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Entry 2017/12/10
Update

オリエント急行殺人事件のネタバレ【ポワロ考察】ラスト結末の解説

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

1934年に原作アガサ・クリスティの発表した『オリエント急行の殺人』は、1974年にシドニー・ルメット監督により豪華キャストによって一度映画化されました。

本作2017年リメイク版『オリエント急行殺人事件』として、あの灰色の脳細胞を持つ名探偵ポワロが帰ってきました。

誰もがネタバレご存知の犯人映画に、新生ポワロ役のみならず制作・監督としてケネス・ブラナーが挑んだ美意識とは?

この解説ではこの動画ショットについて深読みします!

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1.映画『オリエント急行殺人事件』の作品情報


(C)2017Twentieth Century Fox Film Corporation

【公開】
2017年(アメリカ映画)

【原作】
アガサ・クリスティ

【原題】
Mujer on the Orient Express

【監督】
ケネス・ブラナー

【キャスト】
ケネス・ブラナー、ジョニー・デップ、デイジー・リドリー、ミシェル・ファイファー、ジュディ・デンチ、ウィレム・デフォー、ルーシー・ボーイントン、レスリー・オドム・Jr、デレク・ジャコビ、トム・ベイトマン、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、ジョシュ・ギャッド

【作品概要】
1974年にシドニー・ルメット監督によって映画化されたアガサ・クリスティのミステリーを、ケネス・ブラナーの製作・監督・主演によるリメイク作品。

灰色の脳細胞を持つ名探偵ポアロ役をブラナー、事件の被害者ラチェット役をデップ、未亡人役をファイファーが演じます。

その他に教授役にウィレム・デフォー、家庭教師役にデイジー・リドリー、公爵夫人役にジュディ・デンチ、宣教師役にペネロペ・クルスなども出演。

2.映画『オリエント急行殺人事件』あらすじとネタバレ


(C)2017Twentieth Century Fox Film Corporation

エルサレムにあるユダヤ教の最も神聖な建造物である通称“嘆きの壁”。

先ごろ礼拝堂から高価な装飾品が盗難した事件の容疑者が3人並べられています。

このうち誰が真犯人なのかという名推理を行う人物は、様々な他国の言語を話し、左右均衡のとれた立派な口髭の男でした。

しかも、まるで舞台俳優の様に演説のごとく、独自の推理を大勢の聴衆者に披露して事件解決をします。

彼は世界一の探偵で灰色の脳細胞を持つ人物として知られた、エルキュール・ポアロ。

「この世には善と悪しかなく、その中間は存在しない」と言い切り、不均衡のアンバランスを病的に嫌がります。

日常生活をするのには、少し生き辛いものの、その特技を生かした人物観察や状況の不具合なアンバランスはすぐに見つけ出す特技の持ち主でした。

探偵ポワロは、次のイギリスで起きた事件の調査で、トルコ発フランス行きの寝台列車オリエント急行に乗り込みます。

オリエント急行は豪華な車内の装飾から、最高級の料理、そして気の利いたサービスとどれもが平均点以上の高級な装いで乗車客をもてなします。

しかし、そんな最高級の豪華オリエント急行も、自然の悪天候には敵わないようで勇ましく走行中するが、落雷による雪崩によって、行く手を阻まれ運行不能となります。

そんな矢先、悪徳ビジネスで儲けた富豪ラチェットが何者かに12箇所をめった刺殺にされます。

事件起きた列車に同じく乗り合わせていたのは、大学教授、執事、伯爵、伯爵夫人、秘書、家庭教師、宣教師、未亡人、セールスマン、メイド、医者、公爵夫人を名乗るそれぞれの人たち。

目的地以外は共通点のない乗客たちと車掌をあわせた13人が、殺人事件の容疑を掛けられることになります。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『オリエント急行殺人事件』ネタバレ・結末の記載がございます。『オリエント急行殺人事件』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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黒人医師アースバットがラチェットの遺体を調べたところ、寒風の吹き込むように窓が開けられて死亡推定時刻を細工していたものの、おおよそ深夜0〜2時の時間帯であると診断を下します。

