作家柚木麻子の小説『終点のあの子』が映画化決定
人気作家柚木麻子のデビュー作を含む連作短編集『終点のあの子』が、當真あみと中島セナの主演で映画化されます。映画『終点のあの子』は2026年1月23日(金)に全国公開!

(C)2025「終点のあの子」製作委員会
小説『終点のあの子』は、第88回オール讀物新人賞を受賞した柚木麻子の短編『フォーゲットミー、ノットブルー』を第1話においた全4編からなる連作集で、ゆらぎやすい女子高生の友情と複雑な心情を繊細なタッチで描きだします。
言いたくても言えなかった言葉や歪になったグループ関係など、女子高生独特の日常をリアルに切なく、また残酷に表現しています。
映画公開に先駆けて、小説『終点のあの子』をネタバレありでご紹介します。
CONTENTS
小説『終点のあの子』の主な登場人物
【立花希代子】
主人公。中高一貫の私立女子高校1年生
【奥沢朱里】
希代子の学校の外部入学生
【森奈津子】
中学校からの希代子のクラスメイト
【菊地恭子】
希代子のクラスのリーダー格の女子生徒
小説『終点のあの子』のあらすじとネタバレ
柚木麻子『終点のあの子』(文春文庫)
フォーゲットミー、ノットブルー
桜が咲く春、立花希代子は中高一貫の私立女子校の中等部から高校1年に進学しました。
新学期1日目、いつものように学校近くの工事現場を中等部からの友人の森奈津子と「いつ完成するのかな」と見ていると、「完成しないところに良さがあるんだよ」という声がして、振り向くと青色のワンピースを着た女の子が立っていました。
その子が外部から入学してきた奥沢朱里でした。写真家を父に持ち海外暮らしも長いという奥沢朱里は、奇矯な言動ですぐにクラスでも浮き始めます。
女子校独特の仲良しグループはクラス内にいくつも出来ますが、朱里はどのグループにも属さず、それでいて、どのグループの人たちとも上手く付き合っているようでした。
中等部からの友人グループに属する希代子は、ひょんなことから朱里と仲良くなります
朱里と仲良くなれて興奮していた希代子ですが、学校をさぼって電車に乗って江の島へ行こうと誘われたとき、土壇場で逃げ出し、学校へ行きました。胸の奥には朱里に言われた「意気地なし」という言葉がいつまでも刺さっていました。
ですが、朱里との友情はまだ続いていました。ある日、朱里の家に遊びに行き、漫画の得意な朱里が書いていた漫画ノートにクラスメイトの悪口が書かれているのを見つけました。
自分が江の島へ行かなかったことで「あの子は意気地なしだ。一生今の場所から飛び立てない」と書かれているのを見つけ、あの日の恐怖が蘇って来ました。
希代子はそのまま何の気もなしに、ノートを自分の鞄に入れて持ち帰ってしまいました。朱里は相変わらず、破天荒な振る舞いで高校生活を過ごし、クラス内でも次第に浮いた存在になって行きました。
夏休みが終わり、文化祭が行われた時、クラス内のどのグループにも属さない一匹オオカミの朱里の言動がクラスメイトたちの怒りを買います。希代子は、朱里をこらしめようと、例のノートを教室の床に置いておきました。
登校したクラスメイトはそのノートに書かれた自分の悪口をみつけ、怒り心頭。中には泣き出す子もいます。希代子は、朱里へのシカト作戦を提案し、実行されました。
ですが、朱里はいつもと変わらない様子でいます。あまり効き目がないのかと思った希代子は、ついに決断をします。
とどめを刺すつもりで、希代子は朝早く登校すると、カッターでずたずたにした朱里の漫画ノートを彼女の机の上に置いておきました。
登校した朱里はノートを見つけると、固まってしまいます。そして、しゃがみ込んで泣き出しました。
希代子は「もう許してあげよう」と、慰めるつもりで朱里に声をかけますが、「そんなに嫌いなら私に構わないで。もう私のことは忘れてよ。この日記、私の家から盗んだんでしょ。恨みでもあるわけ?」と言われてしまいました。
そして、日記を胸に抱えて小走りで教室から出ていき、それっきり学校に来なくなりました。
