです。

ロジャーは、これまでも集団脱走のリーダーとなり、脱走を企ててきた要注意人物です。何より、脱走する目的は敵軍を混乱させ、勢力をそぎ、祖国の勝利に貢献すること。軍人の中の軍人です。

その夜、ロジャーは馴染みの兵を集結させ、なんと250名の大脱走の計画を告げます。

ざわつく捕虜兵たちでしたが、誰一人反対する者はいませんでした。作戦は、森へ一番近い2部屋を「トム」「ディック」、食堂の床を「ハリー」と名付け、計3本の穴を掘るというものでした。

表向きは真面目に生活し、見張りを油断させます。その裏で、「トンネル王」と称されているウィリーとダニーを中心に穴掘りが始まりました。

必要な物資は、米国人だが英空軍の義勇飛行隊に所属していた「調達屋」のヘンドリーが、機転を利かせドイツ兵から奪ってきます。コーヒー、たばこなどの嗜好品から、鉄くずや身分証明書まで、何でもそろいます。

一方、独房に入れられたヒルツは、隣の部屋に入っていた英国軍人のアイブスと知り合います。お調子者のアイブスと血気盛んなヒルツは共に脱走計画を企てていました。

独房を出たヒルツに、ロジャーは脱走の話を持ち掛けますが、助けはいらないと単独で行動を起こすヒルツ。

脱走を決行したものの、まんまと捕まり独房に逆戻り。それでもまだ懲りない様子のヒルツに、皆もあきれ顔です。

ロジャーの計画は、隙がないほど順調に進んでいました。かき出した土の処理を担当する「分散屋」エリック。穴に空気を送り込む装置を作る「製造屋」セジウィック。森までの距離を計測する「測量屋」デニス。

脱出後の準備もぬかりありません。身分証明書、旅行許可証を製作する「偽装屋」コリン。人数分の私服を用意する「仕立屋」グリフィス。ドイツ語、フランス語を教える「情報屋」マック。

訓練されたプロの技の見事な連携プレイで計画は進んでいきます。監視の目に見つかることはないものの、穴掘りは土壌の弱さで苦戦していました。

ロジャーは作業を「トム」に絞り、空洞に支柱を入れることで穴を強化することにします。脱走の予定日が迫っていました。

そしてまたしても、独房からヒルツとアイブスが復活です。ヒルツは、ロジャーの穴掘り計画に協力しようか迷っていました。

そんなヒルツに、ロジャーは協力を仰ぎます。その役目は、森のむこうの情報が欲しいというものでした。いわゆる、一度脱走を成功させ、わざと捕まり戻ってこいと言うのです。ヒルツは、バカげていると断ります。

その日は、7月4日、アメリカ独立記念日でした。アメリカ兵のヒルツとゴフ、米国人のヘンドリーは、じゃがいもから作った酒を振る舞い祝います。太鼓と笛の陽気な音楽に、他の収容者たちも外に出てきて、酒を楽しんでいました。

賑わいの最中、見張りのドイツ兵に「トム」の穴が見つかってしまいました。一変して空気の張りつめる収容所。

アイブスは気を逸らそうと、自ら鉄線へよじ登ります。鳴り響く銃声。駆け寄るヒルツは押さえつけられます。アイブスは撃たれ、命を落としました。

ヒルツは決意します。一人でも多くの者を脱走させる。「今夜外へ出る。欲しい情報をやる」。ヒルツはロジャーに協力を約束しました。

以下、『大脱走』ネタバレ・結末の記載がございます。『大脱走』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
ヒルツは監視の目が行き届かない場所を見つけ、鉄線を切り見事脱走を果たします。そして、再び捕虜収容施設スタラグ・ルフトに戻ってくるのでした。3度目の独房行きです。そのスピリッツに皆の士気も上がります。

穴堀は食堂の穴「ハリー」に全精力をかけていました。予定の距離にまもなく到達しようとしていました。

しかし、脱走を前に悩みを抱える者もいました。「トンネル王」のダニーは、度重なる落盤で閉所・暗所恐怖症を患っていました。

仲間に迷惑をかけないよう、鉄線越えを決行しようとします。共に掘ってきたもう一人の「トンネル王」ウィリーが、事前に気付き体を張って止めます。「俺にまかせろ、大丈夫だ」。

