巨大権力を相手に正義を貫く新聞記者たちを描いたアカデミー賞作品
マイケル・キートン、マーク・ラファロ、レイチェル・マクアダムスらが出演の、2016年に公開された映画『スポットライト 世紀のスクープ』。
アメリカの新聞「ボストン・グローブ」の記者たちによるカトリック教会のスキャンダルを暴いた実話を、『扉をたたく人』『靴職人と魔法のミシン』のトム・マッカーシー監督が映画化。
カトリック教会の信じがたいスキャンダルを追及した記者たちを描き、アカデミー賞作品賞を獲得した社会派ドラマです。
映画『スポットライト 世紀のスクープ』の作品情報
【公開】
2016年(アメリカ映画)
【原題】
Spotlight
【監督・共同脚本】
トム・マッカーシー
【脚本】
ジョシュ・シンガー
【撮影】
マサノブ・タカヤナギ
【編集】
トム・マカードル
【キャスト】
マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムス、リーヴ・シュレイバー、ジョン・スラッテリー、スタンリー・トゥッチ、ビリー・クラダップ
【作品概要】
2002年に、アメリカの新聞「ボストン・グローブ」の記者たちによるカトリック教会のスキャンダルを暴いた実話を、『扉をたたく人』(2007)、『靴職人と魔法のミシン』(2014)のトム・マッカーシー監督が映画化。
主要キャストに、マイケル・キートン、マーク・ラファロ、レイチェル・マクアダムス、リーヴ・シュレイバーなど。
第88回アカデミー賞では、『レヴェナント 蘇えりし者』(2016)、『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』(2015)などの有力候補を抑えて、見事に作品賞と脚本賞を獲得しました。
映画『スポットライト 世紀のスクープ』のあらすじとネタバレ
1976年、マサチューセッツ州ボストン。
ボストン警察に、神父ジョン・ゲーガンが子どもに性的虐待を遭わせたとの通報が入るも、駆けつけた地方検事補は、事もなげにゲーガンを別の教会への移動させることで処理します。
2001年のボストン。
地元の有力日刊紙「ボストン・グローブ」では、新局長としてマーティ・バロンを迎えます。
就任間もなく開かれたミーティングで、バロンは76年に起こったゲーガンの事件の再調査を、同紙の取材チーム「スポットライト」に命じます。
この事件を取り上げた地元紙が2紙のみで、いずれも小さなコラム扱いだったという点に、バロンは疑問を抱いたのです。
またバロンは、スポットライトのチームリーダーのロビンソン(ロビー)に、一人の弁護士ミッチェル・ガラベディアンに接触するようにと併せて命じます。
ガラベディアンは、ゲーガンをはじめとする神父たちが30年にも渡って約80人の子供を性的虐待したという事実を隠蔽したとして、枢機卿を相手に訴訟を起こしていたのです。
スポットライトチームのマイクが早速ガラベディアンにコンタクトを取ろうとするも、彼は教会から監視されており、弁護士資格を剥奪される恐れがあるとして取材を拒否します。
一方、ロビーと女性記者サーシャの2人は、ボストンの別の神父が性的虐待をしたという新聞記事を元に、その事件を担当した弁護士マクリーシュを訪ねます。
しかしエリックは、性的虐待に遭った被害者の多くが名前を公表したがらないことや、守秘義務を理由に協力には応じません。
ロビーも、旧友で教会の相談役をする弁護士ジムから情報を聞き出そうとするも、教会と関わらない方がいいと忠告されてしまいます。
別の日、ロビーとサーシャは、聖職者からの虐待被害を受けた者を支援する団体SNAPを訪問。
自身も虐待に遭った経験を持つ団体代表のフィルから、5年前に事件の詳細資料をボストン・グローブ社に送るも無視されたと言われ、驚く2人。
資料を伝手に、被害者たちと会っていくチームメンバーですが、彼らの大半が貧しい家庭環境にあることや、性格が気弱といった共通項を見つけます。