先生たちにも騒ぎは知らされ、これが原因で日記を盗み友人間に回覧した希代子は、学校でもすっかり浮いた存在になってしまいました。
それでも希代子はめげずに学校へ行って勉強をし、無事に有名国立大学の文科二類に入学が決まりました。学校へ報告に行くと、二年生にクラス替えで離れて以来ほとんど見かけなかった朱里とすれ違いました。
朱里も希望校に合格したのでしょう。ですが、いつものように気付かないふりをする希代子の耳元に、「おめでと」というかすかな声が聞えました。
あれはどういう意味かと希代子は考えますが、朱里のいつもの気まぐれだろうと思うことにします。
甘夏
森奈津子は、夏の間に変身しようと、大胆な計画をたてました。高校に入ってから突如クラスに階級制度が発生し、親友の希代子までもが奥沢朱里という外部生と親しくなっていました。
学校が面白くなく何とか変化を求めての計画です。隣のクラスのミッツーに相談して、バスで30分かかる市民プールで禁止されているアルバイトをすることにしたのです。
最初は緊張していたバイトですが、清掃のおばさん・吉沢さんと親しくなり始め、同じバイト仲間の佐久間さんという大学生のことも気になりはじめた奈津子。
ある日、バイトの控室に甘夏がいっぱいおいてありました。吉沢さんが郷里からいっぱい送ってきたからと、バイト先に持ってきたのだそうです。その甘夏は酸っぱくて誰も食べないと言うので、奈津子は少しずつ家に持ち帰りました。
そのうちに、奈津子の通う学校のことがバイト仲間にばれてしまいます。お嬢様校だと知ってから、奈津子をちやほやしだした大学生たち。
あまりの待遇の違いに奈津子は驚き、ミッツーに相談。ミッツーは「やめときなよ。学校の名前がわかったとたんに、がっついてくる大学生なんてろくなもんじゃないよ」と言いました。
大学生たちにお嬢様扱いされて気をよくしていた奈津子はミッツーに対して腹が立ちました。
久しぶりにきた希代子からのメールにも、「私今好きな人できて忙しい」と返信をし、希代子を焦らそうとします。
ですが、希代子からの返信はありません。どす黒い思いを抱えたままバイトに行くと、吉沢さんが例の甘夏をいっぱいくれると言いました。
奈津子が甘夏を持って帰るのを知って大好きなのだろうと思ったのです。奈津子は仰天し、みなが持って帰らないからもらっただけだと、本当のことを言います。吉沢さんもそれっきり奈津子から遠ざかりました。
夏休み中にある学校の登校日が来ました。奈津子はそこでアルバイトをしている子が発覚し、1カ月の停学処分になったことを知ります。
名前は伏せられていましたが、奈津子にはそれがミッツーだと言うことが分かっていました。その日、ドライブがてらに学校に来た佐久間のチャラさを見てしまい、奈津子は急に興ざめします。
ミッツーがバイトをしていたガソリンスタンドまで行き、ミッツーのことを尋ねますが、やはりバイトが学校にバレて辞めたと聞きました。
その帰り道で、奈津子はふと甘夏を甘く煮詰めてジャムをいっぱい作ろうと思い立ち、友人たちにもプレゼントしようと、温かな気持ちになりました。
小説『終点のあの子』の感想と評価
女子高校生の青春を描いた作品ですが、華やかでポジティブな青春路線一直線のようなストーリーではなく、女子の間にありがちな、妬みや嫉妬、裏切りなど、ネチネチした陰湿な人間関係が交錯した物語です。
第1章で主人公の希代子と朱里が出会い、次第に打ち解けて仲良くなります。ですが、希代子は朱里がクラスメイトに対する自分の本心を書き綴った日記を見つけ、クラスメイトに暴露してしまいます。
その結果、希代子と朱里の友情には亀裂が入り、2人はお互いを無視をする間柄になりました。
第2章、第3章では、希代子のクラスメイトの奈津子と恭子の話が書かれています。
ラストとなる第4章の主人公は、高校を卒業して美大生となった朱里です。希代子と疎遠になって以来仲の良い友人ができなかった朱里に、ついに親友と呼べる友人ができます。
