史上最大のスキャンダルにして、タブーと話題になった、大ベストラー小説『ダ・ヴィンチ・コード』の映画化
今回は『ビューティフル・マインド』(2001)で、アカデミー賞作品賞と監督賞を受賞したロン・ハワードの監督で制作された、ダン・ブラウンの大ベストセラー小説を映画化した『ダ・ヴィンチ・コード』をご紹介します。
フランスのルーブル美術館で館長が殺害される事件が発生し、その遺体は尋常ではない姿で発見されます。
館長と面会予定のあった、宗教象徴学教授ロバート・ラングドンは、遺体に刻まれたシンボルに関する意見と、面会の意図を求められますが、殺人の容疑者として追われる身となります。
『ダ・ヴィンチ・コード』は容疑者となったラングドンが、館長の孫娘で暗号解読官ソフィー・ヌヴーと共に、館長の死の謎を解き、キリスト教がひた隠しにしたい、史上最大のカトリック教会の“秘密”について、迫るサスペンスドラマです。
映画『ダ・ヴィンチ・コード』の作品情報
(C)2006 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
【公開】
2006年(アメリカ映画)
【監督】
ロン・ハワード
【原作】
ダン・ブラウン
【脚本】
アキバ・ゴールズマン
【原題】
The Da Vinci Code
【キャスト】
トム・ハンクス、オドレイ・トトゥ、イアン・マッケラン、アルフレッド・モリーナ、ユルゲン・プロホノフ、ポール・ベタニー、ジャン・レノ、エチエンヌ・シコ、ジャン=ピエール・マリエール、セス・ガベル、サム・マンキューゾ
【作品概要】
主演は『フォレスト・ガンプ 一期一会』(1994)で、アカデミー主演男優賞を受賞したトム・ハンクス、ソフィー役に『アメリ』(2001)のオドレイ・トトゥ、カトリック教会の闇を追求するリー・ティービング役には、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのイアン・マッケランが務めます。
本作は原作者が「この小説における芸術作品、建築物、文書、秘密儀式に関する記述は、すべて事実に基づいている。」と述べたことで、ローマ教会がイエス・キリストを冒涜したものだとして、公開のボイコットを呼びかけたことでも話題になりました。
映画『ダ・ヴィンチ・コード』のあらすじとネタバレ
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閉館後のルーブル美術館で、館長が黒マントの男に追われ、“ある秘密”について話すよう、追究されます。
銃を向けられ観念した館長は、神の許しを乞い「サン・シュルピス教会の“ローズ・ライン”だ。その下にある」と答えます。しかし、黒マントの男は無情にも館長に発砲し、美術館を去っていきます。
館長は撃たれながらも、館内に手がかりを残しながら移動し、グランドギャラリーで絶命します。
その頃、“図像(シンボル)の解釈”の出版記念講演で、来仏していたロバート・ラングドンが、講演後のサイン会をしていると、DCPJ(フランスのFBI)のコレ警部補が訪ねてきます。
彼はロバートに1枚の写真を見せ、緊急な用件だということを知らしめます。その写真はルーブル美術館のソニエール館長が殺害された現場写真でした。
コレ警部補は上司のファーシュ警部が、遺体に残されたシンボルについて、専門家の見解を聞くため、連れてくるよう指示があったと言います。
一方、黒マントの男は電話で「総長と3人の参事は死に、皆同じ場所を示した」と報告すると、十字架の前で懺悔し、太腿に絞めた“シリス帯”を絞め直し、自分の身体を鞭で戒めます。
美術館に到着したロバートは、ファーシュ警部に出迎えられ、現場へ向かいます。ソニエールとの関係を問われたロバートは、ソニエールからフランスにいる間に会いたいと、メールで連絡を受けたと話します。
ロバートは床の特徴から遺体の発見場所が、グランドギャラリーであることを言い当て、ソニエール館長の遺体を見て驚きます。