ボストンだけでも90人近い神父にペドフィリア(自同性愛者)の傾向があるという実情に、憤りを覚えるメンバーたち。
そして、被害者側に立たねばならない弁護士も、原告の教会側と通じて示談に持ち込んでいた者がいたことも明らかに。
その一人には、あのマクリーシュもいました。
被害者の証言を元に、メンバーは病休あるいは移動させられた神父を追跡して、追跡取材を続行します。
新聞の統括部長のベンから、事件から手を引いた方がいいと忠告されたロビーは、次第に調査内容を伏せることに。
また、虐待神父の身辺調査をしていたチームメンバーのマットは、近所に教会の療養施設があることに気づき、「ここには決して近づかないように」と子どもへの注意メモを冷蔵庫に貼りつけるのでした。
一方、改めてマクリーシュを訪ねたロビーとサーシャは、不正に示談に持ち込んだことを記事にすると告げると、彼は以前、グローブ社に虐待神父のリストを送ったと言います。
グローブ社の中にも、事を荒立てたくないと考える者がいたことが明らかとなります。
また、スポットライトチームが開示を求めてるゲーガン事件の光文書は、教会の圧力によって止められているとして、ガラベディアンが文書を提出します。
そんな折の2001年9月11日に、アメリカで同時多発テロが発生。
スポットライトチームは、教会の取材を一旦中断してテロの取材にあたることに。
犠牲者に追悼の意を示すロウ枢機卿への支持が集まる今は動くべきではないとして、マイクはガラベディアンに証拠文書の再提出を待つよう頼み込むも、彼はそれを拒み、裁判所に証拠文書を再提出してしまいます。
誰でも閲覧できる状態になった証拠文書のコピーを取りにマイクが裁判所に駆け込んだ一方、ロビーは母校の高校でホッケー部員だった後輩と接触。
その後輩が、部のコーチをしていたタルボット神父から性的虐待を受けていたという裏付けを取ります。
母校に足を運んで真偽を問うロビーに、学校側は記事にしないよう嘆願。
しかしロビーは、「もしかしたら被害に遭ったのは自分だったかもしれない」と、それを突っぱねるのでした。
映画『スポットライト 世紀のスクープ』の感想と評価
カトリック教会の神父による児童虐待を、ボストンの地方紙がスクープしたという実話を元に映画化した本作『スポットライト 世紀のスクープ』。
テーマこそ一見地味ではありますが、登場人物たちが一丸となって、一つの目的を達成するという、いわゆるチーム・ムービーとしても見応えのある内容となっています。
こうした、真実のジャーナリズムを描いた実録もので代表的な作品に『大統領の陰謀』(1976)がありますが、本作監督のトム・マッカーシーは、明らかにこの作品にインスピレーションを受けています。
また、ロビー役のマイケル・キートンも、『大統領の陰謀』でジェイソン・ロバーズが演じた編集主幹のベン・ブラッドリーの立ち振る舞いを役作りに活かしています。
なお、実在の新聞記者を描いたチーム・ムービーとしては他に、イラク戦争の大義名分となった大量破壊兵器の存在に疑問を抱いた記者たちを描いた『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』(2019)などがあります。
まとめ
フランスの映画情報サイト「allocine」が推薦する、ジャーナリストの重要性を再認識させる作品4本。
ビリー・ワイルダー監督の『地獄の英雄』(1951)、デビッド・フィンチャー監督の『ゾディアック』(2007)、スティーブン・スピルバーグ監督の『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』(2017)などと並び、本作『スポットライト 世紀のスクープ』も選出されています。
インターネットやSNSの普及により、誰でも簡単に情報発信ができるようになりました。
しかしながら、それと同時にフェイクニュースという言葉も生まれるなど、真実を追及するジャーナリズムの価値も問われるようになっています。
そんな今だからこそ、要チェックしてほしい作品です。