その親友との出来事を通して、朱里は成長します。そして思うのです。今なら過去の高校時代に、希代子に言えなかった一言が言えるんだと。
希代子も4年後に朱里とのことを振り返って、お互いに相手の心の中を考えてあげられなかったんだなと、思うようになりました。
章タイトルの『フォーゲットミー、ノットブルー』は、作中では朱里が使う水色の色鉛筆の「フォーゲットミーノットブルー」という言葉で登場します。
「フォーゲットミーノットブルー」は忘れな草の英語名で、花言葉は「私を忘れないで」。
「フォーゲットミー」と「ノットブルー」の間に読点(、)を入れることで、それをタイトルにしたこの章には、色ではない、主人公の‟忘れないでいて欲しい思い”が秘められていると言えます。
本作の始まりの章で使われ、これ以降の2人の距離感を匂わす重要な鍵となっているのです。
人の気持ちの見た目と内面との違いに揺れ動く女子高校生の心理が、リアルに、しかも繊細に描かれていることが印象深い作品です。
映画『終点のあの子』の見どころ

(C)2025「終点のあの子」製作委員会
原作小説は4章からなる連作集ですが、映画では第1章の『フォーゲットミー、ノットブルー』を中心にしているそうです。
主人公の希代子を演じるのは、當真あみ。2023年のNHK大河ドラマ『どうする家康』に家康の娘役として出演しました。
映画への出演は、2025年は『おいしくて泣くとき』『雪風 YUKIKAZE』、10月公開の『ストロベリームーン』の3作品があり、現在注目の若手俳優です。
希代子が惹かれる存在の朱里役には、中島セナが抜擢されました。2017年からモデル活動を開始した彼女は、映画『クソ野郎と美しき世界』(慎吾ちゃんと歌喰いの巻)でスクリーンデビューし、ディズニープラス『ワンダーハッチ 空飛ぶ竜の島』(2023)では主演を務めています。
他のクラスメイトとは異なる、知的で大人びた風格と孤高さをまとった朱里というキャラは、中島セナそのものと言えるでしょう。
また、希代子と朱里の同級生の奈津子と恭子は、オーディションで選ばれた平澤宏々路と南琴奈が演じています。
本作を取りまとめたのは、『好きでもないくせに』(2016)や『愛の病』(2018)などで知られ、2021年には、ロッテルダム国際映画際に招待されて話題を呼んだ『Sexual Drive』など、これまで女性を主体的に描いてきた吉田浩太監督です。
吉田浩太監督の手腕で、狭い世界に固執する私立女子校を舞台とする本作において、主人公たちの痛くて切ない青春時代を魅力的に共感させてくれることでしょう。
映画『終点のあの子』の作品情報

(C)2025「終点のあの子」製作委員会
【日本公開】
2026年(日本映画)
【原作】
『終点のあの子』(著者・柚木麻子/文春文庫より)
【監督・脚本】
吉田浩太
【プロデューサー】
前信介
【キャスト】
當真あみ、中島セナ、平澤宏々路、南琴奈
まとめ

(C)2025「終点のあの子」製作委員会
柚木麻子のデビュー作を含んだ連作小説『終点のあの子』を、ネタバレありでご紹介しました。
小説では、希代子を主人公とし、女子高生たち特有の複雑な人間関係が描かれました。友情、嫉妬、競争、憧れなど、様々な感情が交錯し、登場人物たちの心情がリアルに、そして繊細に表現されています。
本作は、女子高生という特定の環境下で、大人へと成長していく過程で経験する葛藤や、人間関係の機微を描いた物語と言えるでしょう。
2026年に全国公開される映画『終点のあの子』では、希代子を當真あみ、朱里を中島セナが演じます。
この映画はこれまでの“青春映画”とは一線を画す作風が評価され、「第27回上海国際映画祭」のGALA部門でのワールドプレミア上映されました。
海外でも高評価を得た映画『終点のあの子』の2026年1月23日(金)の劇場公開が待たれます。


