その頃、黒マントの男と繋がる司教アリンガローサが、飛行機内でメディアのインタビューを受けていました。彼はローマ・カトリック教会の一組織、“オプス・デイ”の司教です。
アリンガローサは電話で“導師”と名乗る人物から、黒マントの男“シラス”が総長と3人の参事から、“秘密のありか”を聞き出したと告げます。するとアリンガローサは明日、“約束の金”を引き渡すと答えます。
ソニエールの検証に立ち会ったロバートは、遺体の胸に刻まれた五芒星は異教徒やヴィーナスの象徴で、体勢はレオナルド・ダ・ヴィンチの“人体図”スケッチを模していると述べます。
ファーシュは更に床にライトをあてると、ダイイングメッセージが残されていました。“ドラゴンのごとき悪魔!役に立たぬ聖人め!13-3-2-21-1-1-8-5”と、書かれています。
ロバートは意味はわからない、書くなら犯人の名前にするだろうと言います。ファーシュはその言葉を聞くと、何かを確信したように「その通りだ……」ロバートに言います。
そこに暗号解読課のソフィー・ヌヴー捜査官が現れ、ロバートに大使館へ連絡するよう伝えます。電話番号のメモと携帯電話を渡し、生死に関わる緊急連絡だと言います。
しかし、ロバートが書かれた番号に電話をかけると、それはヌヴー音声メッセージが聞こえます。ヌヴーは暗証番号を入力するよう言うと、「警部に気づかれないよう、私の指示通りに動いて。危険が迫っている」とメッセージが流れます。
ロバートは友人が事故に合い、明日帰国するとファーシュ警部に嘘をつき、水で顔を冷やしたいとトイレへ向います。
トイレにはソフィーが待ち構えていて、ソニエールが何か伝言を残さなかったか聞きます。ロバートには全く心当たりがなく、人違いではないかと答えると、ソフィーはポケットの中を確認するよう言います。
彼の上着のポケットには高精度のGPSが入れられていました。つまりそれは、ロバートがDCPJにマークされていることを意味しました。
ソフィーは床に書かれたダイイングメッセージには、4行目に“P.S ラングドンを探せ”と書かれてあったが、ファーシュが消したことを教えます。
ファーシュ及びDCPJはそのメッセージから、ロバートが殺人の重要参考人として、追ってくると説明しました。
ロバートはソフィーが、ソニエールの事情に詳しい理由を聞くと、ダイイングメッセージの“P.S”とは“プリンセス ソフィー”という意味で、彼女はソニエールの孫でそう呼ばれていたと話します。
つまり、ソフィーにあて「ラングドンを探せ」というメッセージだったと説明します。彼女はロバートに何時頃、ソニエールから連絡を受けたのか確認すると、昨日の午後3時頃と答えます。
2人は長年、疎遠状態でしたが、ソフィーは昨日の昼から何度もソニエールから電話があり、“生死にかかわる問題だ”とメッセージが残されていたと話します。
ロバートはソニエールの残した手がかりから、彼が命をかけて隠した物の謎を解き明かそうと考え、ソフィーと協力し合うことにします。
ポケットに忍ばせられたGPSを石鹸に付け、窓の下を通るトラックの荷台に落とすと、GPSはどこかへ運ばれていきます。
ロバートが逃亡を開始したと思ったファーシュ警部らは、それを追跡するため美術館をあとにしました。警察たちがいなくなると、ロバートとソフィーは、メッセージに書かれた数字について考えます。
メッセージにあった数字は、意味不明な言葉の綴りを並べ替える“アナグラム”だと考えたロバートは、そこから“LEONARDO DA VINCI(レオナルド・ダ・ヴィンチ)”を導き出します。
そして、ダ・ヴィンチの作品「モナリザ」の展示場所に行くと、“人の欺瞞はかくも邪悪なり”とダイイングメッセージを見つけます。
この言葉の綴り替えをすると、僧侶、岩石などの単語を導き、ダ・ヴィンチの作品「岩窟の聖母」だと考え絵画を調べると、額の裏から“百合の紋章”の付いた鍵のような物がでてきます。
その頃、ファーシュらは追跡したGPSが、おとりだと気づき再び美術館へと戻ってきます。ソフィーとロバートも美術館をあとにし大使館へ向います。
ソフィーには百合の紋章の鍵に見覚えがありました。ソニエールが持っていたもので、幼い頃に部屋でみつけ「いつかあげるよ」と言われていました。
