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Entry 2021/10/20
Update

映画『天使と悪魔』ネタバレあらすじ感想とラスト解説の考察。宗教を軸にダ・ヴィンチコードに引き続きトム・ハンクスが挑んだミステリー第2弾!

  • Writer :
  • からさわゆみこ

“天使と悪魔”が聖職者の心に呼びかけた声と招いた結果とは・・・?

映画『天使と悪魔』は、ダン・ブラウンの世界的ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」が映画化され、作中大活躍したロバート・ラングドン教授が、再び難問に挑戦する続編作品です。

ロバート・ラングドン教授役には、続編作品には出演しないことでも知られる、オスカー俳優のトム・ハンクスが自ら熱望し挑みました。

舞台はヴァチカン。教皇が逝去し、新教皇を選ぶための「コンクラーベ」が行われますが、次の候補者である4人の枢機卿が誘拐され、事件の裏で秘密結社イルミナティの存在と、陰謀が見え隠れしてきます。

ラングドン教授は美人科学者ヴィットリアと協力し、イルミナティの陰謀と枢機卿の誘拐事件の真相に迫ります。

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映画『天使と悪魔』の作品情報

(C) 2009 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

【公開】
2009年(アメリカ映画)

【監督】
ロン・ハワード

【原作】
ダン・ブラウン

【脚本】
デビッド・コープ、アキバ・ゴールズマン

【原題】
Angels & Demons

【キャスト】
トム・ハンクス、アイェレット・ゾラー、イアン・マクレガー、ステラン・スカルスガルド、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、ニコライ・リー・カース、トゥーレ・リントハート、アーミン・ミューラー=スタール、コジモ・ファスコ、カーメン・アルジェンツィアノ

【作品概要】
監督は『アポロ13』(1995)や『身代金』(1996)などのヒットメーカーであり、『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)でもメガホンを取った、ロン・ハワードが務めます。

枢機卿誘拐の鍵を握るマッケンナ司祭役は、『プーと大人になった僕』(2018)で大人になったクリストファー・ロビン、「スター・ウォーズ」シリーズでは若き日のオビ=ワン・ケノービを演じたユアン・マクレガー。

イルミナティの甦りを示す謎に関わる、女性科学者ヴィットリア役は、『ミュンヘン』(2005)、『バンテージ・ポイント』(2008)に出演した、イスラエル女優のアイェレット・ゾラーが演じます。

映画『天使と悪魔』のあらすじとネタバレ

(C) 2009 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

ヴァチカン市国共和国のローマ教皇が逝去し、習わしにより教皇の印“漁夫の指輪”は破壊、熔解されると「セーデ・ヴァカンテ」と呼ばれる、9日間の喪に服するため、教皇の部屋は閉鎖されます。

教皇の葬儀は全世界に中継され、10億人ともいわれるカトリック信者達の祈りに包まれます。そして、その信者たちを率いる新教皇は、“プレフェリーティ”と呼ばれる最有力候補の枢機卿の中から、「コンクラーベ」という会議で選出されます。

ところ変わりスイスのセルン研究所では、大型ハドロン衝突型加速器を使った実験が行われています。

シルヴァーノ博士はその実験の中でしか得られない、“神の素粒子”と呼ばれる「反物質」生成の研究に威信をかけて取り組んでいます。

そのサポートをしているのがヴィットリア博士です。ところが「反物質」の驚異的なエネルギーを知るものは、その研究に批判的な意見が多くあり、実験参加のアクセスに制限をかけられていました。

