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映画『私の20世紀』あらすじネタバレと感想。4K版で蘇るエニェディ監督の長編デビュー作

  • Writer :
  • 河合のび

映画『私の20世紀』は2019年3月30日より公開

『心と体と』の監督で知られる、ハンガリーの鬼才イルディコー・エニェディの長編デビュー作『私の20世紀』。

日本では1990年に劇場公開された本作が、4Kレストア版として再びスクリーンに蘇りました。

19世紀末から20世紀初頭、移り行く時代の渦に飲み込まれてゆく人々を描いたヒューマンドラマ、『私の20世紀』をご紹介します。

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映画『私の20世紀』の作品情報


(C)Hungarian National Film Fund- Film Archive/photo:Istvan Javor

【日本公開】
1990年(ハンガリー・西ドイツ映画)
*2019年に4Kレストア版を公開

【原題】
az én XX. századom

【脚本・監督】
イルディコー・エニェディ

【撮影】
ティボル・マーテー

【キャスト】
ドロタ・セグダ、オレーグ・ヤンコフスキー、パウルス・マンカー、ペーテル・アンドライ、ガーボル・マーテー

【作品概要】
19世紀末と20世紀初頭という時代を舞台に、双子の姉妹の人生と、彼女らに翻弄されてゆく男の姿を描きます。

2017年に『心と体と』でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞したエニェディ監督が、1989年に製作した長編デビュー作です。

本作は1989年のカンヌ国際映画祭で、カメラドール(新人監督賞)を受賞。

日本では1990年に一度劇場公開されましたが、2019年に4Kレストア版としてリバイバル上映されることになりました。

脚本・監督のイルディコー・エニェディは、ハンガリー出身の女性監督。本作で高い評価を得た後も『Magic Hunter』(1994)、『Simon, the Magician』(1999)を監督しました。『Simon, the Magician』では当時のロカルノ映画祭にて審査員特別賞を獲得し、ハンガリー映画週間では監督賞、撮影賞、男優賞の3冠に輝きました。

主演は、双子の姉妹とその母親という一人三役を演じ切ったポーランド出身の女優、ドロタ・セグダ。

また双子の姉妹に翻弄される男を、『鏡』(1975)『ノスタルジア』(1983)で知られる俳優のオレーグ・ヤンコフスキーが演じました。

映画『私の20世紀』のあらすじとネタバレ


(C)Hungarian National Film Fund- Film Archive/photo:Istvan Javor

1880年、アメリカ・メンローパークにあるエジソンの研究所では、彼が発明した白熱電球のお披露目パフォーマンスに人々は沸き立っていました。

一方、ハンガリー・ブダペストのとある貧しい家で、双子の姉妹が誕生。

双子の姉妹にはそれぞれ、「リリ」「ドーラ」という名前が付けられました。

やがて孤児となり、路上でマッチ売りをするようになった彼女たち。

クリスマスイブの夜、彼女たちは通りかかった二人の紳士に、別々に貰われていきます。

1900年の大晦日、革命家となったリリ、詐欺師となったドーラは、偶然オリエント急行の列車に乗り合わせました。

満員車両の中、同志から渡された伝書鳩を運ぶリリ。食堂車で豪華な食事を楽しみながら、その色香で男達を翻弄するドーラ。

ブダペストの駅で降車した双子は、世界中を飛び回っている謎の男Zとそれぞれ出会います。

リリは図書館でZと目が合ったのがきっかけで、図書館を出た後、二人は動物園でのデートへ出かけました。

純朴な彼女にZは心惹かれ、恋心を抱きます。

一方、豪華客船内でZと出会ったドーラは、遊び相手としてZに目をつけ、一夜を共にします。

ドーラの振る舞いにショックを抱きながらも、Zは双子の姉妹を同一人物と勘違いしてしまいました。

以下、『私の20世紀』ネタバレ・結末の記載がございます。『私の20世紀』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)Hungarian National Film Fund- Film Archive/photo:Istvan Javor