そして「偽造屋」コリンは、人数分の偽造証明書の細かい作業の疲れから、進行性近視になっていました。脱走にかけるコリンは、もうほとんど見えなくなった視力のことを隠そうとします。

ロジャーはコリンの目のことに気付いていました。リーダーとして、連れて行けないと決断します。

そこに居合わせた同室の「調達屋」ヘンドリーは、自分が一緒に逃げるとロジャーを説得。皆の絆は深くなっていました。

いよいよ脱走の日です。独房からぎりぎり、ヒルツが戻ってきました。「間に合った」。外部情報を基に脱走後の計画を練ります。仕立てた私服に着替え、夜を待つ面々。

穴は真っ直ぐ森へと伸びているはずです。ヒルツが貫通した穴から外を覗くと、なんと6メートルほど足りませんでした。

ヒルツは、ロープを持ち森まで走ります。看守が過ぎた所で、ロープを引き合図を送るという作戦にでました。

1人づつ確実に森に走る脱走兵たち。途中、空襲で電気が消えたことでペースが乱れてしまいます。

看守に気付かれました。穴は見つかり、一斉に捉えられる脱走兵たち。翌朝、発表された脱走兵の人数は76名でした。

脱走に成功した者たちに追っ手がせまります。ロジャーはマックと共に列車に乗っていました。フランス人に成りすました2人は、上手く警察の目をごまかします。

同じ列車には、コリンとヘンドリーも乗っていました。警察の取り調べが入っているのを察したヘンドリーは、他にも乗っていた仲間に知らせながら、コリンを連れ最後尾へと向かいます。

列車から飛び降り追っ手から逃れたコリンとヘンドリーは、軍の練習用飛行機に乗り込みスイスを目指します。

スイスの山々が見えてきたことを、コリンに教えるヘンドリー。コリンも嬉しそうです。その時、飛行機に異変が起きます。不時着する飛行機。

煙で2人の居場所が知られてしまいました。コリンが、やってきたドイツ兵に射殺されてしまいます。ヘンドリーは諦め、捕まりました。

列車の到着駅では、ドイツ軍が待ち構えていました。検問にはロジャーとマックを知る人物が、今にも拳銃を構え狙いを定めています。

それにいち早く気付いたエリックが、自らの身体をはって2人を逃がします。その場を逃れたロジャーとマックでしたが、執拗にやってくるドイツ兵にとうとう捕まってしまいます。

次々と捕まっていく脱走兵たち。脱走に成功したのは、ボートを漕ぎ貨物船に乗り込んだ「トンネル王」のウィリーとダニー。

そして、自転車でフランスに逃亡し、レジスタンスの協力でスペインにたどり着いた「製造屋」セジウィックの3名だけでした。

捕虜を乗せた収容所行トラックには、ロジャーを始め50人の脱走兵が乗っていました。「今思えば、穴掘りは幸せだったな」。ロジャーはマックと健闘を称え合っていました。

「降りろ」。ドイツ兵によってトラックから降ろされる50名。機関銃の音が炸裂します。50名は収容所に戻ることはありませんでした。

一足先に収容所に戻っていたヘンドリーたちは、射殺の事実を知らされます。1人づつ犠牲者の名前を読み上げる捕虜側の代表ラムゼイ将校も悲痛な面持ちです。

「これだけの犠牲者を出してまで脱走する価値はあったのか」。ヘンドリーの問いにラムゼイは答えます。「ロジャーの目的は後方かく乱だった。成功かどうかは考え方次第だ」。

そこに、戻って来た男がひとり。そう、不屈の男ヒルツです。ヒルツは脱走後、盗んだバイクで国境を越えようとしましたが、あと一歩のところでドイツ軍の執拗な追跡に合い転倒し捕まっていました。