ロバートはソフィーにソニエールが、秘密結社のような集会に参加したり、“シオン修道会”を知らないかなど訊ね、“シオン修道会”は代々、“地上での神の力の根源”である、秘密を守る役割を担っていたと説明します。
大使館に到着しますが、すでに警官が待ち構えています。ソフィーは独りにしないでと懇願し、再び2人で逃走します。
以下、『ダ・ヴィンチ・コード』ネタバレ・結末の記載がございます。『ダ・ヴィンチ・コード』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
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“導師”と名乗る男は“サン・シュルピス教会”に、オプス・デイの有力な司教が視察に向っていると連絡をいれます。
この教会には“ローズライン”と呼ばれる、パリの中を通る北極と南極を結ぶ子午線があり、経度0を示す真鍮のメダルが埋め込まれています。
教会を訪ねたのは黒マントの男“シラス”でした。シスターに教会の中を案内され、“ローズライン”の先端に辿り着くと、シラスはシスターを所払いしその床を叩き割ります。
床の下の空洞には“ヨブ 38:11”と記された星形の箱がありましたが、それはシラスの探していたものではなく、彼の来訪をソニエールに知らせようとしたシスターは撲殺されます。
アリンガローサは評議会で、キリスト教流布のための資金として、2000万ユーロを求めました。司教たちは渋りますが、“導師”という男が接触してきて、聖杯は破壊され修道会のメンバーは口封じされると話します。
ブローニュの森に身を潜めたソフィーとロバートは、まずシオン修道会が守ろうとしている、“地上での神の力の根源”についてソフィーに話します。
千年前、フランス王がエルサレムを征服するために、組織した十字軍テンプル騎士団を指揮したのが、“シオン修道会”という秘密友愛組織でした。
テンプル騎士団は表向きは、聖地を守る軍団として存在していましたが、真の目的はキリストの時代に紛失した、“宝物”を探すことだったといいます。
その宝物とは教会が人を殺してまで、探し出したいモノだったことは確かでしたが、騎士団は突然、宝の捜索をやめてエルサレムを捨ててローマに戻り、教皇を脅し巨万の富と権力を手に入れました。
14世紀に入ると教皇にとって、テンプル騎士団は脅威の存在となり、騎士団を“悪魔崇拝団”と称し、異端者として浄化するのが“神の使命”だと指令を出しました。
テンプル騎士団はたちまち抹殺され、1307年10月13日金曜日に壊滅しました。教皇は軍隊を使って、騎士団が探し出したとみられる“聖なる宝物”の捜索をしますが、みつかることはありませんでした。
テンプル騎士団や教皇が捜索していた“宝物”とは、“聖杯”のことだとロバートは言います。ソニエールはその聖杯のことを知っていたと思われました。
ロバートは百合の紋章と十字架は古い物だが、その下に付いている鍵は新しいと、そこに刻まれた“HAXO24”という文字とレーザーで読み取る穴を見つけます。
“HAXO24”はパリの番地だとソフィーが教え、2人が行ってみるとそこは“チューリッヒ保管金庫”でした。
金庫を開けるには、本人しか知り得ない“10桁の数字”を入力し、ひとつでも間違えるとシステム不能で、開けることが不可能になります。
ソフィーは正しい“ファボナッチ数列”の番号だと判断し、それを入力すると金庫を開けることができ、聖杯を象徴する“バラ”が施された木箱が出てきました。
それと同時に支配人が警察が到着したと報告しにきます。支配人の気転で2人は現金輸送車で脱出します。
ソフィーは無神論者で、“地上での神の力の根源”など信じていませんでした。ロバートに促され、木箱を開けると中には、ダイアル式のアルファベットを5つ並べ、開錠する容器“クリプテックス”が入っていました。
ダ・ヴィンチが発明したといわれる“クリプテックス”は、秘密情報をパピルスに書き、ビネガー入りの壊れやすいガラス瓶に巻いて、入れておく容器です。