この実験が最後のチャンスになるため、ヴィットリアは必死に責任者を説得し、シルヴァーノ博士は“神の素粒子”の生成に成功します。

ところがシルヴァーノ博士の研究室に戻ったヴィットリアは、無残な姿で殺害された博士と“神の素粒子”3本のうち、1本が盗まれているのを発見してしまいます。

一方、ニューヨークの宗教象徴学教授、ロバート・ラングドンの元にヴァチカン警察の捜査官が訪ねてきます。

ロバートはローマ教皇が亡くなった大変な時期に何事かと、怪訝そうにしますが捜査官から“アンビグラム(対称形)”で描かれた、イルミナティのシンボルを見せられます。

捜査官はイルミナティは消滅したと思っていますが、ロバートは「最終的な目標を遂げる時、シンボルは世に明かされる」という言い伝えを教えます。

つまり、誰かが教皇の死によって、イルミナティが甦ったことを伝えているのではないかと考えました。

捜査官は明け方3時から5時の間に、4人の枢機卿が誘拐され、スイス英兵隊本部にシンボルと共に、「今夜8時から1時間ごとに1人ずつ、枢機卿の公開処刑を行う。」という脅迫状が届いたと説明します。

そして上司のオベリッティは、ロバートを専門分野の教授であり、キリスト教関連の事件に関与していたことから、犯人の正体をつきとめられると踏み指名したと言います。

ロバートはヴァチカンから好意的に思われてないはずと躊躇しますが、捜査官は一方でロバートの優秀さが証明されていると、改めて捜査の協力を願いました。

ヴァチカンへ向かう途中、捜査官はイルミナティが甦ったならば、見つけ出し始末せねばと言います。ロバートはイルミナティについて、メンバーは“啓示を受けた者”と呼ばれる科学者の集まりで、17世紀までは暴力的ではなかったと説明します。

しかし、教会の教義に疑問を持ち、科学的真理を追究したため、教会から壊滅させられその後、生き残った者で“秘密結社”を組織したと言います。

ヴァチカンに到着すると、オヴェリッティが出迎えてくれます。彼はヴァチカン市国の警備体制は複雑で、市国内全般はヴァチカン警察とローマ市警、枢機卿の警護にはスイス衛兵隊が担当していると説明します。

さらに衛兵隊のリヒター隊長は信仰心が深く、前教皇とも親しかったと付け加え、午後6時53分スイス英兵隊本部に入ると、そこにはヴィットリアも呼ばれていました。

リヒターはロバートに冷ややかな態度で接します。そして、オヴェリッティが新たな脅迫状が届き、事態が変わってきていると伝えました。

脅迫状とはある容器が映し出された映像でした。ヴィットリアはそれを見て、研究室から盗まれた容器だと判断し、中身は反物質で爆発したら危険だと訴えます。

磁力で宙に浮いてる反物質ですが、バッテリーが切れ落下して物質と接触すると、5キロトンに相当する凄まじい爆発があこると示唆します。

ロバートは「ヴァチカンは光に包まれて消えるか・・・」とつぶやくと、リヒターが誘拐犯が同じ言葉を使っていると、枢機卿たちを映し出している強迫動画を見せます。

「4つの柱を破壊し、プレフェリーティ達に焼印を捺し、科学の祭壇に捧げ、ヴァチカンは光に包まれ崩壊し、啓示の道の果てに輝く星が現れるだろう」

ロバートはこの文言は、かつてイルミナティが使った古い脅迫文の引用だと話し、4つの柱は誘拐された枢機卿のことで、焼印については5つあるといわれているが、最初の4つは基本元素の土、空気、火、水を表わすアンビグラムだと推考します。

ロバートは1668年に教会がイルミナティの科学者4人を誘拐し、4人の胸に十字架の焼印を捺して処刑し、道に放りだし「彼らの罪を浄めるため(ラ・プルガ)」と言いながら、見せしめにしたと教えます。

この誘拐はその報復で、彼らは科学技術の産物「反物質」を手に入れて、教会を破壊し科学が教会を抹殺しようとしていると話します。

そして、「啓示の道」とはイルミナティが密会をする、啓示の教会に至る秘密のルートで、スタートを示す“記号(セーニョ)”がわかれば、4人の枢機卿が処刑される教会がたどれると、力説します。

