看守と死刑囚との絆を描く感動のヒューマンドラマ
大人気作家スティーヴン・キング原作の小説を『ショーシャンクの空に』(1995)のフランク・ダラボン監督が映画化。
『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1995)の名優トム・ハンクスが主演を務めます。
囚人たちが死刑台へ向かう薄汚れた緑色の道「グリーンマイル」。そこを歩かされる囚人と、刑を執行する看守との間に起こる奇跡の物語です。
彼らが見た奇跡とはどんなものだったのでしょうか。感動の大作の魅力についてご紹介します。
CONTENTS
映画『グリーンマイル』の作品情報
【公開】
2000年(アメリカ映画)
【原作】
スティーヴン・キング
【監督・脚本】
フランク・ダラボン
【編集】
リチャード・フランシス=ブルース
【出演】
トム・ハンクス、デヴィッド・モース、ボニー・ハント、マイケル・クラーク・ダンカン、バリー・ペッパー、ジェフリー・デマン、ダグ・ハッチソン、マイケル・ジェッター
【作品概要】
『ショーシャンクの空に』(1995)でタッグを組んだ大人気作家のスティーヴン・キングとフランク・ダラボン監督が再度手を組んだ感動のヒューマンドラマ。
死刑囚官房の看守が不思議な力を持つ囚人に出会い、さまざまな出来事を経験するさまをファンタジックに描きます。
主演は『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1995)の名優トム・ハンクス。
デヴィッド・モース、ボニー・ハント、マイケル・クラーク・ダンカン、バリー・ペッパー、ジェフリー・デマン、ダグ・ハッチソン、マイケル・ジェッターら豪華俳優が共演します。
映画『グリーンマイル』のあらすじとネタバレ
老齢を迎えたポール・エッジコムは、老人ホームで仲のよい女友だちのエレーンに昔のことを語り始めます。
大恐慌の頃、彼は死刑囚棟の看守で、それはグリーンマイルと呼ばれる死刑台への道を歩かせる仕事でした。
ポールは重い尿路感染症に苦しんでおり、そのほかにも、州知事と血縁のため無下にできずにいる無能で冷酷な看守のパーシー、所長のハルの妻・メリンダの病など多くの悩みを抱えていました。
ある日、双子の少女を強姦殺人した罪で大男のジョン・コーフィが送られてきます。彼は見た目とは違い、暗闇を怖がる穏やかで繊細な心の持ち主でした。
一匹のネズミが所内に紛れ込み囚人のドラクロワに懐き、ミスター・ジングルスと名付けられます。
その後、ワイルド・ビルことウィリアム・ホルトンという極悪の問題児が収容されます。彼はクスリを打たれている風を装って看守を油断させ、いきなり彼らに襲いかかります。危ういところをブルータルが殴りつけて取り押さえました。
この騒ぎで病院に行けなくなって痛みに苦しんでいるポールを、コーフィが治してやるといって呼び、檻越しに股間をつかみました。その後、コーフィは苦し気に口から黒いものを吐き出します。不思議なことにポールの感染症はすっかり治っていました。
翌朝、ポールはコーフィの弁護士に会いに行きますが、彼はコーフィが犯人に違いないと話します。
ある日、パーシーがミスター・ジングルスを踏みつぶす事件が起こります。それを見ていたコーフィがジングルスを両手で包み込み生き返らせました。看守たちは呆然とその様子を見ていました。
映画『グリーンマイル』の感想と評価
ポールとコーフィーとの強い絆
ヒューマンドラマ、サスペンス、ファンタジー、さまざまな要素が組み合わさった珠玉の一作『グリーンマイル』。3時間を超える長尺ながらまったく飽きさせない濃厚なドラマが展開します。
主演は『フィラデルフィア』『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1995)でオスカーを受賞した名優トム・ハンクスが務め、良心と職責の狭間で悩み苦しみ抜く善良な看守を繊細に表現しています。
気高い魂を持つ大男のジョン・コーフィーを演じたマイケル・クラーク・ダンカンは深みある演技でアカデミー助演男優賞にノミネートされました。
死刑囚監房という閉じられた空間の中で物語が展開します。主人公である看守主任のポールはまじめで職務に忠実な男です。何人もの囚人に死刑台までの道「グリーンマイル」を歩かせ、死刑を執行してきました。