暗号がわからないと開かず、無理にこじ開けようとすると、ガラスが割れ中のビネガーが、パピルスを熔かすという仕組みです。しかし、その暗号を解くには1200万通りあると言います。
2人を乗せた輸送車は悪路を走り急に止まります。扉を開くと支配人が、ソニエールの預けた物を奪うため、20年間口座を開けに来る人間を待っていたと、銃を2人に向けました。
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2人は格闘しながら輸送車を奪い、ロバートは“聖杯の歴史”と“修道会の伝説”に憑りつかれた、英国人リー・ティービングのいる、シャトー・ヴィレットへ向います。
リーは“聖杯”と“修道会”のつながりについて、独自の研究をしていています。ソフィーが祖父の死と聖杯に、どんな関係があるのか理解できないため、ロバートは連れてきました。
リーは聖杯について説明をはじめます。宗教紛争で多くの血が流れていた時代に、イエスが現れ“愛と唯一の神”を説き、偉大な予言者、人間として尊敬を集めました。
しかし、磔から1世紀が経つ頃、イエス・キリストの崇拝者が急増し、異教徒との宗教戦争に広がります。
教会はキリストこそが“唯一の神”だと絶対的な存在にするため、“聖書”となる福音書の選定、復活祭や秘蹟の儀式などを取り決め、カトリック教会の教義を確立します。
古代ローマが唯一の神として崇めていたのは、自然界の男の神々や聖なる女神たちです。聖杯とは女性を示す記号の“Y”の形が、子宮に似ていることから、女性そのものが聖杯であると考えています。
リーの見解はキリストには愛する妻がいて、それは“最後の晩餐”のキリストの右手に座るヨハネが、“マグダラのマリア”と呼ばれる女性という説でした。
そのことをもみ消したい教会は、591年にマグダラのマリアを娼婦だと汚名を着せ貶めました。
フランス語で聖杯を“SANGREAL(サングリアル)”、それを2つの単語に分けて読むと、“サン・レアル”となり、その意味は“王家の血”となります。
つまり、イエスの血脈を宿した女性の子宮こそが聖杯であり、マグダラのマリアはキリストが磔になった時には、キリストの子を宿していたと論じます。
教会にとってキリストこそが唯一の神で、絶対的な存在でなければなりません。教会こそが救いに導く存在であるためには、キリストの人間説や女性は脅威でしかないのです。
その頃、警察は輸送車の追跡装置から居場所を掴みます。オプス・デイの崇拝者だったファーシュはアリンガローサに情報を伝え、警官隊とシラスがシャトー・ヴィレットに向います。
リーの執事がテレビのニュースで、ロバートとソフィーが殺人の容疑者として、指名手配されていることを知るとリーに伝えます。
リーは騙されたと怒りますが、ロバートはソフィーをシオン修道会の総長だと思われる、ソニエールの孫であると教え、バラの紋章が施された木箱を見せます。
するとリーは「キー・ストーンか?」と興奮気味につめより、“キー・ストーン(クリプテックス)”には聖杯に辿り着くための地図があると話します。
そこに屋敷に侵入したシラスが“キー・ストーン”を奪おうとしますが、シリス帯に気づいたリーは杖で太腿を叩き、ソフィーの反撃で気絶させます。
3人は屋敷を脱出し、教皇直轄の保守派のカトリック“オプス・デイ”は、キリストの血脈を断とうとする、“影の評議会”で、遥か昔からキリストの末裔を探し出しては殺してきたと話します。
一方、アリンガローサは評議会から2000万ユーロの債券を受け取り、評議会の司教に聖杯や血脈に関する文書、棺はを破壊し証明できるものを消滅させると約束します。
リーは自家用機を用意しスイスへ向かいます。リーは機内で、クリプテックスの暗号を解こうと必死になりますが、どれも該当しませんでした。
ソフィーはその後のマリアの生涯について聞きます。マリアは生涯身を隠して暮らしますが、教会の強硬な信者は彼女の存在を消し去ろうと追いかけていました。
しかし、マリアには彼女を守る騎士がいて、彼女の死後はシオン修道会が遺骨や血脈の証拠となるものを隠し、長い年月の中で聖杯や棺は失われたと思うようになったと話します。