ポアロはラチェットの部屋を捜索し、壊れた時計、Hと刺繍されたハンカチ、パイプを掃除するハケ、灰皿で燃えかけになっていた紙を遺留品とします。

その遺留品の中にあった燃えかけの紙を科学的な実験として、ランタンの火で焼いてみると、文字が浮かびあがるのを発見します。

そこには「小さいデイジー・アームストロングを忘れ」と書いてありました。

デイジー・アームストロングは、その昔アームストロング大佐という富豪の誘拐された娘の名前でした。

アームストロング大佐は要求された20万ドルの身代金を支払うものの、容赦のない犯人は幼い娘の命も絶たれてしまったのです。

この事件で妊娠していたアームストロングの妻ソニアはショック死しました。

また、無実ながら犯人だと疑いをかけられ問い詰められたフランス人のハウスメイドは自ら命を断ちます。

そのメイドが真犯人ではないのに追い詰めた過ちの責任と非難にの果てに検事も自死。

そして、アームストロング自身も傷心から銃の引き金を引き自死してしまう悲惨な事件でした。

生前アームストロングからポアロ宛に手紙があり、事件を究明してほしいという依頼があったことで、その事件について彼もよく記憶していました。

このアームストロング幼女誘拐殺人事件と、ラチェットが殺害されたに、何か因果関係があると考えたポアロはそれぞれに事情聴取を行います。

車掌のピエールのその時間は乗客の安全のために見張りをしていたので、犯人を見逃すはずがないという目撃証言があり、全員のアリバイが立証されていました。

しかし、持ち前の不均衡を病的に生理的に嫌う観察力と洞察力を使い、名探偵ポアロは推理を展開します。

まず、ラチェットの秘書である、ヘンリー・マックイーンがラチェットの帳簿に細工して現金を横領していた事実を暴きます。

さらにマックイーンは、かつてのアームストロング事件で無実の罪でメイドを追い詰めた検事の息子であることも突き止めました。

Hと縫い込まれたハンカチもヘンリー・マックイーンという名前で、筋が通ることでポアロは詰め寄ります。

しかし、マックイーンはラチェットが殺害された時間帯に、黒人医師のアースバットとともにウイスキーを深夜2時まで呑んでおり、犯行は不可能で真犯人ではないようでした。

謎が謎を呼びながらラチェット殺人事件は難航を極めていきます。

深夜の寝台列車の客室でポアロは、「今までありすぎるほど自信があった、しかし今は違う…」と過去に愛したただ1人の女性カトリーヌの写真を見詰めて弱音を吐きます。

それでも真犯人の捜査を続け、さらなる事件の真相を持ち前の才能で明らかにするポワロ。

ドイツ人の教授だと語っていたハードマンが、その訛りの特徴から国籍が違うことを言い当てると、彼が手にしていた愛用の拳銃から元警察であることも見抜きます。

さらにバグダッドで家庭教師をしていたメアリ・デブナムは、実はデイジー・アームストロングの家庭教師であったことも見抜いてしまいます。

その事実をなぜ頭の良いメアリが隠していたのかとポワロが彼女に尋ねると、「事件と関係していると仕事がとれない」と答えました。

メアリの事情聴取している最中で、ポアロは後ろから軍の狙撃兵でもあった黒人医師ハードマンに撃たれます。

銃弾はポアロの肩をかすめただけ。

なおもポワロに拳銃を向けたまま、ハードマンは愛する白人女性メアリに部屋から出て行くよう告げ、彼はポアロに「ラチェットは私が殺した」と自白します。

しかしポアロはそれを信じません。なぜなら、ハードマンは百発百中の狙撃手だったからです。

今にも引き金を引くかに見えたハードマンでしたが、ブークが背後から襲いかかり、ポアロは助かりました。

機関車の行く手を線路を塞いでいた雪崩事故による除雪作業が終わりに差し掛かるなか、ポアロは乗客全員をオリエント急行の車外に呼び出します。

そして機関車のライトに照らされた容疑者たちを一列に線路の入り口に並べ、事件の謎を紐解いていきます。

はじめにポアロは1つ目の仮説を解きます。

乗客以外の第三者の暴漢が列車に乗り込み、ラチェットを殺害して去っていったという推理。

しかし雪山で立ち往生しているオリエント急行に乗り込むことが可能な者はいないとブークが否定します。

次にポアロ2つ目の仮説を吐露します。

ラチェットの命を殺めたのは容疑者である全員の犯行で、刺し傷12箇所の乱れはそれぞれが次々に刺したという事実。

これがラチェット殺人事件の真相で、乗客は1人残らずアームストロング幼女殺人事件の関係者であり、全員で復習を試みたと述べます。

事件の真相を明らかにした後、ポアロは「善と悪しかないと思っていたが、これは判断できない」と言い、さらに不均衡を病的に嫌う性格であるが故に、「自分には口止めはできない」と告げます。