この死刑シーンというのがとても原始的で、観る者にえも知れぬ恐怖を抱かせます。椅子は頼りない無骨な木製で、電流が直にかかるようにするために頭に乗せるのはバケツの水で濡らした海綿です。
なんとここでは死刑囚本人も参加して念入りなリハーサルが行われ、当日は大勢の被害家族たちが憎しみの目でみつめる前で刑が執行されるのです。ポールたちの毎日がどれほどストレスフルなものかダイレクトに伝わってきます。
そんな中、天使のように気高い心を持ち、病やけがを治す不思議な力を持つ大男のジョン・コーフィーが収容されます。演じるマイケル・クラーク・ダンカンは196cm、145kgの巨漢で観る者を圧倒しますがその瞳は牛のように穏やかで、まさにコーフィーそのものです。
悲しい出来事をすべて感じ取ってしまうコーフィーは、苦しむ人を見捨てられないやさしさを持っていました。だからこそ、全ての人を救えない現実に疲れ果てていたのです。美しすぎる魂を持つゆえの苦しみに胸が塞がれます。
長年悪人を相手に仕事してきたポールはコーフィーが罪人ではありえないことに気づき、コーフィーもまたポールの誠実さを理解し、深く心を通わせるようになります。そして、本当に罪を犯したワイルド・ビルの犯行映像をポールに見せるのです。
ポールと看守仲間との友情も心を打ちます。病のメリンダのもとにコーフィーを連れ出す際、若く幼い子どもがいるディーンを外して年長者や独り者だけで実行するシーンは彼らの強い絆を感じさせます。
本作のクライマックスは、真実を知りながらコーフィーを死刑台に送らねばならないポールたち看守の心の葛藤です。
無垢な魂を持つ無実の彼を殺すという残酷な任務に苦悩するポール。しかし、コーフィーは心から死によって苦しみから解き放されることを願い、ポールに刑の執行を委ねます。
コーフィーの意志だったにも関わらず、ポールはひとりいつまでも生き続けるという罰ともいえる定めを与えられます。神からのギフトを葬った罪からでしょうか。
大きな謎に包まれたまま、静かに物語の幕は下ろされます。
ミスター・ジングルスが露わに映し出す光と影
本作で大きな存在感を見せるのは、ネズミのミスター・ジングルスです。突然刑務所に紛れ込み、囚人のデルに懐いて芸をするようになります。
凶悪犯罪を犯したデルですが、ジングルスを溺愛してかわいがるようになりました。看守らも皆この小さな生き物を大事にします。
ミスター・ジングルスが生み出した温かな空気感と取り巻く人々の優しさ。その一方で、ジングルスを憎々しく思う人間がいました。ダグ・ハッチソン演じる悪人のパーシーです。彼は肝が小さく臆病なくせに、人に危害を与えたり心を傷つけることを異様に好む残酷な男でした。しかし知事にコネがあるため無下にもできず、ポールたちは彼に振り回され続けます。
体つきが貧相な彼は、怖いと足がすくんで動けなくなったり、漏らしてしまったりとどこか憎めない面もあるのですが、えげつないほど残酷なことばかり繰り返します。看守になったのは死刑を見たかったからという彼は、ジングルスをためらわずに踏みつぶしたり、電気椅子に座り死を前にしたデルを打ちのめす言葉をかけたりするのです。
あげくにスポンジを濡らさずにセットしてデルを拷問のように苦しませて死なせることとなりますが、この時ばかりは恐ろしさに顔をこわばらせたまま。根っからのサディストというわけではなかったようですが、あまりに性根が腐っていた彼は、コーフィーに制裁を下されます。
生まれながらのサイコパスとして登場するのが、凶悪犯ワイルド・ビルです。『スリー・ビルボード』で見事オスカーを受賞したサム・ロックウェルが素晴らしく憎々しく演じます。
パーシーとビルという見事な悪役により、コーフィーの美しい魂の気高さが際立ちます。
ジングルスを挟んでその光と影が色濃く浮きあがるのです。
まとめ
死刑囚を描く重い内容ながら、感動を呼び起こす傑作『グリーンマイル』。
コーフィーとはいったい何者だったのか、そしてポールが受けた裁きの意味とは何だったのか謎は深まるばかり。ずっと深い余韻に浸れる稀有な一作です。
長い作品を観終えた後は、誠実なポール、神からの贈り物としか思えないコーフィー、心やさしい看守たち、生き生きとした悪役たち、そしてかわいいミスター・ジングルスと共に、まるで実際に一連の奇跡を体験したかのような錯覚を覚えることでしょう。
登場人物のそれぞれに郷愁を感じ、年老いたポールと同じく、昔をしのぶような感覚にとらわれるかもしれません。
どうぞ物語の世界にどっぷりと浸って、コーフィーが起こした奇跡を味わってください。