話しを聞いていたロバートはふと“バラの花の下で眠る”とつぶやきながら、木箱のバラの装飾を外してみると、その裏に鏡文字で何か文章が刻まれています。
“教皇の葬った騎士がロンドンに眠る。彼の者の苦労の果は神の怒りを被る。その墓を飾るべき球体を求めよ。それはバラの肉と種宿る胎を表す”と書かれていました。
リーは渡航先をロンドンに変更し、テンプル騎士団の墓があるテンプル教会へ行きます。ところがテンプル教会には騎士団の彫像が横たわり、墓を守る“球体”はありません。
ロバート達は立ち去ろうとしたその時、車から抜け出したシラスがソフィーを人質にとり、キー・ストーンと引き換えにします。そこにリーの執事レミーも現れますが、彼がリーを裏切りシラスを解放していました。
ロバートとソフィーは逃げ切りますが、リーはシラスとレミーに拉致されます。そして、レミーは自分が“導師”だとシラスに告げ、リーを始末しに行くから、テンプル寄宿舎で待機するよう言います。
ところがリーこそが“導師”の正体で、オプス・デイの仲間を装うため金を要求するなど、レミーと一芝居うちキー・ストーンを奪いました。
しかし、レミーがキー・ストーンをリーに渡し報酬を受け取り、祝杯の酒を飲むとそれには毒が盛られていて、レミーは毒殺されます。
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ロバートとソフィーはテンプル騎士団の墓を捜索するため、教皇“ポープ”でキーワード検索をすると、“アレキサンダー・ポープ”がヒットします。
そこでロバートが気づいたのは、騎士とはテンプル騎士団ではなく、サー(騎士)の称号を得ていたアイザック・ニュートンのことです。
彼もまたシオン修道会の総長であり、教会には不都合な“重力の法則”を提唱する人物として、異端扱いされていました。
そんな彼を葬る教皇(ポープ)とは、ニュートンの知人の詩人、アレキサンダー・ポープであったことに気がつき、ニュートンの眠る寺院へと向います。
ニュートンの墓には太陽系の惑星、12星座などが施された球体があり、“守るべき球体”が何を指すのか謎が深まります。
するとソフィーが足と杖の跡を床に見つけ、先回りしていたリーが現れます。そして、ソニエールが死んだ最期について触れ、殺人の首謀者だと告白します。
彼の真の目的は教会の闇を暴き、捻じ曲げられたキリストの真の姿、マグダラのマリアの名誉を回復させることでした。
修道会は新世紀がきたら、キリストの後継者を公表する方針を出していたが、実行されなかったため、リー自身で白日の下に晒そうと聖杯を奪おうとしました。
偶然、聖杯の守護者ソフィーが現れたことで、彼女にクリプテックスを開錠させようとしますが、彼女は暗号を知りません。
そこでロバートは自分に時間をくれるよう言い思考をめぐらせますが、「無理だ」と言ってクリプテックスを放り投げます。
リーは慌ててクリプテックスを取ろうとしますが、落ちて中身が破損しビネガーが流れ出し、地図が失われたと嘆いていると、そこにファーシュと警官隊が突入してきました。
寺院を出るとロバートは、ニュートンの墓を守る相応しい球体について説明します。教会からの怒りを買った、“重力の法則”を発見するきっかけとなった、“APPLE(リンゴ)”です。
ロバートは開錠し、パピルスを取り出していました。「聖杯は古のロスリンの下で待つ。剣と杯が門を守り、匠の美しき芸術に囲まれ、それは輝く星空の下で眠りにつく」とありました。
テンプル騎士団が建造し、ローズラインにちなんでつけられた、“ロスリン礼拝堂”だと考えたロバートは2人でそこを目指します。
ロスリン礼拝堂に到着するとソフィーは、「ここへ来たことがある」と言います。地下へ行く階段から下へ降りると、立ち入り禁止の部屋があり入ります。
礼拝堂には匠の美しき芸術、天井には星が施されていました。床のカーペットをめくると百合の紋章を見つけます。それは更に地下へと続く入口の扉でした。