しかし、それを調べるには記録保管庫の資料が必要であると、開示の許可を得るため、教皇の代わりに決定権のある、“カメルレンゴ”のマッケンナ司祭に協力を求めます。

以下、『天使と悪魔』ネタバレ・結末の記載がございます。『天使と悪魔』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C) 2009 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

19時25分、記録保管庫でロバートはイルミナティのメンバーであり、教会から迫害のきっかけとなる“地動説”を説いた、ガリレオ・ガリレイの「真実の図表」を目的に探します。

ロバートはイルミナティの密書に「503」という数字が隠されているのを何度もみつけていて、「5」はイルミナティにとって重要な数字などから、ガリレオの3番目の本だと推理します。

それは“ディアグラマ・ヴェリタティス”「真実の図表」という題の本でした。その5ページにあると予想した、啓示の道のスタートを示す記号は見当たりません。

よく観察していると、ページの境に透かしでイルミナティのマークと、ページを囲む枠には教会が、“穢れた言語”という英語で何かが書かれていました。

「悪魔の穴開く、サンティの土の墓、ローマに縦横に現れる元素、光の道・・・聖なる試練、気高き探求を天使が導く」

サンティとは彫刻家ラファエロのセカンドネームです。つまり、ラファエロの墓のある礼拝堂が、最初の記号“土”であると考え、教会のあるパンテオンに向います。

パンテオンにラファエロの墓はありましたが、ヴィットリアはディアグラマが発刊された後、1759年に改葬されたというキャプションをみつけます。

ロバートは「ラファエロが建てた墓」の間違いだったと気づき、学芸員にラファエロは埋葬所と、“天使”のある礼拝堂を作ったか訊ねます。

デル・ポポロ教会の“キージ礼拝堂”には、「土の礼拝堂」を意味するカペラ・デッラ・テーラの別名がありました。ロバートはオベリッティと彼の部下、ヴィットリアの4人でキージ礼拝堂へ向います。

最初の予告時間を告げる鐘が鳴り、礼拝堂のドーム型天井の下に「空からの死」と書かれた、床タイルがありそれは少しずれていました。

動かしてみると地下空洞が現れ、そこには“EARTH(土)”と胸に焼印を捺された、枢機卿の遺体が座らされていました。

ロバートは次の手がかりを探します。キージ礼拝堂は設計がラファエロで、天使の彫刻はベルニーニの作品でした。

イルミナティメンバーには正体のわからない、匿名の巨匠もいるということで、それがベルニーニではないかと考えたロバートは、大地の滅亡を告げた予言者の“ハバククと天使”の象に注目します。

その天使の指さす方角南西にある教会は、サンピエトロ寺院でその広場の設計がベルニーニです。広場にはコンクラーベを見守る信者や、反社会の団体、マスコミでごったがえしています。

ロバートは石畳に“空気”を表わすレリーフを見つけますが、9時を告げる鐘と同時に近くにいた少女が悲鳴をあげます。

2人目の枢機卿が“AIR(空気)”と焼印を捺され、肺に穴を開けられた状態で発見されます。群衆の目の前で殺人事件がおこり、サンピエトロ広場は騒然とします。

枢機卿の懐には手紙が挟みこまれていて、ロバートは教皇の死も殺人であると示唆する内容だと言います。しかし、法律で教皇の検視は禁じられているため確認はできません。

マッケンナ司祭によると教皇は、静脈血栓症の治療にヘパリンを注射していたが、そのことは誰も知らないはずで、注射を利用した殺害は不可能だと言います。

空気を表わすレリーフは東を向いていました。3人目の枢機卿はなんとしても助け出したいロバートは再び記録保管庫へ、ヴィットリアは取り寄せたシルヴァーノの日記に、反物質の研究を知る人物を探します。

