Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2019/07/01
Update

映画『シンク・オア・スイム』感想と評価。実在するチームをもとに【イチかバチか俺たちの夢】をかけたオッサンが華麗に舞う!?

  • Writer :
  • 20231113

『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』は2019年7月12日(金)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー!

映画『ウォーターボーイズ』のヒット以降、日本では劇的に認知度が非常に高まった“男子シンクロナイズド・スイミング(アーティスティック・スイミング)”

映画ファンにはお馴染みの世界がフランスで、おじさんたちを主人公に映画化されました。

マチュー・アマルリック、ギョーム・カネ、ジャン=ユーグ・アングラードらフランス映画界を代表する名優たちが、華麗と呼ぶには程遠い肉体を披露して、サエないおじさんを熱演します。

2019年のセザール賞で最多となる10部門ノミネートを果たし、フレンチポップ界での活躍が有名なフィリップ・カトリーヌが、その演技を評価され助演男優賞を受賞しました

本国フランスでは400万人を超える動員を記録した、大ヒット映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』をご紹介いたします。

映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』


(C)2018 -Tresor Films-Chi-Fou-Mi Productions-Cool industrie-Studiocanal-Tf1 Films Production-Artemis Productions

【日本公開】
2019年7月12日(金)(フランス映画)

【原題】
Le grand bain

【監督・脚本】
ジル・ルルーシュ

【出演】
マチュー・アマルリック、ギョーム・カネ、ブノワ・ポールブールド、ジャン=ユーグ・アングラード、ヴィルジニー・エフィラ、レイラ・ベクティ、マリナ・フォイス、フィリップ・カトリーヌ、フェリックス・モアティ、バラシンガム・タミルチェルヴァン

【作品概要】
シンクロチームに集まった、様々な問題を抱えて“中年の危機”に陥っているおじさんたち。

彼らが男子シンクロに励むうちに、それぞれの人生を再生させていく姿を、笑いを交えて描いたヒューマン・コメディです。

短編映画の監督としてデビューの後、俳優として成功し幅広く活躍しているジル・ルルーシュが、監督に専念して完成させた初の長編映画です。

本作は全世界の15の公開地域の累計で、興行収入約40億円を打ち出しています。奮闘するおじさんたちの姿が、各国で多くの共感を集めています。

映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』のあらすじ


(C)2018 -Tresor Films-Chi-Fou-Mi Productions-Cool industrie-Studiocanal-Tf1 Films Production-Artemis Productions

2年前からうつ病を患い、会社を退職し引きこもりがちな生活をしているベルトラン(マチュー・アマルリック)。

妻クレール(マリナ・フォイス)は献身的に支えますが、子供たちからは軽蔑され、義姉夫婦には嫌味を言われる日々を送っていました。

ある日、地元の公営プールで“男子シンクロナイズド・スイミング”チームの、メンバー募集を目にしたベルトラン。すぐさま彼はチーム入りを決意します。

チームのメンバーはすぐキレる性格で、妻と母親に見捨てられたロラン(ギョーム・カネ)に、事業は失敗続き、それでも現実に向き合えないマルキュス(ブノワ・ポールブールド)。

内気でボッチ、女性に縁のないティエリー(フィリップ・カトリーヌ)と、ミュージシャンとしての成功が諦められず、今だ叶わぬ夢を追うシモン(ジャン=ユーグ・アングラード)ら、何かしら問題を抱えた、“ミドル・クライシス”真っただ中のおじさん集団でした。

元シンクロ選手のコーチ、デルフィーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)の指導の下、トラブルに見舞われながらも、トレーニングに励むおじさんたち。

彼らは無謀にもフランス代表として、世界選手権出場を目指すことになるのですが…。

映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』の感想と評価


(C)2018 -Tresor Films-Chi-Fou-Mi Productions-Cool industrie-Studiocanal-Tf1 Films Production-Artemis Productions

名優たちが悩めるおじさんを演じる

本作の監督・ジル・ルルーシュと同じく俳優として、監督として多才な才能を発揮しているマチュー・アマルリックにギョーム・カネ

『サブウェイ』や『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』への出演以来、憂いに満ちた表情でファンを魅了したジャン=ユーグ・アングラードに、フレンチ・ポップ界にデビューして以来、そのスタイルと多才な活躍で知られるフィリップ・カトリーヌ

フランスを代表する世界なスターたちが、惜しげもなくその裸体、見事なおじさん体形を披露して、プールの中で羽ばたきます。

その姿は笑いを提供するだけでなく、若き日の輝きを失い人生の折り返し点を過ぎ、家庭や仕事、将来に悩む、現代の中高年像を描いています

同世代の人々の感じる“倦怠感”を描く


(C)2018 -Tresor Films-Chi-Fou-Mi Productions-Cool industrie-Studiocanal-Tf1 Films Production-Artemis Productions

本作以前にも、劇場公開オムニバス映画の短編を手がけていたジル・ルルーシュ。彼は自身が単独で監督する、初の長編映画となる作品の題材を求めていました。

その作品には自分たちの世代、同時にフランス社会全体に漂う“倦怠感”、個人主義的な競争に溺れ、チームワークや熱意、努力を忘れた人々を描きたいと考えていた彼は、スウェーデンの男子シンクロナイズド・スイミングチームのドキュメンタリーに出会います。

題材を得たジル・ルルーシュは、 アメッド・アミディとジュリアン・ランブロスキーニと共に脚本の執筆にかかります。群像劇として各登場人物の性格を特徴付け、見せ場を与える為に、約1年間かけて考え抜いたと語っています。