そこにはキリストにまつわる文献が年代ごとに保管され、マグダラのマリアの棺があったとみられる跡には、バラの花が手向けられていました。
そして、ソニエールの残した資料も保管されていて、そこにはソフィーが亡くした、家族の自動車事故について報じた新聞記事があります。
新聞記事によるとソフィーは、“サン・クレール”という名字で、ソニエールとは血縁関係はなく、フランスの“メロディング王朝の血筋”だと言います。
それを意味するのは“王家の血”すなわち、イエス・キリストの末裔を指しており、ソフィーがその最後の末裔で、“聖杯”そのものということでした。
ロバートとソフィーの会話を聞いた礼拝堂の管理者は修道会の守り人に連絡し、礼拝堂に集まっていました。
群衆の中にはソフィーの実の祖母もいて、総長のソニエールがソフィーを隠すために、孫として育て、時がきたら再会する予定になっていました。
ソフィーは祖母から自分のルーツについて聞くため村に残ります。ロバートはパリに戻り髭剃り失敗し、血が流れる筋をみてロスリン礼拝堂から消えた、“棺”の行方を考えます。
ロバートはロスリンからローズラインを思い出し、それを辿るとルーブル美術館のガラス張りの広場に繋がっていました。
その印となる真鍮のメダルの下には、十字(剣)で組まれた逆さピラミッド(杯)があり、その先には王家の墓の象徴、小さなピラミッドが見えます。
天空の星空が見え、巧みな芸術に囲まれた美術館のピラミッドの下に、マグダラのマリアの棺が隠されたのだと、ロバートの推察はたどり着きました。
映画『ダ・ヴィンチ・コード』の感想と評価
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映画『ダ・ヴィンチ・コード』は、キリストに関する膨大な文献や研究による書簡から、ダン・ブラウンが書き下ろしたフィクションですが、その内容によって全世界に物議を巻き起こした作品でした。
小説と同様に映画も記録的な興行収入を達成しますが、一方で宗教的な理由から物議を醸したことで、映画としての批評家の評価は不評に終わります。
キリストの歴史については今も研究が続けられ、確かな事実的な証拠は出てきていません。レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた「最後の晩餐」についても、彼がシオン修道会の総長だったからこそ、知り得ることとも取れますが、修道会は秘密は完璧にしようとしていたことから、総長であったならそれを示唆するようなことは、しないだろうとも思います。
テンプル騎士団、シオン修道会はカトリック教会から、異端として迫害されて消滅した歴史がありましたが、彼らの信じるキリストを崇拝するならば、紛争の元となりうる“聖杯”の存在は、表に出すべきではないと、秘密を貫き通すのではないでしょうか?
何よりも人間であれば家族を失う悲しさ、大切な家族の命を守るという純粋な観点から、永遠に秘密にしておくと考えるのが自然です。マグダラのマリアがキリストを失い嘆き悲しんだように……。
ソニエールはキリストの末裔である、ソフィーの存在を隠す使命と共に自分が何者であるのか、いつか知る必要があると考え、暗号を解く訓練をし、彼女なら解けるであろう暗号を考えたのでしょう。
ですからもし、リー・ティービングの凶行が成功したとしても、人々が忘れかけ平穏に暮したシオン修道会だけでなく、誰にも“自由”をもたらしません。
まとめ
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『ダ・ヴィンチ・コード』は、宗教界のみならず歴史的な観点からも、多くの物議を呼んだ話題作でした。
まるで暴露本のような展開でしたが、キリストの生涯、キリスト教の歴史は小説や映画の中に納まりきれるものではなく、壮大な仮定で想像にすぎないということです。
仮にもし、人間キリストとして人々を苦しみから救うのは、“愛”と“自然界に具わる神が唯一”と説いていたならば、この映画のラストシーンが示すように、秘密とは誰にも暴くことのできない暗号で葬ることが得策であろうということです。