そして容疑者たちのテーブルに撃ち殺せとばかりに拳銃を差し出します。

その銃を手にしたハバート夫人はポワロに銃口を向けると、「私が1人で殺った」と言い放ち、自らに銃を当て引き金を引きます。

カチャと寒風に乾いた音。銃の弾倉に弾は込められていませんでした。

オリエント急行は無事に次の駅に着くと、ポワロは警察に事件の真相を1つ目に解いた推理の仮説を説明。

ポアロは彼らを真犯人することなく、今度はエジプトへの事件への真相を推理するために向かいました。

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2.映画『オリエント急行殺人事件』感想と評価

レオナルド・ダ・ヴィンチ作『最後の晩餐』(1498)


サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院(ミラノ)

本作2017年リメイク版『オリエント急行殺人事件』は、アガサ・クリスティ原作の名著であることから、はじめから全員が犯人であることはネタバレの事実です。

1974年版のシドニー・ルメット監督作品では、ミステリーの作風が色濃く、2017年版よりも秀でた部分も多く見られるのもまた事実かもしれません。

それはアガサ・クリスティが執筆した名著を1974年版はミステリーとして生かした結果であり、彼女の作品の映画化と言えるでしょう。

しかし、2017年版はミステリーの部分に重きをおいていません

とはいえ、映画はあらすじや物語のみで読み解くものではありません

映画は細部に神が宿り、そこにこそ大切なことが描かれているはずなので、今回はそれを詳細にご紹介します。

トンネルの構図はダビンチコード⁈

冒頭にある2017年版の予告編を引用した理由は、この章で示した画像にあった、1498年に描かれたとされるレオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』を模倣したことが、本作を読み解く重要な鍵です。

ご覧の通り、容疑者たちがトンネルに並べられたのはダヴィンチの『最後の晩餐』をそっくりに引用したものです。

また、この場面でポワロから“神と自分”を同列に並べる台詞が登場します。

本作のなかで、何故あれほど不均衡のアンバランスを嫌がるポワロの描写を多用したのでしょう。

それをヒントにポワロがオリエント急行の殺人事件の真相を暴かなかったのか、2つの仮説として推理してみましょう。

①ポワロ自身もアームストロング事件のその後に大きく関与した説

1つ目の推理は、ラチェット殺人事件で被害者を殺傷した12人の真犯人を生み出したのは、彼らは被害者に強い思いを抱き、容疑者を憎み恨んだ原因がありました。

しかし、あのアームストロングから届いていた捜査依頼の手紙が、もう少し早く届いていたとすれば、これほどまでに人が人を恨むこと多くが自死することもなかったのです。

また、オリエント急行に乗車した12人の共犯者によって、ラチェット殺害されるに至らなかったという事実を、ポワロは自身が完璧主義者であるが故に気が付き、その“善と悪”の不均衡のアンバランスさ責任を感じているのです。

つまり、ポワロにあの捜査依頼の手紙が、運命の悪戯がなく早く届いていれば、12人の殺人者を生み出すことなくう回避できたので来たはずです。

しかもポワロはその原因を2度にわたり、回避のチャンスを活かすことが出来ませんでした

ポワロはオリエント急行に同乗したラチェットから身辺警護の依頼を顔が嫌いだからと、ポワロは断ってしまいます

あの時に依頼を受けていたら、ラチェットという被害者も、12人の加害者も加害者も産むことはなかったのです。

ポワロは自身を“神と自分”を同列に並べながら、口止めはできないと述べました。

人間として彼らを裁いたとしたと仮定したら、すべての原因との因果関係はポワロ自身にもあるのです。

つまり、完璧主義者の彼にとってはこの事件の首謀者は彼自身が原因に近い存在であり、事件を生み出した張本人のようにも読めます。

それは彼の思考の世界観のなかでは、神とポワロは同列だからです。

神であると仮定したポワロにとって、ダヴィンチの『最後の晩餐』の図のように並べさせたのは彼らが1つ目の仮説で読み抜いたように自分が生み出した子どもたち(犯罪者)です。