ジル・ルルーシュは当初から、幾人かのキャストを想定していました。その1人がマチュー・アマルリック。『アデル ファラオと復活の秘薬』で共演し、2人は友人となっていました。

話を聞き脚本を読む前に出演を決めたマチュー・アマルリック。しかし当時は自身の監督・出演作『バルバラ セーヌの黒いバラ』を製作中でした。

スケジュール的に困難な状況でしたが、ジル・ルルーシュは彼の参加を待つと返事をします。こうして彼を主演に招き、映画の製作は開始されました。

他の俳優も当初から望まれて参加していますが、特にフィリップ・カトリーヌは監督から、映画に描かれた人物を演じられる唯一の人物と考えられていました。

脚本を読んで、面白く感動的な作品になると確信したフィリップ・カトリーヌ。こうして出演を決めた彼は、映画の登場人物同様の栄誉を手にする事になります。

トレーニングから“裸の付き合い”が始まった


(C)2018 -Tresor Films-Chi-Fou-Mi Productions-Cool industrie-Studiocanal-Tf1 Films Production-Artemis Productions

撮影の前に、シンクロナイズド・スイミングを演じる為のトレーニングを開始されます。

最初のトレーニングの光景はひどいものでした。オリンピックの女子チームの振り付け師であるコーチは頭を抱えますが、3週間後にはこの調子なら目標に到達できる、と語るまでになります

出演者たちは週1・2回のペースで行われた7週間のトレーニングに耐えて、映画の撮影に臨みました。困難な水中から足を出すシーンはスタントマンが演じていますが、主要なシーンは彼ら自身が演じています

トレーニングの際のエピソードは皆が面白おかしく、共演者の才能と努力を讃えるエピソードを語っています。こうして生まれたキャストの連帯感は、映画の中で描き出されています。

撮影の舞台裏で一番水着の似合う男、ジャン=ユーグ・アングラードが、フィリップ・カトリーヌの背中の毛を剃ってあげていたと語るマチュー・アマルリック。想像するに、さぞ美しい光景だったのでしょう

まとめ


(C)2018 -Tresor Films-Chi-Fou-Mi Productions-Cool industrie-Studiocanal-Tf1 Films Production-Artemis Productions

悩めるおじさんの姿を描いた映画、『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』。

その肉体美を眺めるだけで笑える作品ですが、決してギャグを連発する映画ではありません。

おじさんたち、そしてその周囲の人物もそれぞれ悩みを抱えて生きています。その哀愁漂う姿は、演技派俳優たちが演じる事で見る者の共感を呼び、彼らの活躍が感動と奮起を与えてくれる映画になっています

この映画は実在するスウェーデンの、男子シンクロナイズド・スイミングチームの活躍にインスパイアされたフランス映画です。

参考映像:『シンクロ・ダンディーズ!』予告編

同じく彼らの活躍を元ネタにした映画は、イギリスでも製作・公開されました。9月20日(金)公開予定の映画『シンクロ・ダンディーズ!』です

おじさんシンクロ映画の連続公開を記念して、『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』の半券を提示すると、496円で『シンクロ・ダンディーズ!』が観れる、大胆不敵な割引企画「496(シンクロ)キャンペーン」が企画されています

今や世界の注目を集める、水中で華麗に舞う、美しい(?)おっさんずの裸身。彼らの人生を噛みしめながら、そのリスタートする姿を応援しましょう。

映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』は2019年7月12日(金)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー

関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『シチリアーノ裏切りの美学』ネタバレ感想と考察評価。マルコベロッキオが迫るマフィア戦争を終息に追い込んだ真実

イタリアマフィア史上のミステリーを映像化した『シチリアーノ 裏切りの美学』 1980年代に、激化していたマフィアの抗争を終息させた1人の男がいました。 「裏切り者」と呼ばれながらも、自らの信念を貫いた …

ヒューマンドラマ映画

村上虹郎映画『銃』あらすじとキャスト。演技力で原作の青春描写に新境地を見せる

映画『銃』は、11月17日(土)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー! “これほど美しく、手に持ちやすいものを、私は他に知らない”というキャッチコピーの本作の原作は『悪と仮面のルール』『去年の冬、きみ …

ヒューマンドラマ映画

韓国映画『スウィング・キッズ』ネタバレ感想とレビュー評価。タップダンスでミュージカルのごとくバンドとの掛け合いが必見!

朝鮮戦争の最中、捕虜収容所で結成された国籍も身分も異なる5人のタップダンスチーム! 『サニー永遠の仲間たち』で知られるカン・ヒョンチョル監督待望の新作『スウィング・キッズ』。 1951年、朝鮮戦争最中 …

ヒューマンドラマ映画

映画『凪待ち』感想。被災地「石巻」を撮影ロケ地にした理由を母・亜弓が望んだ「新たな家族つくり」から読み解く

映画『凪待ち』は、2019年6月28日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー! 『彼女がその名を知らない鳥たち』や『虎狼の血』で知られる白石和彌監督と、俳優にしてアーティストの香取慎吾が …

ヒューマンドラマ映画

映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

常に弱い立場の人に寄り添い、数々の名作を生み出してきたイギリスの名匠ケン・ローチ監督が、引退宣言を覆し、撮ったのがこの作品です。 彼が見過ごすわけにいかなかった問題とはどのようなものなのでしょうか。 …

U-NEXT
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学