(C) 2009 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

マッケンナは教皇の死がヘパリンによる過剰摂取だとしたら、症状は出るかヴィットリアに聞きます。彼女は兆候について口腔内や舌から出血を起こし、死後数時間で血液が凝固し黒くなると説明します。

マッケンナは戦争孤児で教皇に引き取られ育てられていました。父親のように慕った教皇の死に殺人の疑いがあるならと、それを確かめる必要があると、教皇の遺体が眠る地下墓地へ向います。

棺の蓋を開けてみると教皇の口腔内は黒く変色していました。また、ヴィットリアが執務室へ戻ると、机の引き出しにしまったはずの日記が、何者かに盗まれています。

マッケンナはコンクラーベに乗り込むと、教皇の死は内部の者に殺害されたものだと伝え、イルミナティが戦争を起こそうとしていると訴えます。

そして、コンクラーベを中止し爆破の危険から群衆を守り、世界に真実を告げるべきだと言います。

しかし、シュトラウス枢機卿は教会のことは教会の中で解決すると、マッケンナにコンクラーベ遂行を告げると、マッケンナはその場を後にします。

シメオン神父はシュトラウスに、「有力候補者たちが欠席のままでは、3分の2以上の票を獲得できるものがいない。あなたが大選皇枢機卿から降りれば、“漁夫の指輪”をつける権利が得られる」と訴え、シュトラウスはその言葉を遠回しに聞き入れます。

一方、記録保管庫でヴァチカン資産リストから、“火”に関する彫刻、“聖女テレサの法説”が聖マリア・ヴィットリア教会にあると知り、教会へ向かおうとしますが電力が遮断され、保管庫の酸素供給も止まり命が危険にさらされます。

ガラスを突き破ることに成功し脱出したロバートは、オリヴェッティと教会に向かいます。しかし、3人目の枢機卿は宙吊りで火あぶりにされていました。

救助しようロバートと警官たちがと試みますが何者かが、彼らに向けて発砲し阻止し、オリヴェッティも殺害されます。ロバートは排気口から地下通路へ降り何とか逃げ切ります。

日記を盗んだのはリヒターでした。ヴィットリアは私有物だと抗議します。しかし、事件に関わる物的証拠だとして、奪い取ってしまいました。

ロバートは地図上で現場に印を付けると、ベルニーニ作の“四大河の噴水”がある、ナヴォーナ広場が十字架のように繋がることを発見し、次の殺害場所だと特定します。

噴水に到着したロバートは、近くに止まる怪しいバンに乗り込む人物が、聖マリア・ヴィットリア教会にいた男だと気づきます。男はバンに乗せていた4人目の枢機卿を噴水に滑り入れ立ち去ります。

ロバートは周囲にいた人達の協力でバッジア枢機卿を救出し、監禁されていた場所、“啓示の教会”はどこか訊ねます。バッジアは“カステル・サンタンジェロ”と答えます。

サンタンジェロ城に到着したロバートと落ち合ったヴィットリアは、リヒターから日記を奪われ、彼は何かを隠しているようだと伝えます。

サンタンジェロ城はヴァチカンと秘密の通路で繋がっている、イルミナティ達の密会場でした。天使の彫像が示す方向へ辿っていくと、石の台で隠された壁に開いた通路をみつけました。

(C) 2009 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

通路を進むと枢機卿たちが監禁されていた場所がみつかります。そして、4元素を示すアンビグラムの焼印と、5つ目の焼印を示す2つの鍵が交差する焼あとをみつけます。

その焼印が示す者とは“教皇”のことでした。つまり、次のターゲットです。しかし、教皇はすでに亡くなっているため、今実権のあるカメルレンゴのマッケンナだと推理しました。