「ただいま」。独房王のヒルツの復活です。「お帰り」と、ゴフはいつもの野球グローブとボールを渡すのでした。

映画『大脱走』の感想と評価

オープニングは、お馴染みの名曲「大脱走マーチ」。アップテンポの曲に、高まる高揚感と戦争映画の緊張感。

田舎道を連なって走る軍用車両が、たどり着く場所。そこは、第二次世界大戦下において、ドイツ空軍が運営していた捕虜収容施設「スタラグ・ルフトⅢ」でした。

映画『大脱走』は、そこで実際に計画された「集団脱走」を基に描かれたというから驚きです。

収容されているのは、捕虜としてとらえられた英軍を中心とする連合軍の兵士たち。彼らは、何度も脱走を繰り返す強者どもです。

戦争で捕虜となった兵士たちは、目的はそれぞれですが、勝つために脱走をします。戦いの前線であっても収容所であっても、兵士たちにとって戦場には変わりがないのです。

映画『大脱走』は、戦争映画にして戦闘シーンが描かれていない映画としても知られています。しかし、戦い続ける男たちの姿は、もうひとつの戦場をみているかのようです。

穴を掘り250名を脱走させるという計画の壮大さが、戦闘の大きさを物語っています。

英国空軍のロジャー少佐を中心に、それぞれのプロが見事な働きで、敵の目を欺き作戦を遂行していく過程は、実に爽快です。

情報屋、調達屋、トンネル王、偽造屋など、その役割は多岐に渡っています。皆、個性豊かな人物たちで、それぞれの活躍が見ごたえあります。

中でも、調達屋のヘンドリー(ジャームズ・ガーナー)は、アメリカ人でありながら英空軍の義勇兵です。ドイツ兵を巧みに操り物資を調達していく様は、観ている者をハラハラさせます。

脱走の際には、視力を失う偽造屋コリン(ドナルド・プレザンス)の面倒を見る心優しい一面もあります。

また、トンネル王のウィリー(ジョン・レイトン)とダニー(チャールズ・ブロンソン)の友情も注目です。

穴を掘り進めるうちに閉所・暗所恐怖症のトラウマに耐えられなくなったダニーを、ウィリーが説得し最後までサポートします。脱走に成功した2人でもあります。

ダニー役のチャールズ・ブロンソンは、1970年、日本の男性用化粧品メーカー「マンダム」のCMに出演したことで日本でも有名となりました。

「ん~マンダム」のセリフは、子供たちも真似をするほどの人気ぶりだったようです。

そして、もうひとり。独房王ヒルツ(スティーブ・マックイーン)です。米国航空兵のヒルツは、破天荒でタフな兵士です。何度か単独で脱走を試みるも、そのたびに独房送りになります。

仲間のゴフ(ジャド・テイラー)から野球グローブとボールを受け取り、独房で壁を相手にキャッチボールを繰り返すヒルツ。どこまでも諦めない不屈の男です。

始めは自分の脱走のことしか考えていなかったヒルツが、友の死を機に大脱走の計画に加担します。その任務は、一度脱走し、捕まって戻り、外の様子を報告するという無謀なものでした。

脱走に成功したヒルツは、そのまま逃げることも出来たのに、約束通りまた収容所に戻ってきます。その時の独房行きは、かなりカッコイイです。

ヒルツを演じたスティーブ・マックイーンは、『シンシナティ・キッド』『華麗なる賭け』『荒野の七人』など、当時から人気絶頂のトップスターでした。

アクション俳優でもあった彼の身軽な脱走シーン、特にバイクを乗り回す逃走シーンは必見です。

映画『大脱走』は、戦争という過酷な状況で、協力し合い脱走を試みる仲間たちの熱い絆が描かれています。

そして、どんな状況でもベストを尽くし諦めない精神と、やり遂げる勇気に力を貰えます。

まとめ

1963年の日本公開から57年、現在でも語り継がれる不朽の名作『大脱走』を紹介しました。

痛快な脱走ストーリーは、無駄のないテンポ良い展開と、ウイットに富んだ粋なシーンの数々に、あっという間の172分です。

第二次世界大戦の最中、ドイツの捕虜収容所で実際に計画された集団脱走を基に描かれた『大脱走』。とんでもない史実です。



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