Zと別れた後、リリはビラ撒きなど革命家としての活動を続けていましたが、やがて手製爆弾による国会議事堂の爆破を計画し始めます。

ある夜、リリはZと再会。ドーラとリリが同一人物だと勘違いしたままのZは、リリへの接し方も以前とは異なるものへと変化していました。

以前とはあまりにも異なる自分への接し方に戸惑いながらも、Zと共に彼の家へと向かうリリ。そこで、彼女はZに荒々しく抱かれてしまいます。

一夜明け、Zの家を後にするリリ。そして計画していた爆破を実行するために、国会議事堂へと向かいます。

手製爆弾に火を点け、リリは建物から出てきた大臣へと投げつけようとしますが、大臣の顔がかつて孤児だった自分を拾って育ててくれた男と瓜二つだったために、爆弾を持ったままその場から逃走してしまいました。


(C)Hungarian National Film Fund- Film Archive/photo:Istvan Javor

警官に追われ逃走を続けるうちに、鏡だらけの建物へと迷い込むリリ。そこで、同じく偶然その建物へと迷い込んでいたドーラと再会しました。

その頃、自宅から出て水飲み場で休んでいたZの元に、一頭のロバがやって来ました。そして双子のいる建物へと彼を誘います。

建物の奥へ奥へと進んでゆくZの姿に、「彼は双子のどちらを選ぶのか」と話し合う囁き声が重なります。

辿り着いたZは、鏡に囲まれながら寄り添うように眠る双子の姉妹を見つけました。

やがてドーラが先に目を覚まし、Zは彼女の手を取ります。しかし、その後目を覚ましたリリは二人の姿を見るとその場を立ち去ってしまい、ドーラも彼女を追いかけてその場を後にしました。

一人残されたZは、鏡に囲まれながら立ち尽くします。

一方、エジソンの研究所では新たに開発された電報システムの公開実験が行われようとしていました。

それは、リリたちが利用していた伝書鳩という存在意義が失われることを意味していました。

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映画『私の20世紀』の感想と評価


(C)Hungarian National Film Fund- Film Archive/photo:Istvan Javor

本作の物語は、19世紀末から20世紀の初頭を舞台としています。それは物語の前後で登場するエジソンとその発明品を見れば明らかです。

エジソンはキネトスコープ(箱の中で流れる映像を覗き穴を通してみることができる装置)を開発した人物でもあり、シネマトグラフ(手動による撮影と映写の二つの機能を持つ装置)を発明したリュミエール兄弟と共に、映画の起源に語る際には必ず触れられる人物でもあります。

そして何よりも、19世紀末とは映画が誕生した時代であり、そこから20世紀初頭にかけての時代とは、映画の黎明期そのものでもあるのです。

終盤、双子の姉妹とZは鏡だらけの建物に迷い込みますが、無数の鏡に映し出される彼女らの像は、物語の時代と重なることで、「一つの被写体が鏡を通してその像を切り取られ、さらに複製されることで無数の像が浮かび上がる」という、芸術にして技術である映画の性質を連想させます。

エニェディ監督が長編デビュー作の舞台を、映画の誕生期と黎明期にした理由。そして、“映画そのもの”を、その性質という切り口から描こうとした理由。

それは、“映画の始まり”を描くことで映画と改めて向き合い、その後の映画制作に対する自らの指針を見出すためだったのでしょう。

そして本作でその指針を見出せたからこそ、エニェディ監督のその後の活躍があるのです。

まとめ


(C)Hungarian National Film Fund- Film Archive/photo:Istvan Javor

“映画の始まり”という時代を通して、自身にとっての映画を見出そうとしたエニェディ監督の長編デビュー作『私の20世紀』。

御伽噺のようにも感じられるその幻想的・魔術的な映像美にも注目です。

映画『私の20世紀』、ぜひご鑑賞ください。

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