通路は教皇の脱出用に作られたもので、執務室に続いていました。到着した2人は護衛たちにマッケンナが次のターゲットだと告げます。

カメルレンゴ執務室に駆けつけると中から、マッケンナの叫び声がし部屋に突入すると、そこには焼印を捺されたマッケンナが、「犯人だ」と銃を持ったリヒターを指さします。

護衛がリヒターを射殺すると、部屋に駆けつけたシメオン神父をイルミナティだ!と叫びます。シメオンは“卑怯者”と叫びながら焼印を振り上げると、彼も射殺されてしまいます。

ロバートは逆さに捺された焼印を見て、逆さで磔になった初代教皇の聖ペテロを意味していると考えます。磔になったヴァチカンの丘は、サンピエトロ大聖堂のある場所です。

するとマッケンナは「我この岩に教会を建てん」とつぶやき爆破されると訴え、反物質は聖ペテロの墓にあるのではと言います。

マッケンナのいう通り反物質は発見され、ヴィットリアが新しいバッテリーと交換しようとしますが、気温が低いため予想より消費が早いと言います。

交換する時間が足りないことを告げると、マッケンナは反物質を奪い外へ走ります。そして、広場に待機していた避難用ヘリに乗り、マスコミや群衆が見守る中、上空へと飛び立ちました。

バッテリーが切れた瞬間、ヘリはまばゆい閃光を放ち爆発し、サンピエトロ広場は爆風の衝撃をうけます。風が収まりはじめるとヘリから脱出した、マッケンナがパラシュートで降下し、群衆は救世主のように讃えます。

このことはコンクラーベ中の枢機卿たちにも知らされ、マッケンナを次期教皇に推す声まで出始めました。シュトラウスは群衆の声に屈して“教会法”を破り、枢機卿でもない若い司祭を教皇にするのは、言語道断だと反論します。

しかし、一部の枢機卿により“歓呼による選出”という方法で、マッケンナを教皇にする動きがおこり、ケガの手当てをうけるマッケンナはコンクラーベに呼ばれます。

その頃、ロバートとヴィットリアは英兵隊本部で待機します。ヴィットリアがリヒターのデスクからシルヴァーノの日記を取り出すと、そこから監視モニターがあらわれます。

ロバートは持病に不安を持った教皇が、信頼関係のあるリヒターに監視させたと考えます。そして、その録画記録を遡ると日記を読んだリヒターが、マッケンナと会話をしていました。

