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『誰が為に花は咲く』あらすじ感想と評価解説。殺人犯の父を持つ娘の苦悩と成長を丁寧に綴るビターなヒューマンドラマ

  • Writer :
  • 谷川裕美子

映画『誰が為に花は咲く』が2024年1月26日(金)アップリンク吉祥寺にて公開

藤原知之が監督・脚本を務める映画『誰が為に花は咲く』が2024年1月26日(金)アップリンク吉祥寺にて公開されます。

主演を務める湯川ひなに加え、マツモトクラブ、小島聖、渡辺裕之ら実力派が出演します。

優しい父親が実は殺人犯だったと知ったヒロインの、重く苦しい人生が丁寧に綴られる一作です。

映画『誰が為に花は咲く』の作品情報

【日本公開】
2023年(日本映画)

【監督・脚本・編集】
藤原知之

【キャスト】
湯川ひな、マツモトクラブ、髙橋⾥恩、⼩島聖、奥村⼼結、齋賀正和、梅⽥誠弘、渡辺裕之

【作品概要】
ボクはボク、クジラはクジラで、泳いでる。』(2018)の藤原知之が監督・脚本を務めるヒューマンドラマ。

殺人容疑で逃走中の父を持つ娘が、周囲からの差別に悩み苦しみながら、懸命に生きようとする姿を描きます。

子供はわかってあげない』(2021)の湯川ひなが主演を務めます。

逃走中の父親をお笑い芸人のマツモトクラブ、母親役を小島聖、恋人の警官役を髙橋⾥恩が好演。

映画『誰が為に花は咲く』のあらすじ

高校3年生の椿は、殺人犯の娘であることから将来の夢を持てずにいました。

14歳当時、両親が離婚した後に父・秀明とふたりで暮らしていた椿がある日帰宅すると、家には大勢の警官がいました。父が幼い少年を殺した容疑で追われていることがわかり、その日から椿は祖父の家に身を寄せます。

父はそのまま失踪し、4年たっても消息不明のままでした。

弟を連れて家を出て新たな家庭を持った母から一緒に暮らそうと何度も誘われますが、椿は返事をはぐらかします。椿は苦しんでいる祖父を見捨てられませんでした。

ある日、秀明に似た男が公園で小学生に声をかけたとの目撃情報が出ます。その後、その男が別人だったと伝えにきた警察官に対し、椿は父が生きている可能性を聞いてうれしいと思ってしまった複雑な心情を泣きながら告白します。

それから2年後。祖父は亡くなり、美大に入学した椿は母と弟とは連絡をとらなくなっていました。

椿の弟が行方不明になり、「卑劣な殺人犯の息子を殺害した」という犯行声明がSNSに投稿されます。犯行声明はイタズラで弟は無事でしたが、今度は弟を心配して出てきたであろう秀明が目撃されたという情報が入り…。

映画『誰が為に花は咲く』の感想と評価

殺人容疑で追われる父を持つ娘が、自分の未来のない人生に対して苦悩する姿を丁寧に綴る作品です。

ヒロインの椿は、優しかった父の記憶から、父を慕う思いを捨てきれずにいます。父が子どもを殺したとは信じられず苦悩する姿に胸をしめつけられずにいられません。

加害者家族に向けられる世間の冷たい目がシビアに描かれます。学校の友人やマスコミからのひどい差別に耐える者と耐え切れない者。事件を捜査する警官らも含め、人々のさまざまな思いが交錯していきます

湯川ひなが、過酷な運命に翻弄される椿の、幼さの残る高校生時代から大人の女性に成長した姿までを繊細に演じています

また、苦しみから命を捨てようとした祖父を見捨てられない椿の優しさや、彼女の気持ちに応えて孫を必死に守ろうとする祖父の必死な思いにも心揺さぶられます。渡辺裕之が愛情深い祖父を好演しています。

衝撃のラストシーンまでどうぞ見届けてください

まとめ

殺人容疑をかけられたまま姿を消した父への思慕を捨てきれない娘の苦悩を丁寧にたどる『誰が為に花は咲く』

加害者の家族に果たして罪を問えるのか。重いテーマを軸に、追い詰められていく残された家族の人生が映し出されます。

映画『誰が為に花は咲く』は2024年1月26日(金)アップリンク吉祥寺にて公開です。



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