ヨハネによる福音書13章33~35節

13:33 子たちよ、いましばらく、わたしはあなたがたと共にいる。あなたがたはわたしを捜すだろう。『わたしが行く所にあなたたちは来ることができない』とユダヤ人たちに言ったように、今、あなたがたにも同じことを言っておく。
13:34 あなたがたに新しい掟を与える。互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。
13:35 互いに愛し合うならば、それによってあなたがたがわたしの弟子であることを、皆が知るようになる。」

きっと、雪山の谷底の陸橋の上で停止したオリエント急行の車両は、裁きの“善と悪”の境を意味しています。

そして、今回ポワロが推理を披露するトンネル前を舞台したことは、大きな意味があります。

トンネルのメタファーは宿命というオリエント急行に乗車した、すべての人間たちの通過儀礼の象徴です。

それトンネルという処女膜であり、機関車という男根と読むことが可能なのです。

その機関車のヘッドライトの灯りを示したトンネルを抜けた場所に、ポワロを含めた乗客たちの未来があるのでしょう。

ラチェット殺人事件に関わった人間たちが通過儀礼をするという、大きな意味があります。

雌鶏はなぜ同じ大きさの卵が産めないのか?病的な完璧主義者ポワロ

2つ目の推理の仮説は、真の完璧主義者とは何か?ポワロの灰色の脳細胞がそこにまで至ったのではないかという真相です。

マタイによる福音書には「復習してはならない」と、「敵を愛しなさい」という節があります。

マタイよる福音書5章38〜42
5:38 あなたがたも聞いているとおり、『目には目を、歯には歯を』と命じられている。5:39 しかし、わたしは言っておく。悪人に手向かってはならない。だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬をも向けなさい。 5:40 あなたを訴えて下着を取ろうとする者には、上着をも取らせなさい。5:41 だれかが、一ミリオン行くように強いるなら、一緒に二ミリオン行きなさい。5:42求める者には与えなさい。あなたから借りようとする者に、背を向けてはならない。

この一節を引用するならば、ポワロは容疑者12人を突き放すことが出来るのでしょうか

そして聖書の次の章が以下のようになります。

マタイよる福音書5章43〜48
5:43 あなたがたも聞いているとおり,
『隣人を愛し、敵を憎め』と命じられている。5:44 しかし、わたしは言っておく。敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。5:45 あなたがたの天の父の子となるためである。父は悪人にも善人にも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせてくださるからである。5:46 自分を愛してくれる人を愛したところで、あなたがたにどんな報いがあろうか。徴税人でも、同じことをしているではないか。5:47 自分の兄弟にだけ挨拶したところで、どんな優れたことをしたことになろうか。異邦人達でさえ、同じことをしているではないか。5:48 だから、あなたがたの天の父が完全であられるように、あなたがたも完全な者となりなさい。

さて、もうお分りいただけましたか。

やはり、ポワロは一時的な他人への感情で行動したり、容疑者たちに寄り添ったのではなく、不均衡のアンバランスを徹底的に嫌う彼は、真の完璧の美を求め追求した行動なのです。

トンネルのメタファーの“通過儀礼”は、世界一の天才でああっても超えるべきものを示しています

ケネス・ブラナー監督・主演の『オリエント急行殺人事件』の結末をあなたはどのように推理しましたか。

まとめ

日本人として、一般的な信仰心しか持たない仏教徒の筆者が、名探偵エルキュール・ポワロに触発されて異教徒の宗教を浅はかながらに推理してみました。

この結末に至ったときに、本作2017年版の『オリエント急行殺人事件』も、やはり、天才アガサ・クリスティ女史による傑作であることを思い知らされました。

子どもの頃に淀川長治先生のテレビ解説で、1974年版に触れた後に、アガサ女史の原作も当時に読みました。

今更ながらに大人になってからしか見抜けなかった、アガサ女史の真価に気が付いたのかもしれません。

このポワロ史上、不可解な結末の判断は、ある種の芸術に触れた思いを感じますね。

文化や民族、国籍、宗教に関係なく、もしかすると、ぼくらは“宿命のオリエント急行という名の地球”に乗車している人類の1人かもしれませんね。

世界一の名探偵ポワロが物語のなかで述べた台詞、「この世には善と悪しかなく、その中間は存在しない」であるなら、人はどう生きれば良いのでしょう。

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