日記によると科学者であり司祭でもあったシルヴァーノは、1ヶ月前“神の素粒子”と呼ばれる反物質の発見に戸惑い、教皇に指南を仰ぐため謁見に訪れてました。

それを許可し同席していたのはマッケンナで、“反物質”の存在を知っている人物でした。

教皇はシルヴァーノに反物質のことを公表し、科学と教会の溝を埋めるよう促したが、マッケンナは科学の力は神に対する冒涜だと、教皇の考えに反発しました。

リヒターは日記はシメオンにも見せたと言い、マッケンナが教皇を殺害し、イルミナティが復活したように仕掛け、自分が教皇になるよう仕向けたと追い詰めます。

その時、マッケンナが焼印をリヒターに向けたため、リヒターは銃を抜きますが、彼は自ら胸に焼印を捺し、そこにロバートと共に警護が突入しました。

マッケンナがコンクラーベに到着すると、枢機卿たちの冷ややかな目が彼に向けられます。シュトラウスと数名の枢機卿が録画を観たあとでした。

そして、シュトラスが歩み寄りヴァチカン警察が現れると、事態を把握したマッケンナは部屋を出て広場に向います。

しかし、ヴァチカン警察の包囲により追い詰められたマッケンナは、地下墓地の入口で据付のオイルランプの油を頭からかぶり、火を放ち自死しました。

先に殺害された3人の枢機卿は爆破事件の火災で亡くなり、マッケンナはヘリコプターからの落下による、内臓破裂で死亡ということで処理されます。

再びコンクラーベが開かれ救出されたバッジア枢機卿が教皇に選出され、シュトラウスはカメルレンゴに就任しました。

シュトラウスはロバートに感謝の印として、“ディアグラマ・ヴェリタティス”を差し出し、教会のことを本にするならば温情を・・・と、終身的に貸し出します。

新教皇名は医師の意味を持つ“ルカ”、つまり科学と宗教の融合を表す名前となり、サンピエトロ大聖堂のバルコニーで、信者から在位の祝福を受けます。

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映画『天使と悪魔』の感想と評価

(C) 2009 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

司祭マッケンナは“神”の力こそが絶対という思いがありました。そして、過激派による爆弾テロで本当の両親を亡くしているため、シルヴァーノが生成しようとしている“反物質”に対して、並々ならぬ嫌悪がありました。

“反物質”はエネルギー資源として平和利用できるものですが、逆に殺傷レベルのある兵器にもなります。マッケンナは聖職者でもあったシルヴァーノが、人間を脅かす研究をしていると憤りました。

また、両親を奪った“科学”に、慈悲深く慈愛に満ちた養父(教皇)が、加担したことが信じられず許せなかったのでしょう。

マッケンナにとって“悪は科学”“善は神”です。悪である反物質を悪用し、実態を知らしめようと、古からの教会の天敵“イルミナティ”を再び壊滅させれば、自分がカトリック信者からの威厳を保てると、自作自演に転じていきました。

彼には“天使と悪魔”が表裏一体に存在していました。爆弾テロの残酷さを知りながら、自ら爆弾テロを企て、信者を爆破から守ろうとする行為、神への深い崇敬を見せながら、4人もの枢機卿を誘拐し、殺害をもいとわない残虐性・・・。

これらのギャップはマッケンナに、“メサイアコンプレックス”と呼ばれる誇大妄想的な宗教観があり、“演技性”や“自己愛”的なパーソナリティ障害をもっているようにも見えます。

マッケンナは9歳という幼い時に、爆弾テロで両親を失いながら、ローマ大司教の養子になれたことで、“神の申し子”や“神の望み”で、導かれたと勘違いしたのです。

また、次期教皇の座をあわよくば得られると考えていたのは、シュトラウスも同じです。有力者が3人亡くなってもコンクラーベを続行したのは、自らも教皇としてふさわしい立場だと自覚していたからでしょう。

しかし、誇示するのは品位が下がり、第三者からの後押しが必要でした。シメオンから提案されたシュトラウスが「それが、神のご意志なら・・・」と、言ったのは教皇になりたくて降りたわけではないという、大義名分を作りたかったからです。

しかし、シュトラウスの浅はかな目論みを打ち破ったのは、私利私欲のないロバートの人命救出を優先とする使命感です。

信仰心はなくとも教会に関する知識の深さは、“プレフェリーティ”を救うことができ、シュトラウスを“カメルレンゴ”という適材適所に導きました。

まとめ

(C) 2009 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

映画『天使と悪魔』は、イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレ(1564~1642)が“地動説”を唱えたことで、教会の教義“天動説”に反したとして有罪になります。そのことと教会の天敵であるイルミナティとの報復の歴史を軸に、科学的な症例に否定的な宗教観の司祭マッケンナが、恩人である教皇を手にかけ自らが教皇になるため、最悪なシナリオを企てるサスペンス映画でした。

本作の舞台となったサンピエトロ大聖堂は、再建が始まった1506年頃、当時の第一級の芸術家たちがその造営に携わり、教会の威厳を示し始めます。そんな秘密のヴェールに包まれたヴァチカンは、聖職者の名誉欲や権威欲も生々しく、うごめいているという想像もさせたでしょう。

本来、宗教は迷える人間に寄り添うべき存在ですが、カメルレンゴに「宗教には欠点もある、それは人間に欠点があるから」と言わしめます

また、無神論者のロバートを善き助言者と称し、それを「神のご意志」としたのは、古いしきたりや常識に囚われた教会に、広い見識をもつよう求めるメッセージを感じた作品でもありました。

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